トウパッドの選び方 足に合うトウパッドって存在する?

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2013年から始まったDLSでは様々な角度からバレエを研究しているのですが、トウパッド「だけ」に一度もフォーカスを当てたことがなかった…ということに2020年のクリスマスライブで頂いた質問で気づきました。

ポワントで踊るダンサーだったら絶対に使うアイテムなのにね!

 

ダンサーの足セミナーというDLSでも1,2位を争う人気セミナーでがっつりお話しているのでブログで書いたつもりになっていたのでしょう。

ということで、今日はトウパッドの選び方をバレエ解剖学や文献などと共に考えていきましょう。

トウパッドって何?

DLSブログ常連さんであれば、私が常にdefinition、定義付けからブログを始めるのに慣れていると思うのですが、トウパッドだって同じように定義を探しましょう。

 

英語ではtoe pad、時々ouch pad、toe capなんて言われる事もあるトウパッドは、

ポワントシューズを履くときにつま先部分の保護と、シューズ内での足の安定のために使用する布(だったり、ジェル状のものだったり、綿だったり…)です。

 

バレエを長年やっている方ならば当たり前だろ!と言われそうですが、

知らない人もしくはお店の人に必要だからと言われて購入したけど「なんで」必要なのか?が分からない人はたくさん存在するので書いておきます。

 

昔はただのピンクの布だったのが(なんでピンクなんだろうね?)、今では実にたくさんの種類が出ています。

バレエショップのサイトで調べたら驚くほどの種類が出てきて困ると思いますが、こちらの記事にも様々な形のものが写真付きで書いてあるので見てみてください。

その記事のトップに書いてあるメーカーの「perfectfit」というものはカスタムメイドのトウパッドで、お値段を見るとビックリします…

(カスタムメイドだから仕方ないのか、パテント・特許がついているから値段が高いのか…)

文献に見るトウパッド

様々な形のジェル、違った素材のトウパッド、カスタムメイドまで存在するのに、

トウパッド素材の違いとケガ予防やテクニック向上のコネクションを調べる研究は殆ど見つかりませんでした。

私が見られる限り(=英語、もしくは日本語で一般アクセスのあるもの)では1つだけ!

 

比較的新しい研究ではあったんだけど(2019年)、この研究では10人のプロダンサー(年齢18.6±3.8)という小さなサンプルサイズなのと

  • 普通のトウパッド(STC、standerd toe cap)
  • カスタマイズされたもの(CTC、custmized toe capプロトタイプ)

の違いを見ただけなので、

 

カスタマイズトウパッド(ここでもパテント付き!)でなくても、自分の足に合わせて調整すればいいんじゃね?という程度しか分かりませんでした。

 

スタンダード素材というのも普段使っているものではなく、研究で提供されたもののようなので、その人の好き嫌いもありそうだし、

どんな素材なのか?どこのメーカーなのか?などが書いていなかったのでよくわかりません。

 

途中で出てくるレントゲン写真では親指の角度を図っていて

  • 普通バージョン=親指が人差し指の方に流れる
  • カスタムバージョン=親指がまっすぐ

というのが見えますが、これだけであればトウセパレーターでも可能な動きだと思います。

 

まとめの部分にも

The effect in terms of injury prevention of CTC use, both chronically and/or during further specific dance movements, is worthy of future investigations.

カスタムメイドトウパッドとけが予防のコネクションについては今後の研究が必要だ、で終わっています。

 

ほかの研究を知っている人がいたらぜひ教えてくださいね!

 

ということは、お店で様々な種類のトウパッドがあるのは選ぶオプションが増えているだけで

この素材が一番!などエビデンスで裏付けされているものではないと思われるよね。

(つまり、マーケティングなのではないか?と。)

トウパッドは入れなくてもいい

そんなこと言われたら、ますますどのトウパッドを選んだらいいのか分からないって思ってしまいますよね。

 

その話に行く前に、

トウパッドは入れなくてもいいんです。

という事実を頭に入れておいてください。

 

最初にトウパッドの意味、定義を一緒にチェックしたでしょ?

つま先の保護+シューズ内で指が動いてしまうのを防ぐ

というのがトウパッドの定義であれば、

 

  • 保護=バンドエイドや指にはめるチューブ
  • つま先の安定=ポワントの中にすでにパッドが入っている(最近はこういうのもあります)

であれば、必要ないわけです。

 

もっと簡単に説明すると

  • ポワントシューズ=箱
  • 貴方の足=中身
  • トウパッド=梱包材

だと思ってください。

 

荷物の中身と箱がほぼピッタリ!だったら梱包材は少なくて済むし

中身の形と箱の形があっていなければ、隙間スペースに梱包材が必要です。

 

だからさっきの研究でもカスタムメイド、つまり足の形に合わせて作られていると痛みが軽減したのでしょう。

 

これは「カスタムメイドの特許付きパッドが素晴らしい」ではなくて

市販の(研究に裏付けされていないと思われる)アイテムに頼るのではなく、自分の足を理解しろ、という事だと私は考えます。

 

荷物を例にお話を続けましょう。

飛行機で預けるスーツケースと、機内手荷物のスーツケース、どっちの方に貴重品入れます?

 

機内手荷物だよね?

自分で大切に扱うって分かっているし、投げられたり、ぶつかったりすることもない。

 

梱包材の必要性は、どのように荷物を扱うか?にも影響されるので、

  • 毎日ポワントで何時間もリハーサルしているプロダンサー
  • 週に1度、20-30分レッスンの終わりにポワント履く人

では必要なものが変わってくるわけね。

どのトウパッドがいい?の答えは足にある

ではブログタイトルに戻りましょう。

トウパッドは何を選んだらいいの?という答えはありません。

 

というか、自分の足に聞いてください、と言ったほうが正しいですね。

 

  • 足の指の長さ
  • 足の指と指のスペース
  • ポワントで踊る量
  • 過去のケガ(どこに負担がかかるのか?が分かるから)

を考慮してダンサー自身が自分でカスタマイズしなければいけません。

 

例え高いお金をはらってカスタマイズパッドを購入したとしても

  • 踊りの量(床、種類など…)
  • ポワントシューズ

が変われば、合う、合わないというのが変わってしまいます。

 

もちろん、

  • パッドの厚みによってシューズのサイズは左右されます
  • 成長期だったら足も成長し続けます
  • 足の筋力が育てば、足のサイズも変わります

という当たり前の事実も書いておきましょう。

 

こちらの研究では25人の日本人(!)、レッスン歴は6年以上のダンサーに「static balance(動かないポジション)」での研究で

足の指の長さによって、ポワント内での指の曲がりが違う、ということが書いてあります。

そりゃそーだ…

 

ただし文献ではエジプシャンタイプなどタイプ分けしているけど、このタイプっていうのは指の長さを指しているので、ここでは同義語として読みました。

やっぱり、自分の足を知って合わせなさい、というところに行きつきますね。

 

だから冒頭でも書いたダンサーの足セミナーでは

  • 解剖学的に足の構造を勉強
  • 自分の足のサイズや構造を客観的に研究
  • ポワントで踊れるだけの体の強さがあるか?をテスト
  • ポワントで踊るために必要な足強化エクササイズ

を勉強するんです。

 

だって、答えはその人の足にあるから。

トウパッドは踊りの癖を直してはくれない

ここで覚えておいてほしいことは、

トウパッドは踊りの癖を直してくれないってこと。

 

シンデレラシューズのようにポワントを探す人たちをポワント難民というようですが、

トウパッド探しでも同じような傾向があります。

 

運命的なポワントに出会えば、私の悩みはすべて解消する!みたいな。

 

確かに足に合わないポワントはケガの原因ですし、踊りやすさだって左右されますよね。

痛かったら、上手く立てないかもしれない。

 

だけど、トウパッドを変えたら

  • 足指を曲げないで踊ることが出来る
  • 強くポワントで立つ事が出来る
  • 痛みがゼロになる
  • ケガが全てなくなる
  • 強い足首、足裏を手に入れることが出来る

 

なんて思わないでくださいよ。

ただの梱包材なんだから。

 

ダンサーの足セミナーでもチェックするプレポワントテストのように自分にポワントで踊れるだけの強さがあるのか?を確認してください。

 

ポワントが早く履ける=上手な証拠

ではないんです。

 

同じく

  • 甲が高い=強い足でもない
  • シューズが早くつぶれる=強い足
  • 柔軟性が高い=早くポワントが履ける

ではございません。

 

指導者と保護者はしっかりと理解してくださいませ。

特に指導者、だって保護者に説明するのは先生なんですから。

だからバレエ学校で、選ばれえた子たちでさえ、普段のレッスンはポワントではしません!

 

  • ポワントに乗っかる
  • 体(関節)で衝撃を吸収できず、ガツガツ踊る

という人であれば、トウパッドの問題ではなくテクニックの問題です。

 

  • ポワントにしっかりと立てない
  • 足首がグラグラする
  • ポワントで立つと膝が曲がる

という問題はシューズの中の話ではありません。

(重心移動、足首、膝はシューズの外でしょ?)

 

本当にポワントで踊れるだけの

  • 筋力・筋持久力・コーディネーション
  • バレエテクニック
  • 年齢(骨が出来上がっていなかったら立てない!)

があるのかはしっかりと確認してください。

 

→国際ダンス医科学会のポワントガイド

トウパッドは洗ってくれ!

まとめに行く前に、この一言を今日は覚えて帰ってください。

 

トウパッドは洗ってくれ!

 

タイツ洗うでしょ?

靴下洗うでしょ?

トウパッドも洗ってくれよ!!

 

お医者さんによって監修されているこの記事を引用しますね。

In a pair of feet there are normally about 250,000 sweat glands which typically produce about half a pint of perspiration a day. Sweat glands are more concentrated on the feet than in any other part of the body.

25万の汗腺が両足にはあり、236.5ミリ、もしくは1カップ分の汗をかくって書いてあります。

 

  • 疲労骨折
  • 捻挫(靭帯損傷)
  • 肉離れ(筋挫傷)

など、ダンサーのケガは体の中で起こることが多いですが、外傷が頻繁に起こるのは足

 

ポワントは消耗品なのである程度使ったら捨てられるけれど、トウパッドは使いまわす人が多いでしょ?

お願いですから清潔にしておいてくださいね。

まとめ:トウパッドの選び方

  • この素材、この形が一番!というエビデンスはない
  • 自分の足とポワントシューズに合わせて選ぶべき
  • パッドも大切だけど、ポワント踊れるだけの強さがあるか?のほうがもっと大事

 

そして

  • トウパッドは洗ってね!

 

もっと勉強したい人はダンサーの足セミナーをどうぞ。

ポワントを指導している教師が、生徒のポワントが合っているかを確認するための知識を勉強する「教師のためのポワント選びセミナー」もあります。

 

Happy Dancing!

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