*このブログは2013年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。
バランスをとったり、ターンをしたりする際にとっても大事な事、それは「軸をとる」こと。
軸をとるってバレエだけの特有な言い回しなのか私にはわかりませんが、軸になるところは名前の通り軸足と、背骨、つまり胴体のセンター(中心)になるところです。
レッスン中に聞く「引き上げなさい」という注意もあいまいな言葉ではありますが、大体は背骨を引き延ばす、という事を指していると思われます。
(思われます、って書いた理由は先生によって意図する事が違うから。)
バレエダンサーならだれでも知っているワガノワバメソッドで有名なアグリッピナ・ワガノワは
バランスの源は、背骨にあります
といったそうです。
でも、背骨っていったいなんでしょう?
みんな、解剖学を勉強していなくたって背骨がどこにあるのか知っていると思います。
背中を丸めたら出っ張るし、指でもごつごつした部分をかんじることができるでしょう?
コンテのフロアワークをしていたら床にぶつかるからよく分かる、 っていう人もいるかもしれないね。
(そうそう、コンテのテクニックが強ければ床に体がゴツ!とぶつかる事はないんですって。ま、それはまたほかの機会にお話しましょう。)
でも、脊柱はいくつの骨からできているでしょうか?と聞かれると分からないし、首はなんとなくわかるけど、どこからが腰?と思ったりすることはありませんか?
バランスの源である背骨を頭の中で漠然と…何となく…ではなく精密に頭の中で思い描くことが出来たら、
バランス系のテクニックを含むダンスステップのすべて、軸や強い体幹が必要なテクニック全てを向上することが出来るはずだよね。
背骨の個体の形を研究
背骨っていうのはたくさんの骨が集まって出来ています。
個体、つまり背骨という骨のカタマリを作っている積み木はこんな形をしています。
背骨の場所によってサイズがちょっと違うんだけど、だいたい
- 椎体(ついたい・body)というボディになる部分
- 横突起(おうとっき・transverse process)というクリオネの手が2つ
- 棘突起(きょくとっき・spinous process)というクリオネのしっぽ
があります。
「だいたい」って書いた理由は、背骨の一番上の2つと、一番下(と言うべき?)仙骨&尾骨は違う形をしているから。
背骨のトップ2つはこちらの記事で、仙骨&尾骨については骨盤の記事で説明しているので今日は飛ばしていきますね。
棘突起と背骨のイメージ
棘突起は椎体、つまり背骨のボディではございません。
ただ、体の中から背中の皮膚の方に出っ張っているので、目でも見えるし、手でも触れる。
背骨って文字通り「手で触れるような背中にあるんだ」と思っていると、大切なイメージトレーニング、脳で体の動きを考える、感じるっていうのが上手くいかない時があるの。
「引き上げる」時に伸ばしているのは、背骨のボディである椎体。
もちろん、棘突起は椎体にくっついているから、一緒に伸ばされますよ。
だけど、ここで意識したい骨はもっと体の中心に近い=センターに近いところ。
これを理解していないと、引き上げるときに
- 体を反ってしまう
- 重心が後ろに落ちてしまう
- 肋骨が開いてしまう
- 引き上げたままで動けない(力んでしまう、動き出すと引き上げをキープ出来ないetc)
なんてことになっちゃうんですね。
次のレッスンでは棘突起の方ではなく、椎体をイメージして背骨を感じてみてください。
神経を守って安全に踊ろう
椎体と棘突起との間に、椎孔(ついこう・vertebral canal)という丸く穴が開いていて、そこに神経が通っています。
だから、背骨の大切な仕事の一つに、脳からの指令を伝える神経を守る、というのがあるんですね。
カンブレやアラベスクなど反る動きで引き上げなさいとか、背骨を伸ばして、なんて言われる理由は神経を潰さないという事や、
背骨のボディとボディの間に入っているクッション、椎間板を潰さないように守るためにやっているのね。
もちろん、反対の動き(ここでは反る⇔引き上げる)を考えることで筋肉の主導筋と拮抗筋のバランスも考えているとか、バランスをとるために安定筋が働きやすくなるとか色々とメリットはあるんだけど、
その話をすると難しいので今日は割愛。
エビぞり!とか前後開脚で後ろの足を持つ!!
とか意味の分からないストレッチをやっている人達、一度立ち止まって貴方の背骨と神経を守っているのかを考えてくださいませ。
(その動き、バレエであるか?というそもそも論もあるけどね…)
背骨の全体像を観察
ミクロの部分の勉強が終わったから、次はマクロ、全体像を見ていきましょうか。
背骨は首、胸、腰でエリアに分かれていてそれぞれ名前がついています。
- 首の部分、頸椎(cervical vertabrae←複数形ね)は7個
- 肋骨の後ろ、胸椎(thracic vertabrae)は12個
- 腰の部分、腰椎(lumber bertabrae)は5個
その下に仙骨(scrum)と尾骨(coccyx)があります。
この子たちをいくつと数えるか?は人によるんで笑 背骨全体の数はその人によって違う言い方をします。
私には仙骨1に尾骨1に見えるんだけど(というか尾骨は仙骨にくっついてない?みたいな)
仙骨を3とか5とかいう人もいるし(3から5つの椎骨がくっついて出来たという事らしい)尻尾は複数と数える人もいるらしい。
ダンサーだったら、首7、胸12、腰5、その下骨盤、と覚えておけばいいでしょうね。
それぞれのエリアには癖?というか性格があり、そっちは踊りに影響するので、こちらの記事で説明しました。
今日の勉強の続きとして読んでみてね。
上から下まで見ていると、脊柱の大きさが変わっているのが見えますか?
下に行けば行くほど、上に乗っかっているモノの重さが増すので、大きなサポートが必要=大きな骨が必要なんだよね。
後ろから背骨を見ると真っすぐに見えるけれど、横から背骨を見るとカーブがあるのが分かりますよね。
これね、背骨が曲がってるからまっすぐにしなきゃ!ではなくって、背骨に必要な構造なんです。
背骨のカーブ
首、胸、腰でエリアが分かれているよ、とさっきお話したけれど、そのエリアによってカーブの方向が違うのがイラストで分かるかしら?
- 頸椎=前弯
- 胸椎=後弯
- 腰椎は前弯
- 仙骨+尾骨の形がすでに後弯のように丸くなっている
背骨のカーブはジャンプの時などに、とても大事な衝撃吸収になってくれます。
ただし、背骨のカーブが大きすぎると、カーブの方向が変わる場所の負担が大きくなり怪我しやすくなる。
レッスン中に「背骨をまっすぐにしなさい!」という注意を言われたときは、後ろから見たときに背骨がまっすぐになる事を指しています。
でも、衝撃吸収をしてくれる背骨のカーブを消してくれ!まっ平にしろ!!という注意ではございません。
また、「引き上げて」と言われたときは、背骨カーブを上下に引き伸ばすイメージを持ってあげて。
- 力づくに真っすぐ!でもなければ
- 脱力してていいよーでもない
上と下、背骨の一番上と一番下を遠くに引き伸ばすことで、カーブを緩やかに保ってみてください。
だから、バレエレッスンで床を押して(下に向かうエネルギー)とか、引き上げて(上に上がるエネルギー)について注意されるんでしょうね。
目で見えるカーブに惑わされないで
骨のカーブと目で見える体のカーブは違います。
そりゃそーだ、だって皆筋肉や皮膚、脂肪っていうものがついているんだからね。
おしりの筋肉の1つ、大臀筋。
この子はアラベスクで足も上げてくれるし、デリエールポジションでターンアウトもサポートしてくれるし、ジャンプの着地を安全にしてくれるために大活躍なんだけど、
この子のサイズによっては腰のカーブが大きく見えることもあります。
じゃ、痩せればいいのね!ではないよ。
背骨のカーブは名前通り、骨の話をしているので、筋肉や脂肪などに惑わされるなよ?
- 指導者ならば骨と筋肉や脂肪の違いを見抜く目が必要
- ダンサーだったら鏡で見た自分の体と体の中で起こっている事を理解すること
覚えておいてくださいね。
背骨カーブは骨格である
筋肉のサイズだけでなく、骨の形で背骨カーブが大きめな人と少なめな人がいます。
- 身長
- 鼻の高さ
- 頬骨の高さ
- 肩幅や指の長さ
にみんな違いがあって、いい悪いがないように、背骨カーブも骨の形に影響されていいんです。
大きいから悪いとか、平らだから怪我をする、という事ではないけれど、
- 私は身長が高いからプチアレグロの練習が必要
- 私は身長が低いから大きく踊るために体力が必要
みたいな感じで
- 私は背骨カーブが大きめだから背骨を上下に引っ張る感覚をより強く持つ
- 私は背骨カーブが平らだから、背骨を柔らかくする動きをトレーニングに入れてジャンプの着地などに備える
とかさ。
- 自分を知る≠自分のダメなところを見つけて凹む
- 自分を知る=体や個性に合わせて、どういう方向に努力するのか?が分かる
というのをお忘れなく。
先ほど、引き上げ(カーブを減らす方法)では、背骨カーブを上下に引き伸ばすイメージを持ってあげて、と説明したけれど、
その逆で、背中がまっ平らなフラットバックなダンサーはどうしたらいいかって?
それは別途記事で説明+エクササイズリストも作っておいたのでそちらをどうぞ。
まとめ:背骨についてダンサーが知っておきたい事
- 背骨とはいくつもの骨が集まって出来ている部分で、神経を守るという大切な仕事がある
- 背骨カーブは衝撃吸収のためにとても大事!カーブには個人差があって当たり前。
- 解剖学の知識の中には正しく安全に踊るためのヒントが沢山あります。ストレッチやエクササイズ、レッスンの時に構造を考えてみてね。
背骨の引き上げについて今回学んだことは
- 引き上げる事で椎間板や神経への圧迫を減らすことが出来ます。
- 引き上げるとはまっ平らにするのがゴールではない。緩やかに上下に伸ばす事を考えて。
もっと正しい姿勢について学びたい人、エクササイズまで知りたい人は「バレエの立ち方できてますか?」を読んでね。
背骨の癖を理解して踊りに使うためにはこっちの記事を、ビデオシリーズでバレエ解剖学を一緒に学びたい人はYouTubeのDLSチャンネルからどうぞ。
骨だけでなく、筋肉についても深く勉強してやるぜ!というダンサーはオンライン学校の解剖学、指導者だったら教師のためのバレエ解剖学講座をチェックしてください。
Happy Dancing!