- ケガする前みたいにジャンプやポワントをしたい
- 昔みたいに足を挙げたい
こういった声をリハビリ中のダンサーから聞くことが多くあります。
先日この話をインスタライブでお話したのですが、
もう少し考えをまとめて文章化もしておこうと思いました。
今ケガしている人だけでなく
周りでケガしているダンサーをサポートする側(先生、保護者など)も
読んでもらえると嬉しいです。
完治と前みたいに踊る、は同義語ではない
19歳のバレエ学校留学中、プロを夢見る愛ちゃんがケガをしたとしましょう。
愛ちゃんは、長い間レッスンを見学していて
少しずつレッスンに復帰はしてきたけど、
まだターンアウトは少ないしバーレッスンだけ。
皆が自由に踊っているセンターやリハーサルを見て
「あー前みたいに踊りたいなぁ」
と思う事があったとしたら
それはネガティブ思考とか、間違った考え方ではありません。
他の人(過去の自分も含む)が持っていて、今の自分にないものを
欲しいなぁと思う気持ちは当たり前でしょ?
でも、それは
- 完治したら前みたいに踊れる
という約束でもなければ
- 前みたいに踊れるようになったら完治した
でもありません。
ケガする前の踊り方に戻ったら、またケガします。
- 行動=昔みたいに踊る
- 結果=昔と同じケガをする
という行動と結果の繋がりが既に立証されているのですから。
よって、ケガを完治させ、絶対に再発しないようにしよう!
と心に決めたのであれば
昔の自分からかなーり離れた踊り方を目指さなければいけません。
組織の修復と、舞台復帰は違う
でもお医者さん達に
- 骨がくっついたのでレッスンに戻っていいですよ
- 2週間経ったのでバレエやっていいですよ
と言われた時に混乱しちゃいますよね。
確かに
- 骨がくっついていた(過去)
- 骨が折れた(今)
- 骨がまたくっついた(未来)
という時間軸で見るなら、
ケガからの修復は「組織が元通りになること」かもしれません。
文字通り、元に戻ること、という意味ね。
でも組織の修復と、舞台への復帰は全く違う次元の話です。
(復帰という言葉が元の状態に戻ることを指していることも承知です)
ダンサーは人間で、1つの骨が折れた、というマイクロな世界ではなく
- 200幾つの骨
- 600幾つの筋肉
- 分厚い辞書になってしまうくらいのバレエのパ
- 人間を月に飛ばしちゃうくらいの発見が出来る脳みそ
- 舞台の上で言葉を発せずに赤の他人の感情を揺さぶることの出来る表現力
そして
- 人間の行動を創る原点となる、感情、気持ち、メンタル
など様々な要素が複雑に混ざっています。
だからこそ、ケガをしたバージョンの愛ちゃんから、
様々な面でかけ離れたベターバージョン2.0の愛ちゃんを作ることが出来て初めて、
舞台復帰だけでなく、
ケガする前の愛ちゃんーケガする要素を外す=ケガ再発の可能性がゼロに近くなる
という状態を作ることが出来るんですね。
考え方をシフトさせる重要性
リハビリについての研究だったり、ダンサーに必要な知識は既に
1冊のeBookにまとめてあります。
なので今日はその話はしませんが、
どうして昔に戻ることがリハビリと考えないで、なんて話をしているのか?
をお伝えします。
ダンサーのケガの70%以上がオーバーユーズのケガと言われる慢性のケガだという事から
愛ちゃんはケガする前にきっとこんなことを考えていたでしょう。
- なんだか頭がぼーっとしているけど、今日はレッスンだから行かなきゃ。
- レッスン中に足が痛いけど、数日したら良くなるから大丈夫だろう。
- レッスン前はストレッチしなきゃ!
- 汗かいたほうが良いんだよね、サウナパンツ着て踊ろう
- つま先伸ばせって言われるから、ギューギュー押しておこう
- ダンサーは細くないと!レッスン前は食べちゃダメだし、夜6時以降は太る原因!
- レッスンは大事。毎日踊るべきだし、夜中まで自主練するのが本気の証拠
そしてこれらの考え方が、
ケガする行動に繋がり、
周りの子達が踊っているのを涙目で見学する
という結果になったわけです。
上で挙げた例の1つの行動を1回やったら、骨がぽき!っと折れたのではなく、
これらの行動を長年続けてきたから、疲労骨折に至ったということね。
という事は、ケガの原因は
- ケガのリスクが高くなる行動に至った考え方
- レッスンをたくさん受けていても、基礎的テクニックが出来ていないままで負担をかける踊り方を繰り返していた考え方
ということが見えてきます。
考え方を変えるには知識がいる
考え方とかマインドセットとお話すると
- 精神的に強くなるため滝に打たれます
- 私、マインド弱いんだよね
なんて思う人達がいるかもしれませんが、
精神科医でも心理士でもない私がお話するレベルの
「考え方」「マインドセット」というのは
Thought pattern/process つまり、思考の癖とか、プロセスの話です。
こう習ってきたから、こう考える
というような繋がり、癖の事ね。
- 努力は辛いものだ
という思考パターンをどこからか学んだ場合
(バレエへの向き合い方は、バレエの先生から学ぶことが多いけれど、
保護者、学校の先生、環境などももちろん影響します)
- ストレッチは痛くなくては効果がない(からオーバーストレッチする)
- 痛くてもプッシュして踊るのが努力(から痛みがあっても無視して踊り続ける)
- 本当にプロになりたかったら、痛みに負けない(からケガについて相談しない)
- 空腹を我慢するのがマインドが強い人の証拠(から摂食障害、問題に繋がる行動を取り、ケガの修復も遅くなる)
みたいな考え方とかっこ書きで示した行動、のペアが出来ちゃうんですね。
どうですか?
結構当てはまるもの、ありませんでしたか?
これらの考え⇔行動パターンを止める為には、知識が必要です。
間違った情報に踊らされていたことに気づくためには、
正しい情報を知らなければいけません。
考え方の癖を理解するためには、
新しい知識をつかって新しい癖を作らなければいけません。
そうすれば
足のケガから復帰中
→
体力つけるために一日1万歩を目指して歩こう!
なんておバカな行動をするはずがありません。
(これも19歳の愛ちゃんがやってたよ、という話は愛さんの留学記からどうぞ。ヘビーですから覚悟がある方のみどうぞ)
だって
- 足のケガが早く治れば、バレエに戻れる
- 体力をつけて、レッスンに安全に戻る
という2つのゴールを「理論的に」考えたら、
- ケガしている部分に、毎日レッスン以外の負担をかけて、不必要に酷使する
という行動になるはずがないんですもの。
ちなみに、一日1万歩歩いたら絶対に健康になる!
というデータはありません。
この記事によると、この考え方は1960年の日本が発祥地だったらしいですよ。
だから一日に何歩歩いたかを調べるデバイスを万歩計って名付けたんですって。
もちろん、動かないより動いたほうがいいですが、
どれくらいの運動量が必要か?は年齢、今の健康状態、ゴールによって大きく変わります。
ちょっとした目安はWHOに年齢別に書いてあります。
だから知識、大事なのよ。
昔みたいに踊ることがリハビリのゴールではない
痛みを気にせず、やりすぎちゃったかな?と心配もせず、
大好きなバレエ(特にジャンプとか派手なヤツ笑)を思う存分踊りたい!
という気持ちは、私もよく分かります。
そして10年以上バレエ学校で、そういう子達と向き合ってきました。
だからこそ、今ケガしているダンサーに伝えたい事。
それは「昔みたいに踊りたい!」と思うのではなく、
昔の自分と比べ
- テクニックも
- 考え方も
- 知識の量も
数段アップしたダンサーを目指してリハビリに励んでください。
体が動かせなくても考え方の練習は出来ます。
ネットのシロウトの話を聞くのではなく(プロダンサーだったとしても、プロの治療家から見たらアマチュアです)、根拠のある知識を身につけることも、オンラインで簡単に出来るようになりました。
10代のダンサーの健康基準や必要な事は、
中年の運動不足の一般人と同じなわけがないことも覚えておきましょう。
(つまり、健康雑誌とかテレビの特集とかをうのみにするなってことね)
ケガする前の行動、考え方を繰り返していたら、結果は分かりますよね?
どこから勉強すべきか分からない方はここ辺りからどうぞ。
Happy Dancing!