*この記事は2014年8月に書かれたものを、2021年により分かりやすくなるように編集しました。
サイトのお問い合わせフォームより質問メールが来たのですが、いくら返信してもエラーになってしまうので、こちらに(勝手に)載せてしまいます。
もしこの記事を読んでいる、海外にバレエ留学したい(バレエ団オーディションをしたい)と思っている子たちがいたら、
もしくはそういう子たちを育てている先生がいたら覚えておいてください。
- 日本の携帯キャリアメールは海外ではアドレスが存在しない(エラーになる)事があります。
- 資料が添付されたり、URLがついている場合、受信設定を見直さないとメールが届かない事があります。
このエリアはこちらの記事に既にまとめてありますが、せっかく努力してオーディションしたり、バレエ留学の許可が出たのに
メールが届かないという問題が起きたら悲しいじゃないですか。
貴方から返事が来なかったら「あ、この子は興味がないんだ」と思われてしまうし、書類提出の締め切り日を過ぎてしまったら終わりですよ。
気をつけてくださいね。
正座の話からずれた!
まずは頂いた質問を読みましょう。
はじめまして。
いつも、小学4年生の娘のことで、勉強させていただいてます。娘はバレエを始めて三年になります。
トゥシューズ、体のゆがみのことなど気になっていたので、とてもためになるお話をいつも真剣に読ませていただいています。
バ レリーナにとって正座はよくないと聞きますが、どうして良くないのでしょうか?解剖的にはどうなのですか?
また、あぐらは?我が家では座卓で食事をしてい ます。
補助椅子を使い、背筋をのばして座ったり、足をのばして座ったり、脚や膝に負担がかからないようにと気をつけていますが、やめたほうがいいのでしょうか?
娘はとてもやせているので膝や肘がとても目立ちます。
素人の質問ですみません。よろしくお願いします。
正座を解剖学的に見てみよう
正座とは解剖学的に何か?
上半身(骨盤から上)は椅子に座っていても、立っていても、正座でも同じ形をしていますよね?
じゃ下半身はどうか?
- 股関節は受動的屈曲(90度辺り)
- 膝関節は受動的屈曲(最大屈曲角度・但し太ももとふくらはぎの筋肉サイズによって変化する)
- 足関節は受動的底屈(最大底屈角度)+殆どの人が足首の内転もあるでしょうね。
となりますね。
解剖学用語を使わずに説明すると
- 股関節は椅子に座っている時と同じように曲がっている
- 膝は完全に曲がっている
- 足首はポワントの方向に伸びていて、殆どの人が内また(かま足)の方向に曲がっている
ということ。
膝関節は自分で動かした場合(能動的可動域)は、130度前後なので正座の方向まで曲がりませんが、
正座しているときは「折りたたむ」形になるため(受動的可動域)、可動域が広くなります。
だから床でストレッチ(受動的可動域)しても、アダージオ(能動的可動域)で使えないんですね。
よって
- 膝関節に問題がない人
- 足首に問題がない人
が食事程度の時間で正座していても解剖学的に問題はありません。
膝のケガ、足首のケガをしている人達であれば、
その部分の可動域が大きく使っている
+
その関節で体重を支える事になる
形で座るため、避けた方がいいかもしれませんよね?
解剖学の世界だけで言うと、正座の方が
- かかとをヨガブロックの上に置いて、膝を伸ばすストレッチ(膝関節の受動的伸展でも、その角度に曲がるように関節は出来ていない)
- 前の足を椅子にのせて行う前後開脚(股関節屈曲、伸展共に最大可動域を超えている+その姿勢で体重を支えるようには出来ていない構造)
よりはぜーんぜんマシです。
正座を気にするくらいなら、そっちを気にしてくださいませ。
噂話に流されないために自分に聞ける2つの質問
でも聞きますよね
- 正座は足を太くする
- 正座は膝を出っ張らせる
その噂話は本当なのか?
全ての噂話で一番最初にやりたいのは、
- 誰が言っているのか?
- 誰に対して言っているのか?
の2つを確認することです。
- 専門家が研究を発表しているときに口にしたのか?
- シロウトが自分の意見をあくまでも真実のように語っているのか?
特にSNSではインフルエンサーが言っている意見というのがありますね。
フォロアー数が多くて、テレビでも取り上げられるみたいな人達。
でもインフルエンサーになるには資格は要りません。
悪い人達じゃないでしょうけど、
お医者さんが薬を間違えて処方したから裁判沙汰、は新聞の見出しで見るかもしれないけど
インフルエンサーの言っていたことをSNSで見てケガしたから裁判沙汰に、ってならないでしょ。
そしてもう一つ、たとえ専門家が言っていたとしても、
「誰に対して言っているのか?」
を確認しなけれればいけません。
がん患者さんに対し、放射線治療は有効かもしれません。
でも病気のない中学生に必要でしょうか?(予防のために、って使わないでしょ?)
「誰に対して」の部分はダンサーにとって非常に大事な情報になります。
- 運動不足の会社勤め、一日6時間パソコンの前にいる人用ストレッチ
- アスリートレベルで体を酷使するトレーニングを行っている成長期のダンサー
では行う事、考える事が違うのです。
過去に福岡でセミナーをした時(Safe Dance!セミナーの第一回目)に、ちょうど離乳食年齢の赤ちゃんがいるバレエの先生がいたの。
なので、10歳から14,5歳?の生徒達に
OO先生の赤ちゃんは離乳食を食べるだろうけど、皆さんも離乳食食べる?
って聞きました。
答えはNO。
皆はもう中学生だけど、3歳の子は食べると思う?赤ちゃんと3歳の子、年齢は2-3歳しか離れていないよ?
と聞きました。
答えはNO。
- 誰が言っているのか?
- 誰に対して言っているのか?
正座が解剖学的にどうなっているのか?分からなくても上の2つは分かると思うので頭の中にチェックリストとして置いておいてくださいね。
正座で膝が伸びなくなる可能性は?
正座を長時間行っている場合(お坊さんみたいな職業?)で、膝を伸ばす運動を行っていない場合、
日常生活で使われる関節可動域に偏りが起こるため、膝が伸びないと感じるかもしれません。
さっき挙げたように、会社勤め、パソコンの前に6時間いる人を例にとりましょう。
この人はたぶん、猫背になりやすいですよね。
- 日常生活で背中を丸める動きが多い
- 背中を伸ばす筋肉を鍛えていない
から、背中が丸くなってしまうでしょう。
でもそれは、
- 会社に足を踏み入れたら、自動的に背中が丸くなる
- パソコンには副作用があって、皆猫背になっていく
ではありません。
正しい姿勢で座る意識と、環境を整えたら、猫背防止が出来ますよね?
そして、週に1-2回背中を鍛えるエクササイズ(やバレエ!)を習ったり、休憩時間に意識的に歩く、なんて事をしたら
会社猫の撲滅は出来るでしょう。
→猫背について、効果的なエクササイズやストレッチ、そして環境を整える方法は「バレエの立ち方できてますか?」でカバーしています。
膝が出っ張って見えるというのは?
質問の最後の方にあった、
- 膝が出っ張って見える
というのと
- 膝関節が伸びない
は2つ別の問題です。
膝が出っ張って見える人はいます。
- 太もも周りの筋肉が少ない
- 膝のお皿が大きい
この2つは年齢の若いダンサー達に良く見られます。
骨も筋肉も成長すれば、そして正しいレッスンを適度に行っていたらこの問題は時間が解決してくれます。
食事、睡眠、運動量。
この3つがそろっていれば、の話ですけどね。
メールのお子さんは小学4年生。
ダンサーになりたい!という夢があるから、膝が曲がって見える足にコンプレックスがあります…という場合だったとしても、
- 今の年齢で出場したコンクール歴は将来バレエ学校やバレエ団オーディションで必要とされない
- 今の年齢で長期留学は不可能
という2点から焦る必要はありません。
もちろん、この年齢でポワントも履きません!
まとめ:正座はダンサーの膝を出っ張らせるのか?
短い答えはNO。
- 解剖学的に不可能な動きは行っていない
- 膝と足首のケガがある場合は避けよう
- 噂話に流されないように自分で考える力を育てる
- 膝が伸びない、と悩んでいるのであれば、膝を伸ばす筋肉を育てているか?考えてみよう
おまけとして
もし正座する機会があったら、足首内転(かま足)にならないように気をつける
くらいかしら?
Happy Dancing!