「トウシューズは12歳から」という当たり前は、DLSだけのルールではなく、
国際ダンス医科学学会で定められた国際的な基準です。
ただ、まだまだこのルールを知らない人が多いのが現状です。
このガイドラインについて掘り下げたので、
自分のスタジオが生徒の安全と健康を第一に考えた適切な指導をしているか確認してみてくださいね。
Transcript
DLS公認スタンスインストラクターコース4期生が正式にスタートし、
過去最大人数のコース生と一緒に10か月過ごせること、
そしてよりよいバレエ界を作っていけることにワクワクしている佐藤愛です。
今回のコース申込みももちろん、
毎回来日セミナーやDLSお誕生日の8月1日付近に行っているイベントでもそうですが、
皆さんに見えている部分のお仕事と、皆さんに見えない部分のお仕事があります。
皆さんに見えない部分のお仕事とは、
クラス資料作りとか、会場予約とか、多分バレエの先生たちだったら「そーだよね」と思うような作業と、
ゴールやKPI設定、作業スケジュール制作、手順アップデートなど、
会社でお仕事をしたことがある人たちならわかるような作業があるのですが、
準備だけでなく、終わった後の死体解剖って言って通じる?
イベント後に、何がうまくいって、どこの改善が必要か?という研究もします。
バレエダンサーでもわかるような言葉にしてみると、
コンクールに出るという場合、当日踊っている2分程度が目に見える部分だとしましょう。
将来につながる可能性を考えずたった2分のために、
自分の体や健康を犠牲にする人たちがいるのが悲しいですが、
今日はその話ではないので飛ばします。
今年のDLS誕生祭の際に、コンクールについてのセミナーを
保護者やダンサー向けにやろうと思っているのですが、どう思います?
ぜひポッドキャストの感想はもちろん、
こういうイベント、クラスがあったら助かるというのを教えてくださいね。
メールの場合、hello@dancerslifesupport.comへ
インスタのDMでもお待ちしております。
コンクールに出る前の準備として、
バリエーションを練習するというようなみんなが知っている準備と、
本番用ポワントを慣らす、かがるというダンサーなら知っている準備部分や、
衣装発注とか、音楽の編集など先生なら知っている準備があるじゃない?
それ以外に、コンクールの結果と関係なく、
終わってからリフレクションをするっていうこと。
こういう行動を、医学英語のautopsyを使って表現することがあるんだけど…と書きながら、
もしかしたら私が医療関係者だからこの単語を使う環境にいたのかもしれないと思い始めました。
一般で使うことがあるんでしょうかね、英語圏に住んでいる人は教えてください。
autopsyとは日本語で死体解剖という意味なので、今日はこの言葉を使いました。
あー長い説明でしたね。
発表会でも、スタジオ内ワークショップでも、コンクールでも。
イベントが終わったら終わり!と思っている人たちが多いのだけど、
大切なのは、イベント・舞台ではないんですよ。
もちろん、それが目玉ではあるんだけど、
そのあとに死体解剖することで、本当の意味での成長が出来ます。
特にコンクールや、私の場合コース申し込み、来日セミナー申込のように
結果がほかの人の行動に任されている場合は、
自分でやった努力や行動を顧みる必要がありますよね。
ほらコンクールの結果って、
- その日に誰が参加したか
- ジャッジが何を見ているか、何が好きか
によって大幅に左右されますでしょう?
同じようにコース申し込みや来日セミナーも、
私のメッセージや提供内容に対し、
申し込んでくれる人の行動が結果を左右するわけです。
例えばコロナ中だったら、海外から来た先生の
不特定多数が集まり、電車にのって東京に行かなければいけない
講習会に参加したくないと思う人が多くて当たり前でしょう?
そして、それは私の情報提供とか、マーケティングとかと全く関係ないわけ。
私のせいでもないし、申込者のせいでもないし、
It is what it is。
でも自分の努力の部分はリフレクションすることが出来る。
- ケガせず練習を乗り切った
- バリエーション部分だけでなく、作品についての理解を深めた
- 事前に決めていたルール、例えば早く寝る、休日はしっかり休むなどを達成できた
などは、自分自身が知っているはず。
上手くいかなかった部分があったら例えば、
- ダメだと分かっていても、コンクールが近づくにつれて体型に執着してしまった
- 足首が痛かったのに、先生に言い出せなかった
などがあったら、次回はどうやって改善するか?を考えることが出来ますよね。
この部分が成長でしょう?
今日お話している死体解剖ってこういうことね。
私の4期生申込の死体解剖も、たくさんの学びがあったのだけど
今日ご紹介したい学びは、「トウシューズは12歳から」という当たり前が当たり前でない事実です。
DLSを長くフォローしてくれていたり、
長く行っている「ダンサーの足」セミナーのページを読んでくれていたり、
様々なセミナーに参加してくれていたら分かると思うけれど、
DLSでは、IADMSのガイドラインにそって、12歳未満のポワントは危険だと判断しています。
IADMSとは国際ダンス医科学学会の頭文字で、
ガイドラインは、世界各国の医療関係者が合意し、共同で提出したもの。
12歳からポワントというルールは、私が決めたわけではないとご理解くださいね。
さっきお話したように、この話は何度もしているから、
今回の申し込みの資料や、SNSで発信している情報、無料説明会などでカバーしなかったんですよ。
だって、当たり前じゃん?って思っていたんです。
日本語になっている資料だし、一般の人たちがアクセスできるし、
ネット検索でトウシューズはいつから?みたいに調べたら出てくる資料だもの。
でもね、ふたを開けてみたら、申込してくださった方々の半分が、
12歳未満でポワントレッスンをしている様子が見えました。
学んだことは2つ
- 自分の中の当たり前は、世の中の当たり前ではないということ。
- メッセージは何度も何度も、自分が飽きるくらい伝えること。
DLSをフォローしてくださっている皆さんは、
生徒の安全と将来の健康を第一に考えるのを当たり前だと思ってくれているでしょう?
先生が生徒の安全を確保しないなんておかしい、って思うでしょう?
健康第一って四字熟語を知らない人はいないでしょう?
でも、世の中はそうではないんですよね。
「痛いのを我慢してストレッチしましょう」
「泣いている生徒には申し訳ないと思いながら、甲だしをさせます」
「アラセコンドが上達するために、4人1組で床でストレッチします」
これらはここ最近、SNSで見た文章や、セミナー参加者から聞いた言葉。
4人1組ってどういう意味かというと、
1人が上体を抑え、1人が軸足、1人がアラセコンドの足を押さえて行うストレッチだそうです。
拷問だよ、これ。
努力ではないし、指導ではない。
100歩譲って、押さえるストレッチをするとしても、
知識のないほかの生徒にさせず、プロで勉強した人が、
生徒の健康状態や成長段階、ケガの有無を理解したうえでアシストする形とは全然違うからね。
- 子供の股関節、つまり骨盤や大腿骨はまだ骨がくっついていないという事実
- 痛いと感じると筋肉は固くなること
- 痛いのが当たり前と指導すると、彼らはケガしたことに気づかず、一生を過ごす可能性があること
を知らず、2024年にまだこのような野蛮なスタジオが存在します。
だからこそ、何度も何度も、大切なことは周りが飽きるまで、
自分が飽きるまで言い続ける必要があるということも学びました。
10年以上DLSをやってきて、こういうことを言い続けて、
ダンサーの健康を守るために勉強したい!と手を挙げてくれた人たちの中でもこうなんだから、
DLSを知らない人、もしくは、私のことを嫌いな先生のスタジオではどうなんだろうね。
ずっとフォローしてくれている皆さんには悪いけれど、
- 1番ポジションでかかとをつけます!
- 引き上げても、肋骨は前に押し出しません!
- カンブレデリエールは腰から反りません!
みたいなレッスンの基礎は何度も言わないといけないのと同じように、
生徒の安全と将来の健康は第一に考えてください!
というのは何度も言い続けなければいけないのでしょう。
先ほどお話したIADMSの資料は、
DLSサイトの今日のエピソード 513に貼っておきますので、
先生はもちろん、ダンサーも、保護者もダウンロードして読んでくださいね。
今日は、復習としてガイドラインの7つの項目を読み上げます。
ちなみに12歳以下と書いてありますが、原本の英語版にはnot before 12と書いてあるので、12歳未満が正確かもしれません。
- 決して12 歳以下ではないこと
- もし解剖学的に適切な水準に達していないのなら(例えば、足首と足関節の底屈可動域 が不十分であったり、下半身の骨格配列が悪かったりすること)決してトウシューズを履かせないこと。
- もし本気でプロを目指しているというわけでないのなら、トウシューズを履くことを思いとどまらせること。
- もし胴体と骨盤(体幹の筋肉)や脚が弱いなら、トウシューズの練習開始を遅らせること(そして筋力強化プログラムを行うことを考える)
- 足と足首が過度の関節可動域をもっているなら、トウシューズの練習開始を遅らせること(そして筋力強化プログラムを行うことを考える)
- もしバレエのレッスンが週 1 回なら、トウシューズを履くことを思いとどまらせること。
- もしバレエのレッスンが週 2 回で、上記の条件に当てはまらないなら、バレエを始めて 4 年目にトウシューズの練習を始めること
さぁ、答えてみましょう。
あなたの通っているスタジオは、このガイドラインに沿って行っていますか?
YESの場合、おめでとうございます。
生徒思いの先生が、しっかりと勉強をしてくれている証拠です。
少しくらい月謝が高くても、健康は買うことが出来ませんから、そのスタジオに通い続けましょう。
NOの場合、一度立ち止まって考えてみましょう。
その先生が100%悪いとは言いません。
トウシューズを履かせてくれないから、ほかのスタジオに変えますという保護者がいるのを知っているからです。
消費者の声は強いのよね。
ほかにも、このガイドラインを読んで気づくことはありますか?
- 可動域が不足している場合も、可動域が大きすぎる場合もエクササイズが必要だと言っている
- 胴体、骨盤、脚の筋肉が弱い場合も、エクササイズが必要だと言っている
ちなみに、脚とはlegのほうであり、footではありませんから、甲出しの話ではないです。
だから、ダンサーの足セミナーではポワントに耐えれるだけの強さが出来ているか?
をテストする方法をお話しているし、
ボディコンサークルではつま先付近のエクササイズを行う月がありません。
私が行っていることは、「愛さんの趣味♡」ではなく、
この世界のプロ、トップ、学会が言っていることをエビデンスとして
日本の皆さんに伝えています。
通っているスタジオではガイドラインに沿っていないけど、
そう簡単にやめられないという人は、
DLSのボディコンサークルやエクスプレスでケガしない体を作ってください。
先生はあなたの一生の責任を持ってはくれませんから。
また、1年に1回しかないDLSの来日セミナーをしっかりとチェックしてくださいね。
ダンサーの足セミナーは、毎年どこかで行っています。
知識はあなたの健康と、夢を守ってくれます。
体は1つしかないのだから、大切にしてくださいね。
ということで今日のポッドキャストはここまで。
来週金曜日にまたお話しましょう。
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一緒に、トウシューズは12歳からというバレエ界を作っていきましょう。
Happy Dancing!