DLSポッドキャスト epi554 ストレッチしないと不安…

今年の来日セミナーも終盤!今回は、バレエのコンクールやストレッチに関する誤解についてお話します。

コンクールに出ることやストレッチをすることが目的になっていませんか?

一度ストレッチせずにレッスンを受けてほしい理由についてもお話しました。

生徒の安全と健康を第一に考えるために、本当に必要なことを一緒に考えてみましょう。

Transcript

未来の自分が、大阪に向かう新幹線にちゃんと乗れたか心配な佐藤愛です。

 

いつも通り、来日セミナー中にアップされるポッドキャストは事前に収録しています。

聞いてくださっている皆さんは、3月末、だいぶ暖かくなって桜も満開かな?

でもレコーディング今はね、1月の後半なの。

 

大阪で教師の為のバレエ解剖学講座モジュール1&2とダンサーの足セミナーが終わったら、

今年の来日セミナーは全て終わったことになります。

参加してくださったみなさん、大阪で待っててくれている皆さん、

どうもありがとうございました。

 

1月後半の私は、セミナーの申込状況を見ながら一喜一憂しています。

ご存じの通り、私のミッションは生徒の安全と将来の健康を第一に考えるのが「当たり前」になること。

当たり前になるためには、人口の半分以上が「それが普通でしょ」って言ってくれること。

 

  • 体の構造を学び、安全な動きを、年齢に合わせて指導するのが当たり前だよね
  • コンクールや発表会の練習を繰り返していても、動きに慣れるだけでテクニックや基礎が上達するわけじゃないって知ってるよね
  • 細かったら軽く踊れるわけじゃないし、早くからトウシューズが履けたからって、プロになる可能性が増えるわけじゃないよね
  • 健康じゃなきゃ、体を使う職業のダンサーになれるわけないよね

こういう風になってほしいと思いながら、毎日ポッドキャストを作ったり、

メルマガを作ったり、ボディコンクラスを指導したりしています。

 

生徒の安全と将来の健康を第一に考えるのが一番大切だよね、と聞けば

バレエの先生だけじゃなく、ダンサーも保護者も皆口をそろえてYESって言ってくれることでしょう。

でも箱を開けてみると、行動は危険な動きや健康を害する行動ばかり…

 

実際に、今回のセミナー準備の際に何人かのバレエの先生たちや保護者さんと会話をしました。

ある保護者さんは、新学期から高校生になるお子さんがいて

春休みは制服や、教科書などいろいろな準備があるって教えてくれました。

先生からよく聞かれる言葉は、この時期確定申告の準備が大変!でした。

確かにその通りだよね!って思う会話だったのですが、

ちょっとひっかかる会話もありました。

 

例えば、

  • 学校やお休みの時は出費が多い。
  • コンクールもたくさんあって、練習が多い。

この2つのポイントが一緒に並ぶと、私の中ではちょっとガッカリしちゃうんです。

さっきの方の様に、新学期の準備でまとまったお金が必要だったりすると思うですが、

コンクールは出るけど、体のための勉強はしないってことじゃない?

それって悲しいなって。

 

休み返上で、夢に向かって全力で練習してるんだったら、

同じくらいのパワーで、夢に向かって全力で体を守ってほしい

 

だって、たくさんコンクールに出場しても、

結局オーディション会場で何ができるか?が決定打になるって、

バレエ関係者だったら知ってるでしょう?

履歴書で選ばれるバレエ学校はないのよ。皆無。

 

たとえコンクールを経てバレエ学校に留学したとしても、

ケガのせいで、毎日のレッスンが100%で受けられなかったら、

手術の為に、日本に戻って来なければいけなかったら、

何のために留学したんだろうね、ってなってしまうじゃない?

 

今月のテーマ「ストレッチ」と同じように、

コンクールも私、一度もダメって言ったことはありません。

 

でも、

  • 体が柔らかかったらケガしないと思っているダンサー(エピソード551
  • ウォームアップにストレッチすればいいと思っているダンサー(エピソード552
  • 年だからいっぱいストレッチしないと間に合わないと思っているダンサー(エピソード553

がいるし、そう思っている先生たちが指導しているから、

エビデンスと共に、考えるべきポイントをお話してきたじゃない?

 

それと同じように、コンクールも

  • 1位になったら絶対にプロになれるという約束はない
  • 地元の小さなコンクール入賞歴は、バレエ学校やバレエ団には役に立たない
  • 幼いうちに出たコンクールの結果は誰も気にしないけど、その練習でケガしたんだったら一生影響する
  • コンクールはビジネスで、日本はコンクール数が世界一と言われているが、バレエ学校は気にしていない
  • バレエ学校によっては、生徒をコンクールに出さない

という事も知った上で、選んでほしいと思うんです。

 

でも周りの子達がやっているのに自分だけコンクールに出ないっていうのは勇気がいるよね。

コンクールレッスンに参加しないと、サボってるように見えちゃうよね。

先生にお声がけ頂いたのに断ると、先生に嫌われちゃうんじゃないかって心配だよね。

 

ストレッチしないと不安なダンサーへ

そういう不安が、ストレッチにもあると思います。

DLSのポッドキャストを毎回聞いてくれて、エビデンスの話も分かってる。

でも、周りの子達がストレッチしている中で、

一人だけウォームアップのエクササイズをするのって勇気がいると思う。

 

テレビや雑誌、電車の中吊り広告で、

「ストレッチしてケガ予防」「ストレッチしてむくみ解消、細い足へ」みたいなことが書いてあったら

やっぱりやらないといけないかな?って思ってしまうよね。

特に自分がケガしていて、お医者さんに行ったら、ストレッチしましょうって言われちゃったりね。

 

他の子よりも足が上がらなくて悩んでいたら、そりゃー柔軟体操、頑張りたくなるよね。

そういう不安なダンサー達がいたら試してほしいことがあるの。

 

1回のレッスンだけで良いから床でストレッチしないでレッスン受けてみる。

その代わりにエクササイズしてウォームアップする。

 

エクササイズが分からなかったら、早歩きしてスタジオに向かって、

バーで大きくポーデブラとか、分かる動きで大丈夫。

1レッスンだけで良いからやってみて

そしてその後にどうだったか考えてみて。

 

    1. 踊りやすくなった?
    2. 変化はあった?
    3. 体が硬くて、いつもみたいに最初のプリエが出来ないとか、ケガしそうって感じた?

 

ポジティブな変化があったら素晴らしいけど、

何も変わらなかったんだったら、ストレッチしても意味がないって証拠でしょう?

こういう証拠を自分で集めてごらん。

 

エクササイズの勉強するのもいいと思う。

だって、ストレッチの「代わり」が分かっていなかったら、

変更すること出来ないもんね。

 

お洋服もそうでしょう?

代わりの靴下がなければ、濡れた靴下のままでいるしかないのよ。

 

不安にさせない指導をしよう

先生たちは、生徒を不安にさせない指導をしませんか?

今見てきたように、ダンサー達がいくら勉強しても、

周りの環境が反対のメッセージを送っていたら難しいんだ。

 

流れるプールに流されるのは楽

流れるプールに反して泳ぐのは力がいるし、すぐに疲れちゃう。

安全なスタジオ作りの1つって、安全に踊る方向へ流してあげることなんですよね。

 

つまり、スタジオ内でそれが「当たり前」になれば

途中から入ってきた子で、昔のスタジオでオーバーストレッチばっかりしてたとしても、

数週間で「当たり前」に慣れてくれます。

 

さっきお話したように、生徒の安全と将来の健康を壊そうって思っている先生はいない。

だけど、何をしていいのか分からない人は多いのではないでしょうか?

 

だから今月、ストレッチを例にとって

「そうは言っても、体が柔らかい方がケガしないよね?」

「そうは言っても、ウォームアップで伸ばしておいた方が良いよね?」

「そうは言っても、年だから柔軟性が落ちちゃうでしょう?」

というテーマをカバーしてきました。

 

事実を知れば、行動が少しずつでも変わるはずだから。

 

今月のポッドキャストを聞いて

  • スタジオで体が柔らかいねーって褒めることがなくなった
  • バーレッスンとセンターレッスンの間のストレッチ時間をなくした
  • レッスンの前にみんなで一緒に体を動かした

なんて変化があったら、とっても嬉しいな。

 

先生が変われば、スタジオが変わるので、

私たちは努力し続けましょうよ、これが仕事なんだからね。

 

休んだ方が体が柔らかくなる?!

それだけでは不安は減らないと思ったので、もう1つ研究をご紹介しましょう。

 

1990年にInternational Journal of Sports Medicineに発表された規模は小さいけれど、

クラシックバレエダンサーに特化した研究によると、

6週間の夏休みの前後で体力や筋力、もちろん柔軟性もテストした結果、

お休みの後の方が、柔軟性、筋力、最大酸素摂取量つまり、体力が向上した

って書いてあります。

 

実験に参加したプロダンサー17名は休暇中、殆ど運動をしなかったと伝えているのに、

6週間の休暇後、休暇前と比べて様々な数値がアップしていたんです。

 

それだけではなく、その後のプレシーズン3か月、

つまり休暇後、次の舞台までの間のトレーニングで、

体力と筋力の両方がアップしたんですって。

 

これは何を指しているか?

シーズン終了時に練習しすぎでダンサー達は「燃え尽き症候群」になり、

体力や筋力など、体のコンディションが落ちていたのではないか、という仮説にマッチするんだそう。

だからこそ、ちゃんと休んだ後は、体が回復し、柔軟性も含めて良くなっていたってわけ。

しかも、ちゃんと休めたから、プレシーズンのトレーニングの効果もしっかり出ていたってこと。

 

分かりました?

  • レッスンをすればするほど、上達すると思っている人達
  • リハーサルを長時間やって、難しいバリエーションを何度も繰り返して
  • 1週間のうち7日レッスンにいけば強くなるって思っている人達。

人間の体はそうは作られていません。

春休みも含め、学校がお休みの時にしっかりと休むこと。

1週間の疲れを貯めないこと。

そっちの方が、レッスン前のギューギューストレッチよりも、貴方の柔軟性をアップさせるはずです。

 

こういう事が分かっていたら、お金がないって言いながら、

休み返上でコンクールにはいっぱい出るというダンサーが減ってくれないかな?

 

ネットでちゃちゃっと調べたところ、

日本のコンクールに出場するには1回8万から20万かかるそうです。

DLSのセミナーは安くはないですが、1クラス8万するものはありません。

2日間、朝から晩までクラスがある小鬼合宿でさえ、この値段にならないです。

 

衣装は1回の舞台で使うだけで、サイズが変わってしまうけど、

知識は、毎回のレッスンで使えますし、留学先にも持っていけます。

 

ま、そんな話をしても、このポッドキャストを聞いてくださっている時には、

年に1度のセミナーの申込は終わっていますけどね。

 

エクササイズしないと不安…の方がいい

ストレッチしないと不安ってダンサーに向かって、

休んだ方が良いよって言っても、今度は休むのが不安って思ってしまうかもしれませんよね。

 

それはそれで、別のトピックなのですが、

去年行った「保護者が知っておきたい成長期の体セミナー」

グラフと共に休息の効果をお話しているので、ご存じの方もいるかもしれません。

 

このクラスも、ライブラリの様にオンデマンドセミナーに出来るように準備中です。

多分4月にはお届けできるようになっているんじゃないかな?

詳細はメルマガでお話しますので、楽しみにしていてくださいね。

 

ダンサーの80%の急性のケガがストレッチ中に起きることを考えると、

究極の二択は、ストレッチしないで不安って感じるよりは、

エクササイズしないと不安の方を私は選びたいです。

 

本来なら、休むことを怖がらないでほしいんだけどね。

でも、まだそこまで行けないなら、ケガのリスクを考えた究極の選択ね。

 

レッスンの様にジャンプやポワントなど、大きなケガに繋がりやすい動きはされないですし、

足を高く上げるなど、今ケガしている時に出来ない動きもしなくて済む。

特にダンサーに特化したエクササイズを受けられるなら、

そっちの方がケガ予防にもなるし、上達にもなるでしょう。

 

レッスン前にストレッチしないと不安って思うように、

ウォームアップのエクササイズをしないと不安って思ってくれた方が

その後のレッスンでケガのリスクも下がります

 

とはいっても、分からないことは指導できないので、

エクササイズ指導の勉強をしていない人は

  • 自分でエクササイズ指導を学ぶ
  • エクササイズ指導をしてくれる人をスタジオに招く

を選んでくださいね。

 

もちろん、ウォームアップはエクササイズでなくてもOKです。

ライブラリの古株クラス、Safe Dance Studioには

スタジオで簡単に出来るウォームアップアイデアをいくつかご紹介していますので

参考にしてくださいね。

 

ダンサーのケガ因子

「エピソード546 体力&筋力は上達のカギ」でもお話しましたが、

こういった環境や周りの人達の言葉で育ってしまった不安を打ち消すには、繰り返しが必要だと思います。

 

なので、もう一度、「エピソード544 ダンサーは座って仕事する人と同じくらいの体力!?」でもご紹介した

「The Dancer as a performing athlete」の一節を覗いてみましょう。

「レッスンのし過ぎ、過労、不適切な床、難易度の高い振付、十分でないウォームアップは、

ダンスによるケガの原因となる要因の一部です。

近年では、特に筋力を含む身体的なフィットネスのレベルも、このリストに加えられるようになりました。」

 

ダンサーのケガ因子の中に、柔軟性が足りないことが含まれていないことを見てください。

ウォームアップが足りないことはケガの原因の1つに上がっていることをみてください。

そして、筋力は大切だよってことを覚えておいてください。

 

筋力は、床でのストレッチでは育ちません。

DLSを長い間フォローしてくださっている皆さんなら、

もう飽きた!と思うようなトピックだったかもしれません。

 

でも、「当たり前に」するために、半分以上の人が知っている&やっている必要があります。

そんな日が来るまで、何度も何度も伝えさせてください。

健康じゃなきゃ踊れないよってことを。

 

来日セミナーがあと数日で終わるということは、

DLS公認スタンスインストラクター5期生の情報がアップされる日が近いということ!

生徒のケガを予防してあげられる、エクササイズへの知識を勉強したい人は、

DLSサイトよりインストラクターコース資料請求ボタンをクリックしてくださいね。

 

ではまた、来週のポッドキャストでお話しましょう。

明日からの大阪セミナーで会う人は、

ストレッチシリーズの感想を教えてね!

 

Happy Dancing!

佐藤愛

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