※この記事は2016年8月に書かれたものを2021年に大幅アップデートしました。
忙しいバレエ教師の方から質問をいただきました。
強化エクササイズもやりたいけれど、レッスンも大事にしたい。レッスン中にやることがいっぱいすぎる!
どうやってバランスをとったらいいでしょうか?
難しいですよね。
勉強すればするほど、クラスに取り入れたい事リストが増えていきます。
エクササイズもその一つ。
先に答えちゃうと、正しい答えは一つではありません。
そのクラスのレベル、生徒さんの理解度やニーズ、スタジオの方針もあるでしょうから、この記事では
- レッスンにエクササイズを取り入れるメリットとデメリット
- レッスンのどこに取り入れることが出来るか?の例
をご紹介していきたいと思います。
ダンサーにエクササイズは必要か?
レッスンにエクササイズを混ぜる、混ぜない、どう混ぜる?の前に。
ダンサーにエクササイズは必要か?というスタートクエッションに答えてみましょう。
答えはYESです。
ささっと理由を書いていきましょう。
1)バレエレッスンは昔から大きくは変わっていないが、ダンサーに求められる身体的能力はクラシックバレエの中だけでも上がっている
(ジャンプの高さ、回転のスピード&数、全体的な公演数や運動量など)
2)バレエ学校にはなんらかのエクササイズクラスが含まれているため、留学を考えたらやっておきたい科目の一つでもある。
(私は元バレエ学校のエクササイズクラス講師でしたから信じて!笑)
3)古典バレエだけでなく、新作バレエやコンテンポラリーなどオーソドックスなレッスンでは対応出来ない振付がダンサーには求められている
(例 フロアワーク、性別に関係ないペアワークなど)
4)特に2020年初期からのコロナ渦で基礎運動量が減っている人が多い
という事で、時代に合わせて安全に(…安全を気にしない先生でも、プロを育てたかったら)エクササイズクラスの必要性が分かりましたでしょうか?
エシャッペ1000回とか、夏に暖房つけてリハーサルとかでは、ダンサーは育ちませんからね。
エシャッペ1000回やっても、上半身が強くなるわけではないし、正しいテクニックでやっていなかったら間違った癖が強くなるだけ。
暖房付けてリハしたら、熱中症になるし、筋力&体力には関係ない。
OK?
エクササイズを「指導する」勉強はしたか?
エクササイズが必要だ!という事が分かったら、次にお話しておかなければいけないのはこちら。
バレエの先生だからって、エクササイズ指導が出来るわけではありません。
- 中学の部活で新体操をやっていました
- 大人になってからバレエレッスンを週に1度、1年受けました
- オッケー、バレエスタジオ開きます
ってならないでしょ?
体を使う事、スポーツやトレーニングに慣れていたとしても
+
自分が生徒として習っていたとしても
「指導者」とは違うんですよ。
いや、そういう人多いよ?と思ったらこっちの例をどうぞ。
- 小学、中学、高校と算数やってきました。
- 学校の先生になります。
ってならないよね?
大学で教育学部だったら、学校の数学の先生になるオプションが出来るでしょう?
指導を学ぶ、というのはこういうこと。
ということで、レッスン中だとしても”エクササイズ”を指導する場合、しっかりとエクササイズを勉強してからにしてくださいね。
ダンサーがエクササイズをする場合は?
もちろん、自分「で」エクササイズをやる分には問題ありませんよ。
自分がダンサーだったら、ちょっと難しいレベルのオープンクラスに参加しても、コンテのワークショップに参加しても問題ないじゃない?
自分の体は自分の頭に繋がっているので、
- 先生に言われたこと
- 自分の体の声を聞くこと
の両方が出来たら問題なくエクササイズをこなすことが出来るはずです。
(もちろん、バレエの正しいステップの理解がある必要があるように、エクササイズを正しくやる知識は必要だけど)
先生、指導者は上の「先生に言われたこと」を発している側になるため勉強が必要だし、発する言葉の重さが違うってことは分かりますよね。
どんなエクササイズを勉強すべき?
- エクササイズ指導をするためにはどんな勉強が必要か?
という部分は
- どんなエクササイズを提供したいのか?
という先生(もしくはスタジオオーナー)にしか決められないゴール設定がありますし、
バレエ教師と同じように、同じ職業(例えばピラティスなど)をしていても先生のレベルは変わってくるためお答えできません。
What(何を勉強するか)が大事なのではなく、How(どう使うか)が大事という事ね。
指導資格さえ取っておけばOKか?と聞かれるとそこも微妙。
簡単に資格がとれるコースと、そうではないコースもありますし、
15年前に資格を取ってから一度も勉強していない、という人だったら…ねぇ。
最初はローリスク、ローリターンから
エクササイズ指導の勉強します!と言ってもコース探しからしないといけないでしょうから、比較的安全に出来るエクササイズとそうでないものがあるという事をお話しておきますね。
例えばプランク。
- 腕だけ疲れちゃっう
- 太ももに力が入りがち
- お腹が感じられない
という意見が多くありますが、これらが「感じられる」ならケガには繋がることがありません。
また、踊りで変な癖に繋がることはほとんどありません。
なぜか?
それはプランクの”振付”(パ)がないからです。
だから、どんなスポーツでもプランクを使う事が出来ますよね?
バレエに特化していないというか。
ただし、バレエに特化したものになればなるほど、リスクは高まります。
例えばショートフットといわれるエクササイズやったことあります?
足の固有筋たちを使って、アーチを上げる練習に使われることが多いですが、これを間違ってやったらケガに繋がりますし、変な癖にも繋がります。
- 足の裏を使う=ショートフットみたいにするのね!
と勘違いしたり、
- プリエで足裏を使って床を押せって言われたから!
とアーチを上げる動きをしていたらケガします。
(プリエでアーチは上げないの?と思った方「プリエ使えてますか?」をどうぞ)
バレエの動きに近くなれば、近くなるほどバレエの癖も出るため、
フロアバレエのようなエクササイズも、しっかりと指導者が目を光らせていないと自分の癖で、形だけでやってしまいます。
つま先を伸ばすエクササイズもそう。
前にポワントボールの記事を書いたけれど、このようにバレエに直結しているものほど厄介です。
その他に負荷をかけるもの。
例えばウエイトを使うのもそうだけど、近場でいうとエクササイズバンド。
つま先を伸ばす動きをやっているダンサーが多いですが、
バンドの負荷をかけて足首のアライメントに気をつけずに回数だけこなしていたら、足首の痛みに繋がりますし、
つま先を伸ばす=足指を丸める練習をしていたら悲しすぎます(バンドに隠れているので、足指まで見ていないでしょうし)
10回間違った形でエクササイズをしたら、10回分間違った癖を強くする練習をしている事になるのをお忘れなく。
- プランク、四つん這いなどスクエアをキープする練習
- 小っちゃいコブラ、下向きレッグクロスなど可動域の小さなエクササイズ
などだったら、失敗するリスクを下げることが出来ますね。
レッスンにエクササイズを混ぜる方法
ここから先は、どうやってレッスンにエクササイズを混ぜていくのか?をお話していきましょう。
これはアイデアなので、
- スタジオの方針
- クラスのレベル
- 生徒さんのニーズ
- 先生が何のためにそのエクササイズをやっているのか?
に合わせてアレンジしてくださいね。
レッスンの前にエクササイズ
王道のエクササイズ使い方でしょうかね。ウォームアップとして行うという事です。
レッスンにエクササイズをまぜる、と言ったらこの方法が頭に思い浮かぶ人が多いですよね。
レッスン前にエクササイズをするメリット
エクササイズで使った部分をレッスンで意識し続ける事ができること。
例えば、今日のレッスンで軸足のハムストリングスを使ってほしい、と思ったらウォームアップにハムストリングを使うエクササイズを入れて
- ハムストリングの位置を確認
- 筋肉にスイッチが入る感覚、使っている感じ
をエクササイズでカバーしておきましょう。
レッスンが始まったら、使った部分の意識(神経回路)も筋肉の感じ(イメジェリー)も残っているはずですから、
- 体(ここではハムストリング)⇔ダンサー
- ダンサー⇔先生(注意)
の共通言語が出来るはずです。
レッスン前にエクササイズをするデメリット
デメリットは時間調節とクラスの雰囲気をキープするのが難しいところ。
生徒さんの理解度によってはせっかくバレエをしに来たのに、踊らないの?と思う人もいるでしょうし、
時間が押してしまって、グランアレグロまでいけない!なんてこともあるかもしれません。
レッスンプランがしっかりと作られていないと、どんな事にフォーカスして今日のクラスを行うのか?の準備が出来ていないため、
エクササイズとレッスンがちぐはぐになってしまうかもしれません。
バーとセンターの間でエクササイズ
普段はリンバリングをやっているか、勝手に好きな事しておいてね、という時間ですね。
DLSで勉強した後、勝手にストレッチさせるのはマズイ!と気づいたら
「ストレッチしない!」と毎回クラスで注意するよりは、エクササイズを与えてしまった方が(先生も、生徒も)楽です。
最近ロイヤルバレエ団も取り入れているようだとワールドバレエデイでも分かりますし、私が研修していたオーストラリアバレエ団でもやっていましたが、
カフライズをここに入れるというのがメインストリームなイメージでしょうか。
バーとセンターの間でエクササイズをするメリット
エクササイズって正しく選べば筋肉を伸ばす+収縮させるの両方をやってくれるんですよね。
だから、バーで使った筋肉を緩やかに動かしながらセンターの準備をしていく事も出来るでしょうし、
感じづらかった部分の筋肉に刺激を入れたり、
逆に使いすぎてしまった部分をダイナミックストレッチすることも出来ますね。
→リリースとストレッチの違いを説明したビデオ
バーとセンターの間でエクササイズをするデメリット
集中力の続かない人(子供だけでなく笑)が多い場合は、
エクササイズの注意を考えるよりは自由時間を与えて脳みそ休憩を入れた方がいい場合もあります。
- グランアレグロの後にポワントもやりたい
- クラスの最後に発表会の振り写しがある
- 体力づくりのために、アレグロを増やしている
という場合は、時間のロスになるため、バーのあとすぐにセンターに進んだ方がいいかもしれません。
レッスンの後にエクササイズ
クールダウンとしても使える、レッスンの後のエクササイズ。
特にレッスン後、ベターと床にいる子たちが多かったり、急いで帰るためクールダウンの時間が取れないと知っているならば、
みんな一緒にやってあげたらケガ予防にもなりますよね!
レッスンの後にエクササイズをするメリット
レッスンの最後というのは、一番記憶に残りやすい時間でもあります。
今週はこのエクササイズをお家で練習してきてね
という形で宿題を提出するのもアリ。
すぐにレッスンノートに書けるしね。
ケガしている子たちが多いクラス、発表会後1-2週間のクラスで
レッスンは続けるけど、ひざ下に負荷をかけすぎたくないなぁ、というシチュエーションでもエクササイズは使いやすいですよね。
マットやプロップ(小道具)を使ったとしても、レッスン後すぐに消毒できるので今の時代は便利でしょうね。
レッスンの後にエクササイズをするデメリット
レッスンで集中力を使い切っている場合、特に夜遅くのレッスンだと床でスローなエクササイズをやったら眠くなっちゃう子たちがいるかもしれません。
冬だったら特にだけど、夏場の冷房が効いているスタジオでは、汗が冷えたら寒くなっちゃう、なんて人がいるかも。
ウォームアップギアを持ってきてね、という一言や、空調コントロールをしてあげる先生側の配慮が必要ですね。
まとめ:レッスンにエクササイズをまぜる時の注意
ダンサーにエクササイズは必要だけど
- 指導の勉強は必要
- 導入はローリスク、ローリターンから
- どうやってレッスンにまぜるか?はゴールに合わせる事
DLS公認スタンスインストラクターコースでは、「バレエの立ち方出来てますか?」「ターンアウト出来てますか?」の著者である佐藤愛(私ね!)が
ダンサーに特化したエクササイズを安全に+ダンサー一人ひとりに合わせて指導する方法を学びます。
今回お話した、全てのエクササイズ取り入れ方法はもちろん、
個人レッスンやケガからレッスンに復帰するためのリハビリプログラムの組み方も勉強出来ますよ。
Happy Dancing!