*この記事は2014年に書かれたものをより分かりやすいように図や説明を増やし、大幅アップーデートしました。
バレエダンサーというと長い首のイメージが強いみたいですよね。
クラシックバレエ=白鳥の湖=首長い、みたいなところもあるんでしょうか。
確かに正しいポーデブラを練習していたら、そしてエポールマンのつけかたを練習していた場合、バレエでの首回りの筋肉の使い方は、スポーツとは大きく異なります。
バレエに近いスポーツで例に出やすいフィギュアや新体操と比べてみても、腕のポジションに似ているものがあったとしてもポーデブラ、腕の運びは違うのが分かりますよね。
とはいっても、首のラインで悩むダンサーも結構いるので、今日は長い首のラインに大切な(というか敵対する?)肩甲挙筋(けんこうきょきん・levator scapulae)について勉強していきましょう。
ただ、マニアックで難しい話に行く前に。
肩甲挙筋はダンサーが場所や名前を知っておかなければいけない子ではありません。
バレエ解剖学があんまり得意じゃないけど、長い首を作りたい人は「肩は下げればいいわけじゃない」からどうぞ。
肩甲挙筋はどこにあるか?
肩甲挙筋は頸椎1番から4番の横突起から肩甲骨の上のほうについています。
頭蓋骨の下から肩甲骨の上までだから…20㎝くらい?
結構ちっちゃい筋肉だよね。
すでに勉強した僧帽筋上部の下にありますが、ぶっちゃけ経験を積んだ治療家でも僧帽筋上部と肩甲挙筋を手で触り分けることは出来ません。
ダンサー、トレーナー、指導者だったら僧帽筋上部と肩甲挙筋を分けて考える必要もないですよ。
肩甲挙筋のお仕事は?
名前通り、肩甲挙筋のお仕事は、肩甲骨を挙上(きょじょう・elevate・上に持ち上げる事)です。
ね、僧帽筋上部と一緒でしょ?
ただし、パワーとしては
僧帽筋上部>肩甲挙筋>菱形筋たち
って感じではありますけどね。
その他のお仕事は
- 肩甲骨下方回旋(かほうかいせん・ソケット部分が下向きにローテーションすること)
- 頸椎伸展(けいついしんてん・首を後ろに反らすこと)
なんてありますが、バレエダンサーに必要でもなければ、説明も面倒なので今日は見ていきません。
肩は下げればいいわけじゃない!
バレエ解剖学、というDLSの使命を考えるとこの一言を声を大にして伝えたい。
肩は下げればいいわけじゃないんです!
肩を下げて!という注意はレッスンでよく聞くだろうけれど、肩だって正しい場所(アライメント)というものがあります。
色々な見方がありますが、
ダンサー(もしくはバレエの先生)が簡単に、レッスン中に肩のアライメントを確認する方法は
鎖骨が地面と水平、もしくは少し上に上がった状態かどうか?
「少し上がった状態」というと曖昧な感じがするかもしれないけれど、ここは骨格に個人差があるため100%これ!というのはございません。
一般的に言われるいかり肩(鎖骨が上がりすぎている状態)も、バレエでは大事と言われるなで肩(鎖骨が下がりすぎている状態)も、
どっちも正しくないということを理解してください。
タックでも、ダックでも骨盤のプレースメントとして正しくないのと同じように。
- 赤い鎖骨が正しい位置
- 青が俗にいういかり肩
- 緑が俗にいうなで肩
では鏡を見て確認してみて。
あなたの鎖骨はどうでしたか?
あれ?鎖骨は正しい位置にあるけど、踊っているときには肩を下げるように言われる…
と思った人は、踊っているときに肩を正しい位置で保つことが出来ないということ。
そういう人は、プレパレーション、ブラバーでいくら肩を下げても意味がございません。
詳しい説明はこちらの記事でどうぞ。
なんで肩の話をしているのに、鎖骨で確認するの?と思ってしまった方は
肩関節=上腕骨+鎖骨+肩甲骨
だったというのを思い出してくださいね。
鎖骨が動けば、鎖骨の終わりにある肩関節も一緒に移動します。
私は踊っているときはなで肩でしたが、今はパソコン仕事が主なので気が付くと鎖骨が上がっています。
ただ、頑張れば元の位置に戻ってきます。
なので、同じ人でも行っている運動(レッスン量・生活習慣)によってアライメントは変わりますよね。
大人バレエトレーニーのほうが肩の悩みを相談してくる理由の一つはここ。
肩を下げる筋肉が弱く、肩を上げる筋肉が緊張しているので、筋バランスが崩れている。
どうして筋バランスが崩れるか?というのは猫背やパソコン姿勢、そしてピュアに運動不足だからでございます。
肩甲挙筋の大親友は僧帽筋上部
何度も何度も、今日の記事では肩甲挙筋と僧帽筋上部を一緒に書いていますが、こいつらは大親友です。
体のプロでも触診出来ないほどマブダチ(死語??BFF?)です。
お互い同じような仕事をするのよね。
ということは、僧帽筋が上手く働いていない時は肩甲挙筋が助けるために腕まくりしちゃいます(腕ないけど…)。
指導者用柔軟性セミナーや、ダンサーのためのsafe danceセミナーでもお話していますが、
筋肉は健康で強いとやわらかく、動きやすくなる。
よって、
- 首・肩のライン
- 肩こり
- 姿勢
を正しくしたかったら、筋肉を使わないといけません。
筋肉を使うことで
- 血流(酸素・栄養)を送る
- 温める事が出来る
- 筋肉の緊張をほぐす
- 筋肉の柔軟性をアップさせる
事ができるんだから、首のラインで悩んでいるならば
マッサージやストレッチもいいけれどエクササイズも必要だ、ということを頭に入れておいてくださいませ。
肩甲挙筋ストレッチ・エクササイズ
具体的には何をするのか?
色々な方法がありますが、今日は簡単に道具なしで出来るストレッチ2つとエクササイズをご紹介しますね。
レシピもあげます。
- いかり肩(鎖骨が上がる)場合:ストレッチ1+エクササイズ
- なで肩(鎖骨が下がる)場合:エクササイズ+ストレッチ2
- 頸椎のケガ、ストレッチすると頸椎が挟まる感じがある場合:エクササイズ+肩甲骨リリース
ストレッチ1:肩甲挙筋を伸ばす
- 首を45度ほど傾けます
- そこから下を向きます
オプションとして手で軽く頭をおさえることもできますが、
肩甲骨から頸椎についている筋肉なので、反対の肩(ピンクの〇がついている方)が前に落ちないように気を付けて。
ストレッチ2:わきの下を伸ばす
肩甲骨や腕を下の方に引っ張る広背筋を、鎖骨が上がったポジションで伸ばします
- 伸ばしたいサイドの手首をもって体を軽く横に倒します(写真左)
- 手を頭の上で組んでもいいですが、肩関節の上の方が詰まって感じる場合は避けてね(写真真ん中、紫の〇)
- 肩が痛い人は肩関節の角度を軽減してもOKですが、腋がつぶれて「動いた気持ち」になりやすいので気を付けて(写真右、ピンクの〇)
エクササイズ:シュラグ
僧帽筋上部と肩甲挙筋の屈伸をすることで血流アップ+動的ストレッチをします
- 鏡で見たときに鎖骨が正しい位置にあるかを確認し、反対の手で肩甲骨が飛び出していないか?をチェックします(オプションなので、肩が痛い人はやらなくてもOK)
- 手のひらを前に向けたままで肩を出来る限り耳のほうに持ち上げます
- 出来る限り肩を下ろします
注意点
- A:肩を持ち上げようとして、首が助けに来ないように
- B:肩を「上に」持ち上げるので、「前に」丸まってこないように
- C:肩を開こうとして、肩甲骨を寄せてこないように
肩関節が安定していないと仕事が増えちゃう肩甲挙筋
肩回りの筋肉全てで言えるのですが、肩関節のコアマッスルが上手く働いていないと、周りの筋肉で肩をぎゅっと安定させようとしてしまいます。
ほら、コアマッスルが使えていなくて骨盤が安定しないと、太ももやお尻で骨盤を安定させようとしてしまうように。
特に踊っているときに、腕の動きと共に肩が動いてしまう系の人はこちらのエクササイズも取り入れて、肩関節を安定させる筋肉である、ローテーターカフを強化してください。
パドドゥ、コンテなど普段のレッスンでは含まれない、腕で体重を支える動きが入る振付を行う前に、ローテーターカフは強化しておいてね。
まとめ:長い首を手に入れるには?
- 肩甲挙筋とマブダチ僧帽筋上部の知識を頭にいれよう
- 肩にも正しい位置があります!正しい肩のラインを手に入れるために鎖骨に注目して
- 自分の癖に合わせたエクササイズ+ストレッチを続けましょう
首のリキミが取れない人はこちらの記事、首が短くて悩んでいる子はこちらの記事も参考にしてくださいね。
Happy Dancing!