今回は「もしも私がバレエ留学を考えている16歳だったら?」がテーマです。
脳は現在のまま、体だけが16歳に戻ったとしたら、どんな準備をするのか?
日々踊る生活への覚悟や、留学に向けたスキルの磨き方、解剖学の活用法など、リアルな視点でお話します。
バレエ留学を目指すダンサーへ、焦らずしっかり準備を進める重要性をお伝えします!
Transcript
バレンタインデーにポッドキャストをお届けしている佐藤愛です。
高校は女子高で、家政科もあった学校だったため、バレンタインデーは収穫日でした。
丸ごとケーキとかね、生チョコの箱詰めとかね。
まあ豪華な品ぞろえなわけですよ。
もちろん、ありがたく頂いておりました。
当時は当たり前のように頂いていましたが、今考えると手作りってすごいよね。
もしかしたらブランドもののチョコレートを買うより安いかもしれないけど、
何にしようかリサーチしたり、材料を買いに行ったり、もちろん時間をかけて作ったり。
ご存じのように、現在年に1度だけの来日セミナーのお申込みが行われています。
クラスは2時間だとしても、クラス内容のリサーチ、構成や資料の準備、申込用のテクニカル準備や宣伝など
裏準備の方がはるかに時間がかかりますし、ストレスです。
チョコレートをもらう方は、箱開けて、食べて、ありがとうって言うだけかもしれないけど、
作る方は何週間も前から準備を始めているのと同じように。
もちろん、お菓子作りが趣味とか、ストレス解消になるって人もいるでしょう?
私も実際にセミナーをやっている時間はとても楽しいですもの。
ダンサーと会話したり、参加者の目から鱗が落ちているのを見たり、参加者同士が仲良くなったりするのを見ていると、
仕事だというのを忘れてしまうくらい!
好きなことをしているからっていって、裏準備が必要ではないわけではないですし、
好きなことがスムーズに出来るためには、やっぱり練習とか準備が必要なんですよね。
チョコレートでも、セミナーでも。
さて、鬼が追い出される2月のポッドキャストでは、
What ifシリーズをお送りしています。
先週は、もしも私がバレエの先生だったら?というテーマで
いきなりDLSをやめて、1からバレエの先生になる準備をするとしたら何をするか?を考えてみました。
今日は、もしも私がバレエ留学を考えている16歳だったら?というテーマでお送りしていきましょう。
ただし、 映画「seventeen again」のように、
脳みそ、経験は今のままで、体だけ16歳になっちゃったら?というイメージでお送り致します。
だって、16歳の愛ちゃんに、今からお話することを言っても
聞かない気がするんだよね…
もっと早くから勉強させないと、高校生でいきなり今までの考え方をガラッと変えるのは難しいと思うんです。
この部分は最後にもう少しお話しますね。
バレエ留学のために、オーディションやコンクールの前にやりたいこと
私は18歳でバレエ留学をしましたが、
今回は多くの日本人ダンサーたちがある意味マイルストーンにしているみたいな16歳という年齢を使ってみます。
まず、バレエ留学したい!と思ったら
本当に毎日踊る生活を求めているのか?を試してみると思います。
- ずっと憧れてた先輩と付き合ったら、思っていたような人ではなかった
- いつかは食べてみたいと思っていたお店のランチメニューは、あんまり美味しくなかった
なんて経験は、皆さんも絶対にあると思うけど、バレエ留学も一緒です。
だって、プロダンサーになりたいというゴールがある場合、
バレエ留学はオプションの1つでしかないんですよ。
実際、日本で踊り、日本のカンパニーに入って、ダンサーとして踊っていく。
という人は存在します。
多くはないじゃん?と思うかもしれないけれど、
留学せずにプロになれますか?という質問にYES、NOの2択で答えるならYESです。
留学するとチャンスは広がる可能性がありますが、
同時に競争相手も全世界から集まります。
日本のカンパニーや学校の場合、海外からオーディションに来る人はほとんどいないでしょう。
私は海外のバレエ学校で留学生を受けていた側の仕事もしていたので、
留学のすばらしさ、世界が開き、友達が増え、
バレエだけでなく、語学など他の知識が増えることを知っていますが、
そうは言っても、今まで見てきた留学生の中で、
留学しない方がよかった子たちも一定数見てきました。
ということで、最初に確認しておきたいポイントは、毎日踊る生活が本当に夢なのか?
試す方法は長期行われるバレエ講習会に参加することです。
いつものスタジオで、認めてくれるクラス生や、
昔から知っていて、面倒を見てくれる先生、
慣れた交通や、スタジオのサイズなどから離れて、
ある意味孤独なところで毎日踊る生活が楽しいかを試すと思います。
DLSが昔提供していた、冬期バレエ講習会はこの考えの延長線上にあったので、
5日間普通は学校がある時間に、4コマのクラスを毎日受けるという生活を体験してもらいましたが、
こんな感じの講習会が見つかるといいですね。
バレエ留学やるって決めたら、身につけておきたいこと
毎日踊れて幸せだー!と感じることが出来たら、本格的にバレエ留学の準備を始めると思います。
私の場合、地元のスタジオでクラシックバレエを、
16歳だから、高校生の時には必修の英語のクラスだけでなく、
選択でも英語を選んでいたし、別の習い事の1つで英会話をすでに行っていたので、
この2つは今の生活のままでOKだとみなします。
その他にバレエ留学で必要なのは
- どのバレエ学校に行っても、カンパニーに行っても絶対に行われるコンテンポラリークラス
- 違う環境で、いつも以上に踊る生活に耐えられる体づくり
の2つを行うと思います。
白状するとね、私もバレエ留学っていうのはバレエが上手な人が行く場所だと思っていたのね。
そして、留学するのに必要なのは、高く上がる足と、細さだと思ってたの。
でも、バレエ学校に留学するって入試なんだ。つまり、入口。
留学したら、おめでとう、終わり。
ではなくて、留学してからがスタートなの。
だからこそ、バレエ留学の準備は、学校の生活に耐えられる自分を作ることだったんですよね。
しかも、オーディションでコンテが行われることもあるし、
さっき上げた点のように、長期に渡るバレエ講習会とか、
長期留学につながる可能性があるサマースクールや短期留学が必要なわけじゃない?
この後出てくる、長期に渡るコンクールもそう。
バレエ留学を考えたら、行動のすべてが「長期」目線になるんですよ。
だから体力と筋力は絶対に必要。
よって、
- コンテンポラリーのクラスを最低でも週に1回はコンスタントに受ける
- ダンサーに特化したエクササイズクラスを最低でも週に1回は受ける
の2つを急いで始めると思います。
経験って、あとからは作ることが出来ないじゃない?
早くスタート出来たら、長く続けることが出来るので、
後回しにせずに、すぐに着手すると思います。
もしかしたら、1番の一日踊れる講習会が夏休みに行われるのを待っている間に
既にこの2つは始めているかも。
ちなみに、この項目を考えている際に、解剖学を学ぶように伝えるかどうか?を考えていました。
ほら、佐藤愛といったら、バレエ解剖学じゃない?
体の構造を知っておくと、どの方向に努力すればいいか分かるし、
ケガしたときに、治療家の言葉や意見がより分かりやすくなる。
バレエ学校の多くは解剖学の授業があります。
なのでメリットはたくさんあります。
16歳の愛ちゃんにも、勉強するように伝えるか?
答えはYESなんだけど、もうちょっとニュアンスがあるなと思いました。
留学に向けて準備をしているので、日々のレッスン、英会話、コンテ、エクササイズは絶対だと思うんですよ。
そこに解剖学までやる時間があるか?
16歳って学生なわけじゃない?
授業や試験もあるし、スタジオの発表会もあるはずなのね。
だとすると、一日24時間だから、これ以上詰め込むことが出来ない気がするんだよね。
なので、
- バレエ解剖学のセミナーを受けられるんだったら、一年365日の中で正味7日くらいはやっておく
- エクササイズやレッスンは解剖学ベースで指導してくれる人を探す
の2点をおこなうことで、
セミナーで齧っておいて、毎週のレッスンで少しずつ知識を増やしていくという形が
学生には最適じゃないかな?と思いました。
ケガ予防や、健康な体のため、
レッスン中の集中力や記憶力のためには、
睡眠時間や休息時間が絶対に必要ですからね。
焦ったら負け
もしも私がバレエ留学を考えている16歳だったら?というテーマでお送りしておりますが、
先ほど、日本のダンサーたちは16歳で留学しなければいけないと思っている、とお話したじゃない?
だから、今あげたような練習をやるより、
早く留学しないと、チャンスを逃してしまう!と思っている人も多いと思います。
特にこのような考えを持っている保護者が多い気がします。
が、焦ったら負けです。
バレエ留学だけ体験して、おーわり!
と思っている人はいないだろうから、最終目的地はプロダンサーだとするでしょう?
そうするとね、 プロダンサーの契約をもらうところが最終目的地になるわけじゃない?
海外の場合、ほとんどの国で18歳以上が成人とみられるため、
このようなプロダンサーの契約は18歳以上でないと出ないんですよ。
なので、16歳でバレエ留学出来なかったら、
プロダンサーになることは出来ないから、バレエを諦めて勉強しなさい。
って思っている人がいたら、間違ってるよ、とお話させてください。
16歳で留学しても、プロになれない人もいるし
16歳で留学しなくても、プロになる人もいます。
踊れてたら。
踊れてたら、というのは踊れる体を保てていたらってことね。
つまり、ケガをしてなくて、健康だったらということ。
- 上手じゃないと留学出来ない。
- 難しいバリエーションが踊れないと留学出来ない。
- コンクールで1位にならないと留学出来ない。
と思っている人たちが多いのだけど、そういうことを学ぶためにバレエ学校に行くわけ。
だからスクールのディレクターたちはポテンシャルがある子たちを探しています。
これは、私が立ち会ったオーディションでもそうだし、
国際コンクールの規約や、審査方法を読んでいても書いてあります。
もちろん、時間がたくさんあるからぼーっと過ごしてOKとは言っていませんよ。
他の子たちは、大学生になってから就活を始めるのに、
留学を考える子たちは、ある意味それを高校生の時から始めるわけだから。
ただし、焦ったら負けです。
足が高く上がる理由は、床でスプリッツができるからではありません。
基礎体力、筋力があるうえで、正しいバレエの基礎が身についているから、
結果として、レッスンの後半でも足を高く上げる振付がこなせるんですよね。
最初にお話したチョコレートやセミナーのように、
受け取る側は、最終形を見ているんですよ。
お買い物している時ではなく、キッチンの片づけをしている時ではなく、
キレイにラッピングされたチョコレートを見るし、
何十時間もかけてリサーチして、何度も構成を練って、クラスの資料を作っている時ではなく、
セミナー1週間前に届くメールについているリンクをポチするだけ。
バレエも同じように、
- 足が上がる
- つま先が伸びる
- 高いジャンプが出来る
- いっぱい回れる
が最終形として目につきますが、
その裏に長年の努力があることを忘れてはいけません。
時間がないからってチョコレートを高温で溶かしたら、焦げちゃいます。
チョコレートに才能がないのではなく、作り手の問題です。
チョコレート職人なら、バレンタインデーの前日にささっと作ることが出来るかもしれないけど、
それも、恵まれた職人だからではありません。
何年も修行を積んだ人だからです。
時間がないと焦って練習し、間違った癖がついたら
それを修正する方が時間がかかるし、
ケガしてしまったら、100%で練習出来る時間が減るだけです。
焦ったら負け。
オープンマインドでチャレンジし続ける
私もそうでしたが、プロになる方法は、
「ローザンヌ国際バレエコンクールで賞をとって、バレエ留学し、卒業と共にカンパニーの契約をもらう」
だと思っていました。
でも、多くのプロダンサーと会話してきて、毎年バレエ学校の生徒たちを見ていて、
もっともっと、多くの方法でプロになることが出来るって知りました。
例えば、去年日本でお話したダンサーは、「若すぎるからカンパニーにはいらない」と言われたそうです。
25歳以上のダンサーを求めているとのことでした。
DLSで教師のためのバレエ解剖学を学んでいた方から、
「30歳で憧れの海外カンパニーに入った」というメールをもらったこともあります。
DLSのセミナーに参加しはじめた時は、
「愛さんのように医療関係で働きたい」と言っていたのに、バレエ留学先で心が変わり、
今はプロのダンサー生活を満喫している子もいます。
ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップをもらい、
ロイヤルバレエ学校で3年、カンパニーの舞台にも立っていた元生徒は
プロになって1年ほどで、これは違うと思いオーストラリアに戻ってきました。
今、彼女はファッションの勉強をしているそうです。
英国ナショナルバレエ学校の入学許可が出た元生徒は、
色々と考えたうえで、自分にとって一番大切なのは家族だから
家族から離れて生活するような職業は求めていなかった、と留学を辞めました。
今、彼女は地元の学校の先生になりました。
もちろん、私もバレエ留学後違う職業についた1人です。
何が言いたいかというと、もしも私がバレエ留学を考えている16歳だったら、
その夢に向かって、本当に必要なことを練習し続け、努力し続けるでしょう。
だけど、
- バレエ留学したらすべてが上手くいく
- 今年バレエ留学出来なかったらダンサーになれない
という白黒思考は辞めるように、努力したいと思います。
直接的にバレエに繋がらないように見えたとしても
その道を知っている先生が言っていることだったら、
オープンマインドに意見を聞いて、努力するべきだとも思います。
さっき挙げた、たくさんのダンサーの例は、
今の私だから知っています。
つまり、10年以上バレエ学校で専属で働き、世界各国のプロダンサーと仕事をし、
毎年、1000人以上のダンサーやバレエの先生たちと仕事をしてきた私が知っています。
でも16歳の愛ちゃんは知らないでしょう。
それは、16歳の愛ちゃんが才能がないわけではないです。
結局、16歳の愛ちゃんも今年で40歳の愛ちゃんも同一人物なので、
才能が、生まれ持ったものだと仮定したら、同じ才能レベルなはずですから。
では何が異なるか?
経験でしょうね。
経験を積むには時間がかかります。
今の私だったら、お金を払ってでも、
経験を積んだ人から学ぶことの大切さを知っていますが、
16歳の私は、なんだか知らないけどケチケチしてました。
バレエはお金がかかるから、って言われてきたからかもしれません。
周りの大人が、お金がかかる、お金がないと言っていると、
銀行口座の中身を知らない子供達も、同じくお金がないと考えていきます。
周りの大人が、16歳で留学出来なかったら、プロになれないと言っていると
プロダンサーの経験はもとい、プロダンサーと実際に話をしたことすらない16歳ダンサーも
同じように考えてしまうのと同じように。
でも、早く正しい知識が身につけば、
後で修正すべき点がなくなるので、最低限の出費で済むはずです。
例えば、16歳の愛ちゃんがコンテやエクササイズのクラスを受けていたら
お金がかかったことでしょう。
でもその投資があったら、バレエ留学の半分をケガのために踊れないで過ごすという無駄を防げたかもしれないし、
治療費も減ったことでしょう。
なによりも、18-20歳という年齢に、コンスタントに痛みを抱える生活をしなくて済んだとしたら、
とっても安い投資だったはずです。
体のためだけでなくても、心のためにも。
まとめ もしも私がバレエ留学を考えている16歳だったら?
- 本当にバレエ留学生活をしたいのかを試してみる
- 自分に足りないもの、練習不足の部分を増やす(私の場合はコンテとエクササイズ)
- 焦ったら負け、という知識を持つ
- オープンマインドに意見を聞き、チャレンジし続ける
追加ポイントで、
- 解剖学を指導に混ぜている人から学ぶことで時間を短縮+知識量アップ
- 正しい方向に投資する
を考えてみましたが、いかがでしたでしょうか?
最初の方でお話したように、16歳の愛ちゃんと電話して、
この内容を伝えても聞いてくれないと思います。
だからこそ、バレエが楽しくて、もっとやりたいなーって思い始める年齢?
だから小学生高学年あたりから中学生にかけてのダンサーたちが
留学するかどうかは別として、
- バレエを上達させるエクササイズ
- 理論的なウォームアップや年齢に合わせたレッスン量
- 解剖学的な体の使い方を学ぶ
のが「普通でしょ?」と思ってくれるようになっていたら、
16歳になってローザンヌ目指すぞ!という年齢になった時にスムーズにいくと思うんですよね。
逆にその時に
- 痩せてなければダンサーになれない
- いっぱいストレッチしたら足が上がる
- 16歳になって留学出来なかったら、ダンサーになれない
という考え方が「普通でしょ?」となっていたら、
16歳でバレエを諦めてしまうか、ボロボロでバレエ留学し、バレエ学校生活に体がついていけないか、
痛みを抱えて踊ることに疑問をもち、辞めてしまうでしょうね。
昔から、コンクールで名前を見ていた子が、いつの間にかいなくなった、という現象を
私たちバレエ界にいる人間は何度も見てきていますものね。
ご存じのように、年に1度だけ行われるDLS来日セミナーのお申込みが行われています。
まだ空きがあるクラス、キャンセル待ちのクラスは
DLSサイトでチェックしてくださいね。
今回やってみたように、今の自分に足りないものを探すのが難しかったら、
一緒に夢に近づくための努力の方向を考えてみましょう。
来週のもしもシリーズは、愛さん鬼じゃなくて、親になります!
お楽しみに。
Happy Dancing!
佐藤愛