2020年の秋セミナーではこの質問を様々な教師用クラスで聞かれました。
五十肩の生徒さんをどう指導したらいいのか分からない
今までの来日セミナーではなかったので、取り上げたことはなかったんだけど、今日のブログでは五十肩っていうヤツにフォーカスを当てて考えてきましょう。
五十肩って何?
まずね、私はこの五十肩って名前が嫌いなの。
すっごく嫌い。なんで年齢なの?(この答えは後で出てきます…)
しかもこれ、ちゃんとした診断名でもないんだよね。
ぎっくり腰=急性腰痛の総称(もしくは診断するのが面倒)とか肉離れ(筋挫傷の総称、でも重軽度は確認していない)とかと同じ類な気がします。
ご存じの方がいたら教えてくださいませ。
英語ではfrozen shoulderという俗称で知られるんですが、正確にはadhesive capsulitisです。
肩関節の関節包(joint capsule)の炎症(ーtisとつく)って意味で、
adhesiveというのは粘着性とかと言われるもの、つまり関節が動きづらくなることを指します。
日本語では肩関節周囲炎というみたいですね。
日本整形外科学会のサイトによると
中年以降、特に50歳代に多くみられ、その病態は多彩です。
関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化して肩関節の周囲に組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。肩関節の動きをよくする袋(肩峰下滑液包)や関節を包む袋(関節包)が癒着するとさらに動きが悪くなります(拘縮または凍結肩)。
とあります。
そう、一言に五十肩といっても、いろいろな問題・症状があるんですよ。
四十肩と五十肩は違うの?
いいや、違わない。
Epidemiologyって言葉、聞いたことありますか?
疫学っていうらしいんだけど、統計学を使ってケガが起こりやすい人達(傾向?)を勉強するんだけど、
それによると
- 女性の方が男性よりなりやすい
- 50-60代で見られやすいが、40代より若い人にはほとんど見られない
- 両肩ではなく、片方だけになりやすい
- 人によっては完治に2-3年かかる(慢性炎症)
という傾向があるそうです。
(出典元)
だからたぶん四十肩とか五十肩とか言われるんだろうね。
ただし!
シロウトが自己診断をしてはいけない部分ってここで、私が今まで診てきたクライアントの中には「五十肩ですね」と言われる痛み、エリア、性別でも
- 30代後半で肩の痛み→姿勢の悪さから来る神経系の問題(つまり問題自体は頸椎にあり)
- 60代後半で肩の痛み+可動域制限→上腕二頭筋の腱断裂からくる炎症
- 40代後半で肩の痛み+可動域制限→上腕二頭筋と大胸筋、そして彼女の健康状態から来る肩関節の筋肉委縮
なんていうのがありました。
なのでしっかりと診断(ネット検索ではない!!)+治療&リハビリプログラムっていうのが大事になってくるのよ。
肩関節周囲炎とバレエ
色々な問題・症状があるんですよ、と書いたところでたぶん、DLS歴が長い人達は「あー来ちゃったよ」と思いますよね。
そう、最初にやらないといけないのは、どの部分がどのように炎症を起こしているのか?を確認する事。
つまり、治療家に診断してもらう事。
ただし、いつもと違って治療家はバレエのことを知らなくても構いません。
なぜかというと、この症状はバレエが原因でなるものではないから。
バレエレッスンは出来るのか?という悩みへの答えは
- 痛くない範囲であれば素晴らしく効果的
とお話出来ます。
最初に書いたように、長期戦になる可能性もあるので、レッスン参加のためには
- 大人バレエトレーニー自身がしっかりと理解して、自分で調整する必要
- バレエ教師が理解し、それに合わせてオプションを提供してあげる事
の両方が必要になります。
レッスンで避けたい動き
痛い動き、以上。
えーって思うかもしれないけれど、同じ「五十肩」と言っても痛みの具合や、可動域が違うので、
全員に対して、「5番ポジションは避けてね」とか「アロンジェは低めに」とお話出来ないんですよ。
痛い動きを避ける=踊れない、ではないので
- 1番から5番にあげるのが痛い→2番から5番は大丈夫(frozen shoulderでは横から動かした方が動きやすい傾向があるので)
- 2番でホールドしておくのが痛い→デミセカンド、もしくは手を腰に変更
- 正しい5番でホールド出来ない→低めの5番(指先が目の高さ)
など「柔軟性をもって」変更すればレッスンが出来ます。
ジャンプの振動、もしくは腕をふる、という動きが痛い場合は手を腰、もしくはポーデブラを使わない、という方法もあるし、
レッグマウントをすると痛い(そりゃそーだ、脚の重さがあるんだもんね)ならば、バーに足を乗せるリンバリングに変更できます
(ただし、大人クラスにてリンバリングの必要性があるか?は別問題だが…)
上でちょっと説明したように、左右均等に痛みが出るわけではないのですが、レッスンで均等に体を使うために、痛くない方の肩も、痛い方と同じ可動域に合わせましょう。
ただし!
投薬や注射で炎症を抑えている人は運動療法に行っていいのか(時期・頻度etc)は主治医に聞いてくださいませ。
バレエ教師として覚えておきたい事
レッスンでどうやって変更するか?は大人バレエトレーニーは知りません。
だからキーワードは
- どの動きが痛いですか?
そしてその答えに対して
- こうしたらどうでしょう?(このポジションで今日はやってくださいね)
という受け答えが出来るといいですよね。
バレエを習いに来ている人達に、自分でアレンジしてっていうのは酷だからね。
でも、初心者大人クラスや、オープンクラスであれば両手バーでポーデブラが少なかったり、
ポーデブラの難易度や通過点も少ないはずなので、レッスンプランによっては肩の痛みにあまり影響せずクラス全部を行う事が出来るかもしれません。
ただし!
バレエの先生は診断、治療行為はダメですよ、スタジオに免責があるかもチェックしたいですね。
大人バレエトレーニーで覚えておきたい事
バレエの先生はお医者さんではありません。
よく、なんでも先生に聞く人がいるんだけど、お仕事が違いますからね。
自分の体なんだら、ネット検索+シップ、っていうのも辞めましょう。
レッスン前に先生に怪我の状態を説明しておくこと、
この動きだったらOKとかこれだったらいい、と理学療法士さんに言われました、など伝えることをお忘れなく。
ながーく世間話とか愚痴を言うのではなく、必要な事をまとめておくのも大事です。
レッスンの前の時間は、自分も、先生もウォームアップに使いたいんですから。
あとね、腕のポジションで出来ないものがあるからって悲しまないこと。
正しく背中をホールドし、両手バーで踊る事はバレエレッスンの基礎です。
それが練習できるんだったら、レッスンに参加する意味がありますよね?
Happy Dancing!