古い指導法、昭和のスポ根…
間違えに薄々気づいてきたとしても、自分はそれで育ってきたからどう変えたらいいか分からない。
ちょっと心当たりがあるけど、まだよく分からない。
そんな人達のためのポッドキャストを制作しました。
ポッドキャストエピソード453「まだまだ残る昭和のスポ根について」のコール&レスポンスのように聞いてもらえると嬉しいです。
聞きたい人はこちらから(読みたい人はスクロールしてね)
みなさんこんにちは、DLSポッドキャストへようこそ、佐藤愛です。お元気ですか?
ダンサーズライフサポート、通称DLSは”生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンを「当たり前」に。”を合言葉に、
元オーストラリアの政府認定バレエ学校専属セラピスト兼、セミプロフェッショナルレベルのダンサー向けエクササイズ、解剖学とケガ予防のクラスの講師を担当してきた佐藤愛が、
大好きなバレエを心ゆくまで続けたいダンサー、バレエの先生へ情報をお届けしています。
今日のポッドキャストでは、賢くレッスンするって何?という壮大なテーマをかじってみようと思います。
かじってみよう、と言った理由は、この話だけで1年間授業が出来ちゃうからです。
ただ、1か月前のポッドキャストエピソード453「まだまだ残る昭和のスポ根について」がとても好評で、
多くの「愛さん聞いて、こういうケースがまだまだあるんですよ」という報告DMなどを頂きました。
そのポッドキャストでも、「こういう話をすると、そうなんですよ愛さん!」と言ってくれる人が多い、とお話しましたが、ズバリその通りでした。
でも、「そーなんですよ」から一歩先に進むにはどうしたらいいでしょうか?
それを今回は考えていきたいと思います。
さっきお話したように、このトピックはとっても壮大です。
なので、このポッドキャストで全てをお話しようとは思っていません。
教師のためのライブラリでも、毎回のクラスでケガしていても賢くレッスンする、トレーニングする方法や、賢くケガ予防をする方法をお話しています。
なので具体的な例は、ライブラリ内のクラスで自分のケガに当てはまる部分を見てください。
また、このポッドキャストには昔のトラウマを呼び起こすような内容が少し含まれているかもしれません。
ご自身の判断で聞いてください。
苦手なところは飛ばしながら、かるく読みたい人は、文字起こししたバージョンをブログにしてあります。
「昭和のスポ根」の反対にあるものは何か?というコンセプトをお話しようと思います。
エピソード453では、昭和のスポ根をこうやって表現しました。
「雨の中練習するとか、痛いのをプッシュして試合に出るのが努力とか、試合が終わった後に灰になる、みたいな。
体罰、罵倒なんて言うのも含まれます。先生の愛情が詰まった平手、とかさ。」
そして、言葉では
- 無理しない
- ケガをプッシュしない
- 体罰はいけない
なんて分かっていても、根強く残っている理由の一つはここじゃないか?とお話しましたよね。
「昭和、平成、令和と続いておりますが、昭和のスポ根で育った先生や保護者が大人として主権を握っている今、昭和のスポ根が残っていて当たり前だよね、と思うのと同時に、
DLSを知っている人達、インストラクターの中でも、まだまだこの考えの中にいる人達が多いんだなという事も、痛感しました。」
ここから、若い先生だったら大丈夫で、大先生と呼ばれる人達だけの問題ではないというのが分かると思うのですが、
凄くわかりやすい例として、20代後半の元プロダンサーと話をしたときのエピソードをお伝えしましょう。
素敵なダンサーでしたし、当時のコンクール等で名前もよく聞くほど入賞歴も多くて。
ただ、彼女は自分では踊るのが楽しくなくて、バレエから離れた事もあった、と。
ここまではよくあるストーリーじゃないですか。
小さい時から上手だと、周りからのプレッシャーが大きくてバレエを辞められないとか、
私にはこれしかない、バレエを辞めたら何もできなくなってしまうという不安が大きいとか。
ファーストポジションの映画のように、バレエから身を引きたいと本人が言ったら、親が泣いてしまうくらい保護者の夢が大きい人も多いでしょう。
その後の会話で、彼女は指導は楽しいと思っているという話が出ました。
でも私が違和感を感じたのは、指導内容。
さっきまで、あれだけ周りの大人からのプレッシャーやコンクールの結果だけのバレエが嫌いだった、辞めたかったという話をしたのに、
レッスン内容や注意の仕方、見ている場所は彼女が指導されてきたものだそうです。
「私はこれで育ったから」。
この言葉が印象的でした。
同じような話を、多くの「成功した」ダンサーから聞きます。
成功した、というのはプロになったという意味で、同じような話というのは年齢やストーリーの流れ。
バレエが辛くなり、ケガや痛み、子供らしい子供時代がほぼなく、バレエだけで、それが嫌だったけど、それしか出来なかった。
そして現在、同じような指導をしている人達の話です。
彼らが酷い先生だ、と言っているわけではありません。
もしかしたらその逆かもしれない。
今話したように、幼い時、つまり周りのサポートが必要な時に、周りにサポートしてくれる人たちがいなくて、
- 上手になれば怒られなくて済む
- 賞を取ったら愛される、褒められる
というサバイバル方法、つまりバレエを踊る事が自分を守る方法だった人もいるかもしれません。
逆に
- 失敗したら怒られる
- 賞が取れなかったら怒られる
- 太ったら罵倒される
- 怪我したら、自分のせいだと言われ、レッスンで無視されるから言い出せない。
これらはトラウマになり、PTSD、心的外傷後ストレス障害に進んでいく人も多く存在します。
2015年の研究によると、ダンサーは一般の人よりも高い確率でPTSDになるそうです。
ダンスUSAの出した「big little secret Traumatic Experiences in the Dance World」という記事によると、
ダンサーのトラウマの原因の1つに「自己虐待、不快感、痛み、ケガが正常と考えること」というのが上がっています。
次の項目は「ディレクター、先生からの言葉の暴力」と書いてあります。
先生に押されて、痛みを我慢するストレッチや、レッスン中の「注意」という名前の罵倒、体型や人格に対する暴言を経験をしてきたダンサーは、被害者だったわけです。
だけど、その人達は、それがバレエレッスンの当たり前だと思っている。
だって、自分はそれしか体験してこなかったから。
だから、今も昭和のスポ根が残っているわけですね。
こうやって歴史が繰り返されるとでもいうのでしょうか。
私も含め、プロになれなかったという挫折を感じた人の方が、今回例に出した元プロダンサー達よりも昔の指導に執着しないのかもしれません。
でも結果が出てしまったダンサー達は、その後カンパニーで引き続き辛い経験をし続けているのかもしれないし、
ダメだと気づきながらも、自分はプロになったからこれがプロを育てる唯一の方法なのではないか?と思っているのかもしれません。
では、昭和のスポ根から打破するためには何をしたらいいか?
まずは、知識をつけましょう。
自分の経験「しか」知らないと、その世界が普通になります。その世界が事実になります。
人生を子供の時からやり直すわけにはいかないため、勉強すること、勉強し続ける事が最初の一歩になります。
DLSを通じて勉強する場合、教師のためのライブラリから、学びたいタイミングで、学びたい内容を自分のお家、プライベートなスペースから勉強する事が出来ます。
そして、その後に自分を客観的に見る努力をしましょう。
エピソード453でお話したように、自分は勉強しているから大丈夫、という安心感が出てしまう事がありますが、
知識のインプットと、指導のアウトプットがマッチしていないことがあるかもしれません。
誰かに指導してもらうのもいいかもしれないし、他の人とやり取りのある勉強会に参加すること、レッスン内容の添削をしてもらう、などは他の人の意見を聞きやすい環境に自分を置くことが出来ます。
お友達先生たちと集まって相談会をするのもいいかもしれませんが、くれぐれも相談会が愚痴の言い合い、お互いの傷のなめ合いにならないようには気をつけて。
どうしても怒る事が辞められない、先生が押すストレッチなどを辞めると保護者に言い出せない、などの悩みがある人、
今日のポッドキャストを聞いて、自分の指導が心配になってしまった人は、相談の窓口としてDLSの個別セッションを使ってください。
私は心理士ではありませんから、PTSD治療などを行うわけではありませんが、
個人事業主という孤独な立場のバレエの先生たちが、個別に相談できる場所になることは出来ると思います。
先生やスタジオ関係者は、絵画の額縁の中にいる人達です。
自分が額縁の中に入っていたら、絵画全体を見ることは出来ません。
第三者に話すこと、質問されることは、額縁の外にいる人、距離がある人があなたの絵を見てくれることになるので、
全体像がクリアに見えるようになるはずです。
もちろん、私と一対一なんて、緊張してダメだわ、という人や、
そんなレベルじゃない気がする、勉強が足りないし、気が付かないうちにスポ根の考えになっているという人は、
ボディコンサークルで生徒側を体験してみるのもいいかもしれません。
痛みをプッシュしなくても、筋肉痛になるくらい体を使う事が出来る事実や、
厳しく行わなくても、効果が出る方法があるという事実を、自分で体験することで、今までの経験を上塗りしてあげてくださいね。
ということで、重いトピックでしたが今日のポッドキャストはここまで。
皆さんのお役に立てていたら嬉しいです。
ポッドキャストの感想はhello@dancerslifesupport.comにメールか、
インスタ@dancerslifesupportにDMしてくださいね。
今回のように、皆さんの声や反応からポッドキャストのトピックを選んでいます。
最後まで聞いてくださってどうもありがとうございました。
HappyDancing!
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