DLSポッドキャストepi453 まだまだ残る昭和のスポ根について

3年ぶりに日本でセミナーを行ってみてきた事、感じた事の一つ「スポ根はまだまだ残っているな~」という事をお話したポッドキャストです。

しかも思ったより近くにありました、「たくさんやれば上達する」系な考え方!

私は大丈夫、と思っている人も一度聞いてみてもらえるといいなぁ。

 

聞きたい人はこちらから(読みたい人はスクロールしてね)

 

 

みなさんこんにちは、DLSポッドキャストへようこそ、佐藤愛です。お元気ですか?

 

ダンサーズライフサポート、通称DLSは”生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンを「当たり前」に。”を合言葉に、

元オーストラリアの政府認定バレエ学校専属セラピスト兼、セミプロフェッショナルレベルのダンサー向けエクササイズ、解剖学とケガ予防のクラスの講師を担当してきた佐藤愛が、

大好きなバレエを心ゆくまで続けたいダンサー、バレエの先生へ情報をお届けしています。

 

 

来日セミナー後、久し振りに録音している今日のポッドキャストでは、3年ぶりの来日セミナー等で感じた昭和のスポ根についてお話したいと思います。

 

昭和のスポ根って言って通じます?

 

雨の中練習するとか、痛いのをプッシュして試合に出るのが努力とか、試合が終わった後に灰になる、みたいな。

体罰、罵倒なんて言うのも含まれます。先生の愛情が詰まった平手、とかさ。

 

現在の科学では、そういった間違った方向への努力は結果を悪くする、つまり自分たちの持っている最高の力を発揮できないと分かっているだけでなく、PTSDなど脳や精神への後遺症が残る事や、将来の健康を害する事が分かっています。

 

もちろん、マンガだったらそこで本を閉じれば済むし、オリンピック選手や甲子園に出場する人達だったら、クリアなリタイアラインがあるかもしれません。

でも、バレエの場合、キャリアとして長く続けていきたいわけですよね。

17歳の夏休みで終わり、じゃないわけ。

なのにあたかも、17歳で人生終わるから、将来の健康に対して考える必要がない、みたいに考えている人達が多い気がしますし、それをやっぱり2023年の今でも日本で感じました。

 

昭和、平成、令和と続いておりますが、昭和のスポ根で育った先生や保護者が大人として主権を握っている今、昭和のスポ根が残っていて当たり前だよね、と思うのと同時に、

DLSを知っている人達、インストラクターの中でも、まだまだこの考えの中にいる人達が多いんだなという事も、痛感しました。

 

もしかしたら、DLSを知っている人達の方がたちがタチが悪い、と言えるかもしれません。

自分では新しい情報を入れて、勉強していると思っているから、「スポ根が残っている」というと、そうなんですよ、愛さん!と言ってくれるけど、自分の事とは気づかないかもしれません。

 

 

今日のポッドキャストでは、参加してくれた人達をディスっているわけではありませんよ。

愛情をこめて、だけど事実は事実として伝えていく。

それが私の役割だと思いますし、皆さんもそれを鬼の愛と呼ぶのでしょう。

 

ダンサーの上手くいっていない部分を注意したり、エクササイズの問題点を言及するのは、

本人自身を嫌いだと言っているのではない事は、皆さん分かりますよね?そういうこと。

とはいえ、この部分が理解できていない人も多いので、これはまた別途ポッドキャストでお話します。

 

 

今日は自分の言動に対し、客観的な目を持つことは、生徒を注意するよりも何倍も難しいという事について考えています。

 

勉強もバレエも詰め込み過ぎで忙しい、と分かっている学生生徒に対して、

どういうクラスや言葉がけをするか?という部分で、「動ける子だからどんどんプッシュする、みたいなところに違和感を持ったこともありましたし、

週に何回もレッスンに来るやる気のある子と、そうでない子、というような言い回しに対し、注意をした瞬間もありました。

 

先生職業をしている人達は、今からお話することを、自分の指導ノートにメモして定期的に見返してください。

 

レッスンの回数と、やる気は比例しない。

 

レッスンの回数は、ダンサー本人のやる気だけに左右されるものではありません。

ダンサー自身はもっとレッスンをしたくても、本人のリクエストが通じない部分でもあります。

バレエを本当に踊りたくてレッスンに来る幼稚園生が少なく、親が習い事として選んだからスタジオに来るように、未成年の習い事は、保護者の状況が頻度を左右する事を忘れてはいけません。

 

金銭的な問題かもしれない。

お迎えなど、家族間のスケジュールなのかもしれない。

もしかしたら、家族の中に病気やケガでお金や時間、ケアが必要な人がいてスタジオに通えないのかもしれない。

ご家族の教育方針で、子供のうちは多くのことを体験してほしいという人もいるかもしれないし、一緒に住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんなど親族の考えもあるかもしれない。

 

こういうことを考えたら、絶対に生徒達の前で「やる気があるならレッスン回数を増やすべきだ」など言ってはいけません

 

本人にとって、これほど辛い言葉はないだろうから。

特に踊りたい子達にとっては。

 

私はやりたいけど、家族にこれ以上迷惑はかけられない。

先生もレッスン数を増やさないと上手にならないと言っているし、やっぱりやめた方がいいんじゃないか。

と思ってしまったら、その子にとって踊れる場所、好きな事に没頭できる場所をなくしてしまう事になるんですよ?

 

 

ちなみに、この言葉が出たのは小鬼合宿でした。

小鬼たち、DLSの信条を一番理解してくれていて、Happy Dancingを心から応援してくれて、

何が何でも、自分の生徒達はケガさせず、育てたいと心に誓い、時間もお金もたっぷりかけて勉強してくれている人達でさえ、

昔から刷り込みされている考え方を変更させるのはとても難しいんでしょうね。

 

そういう私も、です。

定期的に自分の行動を見返したり、書いた文章を読み返したり、セミナー参加者の皆さんからいただくフィードバックを読んだり。

そういうところから客観的に、何の脈絡もなく、その場だけを切り取ったときに

私の言動から何がみえるか?を常に厳しい目で見続けないといけない、と感じました。

 

今回の来日で私が再発見した偏見は、「ロシア人のバレエの先生たちは、いわゆるスポ根バレエなんでしょ」という勝手な考え。

そして、実際にロシアの国立バレエ学校の先生方のクラスを見学し、勝手な偏見はどこから来たんだろう、と考えることになりました。

 

確かに、私のバレエ学校時代のワガノワ卒の先生を始め、私が体験してきたロシアバレエは存在します。

実際に、ロシア人ダンサーと舞台裏で仕事をしてきて、行動、言葉、考え方に触れてきました。

でも、私が会った事がある人達はほんの一握りなわけで、それを考慮せず〇〇人は、という発言や考え方をするのは、非常に危険ですよね。

 

その人達が国の代表なわけでもないし、私自身長年ロシアに住んで、実際にその国の文化やカルチャーを体験してきたわけではありません。

じゃ、どこからこの考えが来たんだろう?と振り返ってみると、子供の時にすごく大きな影響を受けたドキュメンタリーを思い出しました。

 

ワガノワ最終学年のトップの2人を追いかけたドキュメンタリー。

今でさえドキュメンタリーの中に出てきた「トーポリの木の綿毛が飛び始めたら夏が来る」という表現や、

先生が生徒にかける言葉で「カーチャ、ごはん食べたの?」というやり取りでダンサーが食べていないというと、「お茶飲みなさい」とカップを渡していたのを鮮明に思い出せます。

 

あーこれが刷り込みだ、と気づきました。

痛みをプッシュすること、体がふらふらになるまで練習すること、

食事は必要なく、お腹がすいたと感じたら水分補給しておけばいいという考え方など、

何度も何度も見返したビデオテープだったからこそ、セリフを覚えているくらいまで憧れたからこそ、

その世界観を覚えているんだ、そしてそれが普通だと思ってしまったんだ、と気づきました。

たとえ、私がロシアに留学したことがなくても、です。

 

私が見学したクラスでは、そこまで足を上げなくていい、とか1回転でいいからなんて言葉が飛び交っていました。

確かにつま先を伸ばすように注意はありますが、それはつま先を使え、という意図でした。

確かに、肋骨を持ち上げて踊る独特のスタイルはありましたが、腰椎に対しての解剖学的注意もありました。

 

私が実際にその場に居たわけではないけど、後からワークショップの主催者の方に聞いた話で、

参加者のダイエットや体型に対しての質問に、ダイエットは必要ない、しっかり食べるなどと答えていたというのも聞きました。

 

私の頭の中にあったイメージは、もう少しで20年前になるバレエ学校の記憶と、勝手な思い込みだとしたら、払拭すべき古い考え方なわけですよね。

 

エピソード446で「上達の早道と事実は1つだけではないかもしれない話」というポッドキャストをお送りしましたが、本当にこの通り。

私がバレエ学校で「水は太るから、スイカを食べなさい」と言われたことや「アラセコンドに上げた足は、体の横ではなく後ろまでいく」などの体験は事実です。

でも、私の体験“だけ”が事実ではなく、知識や経験は常にアップデートしなければいけない

特に自分の中で、当たり前、と思っている部分に対しては。

 

 

今日のポッドキャストテーマである昭和のスポ根に話を戻しましょう。

きっと、全ての先生たちが知っているでしょう。

私たちが体験してきた戦後の根性論は、今の時代に不要であるということは。

薄々かもしれないし、ガッツリ気づいているかもしれないけど、知っていると思います。

ただ、そのように動いているか、指導出来ているか?口先だけでなく、行動に移してあるか?

そういう部分を考えた来日セミナーでした。

 

「発表会で上手に踊れますように」

「発表会まであと少し、たくさん練習しましょう」

「体調不良で大変だったけど、頑張って踊り切りました」

これらの言葉は来日ちょっと前にインスタのストーリーズで見ました。

 

あれ、発表会のゴールって上手に踊る事だっけ?

今まで練習してきた成果を出すとか、舞台を楽しむ、力を出し切るのでなくて、上手に踊るためにやっているんだっけ?

発表会まであと少しだったら、たくさん練習する事が大事なんだっけ?

発表会前の練習量が問題で多くのケガに繋がるって何度も話しているのに、練習を増やすことが大切?練習の質とか、体調管理などではなくて??

 

体調不良の中で頑張る事を、公に伝える必要はあるんだろうか?

それって、その子の個人情報になるんじゃないだろうか?

それを褒めることで、体の声を聞いて調整する事は甘えだとか、怠けているという考えを植え付けていないだろうか?

 

スタジオのホームページと違って、ストーリーズにアップするときは、座って何時間も文章を考えていないと思います。

だからこそ、その人の考え方が出てしまうと思う。いくらスタジオ方針でいい事を言っていても、行動がマッチしていないと思う。

 

 

今回の来日セミナーでもらったフィードバックの多くが、オンラインセミナーやライブラリもすごく助かるけど、

1年に一度はこうやって、同じ志の人達と対面出来ると嬉しいというもの。

勉強ももちろん大切だけど、休憩時間やお昼休みの会話の中で、

自分の中の消えないスポ根に気づけるなんてこともあるのかもしれません。

 

セミナーに来てくださった皆さん、どうもありがとうございました。

セミナーには参加出来ないけど、毎週ポッドキャストを聞いてくれている皆さんにとっても、

私の声やポッドキャストの内容が、皆さんの考え方や健康を害さないような内容になっていますように、

と願いながら今日のポッドキャストを終わりにしようと思います。

 

 

来週も、来日セミナー中に感じた事、見てきたことをレポートするポッドキャストをお送りしますので、

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ではまた来週金曜日にお話しましょう。

Happy Dancing!

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