12歳以下のポワントレッスンは足の骨の成長上、危険である。
これについては何度も何度も記事にも、セミナーにもしてきました。
だけど、「10歳、トウシューズ歴は2年」なんて生徒がスタジオに来ました、なんて聞くと悲しくなります。
ランドセルを背負って、姿勢良くしっかりと登下校をするのが大変な小学2年生にポワントで踊らせるなんて。
2014年に出会った9歳の子は右のピルエットは5回回れるのに、まっすぐ立ってプリエは出来ませんでした。
ちなみに足は変形し、内股の筋肉はなく、スカスカ。膝の骨がぶつかって痛い、という1番ポジションでした。
最近頂くメールでお母さん方が気づいているケースも多いようです。
娘の体のためにお教室を変えるべきか。
とは言っても、お友達はいるし、送り迎えが出来る距離も決まっているし。
おかしなレッスン内容だけれど、それが正しいのかもしれない。
だって私はダンサーじゃないから。
今日はそんなポワントレッスンについていくつかの視点で見ていきましょう。
既に解剖学的な事はほかの記事でお話ししているので、今日の視点はママパパとしてよく見るであろうものを選抜しました。
ソーシャルメディアとトウシューズ
確かに、YouTubeでもすごく若い子がポワントで踊っています。
ただ、YouTubeでシェアされるバレエビデオってすごい!とか、びっくり!とか気持ちを煽るものではないでしょうか?
あと猫。
猫って変な事しますよねー。
キーワードは「普通と違う。」
普遍的な物はシェアされません。
だからそれが普通だとは思わないでください。
普通だったら、どんなスタジオでも見かけられたら、ビデオになってみんながシェアする訳ないんだから。
YouTubeは誰でもアカウントが作れるし、誰でもビデオをアップロードできます。
プロじゃなくても、テクニックが出来ていなくても、誰でもオッケーなんです。
ソーシャルメディアで紹介されたストレッチのせいでケガをする、という新聞の一部を翻訳した記事もあるので、そちらも一緒にどうぞ。
レッスンの数とトウシューズ
12歳だったら誰でもポワントで踊れるのか?といったらそうではありません。
解剖学的に危険因子が少ないのがそれくらいの年齢ってことだけで、
彼女の筋力、体力、テクニック、そしてレッスンの数だって影響します。
詳しいナンバーは、国際ダンス医科学協会が出している資料を読んでください。
週に2回しか行っていない12歳と、
週に3回レッスンしている11歳半。
週に2回を40週(休みを外したとして)=80回
週に3回を40週=120回
同じテクニックだと仮定した場合、どっちの子が安全にポワントで踊れると思いますか?
もし、子供にトウシューズを履かせたい、と思ったら最初にやるのは
トウシューズを履かせてくれるスタジオ探しではなく、
彼女のレッスン量の調節ではないでしょうか?
発表会とトウシューズ
発表会の練習が始まったとたん、トウシューズのレッスンをする人、スタジオの話を聞きますが、
いつもはバーレッスンだけで、発表会が決まったとたん、センターレッスンを始めるダンサーがいないのと同じようにそれでは遅いです。
トウシューズはトウシューズのレッスンが必要です。
だからどんな規模でもバレエ学校ではクラシックバレエの次にポワントレッスンがあるのです。
確かに、習い事であればバレエレッスンの後にポワントレッスンをする時間がないかもしれません。
だけど、最後にちらっとポワントを履いただけではポワントレッスンと言えませんね。
ここらへんはスタジオの方針、タイムマネージメント、スケジュール調節の腕にかかってきます。
この前ローザンヌでロイヤルバレエ学校奨学金、パリオペラ座インタビューなど10個もバレエ学校オファーをもらった生徒は3、4年前のコンクールではバレエシューズで出ていました。
ポワントで発表会で踊った、幼いころにコンクールで入賞した。
これがバレエ団オーディションの履歴に使える事はありません。絶対に。
ダンサーのレベルとトウシューズ
DLSでは、セミナーの参加者の年齢枠を下げる前に、セミナーの資料に書いてある事があります。
「ポワント歴が短い場合、こちらで危険性を判断した場合
トウシューズを履いたからといって、上手な訳ではありません。
結局、トウシューズってただの靴です。
その靴を操って、どこまで踊れるか?というのがポワントレッスンなのです。
つまり、ポワントで踊る前の体作りだってポワントレッスンの一部。
セミナー中に、ポワントを途中で脱いでもらう子たちが沢山いると思います。
それは、あなたは下手だ、って言っている訳ではありませんよ。
あなたに必要なトレーニングは何か?を見ているのですから。
体の強さが出来たら、靴をぽん!って履かせてポワントになったら動きの変わるテクニックを少々練習すれば舞台で踊れます。
最後に。
くるくるとトウシューズで踊るバレエダンサーに憧れない人はいないと思います。
ただね、その裏で行われている練習や、理論や、
日本でのスタジオ(一日中踊るバレエ学校でないところ)を考えると
答えが出てくるところがあるんですよね。
先生方にも、ご両親にも、ここら辺は考えてもらいたいところ。
だって子供の骨の変形を望むママやパパ、そして先生がいる訳ないんですもの。
そんな知識たちをDLSを通じて皆さんに知ってもらえたら笑顔なダンサーが増えると思うのです。
Happy Dancing!