DLSポッドキャスト epi526 ダンサーが知っておきたい臼蓋形成不全

「楽しいからこそ休むことの大切さ」をお伝えしました。

仕事が楽しくても、楽しいからこそ休み、自分をリフレッシュさせることが大切です。

また、先週に引き続きバレエ解剖学をテーマにに、バレエでの股関節の重要性についても詳しく解説。

特に、アジア人女性に多い「臼蓋形成不全」に関する情報は、ダンサーやバレエ指導者にとって必読です。

Transcript

実は来週日本に向かう佐藤愛です。お元気ですか?

え?セミナー連絡あったっけ?と思った方、流石なマニア具合ですね。

今回の来日はプライベートの要件でございます。

 

愛パパエピソード、覚えていますか?

彼の70歳誕生日を記念して、家族旅行に行くことになりました。

せっかくだから、セミナーとか入れようかなとも考えたのですが、

休む大切さをお伝えし続けている私ですから、

口先だけではなく行動でも示せる様にならないと、と思ってプライベートだけにしました。

 

楽しいからこそ、休みをとる

もちろん大変な事もありますが、私の仕事はやりがいがあり、楽しいです。

特にセミナー資料準備やブログ、ポッドキャストのためにリサーチするなどという作業は

私が一番楽しいと思っていて

時間を忘れて続けてしまうものでもあるんですね。

 

楽しいからといって、休みが必要ではないわけではありません。

楽しいという気持ちを長く継続させるためにも、

楽しいだけでなく、質のいいものをお送り出来るためにも、

休息は大事です。

 

特にバレエの先生たちは、自分の仕事のやりがいもあるだろうし、

発表会の準備が好きな先生たちがたくさんいるのも知っています。

舞台のわくわくは、準備する方にもあるんですよね。

 

  • 装置はこんな感じで、ライティングのタイミングも揃えるし
  • プログラムのデザインはこうしたい
  • 衣装はこういう感じ…

気が付くと、真夜中になっていたなんてこともあるでしょう。

 

ダンサーもそうだよね。

踊るの楽しいから、職業にしたいと思うくらいだもの。

 

だけどね、疲れたから休むのではなく

「疲れないように休む」という考え方が出来ると、

ケガや燃え尽き症候群を防ぎ、フレッシュな気持ちでレッスンに向き合えると思います。

 

それが出来ないと、

「バレエが楽しいから休みたくない!」

ダンサーが

「バレエが下手だから休んじゃだめだ!」

と考えてしまうダンサーになってしまいます。

 

  • 好きだから休む
  • 疲れる前に休む

という考え方を、新学期に練習してみてくださいね。

 

股関節の復習

さて、9月のポッドキャストではダンサーの股関節にスポットライトをあてたシリーズをお送りしています。

先週のポッドキャストでは股関節についてのバレエ解剖学の基本を勉強しましたね。

覚えていますか?

 

  • 股関節とは骨盤+大腿骨で出来た関節であるということ
  • 球関節という特殊な形をしていること
  • その特殊な形から、様々な方向に動けること

を覚えていたら素晴らしい。

 

ちなみに、解剖学用語で股関節の動く方向を6つ言えますか?

  1. 屈曲
  2. 伸展
  3. 外転
  4. 内転
  5. 外旋
  6. 内旋

でしたね。

 

そして、エピソードの後半では

  • 股関節とは安定するように出来ている関節であること
  • 股関節のお椀が浅い状態を臼蓋形成不全ということ
  • 股関節の可動域が広いから褒められることが多いけれど、怪我しやすい事実もあること

をお話しました。

 

股関節の構造を理解せずに、無理やりストレッチすることで

人工的にケガしやすい股関節を作っている事もあるという話もしましたよね?

 

バレエ解剖学の勉強のコツ

忘れちゃっていても問題ないですよ。

初めてバレエレッスンを受けた時は、ついていくのに大変で

終わってから放心状態、先生の注意なんて覚えていないでしょう。

 

でも何年もレッスンしていると、レッスンの流れや言葉、

その先生が好きな注意が分かるようになってきます。

そうすると、注意を考える余裕も、覚えている余裕も出来るでしょう。

 

バレエ解剖学もそんな感じ。

最初から分からなくて当たり前です。

 

何度も繰り返すことが大切だから

2015年から1000人以上の先生たちが受講した教師の為のバレエ解剖学講座は、

当初、モジュール1&2をリピートしていないと

モジュール3や4に勧めない形になっていました。

 

コロナ中に月一勉強会というのが始まって以来、

そちらを受けている人達もいるので、リピートせずに進めるようになりましたが、

リピートは強くお勧めしています

 

すでに教師のためのバレエ解剖学講座を受講したことがある人は、

私が股関節の話をしているときに、

モジュールのスライドや参考書のイラストが頭に思い浮かんだかもしれません。

 

毎週日曜日に行われているダンサーのためのエクササイズクラス

「ボディコンサークル」を受講している人だったら、

股関節の構造は分からなくても、

屈曲、伸展などの解剖学用語は聞きなれているでしょう。

 

そんな感じで、何度も繰り返せば

記憶から引っ張ってくることもできますし、

勝手に思いつくイメージも増えてきます。

 

バレエ初心者だったら、先生が言っている言葉が呪文のように聞こえるけど

バレエ歴の長い人だったら

「トンベ・パドブレ・グリッサード・アッサンブレ・バッチュ」

と言ったら、勝手に動きが思いつくでしょう?

多分今、右側で頭の中で踊っていたと思うけど。

 

何が言いたいかというと、

  • 勉強は、最初は分からなくて当たり前
  • 身につくまでに、時間がかかって当たり前
  • 昔習ったことがあっても、時間が経ったら記憶が薄くなって当たり前

でも、それは出来ないではなくて、練習が必要だってだけだということです。

 

皆さんに出来ないことはないですよ。

勉強しなきゃいけないことは、たくさんあるとは思いますが…

 

臼蓋形成不全と日本人ダンサー

話を股関節に戻しましょう。

 

先週のポッドキャストで、

生まれつきでも、無理やりでも股関節の可動域を広げてしまった人は、

一生股関節周りの筋肉をトレーニングし続けなければいけないんです。

そのような強さを保たないと、関節が傷ついていきます。

軟骨がすり減ったり、骨が変形したりして

人工股関節になってしまうこともあります。

なんてお話したから、

 

私、臼蓋形成不全だし踊り続けることが出来ないんだろうか…

と不安に思ってしまったダンサーもいるかもしれません。

 

今日はその部分をもう少し見ていきますね。

臼蓋形成不全とは、先週のポッドキャストで勉強したように

股関節のソケット部分である寛骨臼の形成が浅い疾患です。

そのため、大腿骨の骨頭が動きすぎてしまうという問題があります。

 

アジア人に多いとも言われ、

男女比で見てみると、女性の方が多く見られるというデータがあります。

 

日本のバレエ人口を見ると女性の方が男性より圧倒的に多いことから

そして、日本で指導していたら、

必然的に遺伝子が日本人の人たちが多いだろうから、

結果として、臼蓋形成不全のダンサーを見る可能性が多くなります。

 

ちなみに、今遺伝子が日本人の人たちといったのは、

国籍で見る日本人ではなく、

遺伝子で見る日本人という方を言いたかったからです。

 

だからね、日本のダンサーたち、保護者達、

なによりも、バレエの先生たちが、股関節についてや臼蓋形成不全について

少しでも知っておくことは大切なんですよ。

統計的にも。

 

逆に言うと、

こういう事を知らず、無理やりストレッチをしていたら

危険因子を理解せず、ケガのリスクを理解せずに

指導しているという証拠でもあります。

 

幼いうちは、他の子たちよりも足が上がるとか、

床でスプリッツが出来るから上手ねーと言われるかもしれないし、

バレエ学校のオーディションにまったく関係のない年齢やサイズのコンクールで上位になることがあっても、

長期的に彼らの夢や健康を考えた行動とは言えません。

 

8月のDLSお誕生日イベントでも行った

「保護者が知っておきたい成長期の体」セミナーでもお話したけど、

プロダンサーを目指す子供がいたら、

最低でも18歳までは踊り続けることが出来る体を維持しなければいけません。

 

だって、職業として契約書が出たり、ビザが出る必要があるから。

それなのに早くからポワントが履けた方が上手だと思っていたり

今しか時間がないから!とケガをプッシュして踊り続けることを

肯定している先生がいることに頭を抱えますが、それはまた今度のお話で。

 

日本人だからターンアウト出来ない?!

この先に進む前に、もう1つだけお話させて。

 

さっき統計学的には、どういう人に臼蓋形成不全が見られやすいって言ったか覚えてる?

  • 男性よりは女性
  • アジア人に多いといわれる

と言ったじゃない?

 

そして、臼蓋形成不全は股関節の可動域が大きい。

だからケガしやすいんだけどね。

可動域が大きいということは

脚は高く上がりやすいし、ターンアウトもしやすいです。

 

亜脱臼や脱臼もしやすいし、靭帯にも大きな負担がかかるし、

股関節の変形にも繋がるんだけど、可動域は大きいです。

 

つまりね、アジア人女性、

つまり日本人女性ダンサーの股関節可動域は

統計学的には大きいはずなんです。

 

だけど、こういう言葉を聞いたことありません?

  • 私は日本人だからターンアウトが出来ない
  • 日本人体型だから脚が上がらない

そして、このような言葉の多くは、女性ダンサーが言うか、言われる。

どこからこの言葉が来ているのか、誰が言っているのか

元をつかむことが出来ませんでしたが、

私は人種差別と性差別から来ていると思います。

 

バレエと人種差別については過去のポッドキャストでお話していますが、

最近のエピソードだと519 「知らなきゃ困るちびっこダンサーのつま先」でカバーしたので

気になったらそちらも聞いてください。

 

DLSポッドキャストを携帯のポッドキャストアプリで登録しておくと

聞き逃しちゃうエピソードをなくすことが出来ますが、

アプリ派ではない人は、YouTubeで登録+通知ベルをオンにしておいてくださいね。

 

ダンサーたち、先生たち、そして保護者達。

何かやりながらこのエピソードを聞いていたら、集中して聞いて。

メモしても、正座してもいいから聞いて。

 

巷で言われている事が正しいって

鵜呑みにするんじゃないよ!

 

日本人だからターンアウトが出来ないんだと信じてしまい、

小さいうちから頑張ってストレッチした結果、

股関節のケガにつながってバレエが出来ないだけでなく、

杖が必要な生活にならないためにも、

情報は吟味すること

 

好きな人から聞くだけでなく、信頼できる人から情報を得ること。

 

ほら、好きな芸能人が歯磨きについてお話していたとしても、

歯医者さんの意見を聞くべきだって分かるでしょう?

 

歯医者さんのことが好きな人はいないと思うけど、

プロフェッショナルで、しっかりと勉強している人から意見を聞くでしょう?

そういうことね。

 

ターンアウトには股関節の可動域が必要です。

可動域とは、関節の動く幅だったね。

 

そして、可動域には2種類あります。

1つは受動的可動域、床で出来るとか手で押せば出来る的な可動域。

もう1つは能動的可動域、自分で動かすことが出来る可動域。

 

踊りの中でターンアウトを使いたいなら、

2つ目の能動的な可動域を育てる必要があります。

そしてこれってトレーニングの事だからね。

詳しくは私の「ターンアウト本」を読んでください。

 

臼蓋形成不全と痛み

と、皆さんにカツを入れたところで、

ダンサーの股関節について勉強してきた今日のポッドキャストの中で

一番のグッドニュースをお届けしましょう。

 

臼蓋形成不全だからといっても、痛いわけではありません

良かったね!

 

逆に股関節の痛みがあるダンサー全員が

臼蓋形成不全なわけでもありません。

臼蓋形成不全があって、股関節の痛みがあったとしても

臼蓋形成不全が原因ではないこともあります。

良かったね!

 

臼蓋形成不全とは、先ほど見てみたように股関節の形の問題です。

形の問題と使い方、筋肉の強さは一致するわけではないため、

臼蓋形成不全でも、自分の体の声を聞いて、

必要なトレーニングを行っているダンサーなら問題なく踊れます。

 

逆に股関節の形は教科書通りの「健全」と言われるものだったとしても

使い方が悪く、股関節周りの筋肉が弱い場合、

少しでも動いたら股関節が痛くなって当たり前ですね。

 

このような、ダンサーの股関節の痛みについては

来週のポッドキャストでもう少し細かく説明していきますね。

 

ただ、

  • このシリーズに興味があり、イラストやレントゲン、動きと共にダンサーの股関節についてもっと深く勉強したい人
  • 自分自身股関節に問題があって悩んでいるダンサー
  • 自分が股関節の痛みを抱えながら踊ってきたから、生徒たちには正しい事を指導したいと思っている先生

は教師のためのライブラリにある「股関節インピンジメント症候群」というクラスを勉強してみてください。

 

自分のスケジュールに合わせて、自分のテンポで勉強出来る録画セミナーです。

私の早口が分かりづらかったら、戻って聞き直す事ができるし、字幕もついています。

ダウンロードできるイラスト付きの資料もあります。

 

ケガの話だけでなく、レッスン中どうすればいいのか?など具体的に説明していますので、

生徒の安全を考えている先生たちはもちろん、

股関節に悩む高校生以上のダンサーにお届けしたいクラスです。

(高校生以上と言った理由は、先生向けで内容が難しいから。

それでも解剖学の勉強が好き!という中学生がいたらもちろんwelcomeです)

 

詳細は、DLSサイトのライブラリページからどうぞ。

股関節のクラスが見つからない、探すのが面倒!という人はhello@dancerslifesupport.comにメールか、

DLSのインスタアカウントにDMしてくださいね。

 

今日も最後まで聞いてくださってどうもありがとうございました。

また来週のポッドキャストで股関節について勉強を続けていきましょう。

Happy Dancing!

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