ダンサーの卵たちの「バレエのケガ」の怖さ

  夏真っ盛り。 学校が夏休みだから、ダンサーの卵さんたちはいつもよりも多くのレッスンに励んでいる事でしょう。 そして、多くの子達がどこかしら痛い、と思っているかと思います。   お母さんに言えない子もいます。 バレエの先生に言えない子もいます。 もしくは、今まで色々と大人に言ってきたけど、何もしてくれなかったから諦めていたり、 それでもレッスンしなさい、って感じで押さえつけられていることもあります。 (本人がそう感じるか否か、が問題なので大人が押さえつけていない!と主張しても意味がありません。 この部分はあとでもう少し出てきます)   ここでは、ダンサーの卵、という事で8-12歳くらい、つまり小学校中高学年メインでお話していきますが、 ここでお話することは、中学生でも、高校生でも大人バレエトレーニーさん(大人でバレエレッスンを受けている方々をDLSではトレーニー「トレーニングする人」と呼んでいます)でも同じです。 ただ、これくらいの年齢になると、自分でしっかりと踊る量をコントロールしているはずですし、 自分の体のだしているサインは分かってくるだろう、という事で。 (そうじゃなかったら、まずは頭から踊れる体を作って下さいよっ)   ただの痛み、という問題だけじゃないんですよ ダンサーの卵たちの痛み、というのはただ「そのケガがある」というだけの問題ではありません。   そのような年で痛みを抱えて踊っているという事実自体おかしいのです! ですが、それだけではありません。   長期にわたるケガになる可能性がある自体おかしいです! でもそれだけでもありません。   成長痛だから・・・と思っている方も多いですけどね、成長痛って、成長している全員に起こるものではありません。 成長期に無理な使い方をしたから痛くなるのです。 なので成長痛だから様子見て・・・とかそのうちよくなるよーとかではないわけです。…

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縫工筋についてとそこからくるケガたち

遂にきちゃいましたよ、このトピック。 教師のためのバレエ解剖学講座を受講してくださっている方は知っているとおり、私がセミナーだけでお話している部分なんですが、この前メールでこの筋肉からくるケガをした人の相談を受けたので記事にします。   縫工筋っていったい何? 縫工筋(ほうこうきん)っていうのは体のなかで一番長い筋肉です。 大腿骨っていう体のなかで一番長い骨よりも長いんですから! 骨盤についていて、大腿骨より長くて、膝関節を超えて、脛の骨についているというツワモノです。   仕事は? ツワモノって書いたけど、強いものではありません。 筋肉の世界では、短く太い子のほうが力が強く、主動筋として働きます。 この子、体のなかで一番長く、太さも2センチほどしかありませんので、強くないです。 もっぱら脇役です。   お仕事はというと、関節を2つ越えているのでちょっと難しいですが、 股関節でいうと屈曲、外転、外旋(ほんとーにわずか) 膝関節でいうと屈曲、内旋(わずか) をしてくれます。   解剖学ではなく、バレエ用語で見てみると 股関節からデヴァンの動きをするんだけど、デヴァンがちょっと外に外れる感じ(外転)。 そして膝関節を曲げるけど、力は強くないので少し緩んだ感じになり、その膝自体をターンインしちゃうっていう奴、という理解になります。   両脚が地面についている時は骨盤がダックちゃんに 片足で立っている時は骨盤を傾けちゃう、なんていう動きもします。 つまりこのこが固いと、骨盤のプレースメントを正しくするのが難しくなるって事ね。 (バレエスタンスが出来なくなっちゃうって事よ!) 鍛える必要は? この子、鍛える必要は全くもってありません!! これはね、前にFB内でお医者さんがバレエで使うみたいなことを書いてたの。…

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素晴らしき3番ポジション!

足の3番ポジションってご存知ですか?   知らない人でこのブログを読んでくれていたら、 1)バレエを始めたばっかり!な大人バレエトレーニー※さん 2)娘のバレエ生活を応援しています!な親御さん 3)ダンサーについて勉強中の治療家・トレーナーさん ってところでしょうか?   ※DLSでは大人でバレエレッスンを受けている方々をトレーニー「トレーニングする人」と呼んでいます   知っている人でも、「何のためにあるの?」とか「いつ使うの?」とか言われたらちょっと答えにくいかもしれないよね。 だけど、私は3番ポジションをたくさん!使います。 特にリハビリ。 なので今日はそのエリアをお話していきますね。 足のポジションの簡単歴史 分からない人達もいるかも、ってところで肝心の3番VS5番ポジションのお話に行く前に、ちょこっとだけ。 現在使われているバレエの足のポジションは昔むかし、フランスでバレエにめちゃめちゃハマったルイ14世がバレエ学校を設立した際に彼のダンスの先生と一緒に作られたと言われています。 これは1660年あたりのお話だからね、かなーり古いのが分かりますよね。   それから時は過ぎ、男性主演から女性ダンサーが強くなり、どんどんスカートが短くなって笑 つま先で立つようになって、細くなって、脚の高さが上がってきて、ぐるぐる回るし、見上げちゃうくらいの高さで飛ぶようになったのが今、2017年笑   昔は1番だって5番だって180度!!じゃなきゃいけない見たいなのはなかったようですが、 いつからそうなったんでしょうね… 足の3番ポジションってレッスンでやります? ということで、今日のテーマである3番ポジションに戻ってきましょうか。 足のポジションは5つ、1,2,3,4,5番ポジションってのがあって、いつからか6番ポジションってのも主流になってきてますが、3番ポジションをレッスンで使うことって少ないですね。 皆さんはどうです?ありますか?   だいたいはプリエのエクササイズでも、1番、2番からロンデジャンプで4番にいかない?…

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この夏コンクールに出る前に考えて欲しいこと

気温が上がってくると一緒に上がってくる日本のコンクール熱。 私のコンクールに対する意見はネガティブですが、それはすでに記事にしてあります。   また様々な研究(練習量、偏った練習、コンクールと心理学、成長期のからだなど)を見てもいいことが書いていないのがわかるはずだし、 海外の大きな学校は生徒をコンクールに出していない、という世界のバレエ界の見方も頭に入れておきたいです。   とはいえ、コンクールに出るな!っていうだけだったら聞いてくれないと思うので、 今日は出る前に考えて欲しい事をリストにしてみました。   ここに書いてある事を考慮に入れて欲しい、っていうことと、お母さんや先生のガイデンスになりますように。 ちなみに過去記事では年齢の上の子たち(留学希望の子たち14、15歳以上)を想定して書いてあるので、今日書いてあることは、12歳以下だと思ってください。 もちろん、大人バレエトレーニーさん(大人でバレエレッスンを受けている方々をDLSではトレーニー「トレーニングする人」と呼んでいます)さんがコンクールに参加したいと思っても考える必要のあることですけどね。   →バレエコンクールの良し悪し →数字で見るコンクール →コンクール?スカラーシップ?留学? →うちの子本気でバレエがしたいのかしら?   誰のためのコンクール? もちろん、娘、生徒のため!! って言いたいけれど、本当にそうですか?   一度自分に正直になって考えてみてください。   「この子くらいの年齢の子たちはみんなやっているから」 「バレエをやっているのならば出ているべきって言われたから」 「出してください、と親から言われたので」 「いいお金になるから(まーこうやって公に言う人はいないと思うけどさ)」 「上達するために(自信をつけるために)必要だからと言われたので」  …

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身長が低いとプロになれませんか?

毎年春に行われていた(コロナのため今はできない)キッズセミナーのフィードバックシートに書いてあった一言を今日は考えていこうと思います。 悩んでいる子もいるだろうし、キッズセミナ―に参加する子達の年齢ではお母さん、そして先生も知っておいてほしいので是非読んで下さい。 ダンサーに求められるもの これはカンパニーやバレエ学校によって違います。 ただ、傾向、というのはあります。 昔私が踊っていた時は細いダンサーが好まれる傾向にありました。 90年代から2000年最初のほう。 スーパーモデルなんていうのもあって超!細いというのは大事。   ただ、これはもう古い考え方です。   最近のローザンヌでは細すぎると落とされます。 オーディションにはドクターチェックや、体力テストがついているカンパニーもあります。 筋肉質なダンサーが美しい、とされるカンパニーもありますし、 個性がある体、バックグラウンド(人種)をサポートすべきだという動きもみられています。   (ただし、日本にこういう考え方が入ってくるのは海外の10年後とか言われることがあるので、まだみんなの周りには古い石頭大先生が生きているかもしれません…)   傾向として、やはり身長の高い子達が求められるのは確かです。 海外の普通身長、というのが日本では身長の高い子、というようになる場合が多いから。 165cmは欲しい これが、どのオーディションでもいわれる言葉です。 (この記事を書いている2017年は。2027年は知らないよ)   新国立もこのあたりだと聞いていますし、今の子たちにとって165㎝はそんなに大きくないし、小さくない。 つまり、アベレージ(平均的)になれるのでそこらへんから、と。 私は170㎝なのでその問題はありませんでしたが、そうではない子は履歴書にちょっとサバを読んだりもしてました。   すごく踊りが上手でも、見てもらわなければいけません。 つまりね、オーディションに呼ばれるためには、向こうが募集している枠にはいる必要があります。…

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足首のグラグラ DLSフォロアー9歳

  足首のグラグラ!という記事の最後に、見てほしい人はビデオ送ってねーっと書いたら 本当に何人か送ってきてくれました。 なので!! ケーススタディとして一緒に見ていきましょう!   ビデオの方が分かりやすいんだけれど、ビデオ編集は時間がかかるので、 来日ツアーが終わってから全部まとめて足首研究ビデオにします。   9才のダンサーの卵ちゃんがモデルです。 (お母さん、ありがとうございました!)   **これは動画を見た感想です。治療、診断ではありません! みんなの勉強素材になると思ってアップしたので、彼女やお母さんへの攻撃コメントは許しません。 あと言いたいことはたくさんあるけど笑 彼女の先生へのコメントも避けましょうか。 彼女がスタジオに戻れない環境になってしまったら悲しいですからね。   また、今日のブログは佐藤愛の頭の中がどうなっているのか?を書いております。 正しい、間違いは本人を見ないと分からないので、医学的なアドバイスではありません。 よく、愛さんナニ考えてるんですか?って言われるから、ダンサーを見ている時こんなんかなーって考えている順番通り書き綴っていきますね。   モデルさんのバックグラウンド バレエ歴5年、週4回レッスン、週2回コンクールクラス、小3でポワント。 お母さんからの一言 「ここまでで愛さんならワナワナきてると思いますm(_ _)m」 笑!うん!   んでもって 膝の疲労骨折、右小指の痛み、足首甲の疲労骨折経験。…

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ダンサーが知っておきたいO脚

2016年だったかな?の教師のためのバレエ解剖学講座で、参加者からO脚全員を選んで立ったことがありました。 誰が一番ひどいO脚か?っていうのを見るために笑 そしたらね、私が一番ひどかった!!   ということで、私自身も悩み多きO脚とターンアウトについてお話ししていきましょう。   O脚にも種類がある? ただO脚、といっても色々な種類があるってご存知? 生理的(つまり人間の成長で必要な過程)から、病気(栄養失調からくるもの)などまで。 だから、そう簡単に「あなたはO脚です」って言わないで下さいね。   O脚、解剖学では内反膝、といわれるこいつは「左右の内くるぶしをそろえても、左右のひざの内側が接しない脚の形」を指します。 みんなが考えるのはドーナツみたいに脚の真ん中があいているやつ。   大腿骨が内旋、膝が内反→ほとんどの日本人O脚がコレといわれている 大腿骨はまっすぐ、膝が内反、脛骨の変形→参考書にはあるけどみたことない笑 膝が内反な上に、過伸展→ダンサーによくある 膝が内反、足首が内反→私のパパはこれ。 膝が内反、足首が外反→私はこれ。 … リストはどんどん増えますが、 膝関節=大腿骨+腓骨、脛骨であると考えると、 膝の変形(ケガもそうだけどね)には、股関節や足関節はもちろん、 股関節=骨盤の骨たち=背骨に影響 足関節=足にある関節たちすべてに影響 も出てくるわけです。   だからね、O脚だからこれやりなさいよ、とか、このスリッパをはけばよくなります、っていうのはない。 だって原因がどこから来ているか?も違うんですもの。  …

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ダンサーのケガ 疲労骨折について知っておきたい事

*この記事は2017年に書かれたものを、より詳しく大幅アップデートしました。     私が踊っていた時の一番最後の怪我が疲労骨折でした。 ちゃんとリハビリするというか、治療も、原因も、リハビリの方法も知らなかったので、それが最後の引き金になってバレエを辞めました。 (それ以外にも色々と理由はありましたが、詳細は愛さんのバレエ留学記シリーズに書いているので興味があったらそちらをどうぞ)   必ずしも疲労骨折=バレエ人生終わり!ではありません。 実際にプロダンサーでも多く見られます。 そしてその怪我の間に自分をより強く、踊れるダンサーに改良することも可能です。   ですが、疲労骨折を放っておくダンサーがあまりにも多すぎる。 そして本来ならば、6-8週間のお休みの後レッスン復帰が出来るはずなのに、レッスンを休むことを恐れて?先生が許さなくて??結果、バレエ人生を短くしてしまっています。   バレエ人生が短くなる…だけだって悲しいのに、 骨折が一生治らない「偽関節」 いつもかばって踊るために体のバランスが崩れる「機能性側弯症」   かばって踊る・生活するから無数の不必要なケガに繋がったり 一番力を発揮しなければいけない留学中、バレエ団1年目などで思うように力を発揮できずチャンスをつかむことが出来ないなんて事もよくあります。   これ以上読み進める時間や興味がない人たちのために、これだけは頭に入れておいてください。 疲労骨折は防げます。 疲労骨折とはなに? 「疲労骨折」って言葉は聞いたことはあると思うけれど、普通の骨折と何がちがうのか?を説明しなさい、と言われたらうーん…ってなっちゃいません? Clinical Sports Medicineという本(ちなみにこれはバレエ団研修している時に、バレエ団で働いているスタッフ全員の机に置いてあったので真似して買った本。DLSでも参考書に使ってます!)によると   疲労骨折は「Overuse…

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