手術が終わって、麻酔から覚めたとき泣いたんだよね。これで痛みとサヨナラできるんだって思って…
ー 股関節手術をしたダンサー
残念ながらダンサー用のリハビリをせず、術後1か月で舞台に復帰したため、1年半痛みが引かず、100%踊ることができなかった。
術後1か月で昔みたいに踊れるようになる、って言われたけど、まだパンパンに腫れていて、歩くこともできないんだけどどうしたらいい?
ー三角骨除去手術をしたダンサー
送られてきたメールと写真を見て、急遽メルボルンに戻って来い、と連絡。その後、手術失敗だったことが分かり、再手術になった。
今まで手術前のダンサーより、手術後のダンサーに会う機会の方が多かったです。
そして手術前より、手術後の方が長く、大変な道のりだというのも彼らを見て知っているつもりでした。
「つもり」。
実際に自分が手術を体験して、リハビリを経験した中で、彼らの気持ちがもっと分かった気がします。
私は時間制限のある中で、プロダンサーになるレベルに復帰を目指しているわけでもなければ、周りから、いつ戻れるの?と言われたり、親から、バレエをやめたら?と言われるわけでもない。
ある程度大人で、手術についてリハビリや治療、治癒期間の変動について知識がある私だから、
あーーーー今日はダメだ!って一日中ソファーでYouTubeを見ていることもできました。
明日はよくなるだろう、って。
でも、彼女たちはどんな気持ちだっただろう…
ここでは手術後のダンサーが知っておきたいことをまとめました。
必要な人に届きますように。
better than beforeを目指す
リピート アフター ミー!
「手術したからって元の自分になるわけじゃない」
元の自分に戻ったらまたケガするでしょ。
つまり、今までの自分に戻ること、全く同じように踊ること、がリハビリの最終目的ではない、としっかり頭に入れておいて。
- 昔に戻る、はゴールではない
- 前と違って当たり前
簡単なステップができない自分、今までは簡単にこなしていたアンシェヌマンができないときは
これを毎回、お経のように繰り返しつぶやいてください。
私が無意識に寝返りが打てるようになるまでに10日かかりました。
うつ伏せで寝転がるまでに3週間弱かかりました。
3週間たっても、鼻をかむのは怖かったです。
もちろん、ダンサーの手術で、私みたいに内臓系をやることはほとんどないけれど、
普通にできていたことができるようになるまで、かなり時間がかかる、という説明になったかな?
だから焦らないで。
なんで元に戻れないの!?って悲しくならないで。
- better than before
- 前よりも良くなる
をゴールに、昨日よりは、3日前よりは、1週間前よりは良くなっている自分がいることを忘れないでくださいね。
病院のリハビリは日常生活最低限レベル
病院で理学療法士さんがついて、リハビリをしてくれることもあります。
そして、その理学療法士さんの中にはバレエ、スポーツに興味があって、色々と理解してくれる人がいることも事実ですし、
そういう人がDLSのダンサーを診る治療家・トレーナープログラムに参加してくれています。
だけどね、病院で、特に保険が利くエリアでできるリハビリは、
ダンサーの舞台復帰、レッスン復帰の内容ではなく、日常生活最低限レベルだということを覚えておきましょう。
- 会社に通える
- 学校に行ける
というレベルであり
- 社会人マラソンに出る
- 部活の大会に出る
とかのレベルではありません。
ということは、ポワントで踊るレベルまでリハビリしてくれるわけではありません。
だから、術前のリサーチ期間に、そういったエリアをカバーしてくれる人を探して、何度かトレーニングを受けておく、っていうのを書きました。
だけど、担当の人からリハビリ終わりました、もう大丈夫ですよ、と言われたら心がウキウキしちゃいますよね。
健康な人でも、初めてバレエレッスンを受けて、全部できるわけがないじゃない?
いくら運動が得意な人でも、ターンアウトはしないし、つま先立ちしないし、足を蹴り上げたり、飛びながら回ったりしないわけよ。
変な人じゃない限り。
バレエという運動に戻るためには、普通の人以上のリハビリが必要だ、という知識をなくさないでください。
- バレエの動きに特化したトレーニング
- バレエレッスンの長さや運動量に合わせたエクササイズ
- バレエテクニックを身につけるためのコーチング
これらは、普通のリハビリが終わっても続けなければいけません。
そしてこれらが終わらないとレッスンへの完全復帰は不可能です。
ただ、これらが終わったら、前よりも上達した、心も体も強くなった自分とスタジオの鏡の中でご対面することになるでしょう。
お前、ちょっとそこで待ってろよ!
と啖呵を切ってトレーニングに励んでください。
→理学療法士って何をするの?という話を聞いた#愛さんとティータイム動画はこちら
動かないから太っちゃうという考えは捨てる
私が6か月にわたって踊れなかったとき、校長先生が
「今が痩せるチャンスじゃない!動く必要がないから、そんなに食べなくても大丈夫」
とおっしゃっておりました…
DLSフォロワーさんだったら、私がどれだけ彼女のことを信頼し、メンターと考えているかを知っていると思いますが、
15年前の彼女はダイエットについて、かなーり違う考え方をしていました(今はだいぶ良くなっていますが…)。
でもね、18、19歳の日本から留学したて!な愛ちゃんではなく、30歳超えた赤髪応援団、DLSの佐藤愛は知っています。
ケガの修復にはエネルギーが要ることを。
今の私なら、あったり前だろ!フザけているのか?と言いますが、
当時の愛ちゃんは、あーそうか!レタスとモヤシで生活できるのか!と思っていましたよ。
筋肉も、骨も、皮膚も、脳みそも。
人間の組織というのはエネルギー(カロリー、栄養素、どんな呼び方でもOK)が必要で、
ケガした場合、特に普通の「維持しますよモード」よりも多くのエネルギーが必要になる「修復しまっせモード」のスイッチが入らなければいけません。
じゃないと、ケガが長引きます。
ダンサーにとって、それが一番最悪なケースです。
特に手術すると、外側の傷は早く癒えるので、中も治った気持ちになっちゃいます。
でもさ、冷静になって考えてみようか?皮膚「だけ」切ったら手術とは言わないのだよ。
筋膜、筋肉、血管…
ケガの場所や手術の内容によっては、靭帯、腱、骨。そういうものをカットし、つなぎ合わせているわけじゃない。
もちろん、感情に任せてジャンクフードを気持ち悪くなるまで食べろ!と言っているわけでもなければ、
お腹すいていないのに「栄養素」だけ見てプロテインシェイクをがぶ飲みしろ、と言っているわけでもないです。
でもね、動かないから太っちゃう、という考え方はやめましょうよ。
あなたの体は、見えないところで頑張って働いてくれているんだから!
再発についてしっかりと考える
バレエのケガの場合、使い方が問題で起きたケガならば、それを変えなければ再発します。
弱さが原因の場合、トレーニングをさぼったら再発します。
足首後方インピンジメントのように、挟まる系のケガの場合、
手術して挟まっているものを削除したとしても、手術「から」できる瘢痕(はんこん)組織が挟まる、ということもあります。
股関節の手術の場合、手術をすればするほど、股関節唇でできるネガティブプレッシャーが甘くなり、関節の安定力が落ちますし、
人工股関節の場合、10年に一度は入れ変えなければいけません。
私の病気のように、手術=完治ではなく、治らないものもありますし、
最初に例に出した子のように、時間が経ってから手術失敗に気づくということもあります。
だからね、今のうちに再発する可能性、リスクをしっかりと考えておきましょう。
- 再発の条件は?(テクニック・使い方・日常生活で気を付けることは?)
- 手術以外にできることは?(定期的な検査・トレーニング・テーピングなどの補助)
- 栄養、睡眠などレッスンの外でできることは?
- レッスンで気をつける動き、後回しにしたいアンシェヌマンは?
私の仕事のモットーに prepare for the worst, hope for the best という言葉があります。
最悪のケースを想定し、一番いいケースを願うという意味なんだけど、
最悪のケースの準備ができていたら、ちょっとやそっと上手くいかなくても物怖じしません。
長い記事になってしまいましたし、一般受けしない内容ですけど、
今悩んでいる子、生徒が心配な先生の手元にこの記事が届きますように。
そして、まだDLSを知らなかったら、無料ですから是非色々読んで勉強してください。
最後まで読んだけど、今は別にケガしていないし、という人は是非SNSでシェアしてください。
一番最初に挙げた股関節の子のように、手術に全部を賭けている子がたくさんいます。
そのような子達に情報が伝わったら嬉しいです。
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いつも応援ありがとうございます。
Happy Dancing!