*このブログは2013年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。
コアマッスルがどーの、とか体幹の筋肉を鍛えて、内転筋を強化…
そういった筋肉一人ひとりの話をする前に、ダンサーが知っておきたい筋肉についての基本をお話していきましょう。
ちょっと面倒だし、必要ない気もする部分もあるけれど、バレエレッスンでステップ(パ)の名前を知っていると、そのステップに必要な動きの質が深く理解できるじゃない?
アダージオは優雅に、とかフォンジュは溶けるとか。
そんな感じで、解剖学用語を知っておくと、筋肉への理解も深くなると思います。
参考書も読みやすくなるしね。
筋肉は3種類ある
人間の体に筋肉が3つしかない、って言ってはないですよ。
大きく分けて3種類の筋肉があるって話。
骨格筋(こっかくきん・skeletal muscle)
これが一般的に「筋肉」と考えられているやつ。
文字通り骨についていて、関節の動きを作る子たちね。
骨格筋は、自分の意思で動かすことが出来ます。
なんて当たり前な!と思うかもしれないけれど、この後出てくる残り2つの筋肉たちは、いっくら努力しても自分で動かすことが出来ません。
自分で動かすことができる、つまり思ったように動く時に使われる骨格筋の事を随意筋(ずいいきん・voluntary muscle)とも言います。
心筋(しんきん・Cardiac muscle)
文字通り、心臓の筋肉です。
そう、心臓は筋肉なんですね!そして、心臓は自分の意思で動かすことは出来ません…よね?
踊っている時に呼吸を忘れてしまうとか、軸足のターンアウトする筋肉が緩んでくるって場合あるじゃない?
そういう感じで心臓の筋肉を動かすのを忘れちゃったら死んじゃうでしょ。
バリエーション1曲踊るのが、文字通り命がけになっちゃうもの、心臓が不随意筋(ふずいいきん・involuntary muscle)でよかったね。
平滑筋(へいかつきん・Smooth muscle)
これは漢字を読むだけでは分かりませんよね。
平滑筋は時々、内臓筋なんて呼ばれることもあるんだけど、内臓を作っている筋肉です。
そう、胃、腸、膀胱、血管…
あいつらは一応筋肉の種類なんですね。
これらも勝手には動いてくれない不随意筋の分類です。
消化吸収だとか、おしっこと共に膨らむとか、そういうのを勝手に体の中でやってくれるんですね。
食事って筋肉をつかう行動なんですよ。
DLSブログの中では筋肉=骨格筋だという理解でお話しています。
自分で動かせる部分のトレーニングとかエクササイズ、どうやってレッスンで使うのか?が知りたい人達が読んでくれていると思うからさ。
筋肉と腱
筋肉は骨にくっついて、関節に動きを作ってくれる。
と説明しましたよね。
筋肉が骨にくっつく場所を腱(けん・tendon)と言います。
時々、腱がなくって筋肉繊維が直接骨にくっついている事もあるんだけど、腱がある筋肉が殆どです。
腱といったらアキレス腱。
一番分かりやすいでしょ?
ここではアキレス腱に繋がる筋肉の1つ、腓腹筋(ひふく筋・gastrocnemius)を見ていますが、こんな感じで筋腹(きんぷく・muscle belly)からしっぽが生えたように腱になって、
それが骨(ここでは踵の骨)についています。
- 靱帯は骨と骨を結ぶもの
- 腱は筋肉と骨を結ぶもの
と覚えておくと便利ですね。
アキレス腱をしまう方法を教えてください、なんて言われることがあるけど、腱は自分の意思で縮めたり、伸ばしたり出来ません。(詳細はこちらのブログで説明済み)
それは筋肉の仕事ですから。
ストレッチしています、と言いながら靱帯(骨をサポートする大事な部分)を伸ばしているダンサーもたくさんいるし、体の事を知らないとケガの原因ばっかり増えていきますのでお気をつけて。
場所を表す解剖学用語
筋肉についての理解が出来ていたら、筋肉や骨の場所を説明する言葉を勉強していきましょう。
これがねー面倒なの。
しかも踊りには全く必要ないし、指導にも必要ない。
じゃ、なんでお話しているか?といったらピュアに解剖学の参考書を読むときに便利だっていうだけです。
そこまで詳しく知りたくないよ、という人はこの部分を飛ばして、次の「動きを表す解剖学用語」を読んでください。
そっちの方が大事だから。
マニアックな皆様は一緒に言葉を勉強していこうか。
- 前方(ぜんぽう・anterior)=前の方
- 後方(こうほう・posterior)=後ろの方
- 外側(がいそく・lateral)=体のセンターから遠く
- 内側(ないそく・medial)=体のセンターにより近い
- 上方(じょうほう・supoerior)=真っすぐに立っている時の上の方
- 下方(かほう・inferior)=体をまっすぐにして立っている時の下の方
ねー、よく分からないでしょ。
脛の骨の前にある筋肉の事を前脛骨筋(ぜんけいこつきん・tibialis anterior)といい、
脛の後ろにある筋肉の事を後脛骨筋(こうけいこつきん・tibialis posterior)というのね。
脛の骨(tibia)の前anteriorか、後ろposteriorにあるんだろうなぁ、って場所がだいたい理解できるよね。
大腿四頭筋は4つある筋肉だけど、外側広筋(がいそくこうきん・vastus lateralis)と内側広筋(ないそくこうきん・vastus medialis)っていうのがあります。
これも言葉で分かるように外側lateralと内側medial、という場所を説明してくれているね。
ローテーターカフと呼ばれる肩にある筋肉の一部、棘上筋(きょくじょうきん・supraspinatus)と棘下筋(きょくかきん・infraspinatus)は
肩甲棘(けんこうきょく・Spine of scapula)の上にあるか、下にあるかを言葉が表しています。
デトールネとストゥニュー(回転の方ね)、スーブルソーとシャンジェマン、
グランパドシャとグランジュッテ…
バレエの言葉の中にもシロウトが見たら違いが分からないステップがあるじゃん?
でもレッスンを重ねるにつれて、どっちがどっちか分かるようになると思うのね。
解剖学用語も、バレエ用語も専門用語。
最初は何が何だか分からないけれど、慣れてきますのでご心配なく。
(慣れなくても、踊れるから心配しないで笑)
動きを表す解剖学用語
筋肉の勉強を始める前に知っておきたい事の最後は、動きを表す言葉。
骨格筋は動きを作るけれど、どの方向に動きを作るか?って部分を考えるためには、動きを表す言葉が必要です。
- 屈曲(くっきょく・flexion)=曲げること
- 伸展(しんてん・extension)=伸ばすこと
- 側屈(そっくつ・lateral flexion)=首、胴体(背骨)を体のセンターから横に曲げること
- 回旋(かいせん・rotation)=骨の軸にそって回転すること。外旋と内旋がある
- 外転(がいてん・abduction)=体の中心から遠ざかること
- 内転(ないてん・adduction)=体の中心に近づいていくこと
ここに書いてあるのは基本の動き。
このほかにも足首だけに当てはまる言葉だったりありますが、その関節を勉強するときに一緒に学んでくださいませ。
皆が動かしたがる(=ストレッチしたがる)関節ナンバー1の股関節を例にとって勉強してみましょうか。
全てのバレエのポジションでターンアウト(股関節の外旋)は必要ですが、毎回書くとくどくなるので割愛します。
- タンジュデヴァン=股関節屈曲
- タンジュアラセコンド=股関節外転
- タンジュデリエール=股関節伸展
- タンジュアラセコンドから5番ポジションに閉じる動き=股関節内転
どう、分かりやすくなった?
- タンジュデヴァン=股関節外旋+屈曲、膝関節伸展、足首関節底屈、でもあります。
- カンブレアラセコンドは背骨の側屈、カンブレデリエールは背骨の伸展です。
まーここら辺も慣れてくれば分かるようになるから心配しないで。
ダンサーが筋肉の勉強をするためには
どうしてこの知識がダンサーに必要か?と言う部分は話していなかったね。
例えば、ターンアウトが出来ない、という悩みがあったとしましょう。
まず最初に、バレエで求められるターンアウトとは何か?を理解していなければいけませんが、それは知っていると仮定しましょうね。
バレエ指導者だったら、解剖学を知らなくても指導内容くらいは分かっている事でしょう。
そこでバレエのターンアウトとは股関節外旋が最大限に使えている必要があると気づけたら、そこから勉強が始められます。
股関節外旋をする筋肉は何か?を調べたり
股関節外旋筋のエクササイズを調べたり。
レッスンの時に体のどの部分に注目すればいいか分かったり、なんて注意を言えば的確か?も分かる。
これがバレエ解剖学ってやつですね。
(ヤバいな、と思った先生は教師のためのバレエ解剖学講座で学んでね)
是非、勉強した知識とバレエの知識を混ぜ合わせて、自分のレッスンに還元してくださいね。
腹筋、ターンアウト…筋肉の勉強をしたいダンサーはオンライン学校もどうぞ。
Happy Dancing!