休むことに躊躇していませんか?
今回のポッドキャストでは、「休むことの大切さ」を軸に、
努力して休むことの必要性をお伝えします。
私も忙しさ=充実度だと思っていたけれど、
成長に本当に必要なのは自分に休息の余裕を持てるかどうか。
自分のためにも、次世代のダンサーのためにも、
休むことを前向きに捉えてもらえれば嬉しいです。
聞きたい人はこちらから(読みたい人はスクロールしてね)
みなさんこんにちは、DLSポッドキャストへようこそ、佐藤愛です。お元気ですか?
ダンサーズライフサポート、通称DLSは”生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンを「当たり前」に。”を合言葉に、
元オーストラリアの政府認定バレエ学校専属セラピスト兼、セミプロフェッショナルレベルのダンサー向けエクササイズ、解剖学とケガ予防のクラスの講師を担当してきた佐藤愛が、
大好きなバレエを心ゆくまで続けたいダンサー、バレエの先生へ情報をお届けしています。
今日のポッドキャストでは「休む」って本当に大変だという話をしたいと思います。
DLS10周年まであと数日のところでアップロードされるポッドキャストのトピックは、何にしようかギリギリまで悩んでいたんですよ。
歴史を振り返ってみるとか、10年やってきた中で一番嬉しかったこと、悲しかったこと、学んだことなどいろいろな角度から10年を振り返ることが出来ると思ったんだけど、
最終的にテーマは「休む」にしました。
私のインスタをフォローしてくださっている方々はご存じのように、7月の頭に1週間ほど、カルバラビーチというNSW州の南のほうにいました。
NSW州とは、私が住んでいるビクトリア州の上にあって、シドニーがあるところです。
カルバラビーチは、シドニーから車で3時間程南にある、カントリービーチっていうと響きがいいかもしれませんが、ド田舎のビーチですね。
そこにあるお家をAir B&Bで1週間レンタルしてワーキングホリデーしてきました。
いつもと違う環境で、田舎の少しゆっくりした環境で、
クカバラという鳥の大声で起きて、ビーチで朝日が登るのを見て、お家に帰ってきたらいつも通りお仕事をする、みたいな感じ。
どうしてこのホリディに行ってきたか?というと
- 10周年イベント達の裏準備が本格的に始まる前に、スペースを作る事
- 2023年の後半戦の前に、考える時間、プランの時間をとること。
- コンフォートゾーン、つまり自分の慣れている環境から抜け出して、見たことのない世界を体験すること。
の3つがメインのゴールでした。
もちろん、メルボルンから来たに向かえば向かうほど、暖かい気候になるという事もあって、寒さからちょっと逃げてきたのもあります。
特に、インストラクターコース2期生コースを行っていた2022年は強く感じたんですが、
自分のカップを満たすことって、指導者だけでなく、大人にとってとても大切なんですよね。
- 狭いお店の中で、トロトロ歩いている人にイライラするとか、
- 時間になっても準備が出来ていない子供たちに怒鳴るとか、
- 何度も言っても、ずっと注意している部分が出来ない生徒とか
国や年齢に関係なく、皆が体験したことがあると思うこういうシチュエーションで、
イライラするなぁと思うだけでなく、怒鳴るとか嫌味を言う行動に移してしまう人、
何時間も、何週間も過去のことを引きずる人って、自分のカップが満たされていないと思うんです。
余裕があれば、笑い話になるようなこととか、多めに見てあげられることが、
毎日ギリギリで過ごしているもんだから、すごく大きな問題に見えてしまう。
もっと分かりやすい例で言うと、疲れているときに、電車の席を譲るのを躊躇しちゃうって気持ち。
一度はありますでしょ?
まだまだ駅は遠いし、寝たふりしようかな、とかほかの人が譲るかなとか、考えてしまうヤツ。
でも友達とディズニーランドに行く途中だったら、立ってても全然平気な感じ。
身体的に、精神的に余裕があるかどうかが、行動に繋がる例は、皆さんの日常でもたくさんあると思う。
でも、一生懸命自分のカップを満たしても、すぐにほかの人たちに渡さないといけないでしょ?
先生も、親御さんたちも。
携帯のバッテリーが3%だから、急いでチャージしたんだけど、50%くらいで、長電話がかかってくる、みたいな感じで、
いつまでたっても100%にならない。
特に、指導者のように自分の知識を相手に与える仕事をしていると、この感じが強いと思います。
自分の中に知識がなければ、生徒に教えることは出来ない。
これは何度も皆さんに伝えている事ですが、それだけではなく、
自分の器を大きくすること、自分のカップから溢れ出すくらい容量が入っていること。
この2つがあると、最初にお話した「毎日ギリギリ」という状況を脱出できるんじゃないかと思います。
自分の器を大きくすれば、小さなことに反応しなくてすむでしょ?
ほら、小さなカップの中に落としたインクで、あっという間にカップの水が汚れてしまうけど、
同じ量のインクを海に落としても、波の色が変わらない、みたいな感じ。
そして、ティーポットからお茶を入れて、またお湯を沸かして、を繰り返すのではなく、
温泉みたいに常に熱湯が湧き出ていたら、余裕でお茶が作れる、みたいな。
だから、自分のカップを満たすだけでは指導者は足りなくて、あふれ出る部分まで容量アップさせる必要があるんじゃないかなって思うの。
おちょこだっけ?を枡に入れて、お酒を敢えてこぼして飲む、っていう飲み方があるじゃないですか。
正式名称は分からないんだけど、あんな感じ。
自分のカップはすでに満タンで、余った分が枡に入っているから、そっちを生徒にあげればいいじゃない。
自分に余裕がなかったら、人をサポートする力が残らないじゃないですか。
だから、インストラクターコースや、教師のためのバレエ解剖学講座では
「酸素マスクは自分から」という言い方をするんだけど、
余裕は勝手に生まれるものではなく、自分で作るものだと思うのね。
とは言っても、私も
- 意図的に、ほかの人の予定の前に、自分に必要な余裕を作る事
- スケジュールをパンパンに入れ込まず、余白を確保することで、自分が成長するスペースを取っておくこと
というコンセプトを理解するまでに、かなーり長い時間がかかりました。
もしかしたら、まだ現在進行形で勉強中なのかもしれません。
そもそも、DLSは私がバレエ学校の仕事や、クリニックの仕事の合間を縫って更新するところから始まり、
来日セミナーはバレエ学校のホリデーに合わせ、家族との時間もほぼなくセミナーばっかりやっていたし、
過去最多数海外旅行をした年の2019年は、日本に4回戻りセミナーをし、
インストラクターコースの第一期生がスタートし、プリエ本を書いて、
クララの1年連載をして、毎回来日のたびに雑誌用の撮影もこなし、
最終的に救急車で病院に運ばれたり、6時間にわたる手術をした年でもあるので、
皆さんに偉そうに「休む大切さ」「余裕を持つこと」を話すべき人ではないのかもしれない。
でも、元々ゆっくりするのが得意じゃなかったからこそ、そこから学んだことや、
努力して「休まなければいけない」事実を体験しているのかもしれません。
そう、努力して休む。
なんだか、逆説的なことを言っているような感じがするけど、
努力というのは、そもそも苦手だけど、必要なことを行うときにやる、としたら、
休むのが苦手だけど、人間という動物が休息が必要だということを考えたら、休む努力をしなければいけないわけだよね。
- 忙しいことは、充実している証拠
- 大変なことをやるのが、努力
- 耐えることで成長できる
日本で受験生を体験し、大学進学率95%だかなんだかの進学校に進んだ私は、
プロダンサー育成用のバレエ学校に入学し、そしてそこの教師として10年以上指導してきたわけだけど、
その中で、やっぱり深く刻まれているんですよ、このような考え方が。
そして、バレエ学校でも、日本のバレエの先生からも聞く言葉は
- ケガして休んでいるのか、怠けているのか分からない。
- 厳しい世界なんだから、痛みや疲れに耐えるべき。
「血のにじむような努力」という比喩が、本当だと思って、血が出るまで踊るダンサーたちを見ながら、
そして多くのケガしているダンサーたちと話している中で、
誰一人として、休みたいからケガしたい、と思う子はいないんだよね。
踊るのが好きで、バレエ学校に来ているし、
踊るのが楽しみで、スタジオに通うのに、
友達が踊っている姿を見ているのが、楽だと思う子がいると思う?
楽なのは辞めることだよ。
ケガしたから出来なかったんだ、って言って辞めれば、皆が「かわいそうに」って言ってくれて終わるじゃない。
なのに、大人たちは、スタジオに通う子たちを見て怠けているというわけ。
何かおかしいよね。
でも、昔のポッドキャストでもお話したけど、先生たちも、そういう環境で過ごしてきて、それしか知らないから。
自分の知らないことは、指導できない。
これは、バレエテクニックや解剖学、エクササイズだけでなく、
痛み、辛さがなく、でも上達するという方法を知らなければ、教えられるわけがないよね。
だからこそ、私は「忙しい」という言葉を使わないように気を付けています。
だって、愛さんみたいになりたいな、と思っている子たちに、2019年の私みたいな仕事の仕方が正しい、と思ってほしくないんだもの。
忙しいと感じてしまうのは、私の余裕のなさか、タイムマネジメント力不足か、スケジュール管理のできなさの証拠であり、
人生が充実している証拠ではないんですよね。
カルバラビーチで、毎日誰もいないビーチに一番乗りで、朝日が上がってくるのを見て、
波の音が聞こえる庭に、パソコンを引っ張り出してお仕事やミーティングの電話をし、
すごく狭いキッチンで、カップラーメンに野菜を突っ込んだみたいな夕飯を食べて
夜は、ちょっと潮のにおいがする犬たちが寝ている隣で、旦那と英語のスペリングゲームをする。
という1週間は忙しくはなかったけれど、充実していたと思う。
そう、
- 忙しい人たちが本当に充実しているのか?
- 大変な思いをした人が絶対に結果を出しているか?
- 痛みに耐えてきた人たちが、舞台でいい踊りをしているのか?
と考えたら、答えが見えてくるところがありますよね。
「しなければいけない」リストをこなすことは、頑張り屋さんのダンサーや努力家の先生は得意だけど、
そのリストに載っているものが、果たして自分にとって必要なのか?を考えることを忘れてはいけないと思う。
自分を犠牲にしたら、生徒が救える、子供たちのために出来るという考え方は、果たしてそうなんだろうか?
知識のインプットをしなくて、指導するレッスンの数だけ増やしても、本当に生徒たちにいいクラスを提供しているんだろうか?
自分の体力、筋力不足やセルフケアをせずに指導を続け、結果スタジオを閉めなければいけなくなったら、あなたの生徒さんたちはどこに行くんだろう?
憧れの先生が、常にストレスたっぷりで、痛みに耐えている姿だったら、子供たちの理想の大人像はどうなっちゃうんだろう?
ネットでたくさんの質問をもらう、「つま先を伸ばすためにはどうしたらいいですか?」というもの。
つま先を伸ばすスペースを作らないと、つま先は伸びません。
例えば、ジャンプでつま先を伸ばしたかったら、自分のシューズのサイズ分飛ばないといけないし、
高いルルベをしたかったら、床と骨盤との距離を物理的に作らなければ、床に穴があきます。
上げている足のつま先を伸ばしたかったら、つま先を伸ばす筋力的余裕がなければ不可能。
つまり、グラグラしている軸足で、転ばないように必死だったら、つま先を伸ばしている余裕はないでしょう。
それらと同じく、人間としても、指導者としても伸びたかったら、
物理的な伸びしろを作らないといけないんですよ。
忙しい、と言わないようにしようと決心した時期から、インスタのストーリーズでホリデーの写真をアップするように意識しています。
最初にアップしたのは、確かシドニーに1泊2日で行ったときかな?
その時に不思議なほど罪悪感を感じました。
遊んでいる写真を載せて、皆はどう思うだろうか?
こんな人がDLSをやっているんだったら、応援しなくていいんじゃない、と思われないだろうか?
と不安も感じました。
でも、休息の大切さをケガ予防の目線からも、指導者の目線からもお話するなら、自分がやらないといけないじゃない?
それから、少しずつホリディ写真のアップを続けています。
- 定期的に、休んでいいんだよ
- 自分の時間を作ることは大切だよ
- 好きなことを続けることで、道が開けるよ
そういうメッセージが私のインスタから感じてもらえたら嬉しいなって。
カルバラビーチシリーズを1週間アップしたのも、その意図があったからなんです。
もちろん、朝日が綺麗すぎて皆に伝えたかったのもあるんだけど。
ということで、DLS10周年直前のポッドキャストでは、休む大切さと、努力して休むことをお話してみました。
先生たちは特に、休むことや、自分のために時間を取っていることを意図的に生徒に伝えてほしいなと思います。
「今日のクラスは、セミナー受講のためお休みです。ご迷惑をおかけします」という投稿ではなく、
「先生も勉強してきます!来週皆に還元出来るのが楽しみです」みたいになってくれたらいいなぁと思うし、
夏休みに休んでいいということ、自分の時間を取っていいということ。
自分が勉強したいことにお金や時間をかけることに罪悪感を感じない練習をしてほしいなと思っています。
結果、それが次世代のダンサーたちが酸素マスクは自分から。
お客さんを感動させたかったら、自分がアーティストとして成長する必要があって、
自分を育てる行為は隠すべきこと、謝らないといけないこと、と感じないでくれるはずだから。
今週末から、たくさんのDLS10周年イベントが行われます。
無料イベントもあれば、投げ銭スタイルで勉強出来るクラスもありますので、
詳細をDLSブログでチェックしてくださいね。
今まで応援してくださってどうもありがとうございました。
そして、また来週金曜日のポッドキャストでお会いしましょう。
Happy Dancing!
!!ポッドキャストの購読方法!!
DLSのYoutubeチャンネルには過去のポッドキャストだけでなく、ビデオブログやインタビューなども発信しています。
チャンネル登録をお忘れなく!