「私、反り腰なんです」
「反り腰を直すには、どのエクササイズがいいですか?」
この手の質問にガッツリと答えるブログを書きました。
時間がなくて記事を全部読めないという人のために、先にまとめを書きます。
- 反り腰というのは俗語であり、診断ではない
- 反り腰だから太る、腰が痛くなる、ダメ、脚が太い、などというエビデンスもない。だって1番で書いた通り、「反り腰」という定義がないのだから。
- 世の中にある情報(特に、体型&ダイエット系)に踊らされるな。
でございます。
では私と同じく、こういうエリアのヲタクは、一緒に細かく見ていきましょう。
反り腰とは?
反り腰には定義がないって知っていますか?
信じられなかったら、ネットで調べてもらっていいですよ。
「骨盤が前側に倒れ、坐骨が後ろに出っ張っている事を指す」
と書いてある場合もあれば
「仰向けで寝て、腰と床との隙間が手のひら一枚分以上だったら反り腰」
なーんて書いているサイトもあります。
ちなみに、上記2つでは「反り腰」かどうか確認できません。
理由は簡単です。
1)腰椎とはまっすぐなものではない。
解剖学的に、腰椎には前弯がある=腰は反っているのが正しい場所。
2)腰椎のカーブには個人差がある。
身長や指の長さ、頬骨の高さなど骨の高さ、長さ、カーブに個人差があるように
背骨のカーブには個人差があります。
ほかの人と違うからといって、不健康なわけではありません。
1番+2番で分かる事
=素人が「見た目」だけで「ケガに繋がる危険性がある」くらいの
「腰椎カーブ」を確認することは不可能です。
オブセッションとは?
妄想、強迫観念という意味の言葉で、
今回のように精神医学、心理学的な意味で使う場合
「不合理と分かっていながら、考え(感情)がしつこく浮かんできたり、不安な程気がかりになること」
を指します。
日本語で、反り腰”改善”だけでなく、
O脚改善、猫背改善など、姿勢に対する「改善」というものは
ほぼ100%の確率で「痩せる(太る)」と共に使われます。
痩せに対するオブセッションが見えるのが分かりますか?
- 痛みの有無(&予防)
- 健康かどうか
- スポーツやバレエのテクニックの向上になるかどうか
などの判断ではなく、
- 痩せるために有効かどうか
だけで物事を見るのは、痩せに対するオブセッション(強迫観念)です。
不合理だと分かっていながら、不安で仕方ないから、
読んじゃう、買っちゃう、信じちゃう。
ちなみに、
痛みの有無(&予防)、健康かどうかという目線で
「反り腰だから腰痛になるんだ!」という人もいるかもしれません。
ですが、腰椎のカーブに関係なく、腰が痛い人は腰が痛いです。
フラットバック(腰椎のカーブがない)の人も腰が痛いですし、
カーブ自体に何も問題がなくても、
- 椅子に座る生活が長い
- 運動不足(腰痛と運動量は大きく関係するため)
- 過去のケガの歴史
- 内臓系の病気、問題
- 神経系の病気、ケガ
- 腰椎の損傷や椎間板の問題
などによって腰痛は起こりえます。
本当にケガ予防したいなら、痛みを良くしたいなら
プロに診てもらう必要があります。
床に寝て、手を入れて…なんて悠長な事を言っている場合ではございません。
(しかも、手のひらの厚みも個人差あるじゃんね…)
余談:
あ、あと“冷え性解消”も日本人大好きだよね。
冷え性解決のナンバー1、知ってる?
筋肉量を増やすこと。
だって筋肉が熱を作るから。
腰の”そり過ぎ”は存在するか?
反り腰、というものに定義がないことは分かった。
でも、腰椎が“そり過ぎ”という状態はあるのでしょうか?
答えは「YES」です。
ですが、この記事を読んでいるほとんどの人は判断出来ません。
理由は、腰椎がそり過ぎているように「見える」という状態と、
実際に腰椎の5つのカーブがケガに繋がる程大きい状態は違うからです。
例えば
- 大臀筋のサイズ
- 腹部の出っ張り具合
- 仙骨の方向
- 肋骨の丸み
- 胸椎の後湾角度
などによって、反り腰に「見える」形になります。
簡単な例は妊婦さん。
おなかが大きくなればなるほど、骨盤は前傾しますし、
おなかが重くなればなるほど、腰椎も引っ張られるため前弯が大きくなります。
でも、妊婦さんは不健康ではありません。
(健康じゃないと、妊娠できません…)
そして、妊婦さんが”反り腰を治そう”とすることは、不可能です(+危険です)
私の元生徒には、
腰椎5番と仙骨が生まれつきくっついている、という子がいました。
彼女の場合、関節の数が1つ少ないため、腰椎のカーブが大きく見えました。
でも、彼女が「見た目の反り腰」を改善するためには、背骨削る手術しないといけないです。
不要ですよ、そんなもの。
遺伝(人種)によっても背骨カーブの状態が変わります。
ということで、その人の健康状態や遺伝などを知らなかったら、
“反りすぎ”と判断することは出来ないわけ。
背骨は動くもの
腰椎は元々反っている、という解剖学事実の上に
- 腰は元々、反る方向に動くものだ
という事実も入れておきましょう。
アラベスクしたいなら、腰椎は伸展しなければいけません。
伸展=反るですからね。
逆にデヴァンに高く脚をあげたかったら、
骨盤の後傾と腰椎の屈曲が必要です。
背骨のカーブは衝撃吸収のために存在します。
個人差のあるカーブの大きさではなく、
カーブがしなやかに動くか?=衝撃を吸収できるか?
のほうが大切なわけですね。
そしてダンサーだったら、
しなやかに動く背骨=安全にジャンプが出来、高く脚が上がる背骨
が大切なわけですよ。
健康な背骨は様々な方向に動きますから。
Function(動き)で関節や筋肉の健康状態を考えることは大切です。
バレエで言われる「ひきあげ」で背骨のカーブを引き伸ばすことは
- 重心の位置を高くし、軽やかに踊る
- カーブの方向が変わる部分への負担を減らす
など大切ですが、
まっ平な背中にすることがゴールではありません。
形、見た目で判断するから
- 足首や膝でひねるターンアウトを、トレーニングされていない子供たちにさせる
- 危険なオーバーストレッチで、脚が上がると信じている
- 強さを伴わない甲出しでケガのリスクをアップさせる
というようなレッスンになってしまうんですよね。
ターンアウトは動きなので、徐々に育てる必要があります。
柔軟性は強度とともに育てなければ、舞台で使えません。
そして
腰椎を含む背骨は様々な方向に、安全に動かすことが出来る必要があります。
知識はあなたを守ります
ブログを読んでくれている皆さんは、腰椎のカーブなどはすでに知っているでしょう。
でもね、インスタでライブした後に、
多くの人が「腰にカーブがあることを、知らなかった」と言っていました。
反り腰はいけない、と聞いた。
自分の背中を鏡で見てみた。
腰にカーブあるじゃん!
だから脚が太くて、冷え性で、腰が痛いんだ!!と考える
そして、タックの方向、腰を丸める方向に”努力”してしまうと何が起こるでしょうか?
- 腰を痛める原因になります。
- 股関節を痛める原因になります。
- アラベスクに脚をあげることが困難になります。
- 体の持つ、生理的湾曲を力づくで変えてしまう事になります。
もちろん、タックが「絶対ダメ」とも言っていませんよ?
→「タックとダックの狭間で:ダンサーが悩む骨盤のプレースメント」
知識があれば、次の”流行”が来た時に自分を守ることが出来ます。
そう、流行なんですよ。
アメリカを中心に、お尻の整形手術を受ける人たちが多いの、知ってますか?
カーブがある方が”美しい”から、だって。
2-30年前に、同じ国でカーブの全くない、スーパーモデル体型が流行っていました。
私と同世代+上の方々なら覚えているでしょう?
ダンサーは自分の健康と将来のために知識を身につけましょう。
バレエの先生&保護者は、子供たちを守るために、知らないことは言わないでください。
OOさんが言っていた、XXスタジオでやっている
など、形だけ真似しないでください。
- 理由、構造、理論が説明出来る
- 向いている人と、そうでない人が判断出来る
- どこまでやったら危険なのか?が分かる
- どれだけやったらいいのか?を知っている
ここまで出来なければ、指導者としてレッスンで使うことは出来ないはずです。
エクストラリソース
知らないって怖い…と思ってくださった先生たちは
いつでも、どこからでも、勉強したいトピックを勉強出来る。
「教師の為のライブラリ」をどうぞ。
私、反り腰なのではなく、腰椎&骨盤が使えていないんだ!と気づいた人は
流行りや見た目ではなく、踊りに使える体を育てましょう。
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OOが出来なくて悩んでいる…という人もDLSにDMしてね。
今後の記事の参考にします。
Happy dancing!