大きな決断を迫られる場面ってありますよね。
今回は、「直感で決める時 VS 立ち止まるべき時」をテーマに取り上げ、
バレエの世界で直感と冷静な判断のバランスがいかに重要か、そのポイントをお話しました。
生の舞台でのアドリブや指導者としての決断において、
直感と冷静な判断の使い分けがいかに必要か、ぜひお聞き逃しなく!
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
今日のポッドキャストでは、「直感で決める時 VS 立ち止まるべき時」という
なんだかバレエと全く関係のないような題名でお送りします。
直感で決めるとは、「お、これいいな」的な感じ。
深く考えず、ビビッと感じたものに対して走る感じ。
逆に立ち止まるべきというのは、言葉通り
良いなと思っても、一度立ち止まり「本当に必要かな?」と考える感じ。
結論からお話すると、どっちも必要で、
特にダンサーや先生は、どっちにすべきかの判断方法を知っておきたいですよ、となります。
はい、では今日のポッドキャスト終わり!となりませんから
この2つの考え方とダンサー、そして先生がどう関係するのか?を紐解いていきましょう。
直感で決める大切さ
直感で決めるというのは、素晴らしい技術です。
そう、技術なんですよ、これも。
特に生の舞台で踊っている時、アクシデントがあることがあります。
使うはずの小物が開かない、壊れているとか
舞台裏で何か問題があり、パートナーが舞台袖から出てこない
バリエーションの音楽が出てこないとか、違う音楽が流れてしまうなんてこともあるでしょう。
こういう時は、ゆっくり、じっくり考えている時間はありません。
直感で、これだ!とアドリブを行わないといけない時もありますよね。
生の舞台だけでなく、大勢の人が参加するオーディションで、
与えられた振付が出来るスペースがないから急遽変更して踊り切らないといけない事もあるかもしれないし、
最後の8カウントはインプロで、なんて言われた時は
そのオーディションで求められているであろうと思われる方向性の踊りをする必要も出てきます。
肌感、といってもいいのかもしれません。
肌感とか直感って、今までの経験があり、判断材料があるから、素早く判断を下すことができるそうです。
つまり、今までの積み重ねってことですよね。
さっき挙げた舞台の例も、オーディションの例も、
「初めて発表会に出ました!」というような人がアドリブ出来る可能性は少ないでしょう。
でも、経験を積み重ねてきたプロダンサーだったら、お客さんにバレずにやり過ごすことが出来るかもしれません。
でも、直感とは今までの積み重ねが間違っていた場合、
間違った方向に働いてしまう可能性もあると覚えておきたいところです。
ちょっとバレエの話からはずれるのですが、去年は私、たくさんの人と面接をしました。
DLS10周年イヤーだったので、新スタッフを募集していたんですね。
去年は特に面接が多かったのだけど、この10年間、コンスタントに面接をしてきました。
最初の面接は、何を聞いていいのか分からなかったです。
DLSと働きたいって言ってくれる人がいるなんて!という事だけで感動していたと思います。
そして、その人は当時知り合いだったトレーナーさんの元でエクササイズもしている大人バレエトレーニーさんで、
DLSのことも良く知っているという人だったので、すぐに採用となりました。
でもね、その人初日で辞めたんです。
理由は、DLSが使っているシステムが難しすぎて、ログインすら出来ないから諦めた、とのこと。
初日って難しいものじゃないの!?とも思ったのですが、
ご存じのようにオンラインビジネスなんで、パソコンが使えないとか、
言われたURLからログインすら出来なかったら、まー問題ですからね。
辞めてくださって良かったのだと、今は思います。
そんな1番目の採用から、多くの体験をしてきたため、
今は新チームメンバー募集のシステムが整っています。
面接で聞く質問の準備も出来ています。
でも、直感も使います。
なので去年面接した人達の中では5分で終わった人も何人かいました。
zoom越しに「この人が好きだ!」とか感じて決定するわけではなく、
私の中にどんな回答や、どんなスピードで返信する事が出来るのかのベースラインが出来たんだと思います。
だから、その場でYES、NOがはっきり分かるようになりました。
昔は、面接で「ん-、何かおかしいな」と思っても
「いや、履歴書の内容がいいからやってみよう」「せっかく働きたいと言ってくれたのだから、チャンスをお渡しすべきだ」
みたいに立ち止まって考えてしまった時もありました。
最初はそれが必要だったと思いますが、10年もやってきたら直感に頼っても大丈夫だろうなと思います。
もちろん、直感だけでなく、先ほどお話したようにシステムを整えてきたし、
なにより、面接やチーム、リーダーシップについて勉強もしてきました。
そういった積み重ねが直感を作ってくれるんだな、と感じたエピソードでした。
立ち止まるべき時
そうはいっても、立ち止まるべき時もあると思います。
アクセルとブレーキの両方がないと、車が安全に運転出来ないように。
ではどういう時が立ち止まるべきか?
その例はあと1か月弱で終了する、DLS初の公認インストラクター アドバンストコースからお話しますね。
アドバンストコースは、DLS公認スタンスインストラクターコースの卒業生しか申し込むことが出来ません。
そして教科内容も、ベーシックコースより何倍も難しくなっています。
より日本のバレエ界の現状に寄り添った内容になっているんですね。
例えば幼稚園生から小学生低学年など、本来バレエシラバスに入っていない年齢の子達を指導するときにはどうするか。
発表会を安全に行うために出来る、長期エクササイズプランの立て方など。
その中の1つで、私と1対1で自分のゴールに向けてコーチングを受けるというものがあります。
コーチングとは、1対1でその人に必要な内容を、その人のスピードに合わせて学ぶという形式の学びで、
最近だと、ローザンヌ国際バレエコンクールでコーチングがあったのを見た事がある人も多かったと思います。
- レッスンは大勢が同じ動きを行う。
- ワークショップも同じ感じだけど、自分で作ったりする部分も出てくる。
- コーチングは一対一で、自分が踊る作品について、その子が必要なテクニックや箇所を練習する。
というのを見ましたよね、そういう感じです。
コースのゴールはインストラクター、つまりエクササイズを指導する人を育てる事。
だけど、人によって「エクササイズを指導する」形式や求めるものが違います。
- 今働いているスタジオで、ウォームアップエクササイズを導入したい
- 自分のスタジオに、エクササイズクラスをスタートしたい
- フリーランスとして、ワークショップをたくさん開催していきたい
- 治療の一部として提供したい
など。
同じようにダンサーにエクササイズを指導したいと思っていても、違う形がありますよね。
しかも、
- 今働いているスタジオで、ウォームアップエクササイズを導入したい
という人が数人いたとしたら、
スタジオのゴールや形式によって、どのクラスからウォームアップエクササイズを取り入れられるかが変わってきます。
たとえば、
- レンタルスタジオで時間も場所も限られているから、レッスンの中にウォームアップを入れなければいけない
という人もいれば
- エクササイズクラスは提供されているけど、生徒がウォームアップの大切さを理解していないようだから、教育が必要
という人もいます。
何がいいたいか、というと同じように聞こえる目的でも、
その人達の目的地によって、実は全然違う内容を考えなければいけないということ。
どうしてこの話が、「立ち止まるべき時」となるのか?
それは、このような話をしていると、
- エクササイズクラスはこうすべきだ!
- バレエスタジオでこうすべきだ!
- 生徒さん達はこういうに決まってる!!
という直感に感じるような、だけど実は自分の中にある考えの偏りから出てくる答えがあるからです。
- 本当にそれしか方法がないの?
- 本当にそれがやりたいの?
- 本当にそのグループに必要?
こういう質問をしてみると、最初に思っていたゴールと全然違う答えが出てくる人も多くいました。
1回目に話していたゴールと、3回目に話していたゴールが全然違う人も多くいましたし、
自分が思っていた方向は、実は自分の求めているものではなく、
世間で言われている事のオウム返しだったと分かる人もいました。
さっき直感についてお話した時に
“直感とは今までの積み重ねが間違っていた場合、間違った方向に働いてしまう可能性もあると覚えておきたいところです。”
と言ったのだけど、これ。
- バレリーナは痩せていなければいけない
- ちっちゃい時からストレッチしないと体は硬くなる
- 膝が入ったほうが、やっぱりきれいに見える
など間違った考えが土台にある場合、このダンサーが才能がある!と直感で決める時にバイアスが生まれます。
自分が、そういう指導で踊れない体になってしまったのにも関わらず…
これに似た話を「エピソード495 柔軟性とストレッチは違う」でお話しましたよね。
なので、
- 自分が勉強した事がないエリア
- 自分に古い考え方が残っているエリア
- 生徒など、他の人に影響する部分
では、一度立ち止まって考えるべきだと私は思います。
だって直感で選べるだけの情報が、自分の中に蓄積されていないのだから。
直感で決める時 VS 立ち止まるべき時
ということで、ダンサーには直感で決めないといけないようなシチュエーションがたくさんあると思いますし、
バレエの先生も配役や、代講の先生、ゲストダンサーなど直感も使って決める部分があるでしょう。
ただし、そのエリアの直感を育てていないなら、
そして特に生徒の安全や将来の健康に影響する可能性があるなら、
一度立ち止まって考えるべきです。
考えても答えが出てこないなら、情報収集からスタートすべきです。
もしくは、さっきお話したようにコーチングを受けるなど誰かに相談すべき。
ローザンヌのバリエーションのコーチングの例をお話しましたが、
より良く踊りたいなら、その世界のプロから学ぶじゃない?
体の使い方や、テクニックの問題を解決していないままで自主練していても、間違った癖は治らないよね?
そういうこと。
最後に、私の生徒としての体験談を1つ。
私の通っていたバレエスタジオの先生は、留学前とても良く指導してくださっていたのですが、
個人レッスンで1度だけ、フロアバーをやったことがあったんです。
キーポイントは1度だけ。
その後は、その話は一切出ませんでした。
子供ながら、何をやっているのかよく分からなかったです。
しかもエクササイズマットがあったわけでもないので
衛生的にも良くないだろうし、
その後踊る人達にとっても安全面でも疑問が残りますよね。
その先生は、エクササイズの勉強はされていなかったと思います。
悪気があったわけではないでしょうし、これがいいんじゃないか、と思ってくれたのだと思います。
ただ、先生の直感に振り回されている生徒達が存在することを、
先生たちは覚えていてほしい。
私たち生徒は、時間もお金もかけて学びにいっているので、
直感だけでなく、理論的に、プランがある指導をお願いしたいところです。
子供たちの場合、時間やお金だけでなく、友達との時間という社会的に大切な学びや、
他の習い事という、自分の世界を広げる時間も含まれていますよね。
先生たちは、バレエ界で長く続けられた人達です。
途中でケガして踊れなくなったり、罵倒されて心を痛めてバレエから離れた人達ではありません。
そして、今まで直感が舞台やキャリアで大活躍してきたのでしょう。
だけど指導者になったら、「私が何をやりたいか?」という目線ではなく
「今のこの子に必要な事はなにか?」という目線で考えられるようになったら良いんじゃないかな、と思います。
そしてそれは最初は時間がかかるかもしれないけど、
そのうち早くプランを作ったり、レッスン内容を変更したり出来るようになるはずです。
舞台でアクシデントがあっても、演技力を失わずに続けられるように。
一緒に勉強しましょ
明日から3日間、札幌セミナーが行われ、2024年の来日セミナーは幕を閉じます。
このポッドキャストは来日前にレコーディングしているので
どんな様子で東京セミナーが行われたのか、
インストラクター3期生は無事に卒業したのか、アドバンストコースのみんなは難しい試験に臨めたのかなど分かりません。
でも、セミナー会場でお会いする人達も、小鬼たちも
自分たちが出来る100%で、一生懸命情報を吸収しようとしてくれているはずです。
お会いできた皆さん、どうもありがとうございました。
そして、今回は都合がつかなかったという人は、私のボディコンサークルが4月から戻ってきますし、
教師のためのライブラリでは、いつでもどこからでも勉強出来るようになっています。
- 自分が勉強した事がないエリア
- 自分に古い考え方が残っているエリア
- 生徒など、他の人に影響する部分
がある先生は、一緒に学びましょう。
現役ダンサーで自分のケガについて学びたい人も、単発受講が出来ます。
情報が増えれば増えるほど、選択肢が増えます。
選択肢が増えたら、直感で決められる行動も増えます。
そうしたら、お仕事初日にログインできなくて辞めてしまう人を採用するのではなく、
力強くDLSを裏からサポートしてくれる仲間を探せるようになるように、
皆さんのバレエ生活をサポートしてくれる知識になると信じています。
今日も最後まで聞いてくださってどうもありがとうございました。
また来週も金曜日にお話しましょう。
Happy Dancing!