*このブログは2014年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。
今日は題名通り、バレエを初めて1-2か月以上経っている人であれば(多分)今さら聞けないプリエについてお話していきましょう。
プリエを知らないバレエ教師はいませんね。
プリエの意味知らないバレエ教師がいたらどうしましょうか。
うーん、可哀そうだからそうっとしておいてあげてくださいませ(そして新しいスタジオを探したらいいかも…)
バレエのステップ(パ)の意味を知ることは解剖学的にも、視覚的にも、感覚的にも素敵な事です。
なぜか?
それはステップに求められる動きをイメージしやすくしてくれたり、
舞台上でどのように動くと、視覚的に「正しく」見えるか?を教えてくれたり、
解剖学的にどこを使う(もしくは使わない)とその形になりやすいのか?のヒントをくれたりするから。
ということで、プリエについて一緒に復習していきましょう。
プリエという言葉の意味と種類
プリエ(plié)の意味は「曲げる(to bend)」「折りたたむ」だそうです。
「押し込む」でも「下がる」でもなく「曲げる」。
- 体の中で曲がる部分は関節なので、どこが曲がり、どこが曲がらないか?を理解するのがカギらしい
- スピードについての記載はないので、早くてもゆっくりでもできるっぽい
- 大きさについての記載はグランプリエの場合があるので、サイズは大事になってくるらしい
ほらね、言葉だけでかなりヒントが出てきますよね。
ちなみに私の中での理解では、オン フォンジュ(en fondu)=片足プリエなので、プリエと言った場合は
- 両足を使う
- 両足に均等に体重がかかる
- 両足が一緒に曲げ伸ばしされる
んだろうな、と推測できますが、皆さんはいかがでしょうか?
両足で行うものだと仮定したとしても、
- 1番ポジション
- 2番ポジション
- 3番ポジション
- 4番ポジション
- 5番ポジション
- 6番ポジション
で行う事ができるほか、ポジションからポジションの移動で両足が地面につく場合(移動の時は多分両足を使うだろうからねぇ)、
パとパの間で使われることもできるだろうと分かるね。
クラシックの場合だったら、2番と4番は体重移動で使われるポジションだから
プリエの練習をする場合は
- 全てのポジションで使えるように練習する
- 2番と4番は重心移動のステップでも練習する
なんてレッスンプランも考え付きます。
プリエで動く関節VS動かない関節
プリエ使えてますか?という本を1冊書いている人間としては、プリエについて語りたい部分は140ページを超えて1冊にまとめてあるので、
もっと深い勉強はそちらの本でどうぞ。
ただ、今日確認しておきたい事として、動く関節と動かない関節を復習しておこうか。
プリエで動く関節
- 足関節(とfoot内の小さな関節達)
- 膝関節
- 股関節
プリエで動かない関節
- 骨盤から上の全ての関節
もちろん、ここでポーデブラを使う場合、エポールマンをつける場合、骨盤から上、つまり上半身を使いますよ。
でもそれは「プリエ」ではない。
プリエ+αの部分です。
この区別が出来ていないと、
腕の5番ポジション、足の5番ポジション、カンブレデリエール
という良く見られる動きで、
- 腕が体のセンターからズレていく(ポーデブラの理解・練習不足)
- 5番のクロスが甘くなる(足のポジションのの理解・練習不足)
- 骨盤を前に押し出したり、腰椎から動きが始まってしまう(カンブレデリエールの理解・練習不足)
という問題が生まれてしまうわけ。
たとえ難易度がすごく高い、プリンシパルが踊るバリエーションでも、
細かく分析していくとシンプルでバーレッスンで練習するステップが積み木のように重なって出来ているわけさ。
話をプリエに戻しましょう。
プリエの意味が分かり、どこを動かすのか?が分かったら実際にプリエをしてみてください。
- 股関節、膝、足のエリアを感じながら、折り曲げるイメージで。
- その他の部分が「曲がっちゃって」ないようにも意識して。
- 折り曲げた「だけ」ではなく戻ってくる動きも大事だからね。
プリエを止めてしまう前傾骨筋
プリエで動く場所は股関節、膝関節、そして足首(とその下)だと説明しました。
股関節も膝関節も、プリエでは可動域を完全に使い切ってはいません。
ほら、ルティレにしたときの方が、股関節も膝関節も曲がるでしょ?
でもね、足首だけはプリエの時点で最大限に動かされます。
2番ポジションで踏み変えとかしていなければ…
プリエをしたときに
- 足首が固くてかかとが浮きそうになってしまう人
- 不安定でグラグラする人
- アーチを上げなさい、と言われて無理やり体重を小指側に持ってきて土踏まずを上げようとしている人
- 深いプリエをしないと!とパワーでプリエをしている時
は前脛骨筋(ぜんけいこつきん・tibialis anterior)を確認してみてください。
前脛骨筋は、すねの骨の隣にある筋肉で長い腱を持っています。
足首をフレックスさせてみてください。
そうすると足首の前にピキッツていう腱が出てくるの、分かるでしょう?
それが前脛骨筋の腱。
筋肉自体は脛の骨の隣にあります。
(足首の前のぴきは何匹かいる場合があります。そういう人は親指側にでてきた太いやつをチェックしてね)
ここまでダンサーが知っておく必要はないけれど、マニアックな人の為に
- 筋肉のスタートは脛骨の外側上部⅔
- 筋肉のフィニッシュは内側楔状骨、第一中足骨底面
この筋肉の仕事は
- 足首をフレックスさせる(=足関節の背屈・はいくつ)
- 土踏まず側を持ちあげ、足首を捻挫方向に動かす(=足の内反・ないはん)
です。
プリエの時、足のアーチは少しおちるし、
アーチを持ち上げようとして小指重心になるのも危険ですから、その点で前脛骨筋を使わないのは分かると思うの。
でもさ、プリエの時に足首曲がるから、この筋肉使うんじゃないの?って思うよね。
プリエの時の足首は貴方が曲げるのではなく、骨盤が床の方に下りてきて勝手に曲がってしまうの。
股関節も、膝関節も、足関節も、そしてフットにある関節達も。
貴方が曲げよう!って能動的に動かしているのではなくて、受動的に「折りたたまれる」んだよね。
これが出来るようになると、レッスンで言われる注意の「固めないで」とか「柔らかくプリエして」という理解が出来るようになります。
*そうそう、この前脛骨筋、普通に立っている時もぴきってしないよ!
前脛骨筋とバレエ
立っている時やプリエの時に使わないといっても、前脛骨筋は悪者ではありません。
例えばキャラクターダンスのように足首をフレックスする振付では使って当たり前だし、
足のアーチにも関与しているから弱すぎたら困る。
足首周りのほかの外在筋達とバランスよく働いてくれれば、安定する足首を作ってくれます。
でも、ある程度のスピードで歩く(=ダラダラ足を引きずって歩かない!)と、使う筋肉でもあるので、日常生活で使っているんですよ。
それよりは、この子と解剖学的にペアになっている後脛骨筋(こうけいこつきん・tibialis posterior)や
運動的にペアになっている腓腹筋(ひふくきん・gastrocnemius)のほうがバランス的には弱いのね。
ダンサーはアキレス腱伸ばし大好きだし、脚の後ろの筋肉を鍛えるっていう事をしてこないから。
ほら、大腿四頭筋は膝を伸ばしたり、力強いジャンプで必要だけど、
日常生活で使いづらいハムストリングや、内転筋をトレーニングした方がダンサー向きでしょ?
(そしてハムストリングと内転筋をストレッチするのが好きでしょー)
ダンサーで前脛骨筋をトレーニングした方がいい人は
- キャラクター役を長いシーズンで踊る必要がある
- ケガから復帰したばかり、でギブスなどで足首を固めていた
- 男性ダンサーでブルーバードなどジャンプが激しいバリエーションを踊る
- シンスプリントからの復帰プログラムの一部で行う
でしょうか?
私がトレーニングプログラムを作るのだったら、足首ゼロ度→背屈ではなく、底屈→ゼロに戻してくる、の方向でエクササイズする方がダンサー向けだとは思います。
お年寄りや運動不足の人達が転倒防止としてこの筋肉のトレーニングをする場合もありますが、
レッスンを毎週何回もこなしているような人達だったらそこまでこの子を鍛えることにフォーカスする必要はないです。
同じカテゴリに中臀筋がありますが、話が長くなるので割愛。
覚えておいてほしいことは、一般の成人、会社員的な生活で、日々の体の使い方がデスクワーク寄り、運動は通勤時間、という人と、
体育の授業もある学生、アスリートレベルで毎日トレーニング(レッスン)している人、スポーツ愛好家レベルに運動をする人が一緒のトレーニングになるわけないのよね。
まとめ:プリエで確認してほしいこと
- プリエの意味を考えて、動く関節と動かない関節を意識してみましょう
- 足首の前のぴきっ!が出ていないかに注意し、ソフトに関節を折り曲げるイメージを持って
もっとプリエを上達させたい人、プリエの時に足首の前のぴきっを消す為のエクササイズは「プリエ使えてますか?」を読んで勉強してね。
グランプリエについて勉強したい人はこちらの記事
でもさープリエでかかとが浮いちゃうからアキレス腱伸ばししないといけないんじゃないの?という人はこちらの記事
Happy Dancing!