「骨」をテーマにした11月のポッドキャスト最終回!
ハロウィンの骸骨から始まった骨の健康シリーズでは、体重や骨の働き、骨の種類を深掘り。
今回は、疲労骨折の原因や予防策、周囲の大人たちの責任に焦点を当てています。
ダンサーが健康で踊り続けるために、先生や保護者が知っておくべき知識とは?
実用的なアドバイスが詰まっています!
Transcript
今月はずっと骨の健康についてお話してきましたが
どうして骨の話をしようかと思ったか?というと
10月のハロウィンデコレーションがお店に並ぶようになって、たくさん骸骨を見てきたから
という単純な佐藤愛です。
ハロウィンのデコレーションで、骨が多い理由はよく分かりませんが、
ちゃんと見てみると、まぁ酷い出来だよね。
という話をインスタのストーリーズでアップしましたが、見てくれましたか?
指の骨の数は違うし、上腕骨は大腿骨みたいな形だし、
まぁ、医療的なものではなく、イメージで作られたお飾りなので仕方ないですが。
それを考えると、理科室にあるであろう、人体模型はとても値段の張る、良い模型なんです。
授業で使われることは殆どなく、男性の模型であることが殆どだけど、
生徒、そして人口の半分は女の子だと考えると
色々な角度で問題点を指摘しなければいけませんが、
そうは言っても、よくできている模型なはずです。
医療関係で使われる模型は、精密である必要があるし、
だからこそ、値段も非常に高いです。
また、そう簡単に手に入りません。
その代わり、パチものは安く、ハロウィンでなくても、
バラエティーショップなど色々なところで手に入ります。
用途が年に1度のお遊びだったら問題ないのかもしれないけど、
教育の場だったら問題なわけですよね。
でも、用途を間違えてはいけません。
そうじゃないと、学びの場がうそつきの場になってしまう。
たとえそれは、予算がないけど、子供達に提供したい、という愛情からだったとしても。
値段だけで物事を見ず、そこから何が学べるか?将来どのような影響をうけるか?という
投資のリスクとリターンを考えていく必要がありますよね。
だって、時間だけは戻ってこないから。
これはハロウィンの話ではなく、先生たち、大人たちの話をしているんですが
何について私が話しているか、感じ取っていただけたら幸いです。
さて、話を模型の骨ではなく、ダンサーの骨に戻しましょう。
今月は1週目を除き、エピソード534で骨の健康に大きく影響する、体重についてを
オリンピック委員会の意見と共にお話しました。
全世界一位を目指す人達にシェアされている情報は、知っておいて無駄がないですよね。
エピソード535では、骨の仕事について深く勉強し、
どれだけ体の健康にとって、骨が大切かを考えてみました。
骨がなかったら、私たち人間は生活できません。
エピソード536では、骨の勉強の続きとして、
骨の種類を勉強しました。
バレエにとても役立つ!という感じではないかもしれませんが、
少しだけでも、自分の体と仲良くなった気がしたり、
理科室の模型が怖くなくなってくれると良いなぁと思います。
今日は骨のケガの1つ、骨折についてお話したいと思います。
骨のケガは骨折だけじゃない
今日のポッドキャスト題名にある「骨折と疲労骨折の違い」を説明する前に、
「骨のケガ=骨折ではありません」とお伝えしておきます。
骨も様々なケガをします。
- 骨を打撲したら、骨挫傷
- 骨の外側を作る、骨膜に炎症が起こったら骨膜炎
- 成長痛だと甘く見られるけど、オスグットやシーバー症など成長期の骨端線損傷
も、骨のケガです。
「成長痛を甘く見てはいけない」って何度もお話している理由が分かりますでしょう?
ケガではないですが、骨の中にある骨髄が感染すると骨髄炎という感染症になります。
今まで骨の大切さを勉強してきた皆さんなら、
「骨が折れていないから大丈夫」ではないということは分かるよね。
骨折と疲労骨折の大きな違い
さっきもお話したように、骨のケガの「1つ」骨折についてを見ていきましょう。
ダンサーなら疲労骨折という名前を聞いたことがあると思うんだけど、
疲労骨折は
- 小さな骨折やひび
- 疲れた時だけに起こる骨折
ではありません。
疲労骨折と骨折は種類が異なるケガです。
骨折は急性外傷、疲労骨折は慢性障害という種類の、骨のケガなんです。
骨折にも様々な種類がありますが、全て急性のケガです。
外力によって骨が折れ、いつケガしたのかがすぐに分かります。
私が6歳の時に骨折した上腕骨は、自転車での事故でしたし、
この前母が氷の上で転んで手首を骨折しましたが、
どうして折れたんだろう?いつケガしたんだろう?と考える必要がありません。
あーあの時、折ったのね。と記憶をたどることが出来るでしょう。
疲労骨折は慢性障害です。
慢性、つまり1回の事故、ジャンプの失敗ではなく、
繰り返し行われる運動(負荷)により、小さな骨折が起こることを指します。
針金を考えてみると分かりやすいと思う。
細い針金はぐにゃぐにゃ形を変えることが出来ますが、
同じ場所を何度も折り曲げていったら、その場所がポキっと折れますよね。
ハサミでカットするように、大きな力ではないかもしれませんが、
結果として針金が切れてしまうのが分かるでしょう。
その他のイメージとしては、擦り切れたバレエシューズ。
同じ場所がこすれて、結果穴が空きます。
疲労骨折とは、こういう感じのケガです。
確かに、ジャンプの着地で痛みが走ったから、骨折が見つかったという人もいるかもしれませんが、
話を聞いてみると、その場所は数か月前から痛かった。
違和感があった、腫れがあった、と言う人達が殆どなんです。
ちなみに、小さな骨折とお話しましたが、
バレエシューズの穴の様に、最初は小さいかもしれないけど、
そのうち大きくなります。
スタジオで見られやすい疲労骨折
リフトで失敗したとか、空中で誰かとぶつかってジャンプの着地で転んだなど
外力が加わることが殆どない、バレエスタジオで見られる骨折は
疲労骨折という種類だというのが分かりますよね?
そしてね、疲労骨折ってケガの最終形なんです。
レッスン終ったらちょっと痛いな、
朝起きて、体重乗せたら痛いな。
でも踊り始めたら痛みが感じられないし、日常生活には問題ない。
筋肉痛かなーなんて思って放っておくというダンサーが多いですが、
これが疲労骨折のスタートです。
もちろん、骨折ではないのでレントゲンでは見えませんが、
先ほどお話したように、繰り返し起こる負担から、痛みからスタートします。
ちなみに、骨と筋肉について理解があれば、
その場所には筋肉はないだろ、という事が分かるし、
筋肉を使うと痛みがある筋肉痛と、今お話している痛みの感じが違うということが分かるはずなんですよ。
だからね、ダンサーは体のこと、解剖学を知っていると便利だし、
体の声を聴く練習をしておくとケガを予防することが出来るんですよ。
もちろん、このような理解力がない年齢の子供が、
疲労骨折前段階の痛みを感じるような練習量を行っている訳がありません。
が、YGPが低年齢グループを開けるなんて話が出ていますから、
5歳から8歳の子達がコンクールに向けて練習を始めることでしょう。
そういう子達にコンクールは必要ない、と分かっている先生だったら、
年齢に合わせたレッスンプランを提供しているでしょうから、
不必要なケガを防ぐことが出来るはずです。
話がそれました。
少し痛いなを通過すると、痛い頻度や痛みの大きさが大きくなっていきます。
これをストレスリアクション、疲労反応と言います。
この段階でお医者さんに行っても、
「骨折してなくて良かったね」と言われます。
そしてそれは事実です。
が、「骨折前で見つけられてよかったね」という意味なので
「骨が折れていないからレッスンに戻っていいよ」とは誰も言っていないのです。
ただし、この理解がないと、せっかく体の声を聴いて、お医者さんに見てもらっても無駄ですね。
もちろん、子供だけではなく、周りの大人に最低限の理解が必要です。
バレエ大好きな子が、痛い、何か変だ、と親に言うには勇気がいるんだという保護者の理解と、
骨が折れていなくても、痛みがあるからレッスン内容を変更させる先生の知識。
別に保護者や、バレエの先生がお医者さんになる必要はないですが、
自分の仕事に関する最低限の理解は必要でしょう?
私がエクササイズ指導をしているけど、
エクササイズで出てくるかもしれないケガについて知らないから
痛かろうが、痛くなかろうが、皆プランク3分やります!としないじゃない?
プランク3分しても無意味なんだけど、今のは例ね。
疲労骨折と、偽関節
「ちょっと痛い」が「頻繁に痛い」に変わり、
それでもプッシュして踊り続けると
「疲労骨折」になります。
残念ながら、
- 疲労骨折が長引く(発見が遅い場合や無視した場合)
- 体にケガを修復するカロリーが足りない
- 骨が健康でない
場合、そして疲労骨折した骨の場所によっては
偽関節という骨が一生治らない問題が待っています。
偽関節という名前からか、あまり知られていないかもしれませんが、
疲労骨折後、骨が治らないケースは結構多くあるんです。
だからね、今月ポッドキャストでは骨のケガからスタートするのではなく、
骨の健康からお話をスタートしました。
たとえ疲労骨折になったとしても
骨が健康で、体の声を聴いてすぐに対応出来たら
偽関節になる確率を下げることが出来るからです。
もちろん、骨が健康だと疲労骨折のリスクも下がります。
さっきお話した針金。
針金が太かったら、折れちゃう前に時間がかかるって分かるでしょう?
バレエシューズの先っぽが皮だったら、
布のバレエシューズより擦り切れるまでの時間が長いでしょう?
これ。
同じ練習量だったら、骨が健康な方がケガのリスクが下がるのです。
疲労骨折と大人の責任
ダンサーが健康でいなければいけない理由の1つで
DLSが10年以上ずーっと言い続けていること。
それは、健康だったら防げるケガがあるからです。
もちろん、今まで勉強してきたように、
先生たちが練習量を吟味し、体型について口に出さない必要があります。
保護者が、ダイエットについての情報を家庭から排除し、良いスタジオ、先生を探し、
間違っていること、たとえば体重を計るとか、発表会前にダイエットさせるとか、
12歳以下でポワントを履かせる、なんてスタジオだったら
辞めさせる勇気を持たなければいけません。
治らないケガで苦しむのは、本人であり、
先生でも、保護者でもありません。
夢が叶わなくなるのは、本人であり
スタジオから有名ダンサーが出ない先生でもなければ
娘がバレリーナではない保護者でもありません。
大人たちは、何が一番大切なのかを再度考えてみる必要があると思います。
よくDLSには、保護者からの懺悔が届きます。
知っててもついつい「太ったね」と言ってしまう、という保護者の方が結構います。
そしてそれは、非常に悲しいことです。
ただでさえ、あまり会話がないであろう10代のお子さんと
かわす言葉が、彼らにとって良いものではなければ、
親と話そうなんて思わないでしょう。
家族なんだから本音を言ってもいいじゃない、と思うかもしれないけど、
ご家庭で「誰かを傷つける言葉を発していい」って言いますか?
「イジメはダメ」と教えているんだったら、自分も同じことをしてください。
コンクールに出さなければ生徒が減ってしまうという先生も多くいます。
コンクールの入賞者が多いスタジオに生徒が多いからって。
まず、自分の指導内容とビジネス力を見直しましょう。
そして、生徒がケガしたらバレエスタジオに通うことはない、と言うのも覚えておきたいです。
自転車で誰かが突っ込んでくるとか
ツルツルの氷の上で、滑ってしまうとか。
そういうことはあるかもしれません。
でもね、疲労骨折は防げます。
周りの大人に知識があれば。
もちろん、ダンサーに知識があれば素晴らしいですが、
レッスン量、内容、スタジオでの言葉を決めているのは先生で
食事量、家庭環境を作っているの親ですから、
私は周りの大人たちが頑張る必要があると思います。
データも同じことを言っています。
研究によると、
両親から容姿に関するコメントを定期的に受け取らなかった女の子が
後に摂食障害のような極端な体重管理手段を使用する割合は4.2%。
ただ、両親から定期的にコメントを受けていた女の子の場合、その数は約23.2%に近づきました。
つまり、約6倍のリスクがあるんです。
それだけでなく同じ研究で、子供の体重や容姿に関するより頻繁なコメントと
子供のうつ傾向の増加や自己価値観の低下との相関関係も発見されました。
つまり、親の言葉って大きいのです。
他の研究によると
バレエの先生は、摂食障害や自分の体が嫌いになるリスクにあげられています。
他のジャンルのダンスの先生はリスクに入っていません。
今あげたリサーチは、このポッドキャストのスクリプトが書かれたブログにリンクをつけてあります。
もっと深く読みたい人は、www.dancerslifesupport.comよりポッドキャスト537を検索してくださいね。
バレエの先生や保護者の言葉がどれだけ食事に影響し、
食事がどれだけ骨の健康に影響し、
骨の健康がどれだけ人間の健康やダンサー生命に影響するか分かっていただけましたでしょうか?
もっと疲労骨折について知識を増やしたい先生は、
先生向けのクラスですが、保護者の方も見て勉強出来ると思います。
今年の8月に行った、保護者用セミナーでもお話していますので、参加者の皆さんは覚えていると思います。
保護者が知っておきたいシリーズは、来年も戻ってきますので、楽しみにしていてくださいね。
今週も最後まで聞いてくださってどうもありがとうございました。
2024年残りの1ヵ月。12月のポッドキャストでは、
今年の振り返りと来年のゴール設定について一緒に考えていきましょう!
Happy Dancing!