*この記事は2014年3月に書かれたものをより分かりやすいように図や説明を増やし、大幅アップーデートしました。
この前大腿骨の前と後ろの筋肉である、大腿四頭筋とハムストリングスについて勉強しました。
今日は大腿骨の内側と外側について見ていきましょう。
大腿四頭筋とハムストリングスの簡単な復習
本格的に内側&外側を見る前に、ちょっと復習しておきましょうか。
- 大腿四頭筋は4つの筋肉で出来ているグループで、大腿骨の前にある
- ハムストリングスは3つの筋肉で出来ているグループで、大腿骨の後ろにある
- 大腿四頭筋は股関節屈曲+膝関節伸展をする
- ハムストリングスはその逆、股関節伸展+膝関節屈曲をする
- どっちも大事!
内転筋の名前と場所
内転筋(ないてんきん・adductors)は大腿骨の内側に住んでいるグループで、5つあります。
大腿骨周りにはたくさん筋肉があるって言ったじゃない?
大腿四頭筋、ハムストリングス、内転筋…っていうのは簡単だけど、これを数字にすると
4+3+5=12
になるんですね。
とは言っても、人によって数え方が色々で4つという人や6つという人もいます。
私は内転筋は5つ、と習ってきているのと、DLSでも参考書にしているAnatomy of Movmentにも5つと書いてるので、そっちで行きましょう。
別に舞台で踊るために、内転筋の数を正確に知っている必要はないですから。
内転筋グループメンバーはこちら
- 恥骨筋(ちこつきん・Pectineus)
- 大内転筋(だいないてんきん・Adductor magnus)
- 薄筋(はっきん・Gracilis)
- 短内転筋(たんないてんきん・Adductor brevis)
- 長内転筋(ちょうないてんきん・Adductor longus)
内転筋5つのうち、4つは恥骨エリアからスタートしていますが、
大内転筋は、ハムストリングスと同じように坐骨からスタートしています。
でも骨盤からスタート、というのは変わりないよ。
フィニッシュポイントは、薄筋を除く4つは大腿骨の内側のどこか、薄筋だけは膝関節を超えて、脛骨についています。
いつも通り、ダンサーだったら知っておきたいことは
内転筋という大腿骨の内側にある筋肉があって、骨盤から始まってるよ。
って事。
ここら辺で骨盤のプレースメントが大事な理由が見えてきたかな?
大腿四頭筋、ハムストリングス、内転筋。
ダンサーに大事で、たくさんある筋肉たちは骨盤からスタートしているんです。
ということは、骨盤のプレースメントがずれていたら、筋肉のスタート地点も変わってしまうし、
太もも周りの筋肉のバランスは、骨盤のプレースメントにも影響します。
内転筋の仕事
内転筋のグループとしての仕事は名前通り、大腿骨を内転すること。
つまり、太ももの骨を真ん中に持ってくる、という動きです。
バレエの例でいうと、
- アッサンブレで両足を空中で寄せてくる動き
- プリエの後半、膝を伸ばしてくるときに両太ももを近づける動き
などで使われますが、
5番ポジションで立つ=太ももが内転位に行く、ということになるので
- 3,4,5番で立つとき
- 3,4,5番からスタートする動きの軸足
などでも大活躍します。
それだけでもダンサーにとっては仲良くなっておきたい筋肉なんだけど、
- 片足で立つときの骨盤の安定
- 股関節の屈曲(恥骨についている子たち)
- 股関節伸展(大内転筋がメインだけど、ほかの子たちも高さによってちょっとお手伝い)
してくれるんです。
私も踊っていた時に信じていた事は
内転筋=ターンアウト
- 確かにちょっとターンアウトする子はいますが、メインでターンアウトする筋肉ではありません。
ただ、ターンアウトすると内転筋が前を向くじゃない?
だから
- 内転筋を前に持ってきて=ターンアウトして
- 内転筋意識して=5番ポジションをしっかりと閉める
- 内転筋が強い=軸足が安定するから、ターンアウトしやすい
などの点から、内転筋とターンアウトのコネクションが言われているんではないかと思います。
そのくせして、ダンサーは内転筋をストレッチしますけどね。
鍛えるんじゃなくて…
使いたいのに、強くしたいのに、トレーニングではなく静的ストレッチをする。
特にレッスンの直前に、ウォームアップの代わりに伸ばす。
そして一時期筋出力を落とし、プリエに進む…
さっき説明したけど、プリエの戻ってくる動きは内転筋が大腿骨が寄ってくる。
その動きをする筋肉が弱いと、膝を伸ばす動きをする大腿四頭筋はもっと頑張らなければプリエから戻ってこれない。
骨盤が安定しづらくなっちゃうと、股関節回りを固めて軸足を保とうとしてしまう…
DLSブログでストレッチの話をすると毎回書いているけれど、ストレッチがダメではない。
ただ
- どうしてやるのか
- 貴方に必要か
- 行うタイミング
を考えてくださいね。
「外もも」という筋肉は存在するのか?
内ももとなる筋肉を勉強したから、次は外ももに行きましょう…?
実はね、外ももと呼ばれるグループは解剖学的にだけ見ると存在しません。
内転筋の反対だから外転筋じゃない?と思うかもしれないけど外転筋という名前のグループも存在しません。
股関節外転をする筋肉たちは存在しますけど、メイン外転は中臀筋で、こいつは臀筋グループです。
まぁ、やっかい!
大腿骨の外側に筋肉がないわけではないですよ。
大腿骨を横から見ると、
- 外側広筋(大腿四頭筋のひとり)
- 大腿二頭筋(ハムストリングスのひとり)
が大きくてその上に、ITBと言われる変なヤツ、腸脛靭帯(ちょうけいじんたい・Iliotibial band、通称ITB)が乗っかています。
そして骨盤の隣になると、
大臀筋(だいでんきん・Gluteus maximus) 、中臀筋(ちゅうでんきん・Gluteus medius)、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん・Tensor Fasciae Latae、通称TFL)という筋肉があります。
正確にはこの部分は骨盤の横になるし、大、中臀筋は別に勉強したいので、今日は割愛。
ダンサーとして知っておきたい事は
- 外モモという筋肉グループは存在しない
- 大腿四頭筋は大腿骨の横まで来る
- ハムストリングスも大腿骨の横まで来る
くらいです。
やっかいなコバンザメ、大腿筋膜張筋
臀筋たちは飛ばすってお話したけれど、私が教師のためのバレエ解剖学セミナーでいつもコバンザメと読んでいるTFL、大腿筋膜張筋はお話します。
なんでコバンザメと呼ぶのか?というと、この子さっきみたITBにくっついているんです。
それだけ。
ちっちゃくて、ITBにくっついているんだけど、厄介なのTFL。
小さい癖に力強い筋肉で、股関節を屈曲させます。
でもその時に一緒に太ももをターンインさせてしまうの。
- 座っている時間が長い
- 太もも前のストレッチをせず、太もも後ろばっかりストレッチする
- コアマッスルや、腸腰筋が弱い
ダンサーはこいつの使いすぎがよく見られます。
結果としてデベロッペ・デヴァンをすると、足がターンインしちゃう。
それだけでなく、
- 骨盤ダック
- 骨盤の前の三角形が前を向かず、バーの方にローテーションしてしまう
なんて問題も引き起こす事があるんです。
ね、厄介でしょ。
外ももが張ってしまう…と悩んでいるダンサーにどの部分?と聞くと、この子のエリアを触る人が多いのね。
だから大腿骨の外側にある筋肉、という今日のブログで一緒にお話しました。
コバンザメ対処法は
- コバンザメのストレッチ(特に毎日座っている人は普段の姿勢で縮こまっているから)
- コバンザメの反対の動きをする大臀筋強化
- デヴァンの時に、コバンザメに対応する腸腰筋、そして腸腰筋が働くために大事なコアマッスルの強化
でございます。
私の立ち方本、ターンアウト本両方にコバンザメを含め大腿骨の前側ストレッチ方法が
プリエ本には大臀筋エクササイズが書いてありますので、そっちも参考にしてください。
まとめ:大腿骨の外側と内側の筋肉について
- 大腿骨の内側、内転筋たちはとっても大事!鍛えてください
- 大腿骨の外側には、外側広筋と大腿二頭筋がいます
- 外側筋肉の顔をしたTFLは厄介だから気を付けて!
ボーナスポイントとして
- ストレッチはダメじゃないけど、自分にとって効果的なものをやっているか?は吟味すること
エクストラリソース
興味があるエリアだけど、文章だと分かりづらい…という人はDLSオンライン学校の解剖学クラス3、大腿骨周りの筋肉と仲良くなろうをどうぞ。
しゃべり言葉+スライドなのでそっちの方が分かりやすいかもしれません。
シリーズのクラス1から順番に勉強した方がより頭の中で体全体が繋がると思います。
バレエ教師であれば、指導に必要なバレエ解剖学をまとめた「教師のためのバレエ解剖学講座」をどうぞ。
レッスン中、生徒の安全を守れる唯一の大人がバレエの先生なので正しい知識を身につけてくださいね。
Happy Dancing!