ターンアウト本先行予約イベントの、質問ボックスに入っていた質問の一つに、
「どうしても舞台で緊張してしまいます。緊張することは悪い事ではない、と愛さんが言っていましたが、いい緊張と悪い緊張ってあるんでしょうか?」
という事が書かれていました。
これは、舞台慣れしたらダンサーとしてまずいんじゃないの?
という会話をふみさんとビデオでしていて、
なんらかの形で、イベントでもそのビデオの話になったんですね。
私たちの「舞台慣れ」についての意見はそちらのビデオを見てください。
緊張することは悪い事?
最初に言っておきます。緊張することって悪い事ではありません。
でも、緊張のせいで、自分の100%を出し切ることが出来ない、というのはよくないですね。
まず最初に、
緊張=自分の力を出し切れない
ではないという事を覚えておきましょう。
- 集中力が切れていても
- 痛みがあっても
- 体力が残っていなくても
自分の力は出し切れません。
もちろん、練習不足でも100%の力は出せないね。
だから、緊張しちゃダメなんだ!ではないし、
緊張したから力が出し切れなかったんだ、でもないです。
もしかしたら、当日前夜、夜遅くまで荷造りをしていて寝る時間が短くなってしまったのかもしれないし、
毎日続くリハーサルで体力消耗していて、一番疲れた時に舞台にあたってしまったのかもしれないし。
色々な原因があるはずです。
いい緊張は存在する
いい緊張、というのは存在します。
冬の空気のようにピリッとした感じ。
心地よい緊張感、なんて表現される事もありますが、
いつもと違い、より集中している感じを「よい緊張」と呼ぶことがあります。
そのおかげで縁の下の力もち!ではないけれど、本番に練習以上の力を発揮できる。
勝負強さ、なんて言われたりしますが、
いい緊張を楽しんでいるスポーツ選手もいますね。
きっとこれは、緊張を楽しむ、というトレーニングをしてきたからだと思います。
どんなトレーニング?というとその人にもよると思うけれど、
適度な緊張は交感神経を刺激するので、気合が入り、思考力とか集中力とかメンタル的なものを一時的にアップしてくれる。
その事実を知るだけで、もしくは舞台前に唱えることで気持ちが楽になるかもしれません。
もしくは、適度の緊張、という感覚に体と心を鳴らすために、あえてレッスンで自分を緊張させるような事をするっていうのもいいかも。
- 敢えて最初のグループで踊る
- 敢えて難しい講習会にチャレンジしてみる
- 敢えて先生に個人レッスンを申し込む
など。
何百人という人が見ている時、大事なオーディションでディレクターの前に立つ前には、
緊張の練習だってしておきたいね。
*これは舞台に慣れることの練習ではなく、緊張感になれる練習。
違いがあるの、分かりますよね?
不安要素をなくす
上で説明したように「緊張しないために」という言い方はおかしいので、100%で踊るために、と言い換えますね。
100%で踊るためにはできる限り不安要素を減らす必要があります。
特にダンサーにとって大事なものは
- 自分が納得するまで練習すること
- 痛みなく、ケガを心配しないでいいように体を整える事
- 休息、栄養補給、レッスンのバランスが良い事(=体力をキープすることができる)
そして
- 失敗する練習をしておくこと。
上の3つは文字通りだから、説明はいらないと思うのね。
でも4つめ、失敗する練習をすることというのは普段のレッスンから練習できます。
- ピルエットがうまくいかなくてもフィニッシュポジションをホールドする
- バランスが取れなくても、きれいに降りてくる
プロの舞台で32回転がうまくいかなくて、途中でやめた後ピケターンのマネージにかえる、というのを見た事がある人もいるかもしれません。
フェッテを失敗したから、といって再度回りなおす、というのは舞台ではNG行為。
その代わり、ピケターンに変えてしっかりとフィニッシュするという行為が求められます。
でもねぇ、レッスンでは何度も何度もフェッテの練習しちゃうんだよね。
失敗は誰でも、プロでも!します。
だから、
- 失敗した時に「どうやってリカバリーするか?」のプランB練習や、
- 失敗しても顔に出さない練習
- 失敗しても引きずらない精神力
は日々のレッスンで練習するエリアなんです。
舞台を楽しんで、というアドバイスの前に
舞台を楽しんでね、と先生が言う事があります。
でもね、先生方。
毎回リハーサルで怒鳴り散らし、これだから出来ないのよ、とか
本番まで近いのに何してるのよ!なんて言って来たくせに、
本番だけ「楽しんでね」っていうのは不可能です。
だって、舞台の楽しさ、できたときの喜びを教えてあげていないんですもの。
うちの校長先生は、当日のリハーサルで(いくらひどくても笑)絶対に怒りません。
褒めます。
スタッフが恐ろしいくらい…笑顔です。
そして、舞台が終わったら…褒めちぎります。
もちろん、3公演とかある時、次の日楽屋にいくと、コレクションノート(注意書き)がびっしり貼ってありますが。
でも、舞台を楽しませるために、無駄な緊張をほぐすために先生がやらなければいけないことはたくさんある、と私は彼女を見ていて思うのです。
治療家として私の仕事も、いつもは推奨しないテーピングや、痛み止めスプレーなどを駆使して、
できるだけダンサーが痛みを感じない、不安要素がないようにし、送り出します。
幕間だったら特に。
汗を拭いてあげて、背中をたたいて、大丈夫って。
骨は折れてないから笑 (本来ならば笑えないけど、舞台裏だと笑える)
舞台を楽しむためには、ダンサーも、指導者も一緒に楽しむための「準備」をしていく必要があるんですね。
それがへんな緊張から、良い緊張へ持っていき、マジカルなエンターテイメントの世界を観客にプレゼントする秘訣だと私は思います。
Happy Dancing!