若いときじゃないと、体は柔らかくならないのか?

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この前インスタをスクロールしていた時、1つのバレエスタジオ?の投稿が出てきました。

 

甲出しについて書いてある投稿で、

  • 痛い(辛い?)のは当たり前だけど必要
  • 生徒たちに我慢してもらいながらやっています

というような文章とともに多くのつま先の写真が載っていました。

 

足のサイズから見て、年齢の幼い子達もいるように見えました。

しかも、DLSをフォローしている人達がフォローしている&イイネしているよう。

(OOもフォローしています、みたいなのが出てくるじゃない?アレ)

 

最初は何を言ってるんだ!という怒りからスタートし

そのあと自分の影響力不足にガッカリし

インスタを放棄して見ないふり(放棄・ネグレクト)

今日のメルマガを書くという行為(前に進む行動)に至っております。

 

感情のローラーコースターの激しいこと!

 

  • 甲は出すものじゃないだろ?
  • つま先を押しても、強くならないぜ?(お腹をベルトでぎゅーって閉めても強くならないのと同じ…)
  • 生徒は痛みを押し殺している、と知っているうえでの行動は、体罰だよ?

という様々な方向でこの問題を見ることが出来ると思ったのだけど、

 

今日は多くの先生や保護者が暗に思っているかもしれない心の声

「そうはいっても、若いときじゃないと体は柔らかくならないでしょ?」について見ていきます。

 

子供の時のほうが体は柔らかい

一般的に、子供の方が体が柔らかいといわれます。

  • 骨化が終わっていない(=骨が形成されていない)から
  • 靭帯など関節周りの組織が成長しきっていないから

など「成長中なので」柔らかいというケースや

 

  • 大人に比べ、体育の授業や習い事で体を使っているから、可動域が広い
  • 過去のケガの歴史がない(少ない)ため、筋肉や関節が健康である

という生活習慣的な部分もあります。

 

これらは、幼いうちにストレッチ「したから」ではなく

  • 体が出来上がっていないため、新芽のように繊細
  • 体を動かす健康な生活習慣

から。

 

でも”新芽”と私が表現したので分かるように、この時期は弱いです。

少しの風、強い雨、気温の変化で、すぐに枯れてしまいます。

もちろん、根っこも強くないため、引っ張ったらすぐに抜けてしまいます。

 

また、成長期(身長がぐんと伸びる時期)は骨の方が、筋肉よりも先に成長します。

なので

小さいときからバレエをやっていた

身長が伸びる時期になった(=骨が伸びる時期になった)

体が今までより硬く感じる

「ほら、年齢が上がったら体が固くなるから、小さいうちにストレッチしないといけないのよ!」

と考える

という単純な考え方の指導者や保護者がいるんでしょう。

 

 

成長期は体が強くなる時期ではありません。

骨が伸び、筋肉が伸び、体が強くなる。

という順番があるため、コーディネーション力が落ちたり、長くなった手足を支えるだけの筋力がなかったりします。

 

でも、プロを目指しているんだもの、当たり前でしょう?と思う人もいるかもしれません。

ここは、バレエ学校指導歴10年以上経験済みなので、自信を持って言えます。

  • 足(オンポワントで立った時に、ひざ下が長く見える)、脚が長くなりたかったら
  • カンパニーオーディションに必要な身長が欲しかったら
  • 念願のバレエ学校に入学し、何年にも渡る過酷な学生生活をサバイバルしたかったら

日本にいる時にケガばっかりしていたら、夢を叶えるチャンスを逃すことになります。

 

成長期の体に対する知識や、危険な動き、

「成長痛ですね」と言われてシップをもらって終わってしまう「スポーツ障害」については

教師のためのライブラリにある「成長痛」クラスにて勉強できます。

 

体が硬いから足が上がらないのではない

11月のボディコンサークルのテーマは「デヴァン強化合宿」でした。

デヴァン“強化”というと、

  • 長座
  • バーの上に足を乗せてリンバリング
  • スプリッツ

などハムストリングスストレッチばかりを練習する人が多いのだけど、

それでは脚は上がるようになりません。

 

デヴァンだけでなく、レッスンで高く足を上げたかったら

  • 動脚の大きな可動域に耐えられるだけの軸足の強さ
  • 片足になってから、足を持ち上げ、キープするだけの長さ耐えられる軸足の持久力

が必要です。

 

バレエレッスンでは足を高く上げる動きがバーレッスンの後半に出てくるため

  • レッスンに耐えられる基本的な体力&筋力&集中力

も必要でしょう。

 

そして実際に、ボディコンサークル参加者が口を揃えて言っている「大変だ!」の部分は

軸足の強さでした。

 

ちなみに軸足の強さを育てる過程で、つま先を伸ばす筋肉(内在筋・固有筋)は育ちます。

理由は、ダンサー達が「足裏の筋肉」と表現する事の多い内在筋たちのお仕事は、

片足でバランスを取る(=固有感覚、なので固有筋)ことです。

 

つまり、早く上達したかったら

片足で立つ練習をした方が

  • 軸足の強さ
  • 軸足の持久力
  • つま先を伸ばす筋肉の強化
  • 膝を伸ばす筋肉の強化

などぜーんぶカバーする事が出来ますが、

 

床で”甲出し”していると、

  • 足首+フットの関節たちの柔軟性

しか練習していません。

しかも受動的な。

 

舞台で使うためには、自分でつま先を伸ばさなければいけません。

この使い方を能動的と言います。

 

つまり、床で練習していても、舞台に直結しないのです。

 

「正しい」バレエレッスンは柔軟性を高めるように作られている

  • つま先を伸ばすこと
  • ターンアウトをする事
  • 高く脚を上げる事

これらは確かに、ダンサーに必要なテクニックですよね。

一般の人はもちろん、スポーツ選手でも練習しない、クラシックバレエ特有の体の使い方ですよね。

 

「テクニック」というところがキーワード。

  • 床でつま先が伸びるから、バレエが出来る
  • 床で開脚が出来て、180度の一番ポジションが出来たら、バレエをやる資格がある

ではなくて、

バレエのレッスンの中で、バレエに必要なテクニックを身につけるんです。

 

なので、何年もレッスンに来ていても生徒の柔軟性が足りない場合、

指導内容が良くないとも言い換える事が出来るかもしれません。

もちろん、バレエ歴が短い人は年齢に関係なく、“まだ”出来ないでしょう。

だって、練習して日が浅いのだから。

 

もちろん、海外の政府認定バレエ学校で10年以上講師をしてきた経験の中で、

柔軟性が足りない子達もいましたよ。

でもそれは、バレエ学校に来ている年齢&レベルです。

(+私も含め、治療家がいて、エクササイズクラスがあって、プロを育ててきた教師軍がいる環境)

日本のスタジオレベルではない。 

 

ストレッチ指導は難しい

他に悩ましいポイントは、ストレッチの勉強をしていない人が、ストレッチの指導をするという事。

もちろん、バレエの先生ですから、バレエ指導は勉強しているでしょう。

自分の経験だけではなく。

 

日本に生まれたから、日本語を20年喋ってきたからと言って

学校の国語の先生になれないでしょ?

そういうこと。

 

  • 子供達の将来を、勉強不足の大人に託して良いんだろうか?
  • 生徒がケガしたとき、責任を持つ大人はいるだろうか?
  • 誰の夢、時間、お金が使われてしまうのだろうか?

考えてみてください。

 

様々なセミナーで何度もお話していますし、

ライブラリにあるSafe Dance Studio柔軟性セミナーでも時間をかけて詳しく説明していますが、

ストレッチ=筋肉だけが伸びている訳ではありません。

 

皮膚、関節包、腱、筋膜、靭帯、そして血管や神経など

様々な組織が伸びます。

 

組織の中には

  • 伸ばしてはいけないもの
  • 曲がらない方向
  • これ以上行かない可動域

が存在します。

 

知らないと、

  • 脱臼
  • 亜脱臼
  • 靭帯損傷
  • 股関節唇や半月板、椎間板など軟骨損傷 

の危険性があるんです。

 

 

ストレッチというのが筋肉を伸ばす事だけだとしても、解剖学知識がたっぷり必要です。

  • 筋肉のついている場所、
  • そのエリアにある筋肉たち
  • 関節の動く方向、動く範囲

は絶対に分かっていなければ伸ばすことができません。

 

その上で、ルティレまでは上げられるけど、デヴァンで足が落ちてしまう、という悩みがあった場合、

  • 股関節屈曲の種類(膝関節の関与)の有無
  • バレエダンサーに求められるデヴァンの正しい形と理解
  • 生徒のケガの歴史(どこが弱い?動きづらい?など)

を理解していなければ、レッスンで効果の見えるストレッチを”処方”する事はできません。

 

(治療家はエクササイズやストレッチを”処方”します。

その人の年齢やケガ、シチュエーションに合わせてプランを作るからです)

 

 それだけでも難しいのに、本人が何を感じているか?は本人にしか分からないのです。

ライブラリの柔軟性クラスを見てもらっても分かるように、

同じクラスに参加している同じ職業の人達(バレエの先生)で、同じ動きをしてもらっても、

  • 痛いところ
  • 伸びているところ
  • 挟まる、ピンと張っているなど感覚

が違いました。

当たり前だけど、人間には個人差があるからです。

 

この感覚、この場所を感じたら危険!という判断が出来ない人は

その動きを指導出来ません。

息継ぎを指導出来ないなら、水泳の先生になれないし、

運転ルールを知らなければ、免許センターで指導出来ないのです。

 

よりストレッチについて知りたい人は、ライブラリの柔軟性クラスがおススメですが、以下のブログも参考にしてください。

→実際に年齢別レントゲンをみてお話しているものはこちら

→実体験からむりやりストレッチを考察しているものはこちら

→新聞にものったくらいのダンサーストレッチ信仰について

 

バレエを辞めた後も考えて

プロを目指しているから、今頑張らないといけないんだ!

だって、プロになるのはとっても大変だから!!

だと分かっているなら、

  • バレエを辞める子(家族環境や諸事情により辞めなければ行けなかった子達も含む)
  • リタイアする事にしたプロダンサー

の将来も考えてください。

 

人生100年時代の今、20世紀最高のバレリーナ、マイヤ・プリセツカヤのように

83歳まで舞台に立ち続けたとしても、

まだ赤ちゃんが成人するまでの時間が残っています。

 

ダンサーの前に「人間」として、健康に過ごすことが出来ない理由が、

指導者の知識不足だったとしたら、とても悲しいと私は思うのです。

 

結論:若い時じゃないと、体は柔らかくならないか?

答えはNO

  • 年齢に関係なく、必要な柔軟性を鍛えることは出来ます
  • 年齢に関係なく、オーバーストレッチや知識のないストレッチは、ケガに繋がります
  • ダンサーが、踊りの中で膝が伸びない、つま先が伸びない、足が上がらない…と言った場合、柔軟性だけでなく、筋力を考える必要があります。

 

何をやってもケガしない子、というのは存在しますよ。

煙草が悪い、と言っても吸っている人100%が肺がんになると決まっていないように。

 

正しい事をしていても、ケガすることはありますよ。

アクシデントは舞台上で起こります。

 

年齢やレベルによって、できる事&出来ないことがありますよ。

未成年や妊婦さんにお酒は良くないけど、大人だったら自己責任で窘めることができるとか。

 

知らない事は指導できない

常にDLSで言い続けている言葉ですが、ここに戻ってくるんじゃないかと思います。

 

若い時じゃないと勉強出来ないという訳でもありませんよね?

  • 何歳からでもバレエが始められるように
  • 何歳からでも運動をすれば、健康になるように

何歳からでも、生徒の為に勉強をし続けることが可能です。

 

 

Happy Dancing!

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