「諦める」と「やめる」は違います。
自発的にやめる決断と、諦めるという選択の違いを、具体的なエピソードを交えて紹介しました。
特に、努力を続ける中で、どのような場面で諦めが生まれ、どうしてやめるという決断に至るのかについて考えてみました。
過去の経験や他者とのやり取りから得た学びから、自分の決断を見直してみてくださいね。
Transcript
毎日黒い服ばっかり着ているのにハロウィンが嫌いな佐藤愛です。
ハロウィンとは西洋文化だからオーストラリアでもやりそうなイメージがあるんじゃないでしょうか?
でもね、オーストラリアは南半球にあるので季節が逆になります。
収穫祭とか、パンプキンとかとは縁のない、夏の始まりな季節です。
なので、私がメルボルンにきた2004年はハロウィンをお祝いする人なんてほとんどいなかったんですよ。
アメリカのテレビショーで見るくらいなイメージ?
若者たちの間でドレスアップして遊びに行く言い訳くらいのイメージが、
最近では、そして特に私の今住んでいる地域は若い家族が多いので、
幼い子供の手を引いたお父さんや、学校の友達と一緒にエリアを回るなんて子達も見えるようになりました。
日本も結構最近でしょう?
ハロウィンが大掛かりなものになったのは。
なんでハロウィンが嫌いかというと、
子供達が回ってくるときに、ドアをバンバン叩くんですよ。
インターフォンを鳴らして、誰も出てこないと、ドアのバンバンに変わるんです。
まぁ、Trick or Treatだからね、それくらいは許してあげます。
そうなんだけど、うちの番犬”だったはず”のカヤック、
インスタとかで写真を見た事がある人は、黒くて大きな、
ジャーマンシェパードとオーストラリアンケルピーの混ざった子が
とっても怖がるのです。
だからハロウィンが嫌いになりました。
とはいえ、「お前、番犬だろう?」と思う事もありますが、
あの子は、しゃっくりの音や、子供の乗っている自転車等が怖いんです。
大きな黒い犬を番犬に…というアイデアは諦めました。
今日のポッドキャストでは「諦める」という事についてお話しようと思います。
先週のエピソードの続きと言うか、オマージュとなっているものなので、
まだ先週のポッドキャストを聞いていなかったら、
ペンとノートを持って聞いてみてくださいね。
諦めると、やめる
皆さんご存じのように、「諦めるな!」という英語は “don’t give up!”となりますね。
“give up” は「諦める」という意味になりますが、
「やめる」という意味で使われることもあります。
例えば「I gave up smoking」と言うと
「私はタバコを諦めた」と訳すより「私はタバコを辞めた」という方が自然ですよね。
今日のポッドキャストでは、こちらの意味での「諦める」
「自発的に、意図的に行動・企画を辞める」はお話していきません。
- バレエではなく、振付の道を進みたいから、コリオグラファーの勉強を始めた
- ケガのリハビリに集中したいから、舞台をキャンセルした
- 子供の体調が悪いため、今日のレッスンは休んだ
- スタジオの先生が間違った指導をしているため、バレエスタジオを辞めた
などは、自発的に、意図的に辞める事ですよね?
ポジティブなシチュエーションだったかどうかは別として。
そうではなくって、
- 誰かのせいにして何かを辞める場合
- 努力したり、他の方法を試していないのに、辞めること。
こっちの「諦める」をお話していきます。
先ほどのカヤックの例では、
「カヤックは怖がりな犬だから、番犬の様にしつけるのは諦めた」
は自発的に、意図的に辞める方で
「カヤックは怖がりな犬だから、ハロウィンの夜に震えているのは仕方ない、どうしようも出来ない」
というほうは、今日お話する「諦める」です。
私の例でいうと
「度重なるケガで、バレエ学校後踊ることを諦めた」
のは、自発的に「やめた」見えるけれど、実際は「諦めた」方。
- 卒業後、もう1年バレエ学校に残り、辞める前に試験等関係ないところでリハビリとテクニック向上に再チャレンジした
- 信頼できる治療家とリハビリ専門家にお願いし、ケガしない、踊れる体を作った
- ダメ元でもオーディションに挑戦し、最後まで挑戦し続けた
わけではないからです。
前にブログでも書いたけれど、
長年のケガと摂食障害で、これ以上踊りたいと思わなくなってしまったから。
スッキリ、出来るところまでやり切った!と思える、甲子園後野球を辞める感じの卒業ではなく、
「早く逃げたい、辞めたい」しか頭になかったからです。
逆に「ディレクターが変わり、10年以上働いていたバレエ学校を辞めて、DLS1本に絞った」
のは、自発的にやめた方でした。
新しいディレクターと馬が合わなかったのは勿論ですが、
その人から逃げるためというよりは、
- エビデンスに沿った、理論的なケガ予防やリハビリ、トレーニングを考えない人と仕事をしたくなかった
- 生徒の扱い方、生徒への対応で、同意できない行動があった
- DLSを通じて、より多くのダンサーや先生たちに情報を伝える方が、理解のないディレクターと働くよりも多くのダンサーをサポート出来ると感じた
というところから、バレエ学校を辞めました。
ちなみに、彼がバレエ学校のディレクターになった後、バレエ学校は潰れています。
が、今日はそれがテーマではないので置いておきましょう。
今日は私が今まで見てきた、バレエ学校の生徒達500人以上や
DLSを通じて関わってきたダンサー、先生2000人以上、
インストラクターコースのコース生達100人以上たちを観察してきて気づいた、
諦める人の特徴を4つ挙げたいと思います。
ただし、辞めちゃダメだ!と言っているわけではないですよ。
だから、最初に諦めると辞めるの違いをお話したんだから。
諦める人の特徴その1 「出来ない」をすぐに言う
DLS公認スタンスインストラクター4期生は、過去最大人数の40人以上でスタートしましたが、
コース中間地点ちょっと前の今、既に何名もコース離脱をしています。
去年初めて行われた、コース卒業生だけが参加出来るアドバンスドコースも、何名も離脱していますから、
コースを離脱すること自体が珍しいわけではありませんし、
DLSを知らなかった、嫌いになったから辞める、というわけでもないようです。
だって、既にコースで10ヵ月以上私と一緒に勉強している人達の中で
ハードだって分かっているけど、この先また勉強したい!と手を挙げた人達が
アドバンスドコース参加者なので。
ただ、コース離脱のメールを何度も読む中で、いくつかの共通点が見えてくるのです。
自分自身で「辞める」を選ぶ人は「出来ない」という言葉を使わず、
「諦めた」人は「出来ない」という言葉を複数回使っていました。
「辞めた」人は、
「OOという理由でコースを続けることが難しいのだけど、どうしたらいいですか?」
的な内容の相談があり、一緒に話し合った上で
「この形で続けます」の場合もあれば
「ここで離脱します」の場合もあります。
きっと後ろめたいものがなく、やれるだけやりきった感があるのか
こういう人達は、離脱後もDLSワールドで会う事が多く、
後輩たちをサポートしてくれたりもしていました。
様々な事情でコースを継続することが出来なくても、
勉強したいというゴールは変わらないからなんでしょうね。
諦める人の特徴その2 いつも「OOのせい」
先ほどの諦める人の特徴1“「出来ない」という言葉をよく使う”とペアになるのですが、
「諦めた」人は、メールには出来ない理由がたくさん書いてあります。
一見、体調不良とか、スタジオでのトラブルとか、
それは、コースやっている場合じゃないよね、というような話が書いてあるのですが、
事務的なメールのやり取りが続くと、辞める理由が変わっていく人もいますし、
前に「この部分は気をつけないと、コースを続けるのが大変ですよ」とアドバイスしたことが
修正出来ておらず、結果諦める結果に繋がっている人もいます。
コース生ではなく、セミナーでもそうです。
DMのやり取りでケガについての相談や、スタジオの悩みなどを毎日のように読みますが
- OOで勉強出来ますよ
- XXエクササイズが出来ますよ
など、DLS内の無料や有料情報を渡しても、
DLS以外のダンス治療家やお医者さんの紹介をしても
次の行動には進まないようです。
OOが痛いと言い続けているけど、リハビリやトレーニングはしていない。
だから発表会の度に同じ個所が痛くなる子。
どうしたらいいですか?という質問は来る。
その場合、南半球に住んでいて、彼女のことを知らない私は
「リハビリしましたか?」しか言いようがありません。
スタジオ内容を変えないといけないと思っている先生からもメールが届くのですが、
今年は発表会があるから忙しい。
そうですよね、発表会の準備は先生たちは本当に忙しいですよね、と思うのだけど、
その人のアカウントで見た投稿は
「発表会が終わりました!来年はOOをやります。
そっちの準備を考えただけでストレスです。」
みたいなことが書いてある…
もしスケジュールを立てていて、お金をもらっている先生がストレスだったら、
学校や日常生活もあり、お月謝を支払っている生徒達はもっと大変じゃないでしょうかね。
発表会の練習で、先生が毎週怒鳴られることはないですが、
生徒はありますから。
4,5年前からDLSで勉強したいけど、その前にパソコンが使えるようにならないといけない!
と言っている方は、毎回違う理由があって出来ないようです。
面白い事に、これら年齢も、バレエ歴も、住んでいるところも違う人達に共通する事は
「自分のせいだ」と認めることは全くない。
いつも、だれかのせいなんです。
- バレエの先生のせい
- 覚えが悪い生徒のせい
- 辞めていったアシスタントのせい
- 新しく買ったパソコンのせい
- 体重のせい
- 年齢のせい
- 次の舞台のせい
大人によくあるのは、「忙しい」なのですが
忙しくしているのは、その予定にYESと言っている本人なんですけどね。
諦める人の特徴その3 ゴールが定まっていない
「出来ない」という言葉が多く、その理由は自分ではなくほかの人やシチュエーションのせい。
それだけが「諦める人」の特徴ではないようです。
ゴール、目的が定まっていない人は、すぐに諦めます。
バレエ学校で働いていた時、日本人生徒をサポートする事が多かった私は、
バレエ学校に留学するのがゴールだった子達は、プロになりたい子達に比べ、
バレエ学校を辞める確率が高いなと感じていました。
インストラクターコースの申込書でも
コースを申し込んだ最大の理由を書いてもらっています。
その記載内容が薄い人全員がコースを離脱するわけではないですが、
コースを離脱した人の内容は100%薄いです。
この傾向は、コースだけでなく冬期バレエ講習会など他のセミナーでも何度も見てきたので
申込フォームの内容があまりにも薄い人は、
コースに申し込んでもらっても、コース生として迎え入れない事があります。
これはね、ビジネスとしては良くないと思うんですよ。
コースをお断りした人は1人を除いて、今後DLSのコースや勉強に来ません。
レアケースの1名は、やり取りをした後に「コースに向かないね」とお互い分かったので
今でもボディコンサークル等に参加してくれていますが。
ビジネスとしてはコース費用を払ってもらって
離脱しても、こっちの責任じゃないし、お金は入るし。
とした方がいいのかもしれませんが、
最初から向かない、と分かっているなら伝えてあげた方が良いんじゃないか?と私は思ってます。
さっき諦める人の特徴その1の終わりで
「様々な事情でコースを継続することが出来なくても、
勉強したいというゴールは変わらないからなんでしょうね。」
と言いました。
ゴールや目的が定まっている人は、そう簡単に諦めないみたいです。
そりゃそうだよね。
自分が体が硬いと言われ続け、無理やりストレッチした結果ケガした先生は、
生徒達に同じケガをさせないように!と必死に勉強することでしょう。
流行ってるみたいだから、周りの先生たちも勉強しているし…
とい感じでDLSライブラリに申し込んだ人は
さっきの先生より勉強への情熱が足りなさそうだって感じるでしょう?
「大人によくあるのは、「忙しい」なのですが
忙しくしているのは、その予定にYESと言っている本人なんですけどね。」
とお話したように、
なんでもかんでも予定を詰め込んでしまう先生たちも、
スタジオのゴールや、指導者としての目的が定まっていないようです。
大切なこれ!というものが分からないから、
何でも「次のチャンス!」と見えてしまう。
本当にやりたいことが見つかったら
その方向にベクトルを運ばないものは全てNOになるはずなんですが
本当にやりたいことが見つからないと、目移りしてしまう。
ほら、どうしても、並んでも食べたかったシャインマスカットのケーキがある人は
お店でそれを頼むよね?
もしそのケーキが売り切れだったら、たぶんまた来週も行くよね。
今度はもう少し早い時間に並ぶよね。
でも、その子の友達で一緒にお店に行った子は、
他にもある色々なケーキで迷うよね?
そんな感じ。
ゴールが薄々分かっているのに、見ないふりしている人もここに入ります。
私の様に、踊るのが苦痛になってしまい、バレエ学校に居るのが辛かった人は、
留学当時にあった「毎日踊って暮らしたい!」というゴールは変わってしまっていると思います。
でも、
- 親に迷惑かけたから
- 自分で決めたことだから
- これ以外に何がやりたいのか分からないから
など様々な理由で、「敢えてゴールを見ないふり」をしているダンサーに出会う事が多いですし、
そういう先生も多くいます。
それはまた、いつかのポッドキャストにしましょう。
諦める人の特徴その4 必死に頑張る、が努力だと思っている
- 必死で頑張ることは偉いことだ!
- 努力とは、無理やり頑張ることだ!
など思っている人が多いよね~ということで、
昔「似て非なるものシリーズ」ポッドキャストをやったの覚えていますか?
興味が惹かれる言葉があったり、最近当てはまってる気がすると思った人は
是非過去のエピソードに戻ってくださいね。
諦める人の特徴が、どうして必死に頑張る人なの?と思いますよね。
愛さん、また日本語間違えた?みたいな。
いえいえ、実は必死に頑張る人ほど、諦めやすいんです。
長時間の練習で疲労困憊し、歯を食いしばって努力する!
というのが好きなのはバレエだけでなく、日本の特徴らしいです。
オリンピックのボート競技金メダリスト、マッズ・ラスムッセンさんが
日本のチームに招待されて練習を見た時に
「ただ何時間も猛練習をして、自分たちのを極度の疲労に追い込めばいいってもんじゃない」
と伝えたそうです。
天才音楽家しか入れない、ジュリアード音楽院のパフォーマンス心理学者の
ノア・カゲヤマさんは
「練習にも科学的知識に基づいた”技術”がある」
と言っています。
確かに、モダンダンスの創始者、マーサ・グレアムさんが言ったように
「踊り手として一人前になるには10年かかる」
というのはあると思いますが、
それは毎日必死で、痛みを押し殺して、歯を食いしばって努力することとは違います。
さっきのシャインマスカットの例で、
ケーキを手に入れるために出来ることは、お店の前で必死に「食べさせてください」と頼み込む事ではないでしょう?
今日ダメだったら、明日もう少し早くから並ぶ。
つまり今日のミスから学んで、改善方法を考えて、
そして新しくチャレンジすることなんだよね。
こうやって、たとえ達成出来なかったとしても、
何度も、やり方を変えて、それでもゴールを追いかけることが出来る人は
諦めません。
諦める必要がないから。
ただ、バレエ学校時代の私の様に
毎日痛みと戦って、鏡の前の自分を見るのが嫌で仕方がない人は、
これ以上無理だって思って当たり前だよね。
私は、頑張らなかったのではない。
ただ、努力の方向性が間違っていて、正しい努力の方向を知らず、
無理やり頑張る以外の方法を知らなかった。
そして、それが疲労骨折や摂食障害の大きな原因となりました。
痛くても踊り続けることは努力だと思い、
食べない事は努力だと思っていたから。
やる気がないから諦めるのではない
1964年に行われた、犬にとってとってもかわいそうな研究によると
「無力感」をもたらすのは苦痛そのものではなく
「苦痛を回避できないと思うこと」だと立証されたそうです。
やる気がない人が諦めるのではなく、
何度も「出来ない」を体験すると、希望を失い諦めてしまう考え方が身につくそうです。
これを学習性無力感と言うそうです。
学習性なので、その逆も出来るそう。
つまり考え方を変えることで、諦めない自分を作ることができるということ。
- 「出来ない」が口癖の人
- 忙しい、先生がよくない、などすぐに言い訳を探す人
- 自分のゴールを定まっていない人、ゴールを考えるのが嫌いな人
- 必死で頑張るか、諦めるかの2択しかない人
は、生まれつきの性格ではないと覚えておいてください。
特に大人の皆さま、年齢を言い訳にしないように。
ニューロプラスティシティ (Neuroplasticity)、もしくは脳の可塑性と言われますが
脳みそは年齢に関係なく、生きている限り、
ニューロンがお互いに新しい結合を増やし、既存の結合を強化する事が出来るんですから。
また、大人だからこそ知っておきたい事として、
- 諦めない力は親を手本にしている
- 親が愛情が深くてどっしりと構えていると、子供のやり抜く力は育つ
とペンシルベニア大学心理学教授のアンジェラ・ダックワースさんが言っておりました。
- 出来ないと言わない
- 誰かのせいにしない
- ゴールを定める
- 無茶しない
これを聞いただけで、出来る気がしてきませんか?
ということで、今日のポッドキャストはここまで。
いつものバレエ解剖学とは離れているように感じる方もいらっしゃったと思うのですが、
- 正しいレッスンを地道に行うこと
- エクササイズを毎週続けること
- コンクールで上手くいかなくても、夢に向かって頑張ること
- ケガに負けず、ケガする前より強くなって戻ってくるダンサーになること
のためには、諦めない必要があります。
途中でもお話しましたが、18歳の愛ちゃんはこのことを知りませんでした。
だからこそ、今日のトピックが皆さんにとって、ちょっとお役に立てていたら嬉しいです。
来週は諦めない力を育てる4ステップについてを
私の大好きな本「Grit」を参考にバレエレッスンに当てはめてお話していきます。
楽しみにしていてくださいね!
Happy Dancing!