*この記事は2016年3月のものを大幅に加筆修正しアップデートしました。
DLSのセミナーに参加してくださる人やメール、SNSにくる相談などで目に留まるのが
「毎週整体に通っています」
「鍼治療を受けています」
というダンサーの声。
そして彼らの年齢は…小学6年生から痛みが始まってとか、現在13歳!とか。
これらのメールから分かることは、
- 年齢が若い
- 慢性の痛み
- 治療をしても結果、変わらない(多分、その直後は良くなるんだろうけどね)
メールには書いていなかったけれど考えられる点は
- バレエを頑張っている(当たり前ね、バレエのセミナーにくるんだから)
- 踊っているときに痛い(普通の生活はある程度できるのでしょう。バレエやっているんだから、普通の生活ができない痛みではないと思われる)
この記事では、習い事で治療に通わなければいけないようなケガをしていることと、治療だけでは痛みなく踊れるようになれない理由についてお話ししていきましょう。
バレエは痛いものではない
確かにね、バレエをはじめスポーツで体を使えば、ある程度の痛みが出るときがあります。
筋肉痛の痛みだったり、疲労が溜まってだるい、トウシューズが下ろしたてだから違和感がある、とかさ。
だけど、これらが週に3~4回、1回2時間のレッスンを受けているだけで「毎日」起こることはありません。
例えばバレエ学校に入ったばっかりで、いきなり毎日5時間、今までとは違うレベルで、違うジャンルのダンスも科目に入っているような、
踊る生活に体が馴染んでいなくて、痛いということはあるかもしれません。
プロになって毎日公演があるっていうときにも、振付の関係上、同じエリアを何度も使うから慢性の痛みが出ることがあります。
だけど、これらは小学生がバレエスタジオでやっているわけないんですよ。
- 成長期に体の回復が間に合わないくらいの練習量
- 偏った使い方で痛みが出る
という状況になるのはおかしいのです。
それは頑張って練習している努力家ダンサーのレベルではなく、指導者の勉強不足です。
踊りの量 VS 体の強さ
バレエが特殊とか(そうでもない)若いスポーツ選手は頑張らなきゃいけない(それも間違い)とかを置いておいて。
とっても簡単に身体的なケガを理解するには「運動量 VS 体」って考えてみてください。
痛みが出るときって、やっている「運動量 VS 体」で、体が負けているときです。
長時間座っている姿勢が悪くて起こる腰痛を例にとると、
座っているという「運動量 VS 体」で体が負けた、と考えることができます。
腰が強くて痛くなったなんてことありませんし、姿勢が良すぎて痛くなったというのもありません。
ポワントで踊ると甲が痛くなります、というケガを例にとりましょうか。
足が強すぎて甲が痛くなるはずはないですが、
自分の体重を支えられなかった足、脚、そして体全体の弱さが原因です。
つまりポワントで踊るという「運動」にあなたの「体」が負けたってこと。
この例を挙げると、じゃあ体重を軽くすればいいの?とダイエットにつっ走るダンサーや、
体重が重いからケガするのよ、というバレエの先生がいるのでひと言お断りの文章を入れておきましょう。
体重が重くてケガをした、とは私は書いていませんよ。
体を支える強さがない、踊るという運動に体が負けている、と書いてあります。
ちゃんと文章読んでくれましたか?
勝手に頭の中で変換していませんか?
- 筋肉の方が脂肪より重い
- 骨密度が高い骨の方が重い
- 地球には重力があり、運動方程式(EOM)がある
などを考えて、体重の重さの話をしているのではないと理解してくださいね。
子どもがレッスンをしている場合、バレエの先生はレッスンの量や内容を、保護者はほかの習い事との関係をコントロールしてあげなければいけません。
運動量をコントロールするのは子どもたちができることではないからです。
そして子どもたちはまだまだ体が成長中、つまりまだ骨も関節も、筋肉だって完全体ではないのだから、いくら体を強くしろ、と言っても時間がかかります。
このように体が成長中のときに、ムリをして生まれるケガは成長痛と言われ、
これはスポーツ「障害」であり「ケガ」です。成長しているみんなが成長痛になるのではありません。
この説明はこちらのブログ記事に書いてあるのでそちらを参考にしてください。
治療とリハビリは一緒ではないと心得て
話を元に戻しましょう。
腰の痛みがひどくて正しい姿勢を維持できないのでまずは治療を受ける、というのが必要な場合もあります。
足の甲に乗っかってしまう癖を治すために、筋肉のバランスを整える必要があるかもしれません。
正しい診断と効果的な治療は、ケガを早く治すためには必要不可欠。
だけどね、治療「だけ」では踊れるようになりません。
毎回つま先を伸ばすたびに痛む足首の後ろ側。
治療をしてもらうとつまりがとれた感じになるけれど、1週間後にはまた元に戻っちゃう、としたらね、もっと治療が必要!ではないんですよ。
- 正しいつま先の伸ばし方を理解して、
- それが毎回レッスンでできるようになるだけ体に入って、
- 何時間踊っても正しい筋肉がしっかりと働くように強くする。
ここまでやらないと痛みなく踊れるようになりません。
アンデオール整体に行ってターンアウトができるようになったとするでしょう?
それね、自分でできたことにならないから。
ターンアウトはムーブメントです、と「ターンアウトできてますか?」で書きましたが、ターンアウトは踊りの中で、あなたが使えなければ意味がないの。
関節の可動域を誰かにマッサージしてもらって広げることで、自分の可能性を知り、私こんなにターンアウトできるんだ!とモチベーションにすることはできるけれど、
バリエーション1曲の中でターンアウトをキープしたかったら、アダージオのデベロッペデヴァンの脚でやりたかったら、自分で使う、っていう練習が必要です。
つまり、先ほど言ったみたいに「運動量 VS 体」で、体が勝つようにしないといけないのよ。
治療とリハビリは別物です。
ダンサーのリハビリでは、最短の時間でダンサーが舞台やレッスンに完全に戻ることがゴール。
日常生活では痛くない、治療後はスッキリ!だけでなく、踊りの中で痛みがなくなるレベルまで行わなければいけません。
体が強くならないといけないんだったら、痛みを無視して練習すればいいのね!ではないですよ。
- 痛くないギリギリで順序立てて少しずつ練習すること
- 痛みのない動きの中で強化していくこと
- 痛みが出ないようにしっかりとウォームアップし、レッスンの後は体のケアを行うこと
このような対策が必要です。
リングに上がるのはあなただけ
ボクシングの試合を見たことあります?
ボクサーが試合の合間にコーナーに戻ってくるでしょう?
そうするとセコンド(っていうのか?あの人たち)が来て、水をくれたり、ケガの手当をしてくれたり、汗を拭いてくれたりするじゃない?
ダンサーのコーナーには治療家、トレーナー、バレエの先生、保護者、友達など素晴らしい人たちがあなたをサポートしてくれています。
倒れたら、背中を押してくれる仲間がいます。
でも、ステージに出るダンサーは一人。
つまり、自分の体が自分を支えてくれるようにならないと舞台では使えないし、踊れない。
いくら良いコーチがついていてもリングに上がるのは自分だけなんだから。
確かに、ケガをしているときって藁にもすがる思いでさまざまな先生を捜すと思います。
連日のリハーサルや痛みに心が負けているときは、誰かに何かをやってもらった方が楽ですし、気持ちいいよね。
治療の後、少し痛みがなくなったら、今まで踊れなかった分頑張らなきゃ!っていきなりレッスンに戻ってしまうと思います。
その気持ちよく分かるよ。
だけど舞台に上がるのはあなただけ。
信頼できる強さを作るのも、あなたの体だけ。
孤独な感じがするけれど、環境や状況に関係なく「あなた」がどうにかできるっていうのはパワーになると私は思います。
そして筋肉は使えば強くなるという事実も頭に入れておくと、勇気になりますよね。
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Happy Dancing!