脊柱側弯症シリーズの締めくくりは、このシリーズ中モデルを引き受けてくれたミーコ、ことみきさんのインタビューです。
側弯症、という壁を乗り越えて海外留学した彼女の生活を垣間見る事が出来ると思います。
ちょっと長いですが楽しんでくださいね。
自己紹介とバレエ歴を教えてください。
池田光希(21)、7歳からバレエを習い始め、現在オーストラリアのメルボルンにあるAustralian Conservatoire of Balletというバレエ学校に約2年間留学しています。
いつ側弯症だと知りましたか?
最初に病院で検査をしたときには54度も私の背骨は曲がっていて、これからも進行していくであろうと言われたので、少しでも進行を抑えるため約5年間毎日コルセットを身に着け生活していました。
(踊る時と学校の体育の授業以外は、寝る時もずっとコルセットを付けていました)
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手術をする、という案も出ていたのですよね?どんな手術を提案されましたか?またダンサーとしての影響はどんなものなのでしょうか?
私の担当のドクターが提案したのは、背骨のうちのいくつかの骨(ひどく側弯が表れている部分)を金属のネジのようなもので固定してしまうというものでした。
しかし、この手術をすると、その固定された部分の背骨は全く屈折できなくなるので、バレエを踊り続けるというのはとても難しいと思います。
オーストラリアに来て、定期的なマッサージやエクササイズを始めてからは、今までは酷くなる、と言われていた側弯も、21歳にして54度から47度まで良くなりました。
改善がレントゲンで見られるようになってからの日本のお医者さんの反応や、ご両親の反応も教えてくれますか?
改善がレントゲンで見られるようになってからのお医者さんの反応はというと、
「レントゲンを見る限りそこまで大きな違いはありませんね。角度はよくなっていますがこれからはまた進行していくかもしれません。」
などというネガティブな言葉でした。
私が思うにお医者さんは早く手術をして診察を終えたかったのかも?
でも実際にレントゲンを見ても実際の体を見ても、自分の感じ方も、よくなったのは分かりました。
なのでまだよくなるかも、踊り続けられるかもしれないという希望を持って手術はしませんでした。
両親は常に私を全力でサポートしてくれ、角度が良くなる度にとても喜んでくれています。
ここまで頑張ってトレーニングやダンスを続けてこれているのは、両親の大きな支えがあったからだと思っています。
日常生活、ダンスにどのように影響しますか?
現在は日によって曲がりの感じ方が違い、私生活で支障が出るようなことはありませんが、
曲がりがひどいと感じる日は背中や肩の筋肉の凝り、床がまっすぐに感じられなかったりすることがあります。
ダンスをしていて問題だと感じることは、側弯で体や筋肉の使い方が左右対称ではないため、どうしても足をあげた時に高さが同じところまで上げられないなど、
右と左のエクササイズ(ムーブメント)で違いを感じてしまうことがあるという事です。
今まで試してみた治療法、何が一番効果的でしたか?
日本にいた間はカイロプラクティックが最も効果的で、週1回の施術で、痛みや凝り、外見的な姿勢の問題に対応してきました。
ただ施術を受けると一時的に歪みが戻るけれど、すぐに戻ってしまうという、受け身的な方法でした。
オーストラリアに来て愛さんと出会ってから定期的なマッサージに加え、ピラティスやフィットネスなど、
マッサージで筋肉をほぐすだけではなく、自分の体の状態を十分に知って、体の中から鍛えることで、自分の体を自分で支える力が備わったと思います。
自分の体の特徴を知って、どこをどのようにトレーニングすれば、より良い状態をキープできるのかを、今は理解できています。
最初にエクササイズ、マッサージを始めた時に驚きや不安はありましたか?また、写真で背中の状態をモニターしてきましたが、踊りに影響が見え始めたのはいつからでしょう?
最初にエクササイズを始めた時は、自分で思っていた正しいポジションと本当の正しいポジションとの大きな違いに驚きました。(自分が思っていた体の中心はとてもずれていました)
しかし、本当に側弯を治したかったし、愛さんを信頼していたので全く不安はなくエクササイズをしてきました。
常にエクササイズをするごとに感覚は変化していきますが、特に自分の体をコントロールしやすくなり踊りやすいと感じられ始めたのは、エクササイズを始めて2年目に突入し始めた頃からだと思います。
初帰国後、良くなったのをレントゲンで見るまでは、症状が改善する、と知っていましたか?また、気持ちの変化的には日本に居た時とちがいますか?
自分の筋力が強くなったことや、自分の体を前より知れていたのには気づいていましたが、症状がそこまで大きく改善するとは思っていませんでした。
日本にいた時はマッサージやピラティス体験など自分の体のための特別なエクササイズなどはしていなかったので、
留学を始めてから愛さんや先生方がしっかり私と一緒に私の体を細かく見て指導してくださっているおかげで、気持ち的にも前向きになることができました。
以前は周りの生徒や友達と自分を比べてしまい、自分の体が曲がっているということだけでとてもネガティブになり悲しんでばかりいたので。
こちらの先生達がしてくれている注意で役に立つもの、そして日本のレッスン時と違うアプローチが助けになったかどうか、教えてください。
先生方は常に私の立ち方(骨盤、ウエスト、肩の位置や足の開きや立ち方が左右対称か、ねじれていないか)を教えてくださります。
自分で見て感じる真っ直ぐと、ほかの人が見る私の体の本当の真っ直ぐには違いがあるので、それらの注意はとても役に立っています。
日本のレッスンでは、柔軟も自主的にする程度でした。
ましてや、バレエに必要な筋トレなど皆無。
(でも、最近はいろいろな情報も入ってくるし、少しずつ変わってきています。特にピラティスのように、体幹を鍛えるトレーニングを取り入れているところが増えています。)
なので、今私が色々なエクササイズをしていて強く思うことは、自分の体を正しい場所で保つためには、マッサージなどのメンテナンスももちろん大切ですが、自分の筋力で自分を保って入れることがいかに大切かということです。
日ごろからそのためのエクササイズをすることの大切さを学びました。
毎日実践しているテクニックは何ですか?
毎朝クラスが始まる前にセルフマッサージで背中の凝りをほぐしたり、
自分の体の中心を意識しながらの腹筋や背筋のエクササイズを行うことや、クラス後の緊張した筋肉をほぐしてあげること、
普段立っているときや座っているときなど、ふとした瞬間に両足平等なバランスで立っているかなどを確認したりしています。
側弯症の人にアドバイスをお願いします。
ポジティブ思考と感謝の気持ちがあなたを助けてくれると思います。
絶対に今より真っ直ぐによくするんだ!と思い続け、
そう思えないときはふっと一息心の休憩をしてまたエクササイズに取り組むといいと思います。
自分の体は自分の心についてきてくれます。
側弯症の生徒を持つ先生へのアドバイスをお願いします
側弯症の生徒は周りの背骨がまっすぐな生徒とつい自分を比べてしまいがちだと思います。
体の左右のバランスやねじれを気にしながらも、前向きに指導してあげてください。
ダンサーとして、とくに側弯症や、O脚などの症状がある体を持っていた時に、自分の体を知る、という事の大切さについて教えてください。
自分の体のどこかが正常でなければ、動きや、見た目の姿に違和感を感じます。
そして、正しく均等に力がかからないので、疲労が蓄積したり、ケガにもつながります。
なので、自分の体の状態を良く知って、よりベストな状態に近づけることが必要です。
自分の体を知ることで自分を安全で健康に保ちやすくなると思います。
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みーこさん、ありがとうございました!
側弯症シリーズ、最初の記事はこちらから!
左右のバランスを整えるエクササイズはこちらでご紹介しています。
Happy Dancing!