百聞は一見に如かず。
ブログでも、セミナーでもインスタライブでも「子供」のストレッチは危険だよ、と何度もお話していますが、
- 理論的にはそうかもしれないけど、バレエでは柔軟性が必要でしょ?
- 他の先生たちもやってるし、生徒に問題ないもんね
と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
今日は未成年の骨盤のレントゲンをシェアしますので、ご自身で判断する材料にしてください。
もちろん、今回アップしたレントゲンが特別なんでしょ、と思う方はグーグル検索で「子供 骨盤」などと調べてもらっても結構です。
当たり前の骨盤
たぶん、DLSを読んでくれている人達は解剖学についてある程度の知識があると思うの。
じゃないと読んでいてつまらないよね、このブログ。
すっごいマニアだし。
なので、みんなが知ってるであろう骨盤の事実。
- 骨盤はお椀みたいな形
- 女性と男性で形が違う
- 子供の骨は発展途上である
イラスト、グーグル、参考書・・・とかで見るのはこういうやつだよね。
ボールとソケット関節だから丸い骨がお椀型の骨に収まってるのが見えますよね。
だいたいの参考書は成人男性の骨盤が例に挙げられています。(そして白人…)
バレエをやっている人達の男女比率を考えると・・・
うん、形がちょっと違うんだよ、という理解が必要なところではありますね。
骨盤の成長を見てみよう!
ではこの写真はなんでしょうか?
なんの動物!?
これね、人間2歳半なんですって。
体が出来ていない様子がすっごくよく分かりますよね。
ボールとソケット・・・ってボールは骨に繋がってないしさ、ソケット(お椀)も見当たらない。
なんだこれ!?
小さい子達を教えている先生方は、この骨盤を指導しています。
これが小さい子達にむりやりターンアウトはもちろん、5番ポジションなんて難しいことを教えない理由で、
ぎゅーぎゅ―ストレッチをしない理由です。
だってみてみてよ、関節として出来上がってないじゃん!
じゃ次の写真。
これは9才だそうです。
さっきと比べると股関節のカップが見えるけれど、球になっている部分が大腿骨と繋がりきってない。
そして骨盤の骨が割れているように見えると思うけれど、そこはまだくっついていない証拠。
レッスンも難しくなっているとは思いますが、まだポワントなんて履けない(足の骨たちはもっと成長が遅い!)。
ターンアウトもゆっくりと育てているはず。
そして、ここら辺からワガノワバレエなどではトレーニングが始まりますね。
この前、トレーナーさんがツイッターで
「(柔軟性は)小学生の体は10-12歳の時点から、年齢とともに徐々に失われていくという研究がある」
と書いてありましたが(ちなみに私はこの研究を読みたい。)
だからといって骨を壊しても柔軟性は上がりません。
ケガするだけです。
14歳。
大腿骨がかなり普通の骨(という言い方は変だね)になってきてるし、ボールとソケットもちゃんと見える。
たださっきお話したギャップ、あれがきれいに繋がっていないのが見えるね。
大人の骨。
ギャップがなく、骨がきれいに繋がっているのが見えると思います。
そしてこれが解剖学書バージョン。
だけどさ、バレエを習っている人達の何パーセントがこのような骨盤だろうか?
骨も、体も成長するんだよ!
ちっちゃいうちに必要な動きは、とかダンサーの卵には・・・なんて記事をたくさん書いてきましたが、
こんなにクリアに目の前で見ることができるとその意味が通じると思う。
これらの写真はこの前私が勉強してきたセミナーの資料にありまして、オーナーさんに許可を取りました。
(Thanks to Lisa Howell and Perfect Form Physiotherapy 英語が分かる人で、スケジュールがあったら参加したらいいと思う!すごくいいセミナーでした。バレエの先生方向け。)
だから、バレエ教師は解剖学を知らないと!
だから私たちは勉強し続けないと!
だから私たちは形ばっかりを追い求めてはいけないんだと!
確かに、無理やりストレッチをしてもケガしない人もいるかもしれない。
飲酒運転しても事故を起こさないラッキーな人がいるように。
小さいうちにバリエーションを踊りこんでプロになった人もいるかもしれない。
だけど、それって何パーセントだろう?
ケガして辞めていった子たちの話は、だれもスポットライトを当てません。
ちなみにもう一枚写真を載せます。
この矢印がついている部分。これが坐骨ですね。
これ、坐骨が剥離骨折している写真だそうです。
そして、ハムストリングの無理やりストレッチでなったそうです。
そう、ストレッチは骨折させる可能性があるんです!
ペアになってやるストレッチも危険
ちっちゃい子達にワインの味わいが分かるでしょうか?
ジュースでもいいよ。
深い味わいが、とか口に残る後味が・・・とか言います?言わないね。
ほろ苦さ?その辛さが癖になる??そういうのって大人の言葉でしょ?
ボキャブラリーは育てないといけません。
だからペアでやるストレッチでその子達が本当に痛みを感じていないのか?それを伝えあえるコミュニケーションやボキャブラリーがあるのだろうか?
痛みっていうのはその人によって様々な感じ方をするのに、それを伝えるだけの言葉がない子達ができるだろうか?(大人でも難しいのに・・・)
痛くなくてもストレッチが止まることがあります。
例えば肘。
いっぱいに伸ばすと、こつんって止まるよね?それは骨と骨がぶつかっているから。
痛くないから押して大丈夫!っていってると脱臼します・・・
笑えませんが、解剖学の理解がないとここらへんの判断は難しいよね。
そしてちっちゃい子にそれができるか?って言われたら・・・無理よ。
ストレッチがダメなわけではないって何度も書いてますから今日は省きます。
役に立つストレッチもたくさんありますし、本にも載せてるよね。
最近の子達は特に体が固い子達がいるってのも知ってます。
バレエや新体操など柔軟性が必要な、特殊なスポーツやアートがあるってのも知ってます。
ただ、その土台となるのは人間の体。
そして骨盤は体のセンター。
指導者の言葉は絶対である
私が踊っていた時もそうですが、先生の言葉は絶対じゃないですか?
雑誌や本の一行、テレビの一コマよりも、
いつも通っているスタジオの先生の言葉は絶対ですよね。
だからこそ、指導者は言葉選び、レッスン内容を吟味しないといけないのではないでしょうか?
100%全て正しく出来る、というのは神様でも不可能でしょうから、まずは
- 自分が勉強していないことは指導しない(ストレッチの仕方とか、食事管理など)
から始めてみたらいかがでしょう?
床でストレッチしなくても、レッスンプランを作ったらバレエのテクニックでカバーしなければいけないことがたくさん見えるはずです。
夜6時以降は食べないでとかOOがいいみたいよ、など言わなくても、表現力や舞台の裏話など生徒が学べる話で、皆さんが体験してきたものがたくさんあるはずです。
バレエ学校で10年以上、怪我してる子と向かい合ってきました。
青春をバレエに費やして、学校や友達との時間をスタジオで過ごしてきた子たちが、防げたケガで辞めていくのも見てきました。
その子たちはスタジオを辞めるので、皆さんの目には留まらないと思います。
でもスタジオ内にいない、は存在していない、ではありません。
Happy Dancing!