2025年の来日セミナーのお申込がスタート!🎉
ケガ予防や21世紀のダンサーに必要な知識を、エビデンスに基づいて学びましょう。
今回は、プロダンサーの体力に関する驚きの研究結果と、バレエレッスンだけでは足りない理由を詳しく解説。
バレエ上達や指導に役立つヒントも満載です!
未来のダンサーをサポートする輪を広げていきましょう!
Transcript
バレエダンサーに向けて情報発信していて、年齢に合わせた正しいテクニックが大切だって言い続けていますが、
今年のセミナースケジュールを見てもらって分かるように、バレエレッスンの指導はしていない佐藤愛です。
確かに今年、より多くの学生~現役ダンサーへ情報をお届けできるように、
「ダンサーの為のバレエ解剖学」というクラスと「ターンアウト向上」というクラスが新登場しました。
特にコロナエリアから私がフォーカスしてきたエリアは指導者だったので
今年は若いダンサー達にも学ぶ場所を作ろうと準備したんです。
オンラインにはなりますが、保護者向けのセミナーも今年いくつかご紹介する予定です。
でもね、バレエレッスンを行うクラスはないの。
バレエ講習会を開催していた過去
DLS古株さんだったらご存じだと思うけど、実はいくつかバレエレッスンを行うセミナーをやってきました。
2015年から2019年まで行った冬期バレエ講習会では、
多くのゲストの先生たちを招いて、バレエ学校で実際に行われるような生活を日本で体験できる時間を準備していました。
ウォームアップエクササイズ、クラシックバレエ、ポワント、コンテという教科を1日中、学校の様に学びます。
その後に多くのリクエストを受けてDLSキッズというクラスもありました。
これは、エクササイズとクラシックバレエのクラスを行うもので、
私がバレエ学校で働いていた時に、若い子達のグループが行っていたものです。
11,12歳から14,15歳の彼らはパートタイムプログラムと呼ばれていて、
午前中に学校に行くか、通信で勉強し、午後にバレエ学校に来ていたんですね。
そして、一日に1-2コマのクラスを受けていました。
ロイヤルバレエ学校で言ったら、ホワイトロッジの子達の年齢です。
そして、14,15歳の子達から上が、さっきお話したように朝から午後までレッスンのある
フルタイムのバレエ学校の生活でした。
但し、彼らは夜遅くのレッスンはありません。
普通の学校が行われる時間に、バレエ学校の授業があるからです。
パートタイムの子達も、フルタイムの子達も、私はバレエ解剖学とエクササイズクラスを担当してきました。
せっかく現場で効果を感じているのだから、日本の子達にも受けてほしい。
そう思ってDLSで提供していたんですね。
バレエレッスンでは足りない
コロナ期間はもちろん来日が出来ませんでしたが、
学校に通えないなど生活スタイルが大きく変わったダンサー達向けのクラスは殆ど行われませんでした。
あとね、バレエ留学を夢見て頑張ってきた子達が、いきなり留学出来ない世の中になってしまったわけじゃない?
その子達に向かって、「バレエ学校ではね」と言いながら指導をするのは心が痛かったんです。
だって、私も毎年NHKでローザンヌ国際バレエコンクールを見ながら
「来年こそは、私も留学したい!」と夢見ていたんですよね。
だからね、先週まで毎日レッスンしていて、今年は海外のサマースクールが決まってる!という子達が
いきなりレッスンはないし、学校には行けないし、留学は全てキャンセルとなったとしたら、
悲しくて、なんのためにバレエをやってきたのか分からなくなってしまうと思ったんです。
私が出来たサポートは、インスタライブでバレエ解剖学を無料でお届けしたり、
ボディコンサークルなどにコロナ用スカラシップを作ったことくらいでした。
この期間は、先生たち向けのクラスを増やしました。
月一勉強会という名前の、毎月1つのダンサーのケガを勉強する場所を提供してきたんですね。
今は、それが教師の為のライブラリとなっていて、
毎月のテーマを待たなくても、必要なケガについての情報を、必要な時に、
どの国に住んでいても勉強出来るスタイルに変更しました。
では、どうしてコロナ後バレエ講習会をやっていないのか?
答えは、様々な研究で、バレエレッスンだけでは足りないと分かっているからです。
バレエレッスンがいけない、とは言っていないからね。
ただ、ケガ予防や21世紀ダンサーのレベルで踊るには、
バレエレッスンでは「足りない」と分かっています。
今年一番最初のポッドキャスト、エピソード542では
「バーレッスンの歴史と今の時代のダンサーが知っておきたいこと」という内容をお送りしましたが、
バレエダンサーに求められるものは時代と共に変わっています。
テクニックが向上しているのに、レッスン内容は歴史的に変化が少ないよね、という話をしたの覚えています?
今日はそこに、私も二度読みし、出典元を漁った一言をお届けします。
2004年、実は私がバレエ留学した年にスポーツメディシンに出された論文に、ショッキングな一節があります。
この論文はアクセス権が必要なのですが、
現在研究をされている人ならアクセスできると思うし、お金を払えば購入できるかと思います。
記事は「The dancer as a performing athlete: physiological considerations」です。
著者にはお金が届かないという詐欺みたいなシステムですから、論文全て、無料にしろよ!と私は思いますが、
その話はまた今度。
では論文の日本語訳です。
「プロのダンサーとダンス生は、他のアスリートと比較して
最大酸素摂取量(VO2max)の値が低いことを示しています。
プロのバレエダンサーの場合、これらの値は、同年齢の健康的な座りがちな人々から得られる値に近いです。
したがって、キャリアの中で
有酸素フィットネスとパフォーマンスレベルが平行して向上するほとんどのアスリートとは異なり、
ダンサーはこれらの2つの要素を独立して発達させているようです。」
最大酸素摂取量というのは、持久力や運動能力を計る数字で、
マラソン選手はこの数字が高くなり、運動不足の人はこの数字が低くなります。
そしてプロのバレエダンサーの場合、他のスポーツ選手に比べてこの数字が低く、
同い年の健康だけど、会社などで座ってお仕事をしている人達との数字と似ているんですって。
ショックでしょう!?
ビックリだよね。この論文には様々なダンサーの身体能力の比較やケガとの繋がりが書いてあるので、
また続きを読んでいきたいとは思いますが、今日はこの短い文章だけでも十分なニュースだと思います。
ちなみに同じダンサーの中でも、モダンダンサーは
クラシックバレエダンサーよりも体力があるという数字が出ていました。
それも興味深いし、
「この問題は、おそらく早期の専門化とダンス特有のスキル習得への偏りによって生じる」
と書いてあり、その為
「下肢の使いすぎによるケガのリスクが増加する」
とも書いてありました。
エクササイズと解剖学はバレエ学校で取り入れられている
先ほど、コロナの前に私がDLSを通じてお届けしてきたセミナーと、
バレエ学校でのお仕事内容をお話しましたよね?
そして、ショッキングな論文は2004年に出たよ、とお話しましたじゃない?
この2つから何が分かると思いますか?
そう、このような事実は、知識があるダンスエジュケーターには既に知られていて、
私が働いていた、小さな、私立のバレエ学校でも取り入れられていたということ。
そういうところで学んできたダンサー達が今、先生になる年齢になっています。
私の生徒達の多くも、地元のバレエスタジオで指導していたり、
トレーナーになったり、治療家になったりしていますから。
私が日本にいた時でも、ローザンヌ国際バレエコンクールが主催していた
バレエ講習会にエクササイズや、解剖学のクラスがありました。
その当時は、エクササイズと言っても柔軟体操の延長線上くらいのレベルでしたけど、
バレエレッスンの外で、筋力を育てるというコンセプトはあったということですね。
つまり、21世紀ダンサー達にとって
- バレエに特化したエクササイズをすることは当たり前
- 解剖学に触れたことがあって当たり前
だということです。
歴史的な面でも、エビデンスの面でも。
重要であることを、多くのバレエ関係者が知っているべきだということね。
バレエ上達したいなら、体のことを理解しよう
ダンサーは座ってお仕事している人と同じくらいの体力だという事実を知った上で
出来ることは何があるでしょうか?
まず、プロを目指しているダンサーや、現在プロ、セミプロの人達は
速攻バレエに特化したエクササイズクラスを探しましょう。
プロを目指していなくても、将来は踊る道を考えていなくても、
今バレエを習っているのが楽しくて、これから先も続けていきたいし上手にもなりたい
と思っている人達も同じです。
出来たら講習会で1回だけ、というよりは毎週受けた方が良いとは思います。
だって筋力や体力は、知識とは違って、お休みすると元に戻ってしまうから。
ただ、今までやったことがなかったら、導入の切り口として、
セミナーなどで勉強してみるのは良いかもしれません。
先生たちは、解剖学を学びましょう。
だってバレエのテクニックは変わるかもしれないし、今回見たように、新しい研究は増えていくけれど、
人間の動きを指導しているとしたら、解剖学は大幅に変わりません。
確かに2014年に新しい靭帯が見つかったとかもありましたが、
頻度は高くないですし、大腿骨の名前がいきなり変わっちゃうこともありません。
股関節の骨の数が変わることもないです。
解剖学を勉強することで、安全なレッスンを理解することが出来ます。
そして、その先は2方向に分かれられるでしょう。
1つ目はスタジオで安全なレッスンを提供する。
もしかしたら、YouTubeで見るような派手さはないかもしれないし、
国際コンクール上位の人達のような、難易度の高い技はやらないかもしれないけど、
バレエの基礎を提供するうえで知らなければいけない部分がカバー出来ていたら
スタジオ内のケガを大幅に予防することができます。
2つ目はスタジオにエクササイズを取り入れる。
特にコンクールに生徒を出している、留学希望者用クラスを提供しているなどしていたら、
彼らが世界で競い合う相手は既にエクササイズを取り入れていることでしょう。
残念ながら、今日お話した論文も日本語では出ていません。
なので、英語圏の人達の方が、このようなエビデンスベースの情報が早いかもしれないという事実があります。
それも踏まえて、昭和の夜までレッスンとか、泣きながらのストレッチなどではなく、
エビデンスと共に、未来形で生徒達を支えてあげてください。
1月15日に申込がスタートした、2025年最初で最後の来日セミナーでは、
このように、理論的に、将来のダンサー達を守るための知識を、様々なクラスを通じてお届けしています。
生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンが「当たり前」になる日を夢見て、
この3月に一緒に勉強していけるのを楽しみにしています。
スケジュール、クラス詳細はDLSサイトwww.dancerslifesupport.comより。
クラス内容への質問や、どのクラスが向いているか分からない人は、
hello@dancerslifesupport.comにメールください。
直接、一番適切なクラスのご紹介をさせていただきます。
今回は発表会と被っちゃってスケジュールが合わないけど、
DLSを応援してるよ!とおっしゃって下さる方は、
是非セミナーの存在をお友達や、生徒さん、保護者さんに送ってくださいね。
「当たり前」を作るには、人口の半分以上が「普通でしょ?」と思ってくれる必要があります。
1人でも多くの、ダンサーや先生たちに、こういう世界があることをお伝え出来るよう、
ご協力頂けますと助かります。
Happy Dancing!
佐藤愛