踊りが小さく見えてしまう、大きく踊れと言われた…
このような質問をキッズやティーンから聞きます。
「自分では努力しているつもりなのですが」というのが枕詞のようにつきますけど。
努力の方向性で見てみると、
大きく踊ろう!と思っていても踊りって大きくなる訳ではありません。
大きな声を出そう!として怒鳴っても喉を痛めるだけだよね。
オペラ歌手は大きく響く声をだし、しかもケガをしないように、と発声練習があるわけでしょ?
今日は、ダンサーの「大きく踊る」を分析してみましょう。
振付を覚える
絶対に大事な事。
それは振り付けを覚えること。
もーね、何度も言っているよね。
振付を間違えた時って一瞬、「あれ?」ってなるわけですよ。
その時に、先生に言われた注意は考えていません。
そう言ったときにケガもしやすくなります(自分がやっていることに集中していないから)。
そして、振付があやふやだったら大きく踊る事もできません。
大きく踊るって自信を持って踊る事でもあるわけじゃない。
腕のタイミングや、体の方向、そういったものが分かっていないと大きくは踊れないよ。
確かに、コンクールで踊る振付は何か月もかけて覚えるかもしれないけれど
(それでも、話をしてみると振り付けがあやふやな人が多いのはまた別の話…)
普段のレッスンで「大きく踊る練習」をしてこなかったら、
コンクールの練習(=プリンシパルレベルの難易度)で大きく踊ろう、なんて考えられるわけがないでしょ。
体力を付ける
大きく動く、可動域が広がるという事は筋肉をたくさん使わないといけません。
どこの筋肉、というよりも全体的な体力が必要になってきます。
- 舞台全体のスペースをカバーする、
- 全てのジャンプを大きくする、
- ピケで出す足を遠くへ、
- 大きくポーデブラを動かす
…
こういった大きく踊る秘訣をやるためには、ピュアに体力、持久力が必要です。
やる気になったら出来るンだよねーって省エネで踊る、力を出し惜しみする子は、
このような体力・持久力を育てる事が出来ないため、
本番「だけ」頑張ろうとしてケガしたり、踊りが雑に見えたり、手脚のコーディネーションがバラバラになってしまうのね。
集めてくる力を強くする
大きく動くということは、より強く真ん中(センター、芯、軸…どんな言い方でもいいですけど)に集めてこなければいけません。
この力が弱いとグラグラしたり、回転に失敗したり。
失敗しないように、って思うから、踊りがどんどん小さくなってしまいます。
これも日々のレッスンで練習できること。
- 5番ススで緩んだ足で立っていませんか?
- 毎回タンジュ、ジュッテなどで確実に5番に戻ってきていますか?
- ロンデジャンプで1番を通る時、ポジションを通過していますか?
ルティレバランスが終わったからって力が抜けた5番を通過し、プリエではないけど膝を曲げてアテールに戻ってくるとか、
デベロッペで高く上げることだけ考えて、しっかりと5番に戻っていないとか。
こういった部分で足を揃える、軸に集める、芯を強くするという練習をしているはずです。
難しいステップではないし、どのレベルでも出来ますが、
やっていない人が多いので勿体ないですよ。
正しいポーデブラ(大胸筋)
大きく踊ろうとして、ポーデブラが正しい場所を通らない人が多くいます。
それね、逆に踊りが小さく見えるのよ。
腕は体を飾る額縁。
だったら、その額縁を正しくホールドし、しっかりとした形で保つことが出来たら、
中に入っている絵(体、ダンサー自身)が美しく、堂々と見える。
「正しいポーデブラ」といってもよく分からない人もいると思うのね。
足の高さやターンアウトだけに気を取られて、ポーデブラ、しっかりと習ってこない子達も多いので。
バレエの立ち方出来てますか?(通称スタンス本)で説明しているのでちょっと引用してみましょうか。
- ひじは常に両肩の外側にあり、脇はつぶれない
- ひじは絶対につっぱらない
この2点をレッスン中、バーを持つ手も含めて考えられると、かなーり上達しますよ。
- グランバットマンの時に横の手の肘がつっぱっていませんか?
- アラベスクの時、ひじが下向きになり、脇が落ちてしませんか?
- ブラバーで、小指が太ももにつき、脇をつぶしていませんか?
チェックしておいてください。
また、同じ本に紹介されている
- ブックオープナー
- 弓と矢
- タオルストレッチ
- 菱形筋エクササイズ
はこの順番でやると
- 猫背
- 胸椎堅い(腰から反っちゃう)
- 腕をあげると肋骨が開いちゃう
- 腕をあげると肩も一緒にあがっちゃう
というポーデブラの悩みを解決することができます。
(8月には福岡、9月には大阪でスタンス、ターンアウトWSが行われるよ!
スケジュール発表は7月1日、申込みは7月中旬なのでアップデートをこまめにチェックしてね)
踊りの緩急
ちょっと上級者向けですけど、ある程度の年齢になったらここも大事になってきます。
どこを魅せて、どこは調整するのか。
レッスンでも大事なところです(んでもって、レッスン内でも練習できます!)
オーディションとかでは見られていますよ、センスという言葉や踊りのクオリティ、なんて言われます。
グランアレグロで場所がなくならないように、移動方向を考えるだとか
(=スペースの有効利用)
高さが見たいのか、スピードが見たいのか、それともイーブンに柔らかさがみたいのか。
そういった計算をすることで、
大きく踊るところはより大きく見え、
賢く踊る事ができるわけ。
ピルエット一つとっても、
アダージオでゆっくり回ってホールドしたいのか、
ミディアムアレグロの中にあり、素早く回って次のステップにいきたいのか。
それによって踊りがダイナミックに見えるよね。
ということで、大きく踊れ、と言われたら。
ただひたすら、原稿用紙に「大きく踊る、大きく踊る、大きく踊る…」と書き続けるのではなく、
(だって、それが大きく踊るように意識している、って奴でしょ?)
こんなに出来る事があるんですよーというヒントになっていたら嬉しいです。
Happy Dancing!