2004年にオーストラリアのバレエ学校に来てから、
特に学校公演のリハが始まったあたりで驚いたことがいくつかあります。
- アンダースタディ(代役)とセカンドキャストの違い
- 配役が当日直前まで変わる可能性があること
- 舞台メイクで鼻筋は入れない+大袈裟にアイライナーを引かない
そして
- 衣装に対する考え方の違い
今日は一番最後の点、衣装について書いてみたいと思います。
今日の記事は、リサーチや文献ではなく、私の見てきたバレエ界で感じた事をまとめてあります。
こういう形式が苦手であれば、ここでストップ!
DLSにある他の(サイエンスヘビーな)記事をお楽しみくださいませ。
”お衣装”の取り扱い方
私が通っていたスタジオだけでなく、日本からの留学生からの話。
そして2012年から毎年日本のバレエ教師の方々や、ダンサー、保護者からの話にて、
日本では”お衣装”をすごく大切にするな、と感じます。
別に、オーストラリアのバレエ学校では衣装が床に落ちていたとか、
皆が丁寧に使っていなかった、という訳ではないですよ?
こっちでも、デザイナーに作ってもらう場合、とても値段が高くつきます。
ガラコンサートの裏で働くと、世界様々な国から自分の衣装を持ってやってくるダンサー達と仕事をするので、
その様子を見ていても、ぐちゃぐちゃにバックの中に入れている訳ではないです。
では、(私が知っている限りの)日本のお衣装事情と、(私が知っている限りの)海外の衣装では何が違うのか?
日本では、
ダンサーよりも衣装が大切だと思っているんじゃないの?
と思われる行動を見る事が多い気がするのです。
ダンサーと衣装の比較
- 衣装が可哀そうだから痩せなさい
- 衣装に当て布をつけないといけないなんて、失礼でしょ!
まるで、衣装「先輩」に対しての会話内容みたいだなと思いません?
衣装に感情はないだろ…というね。
衣装合わせ、採寸での言葉も、ダンサーの健康より、衣装の方が優先されるような言葉を聞くことが多々あります。
先生たちの中には、衣装デザインに対しては凄く時間をかけて
様々なところに(時には飛行機に乗って!)買い物に行って
夜な夜な作ってくれるというのも見ますが、
- レッスンプランは時間がないから作れない
- ダンサーにとって一番いいモノ(=先生の場合は指導内容ね)を提供するために時間を作らない
挙句の果てに、
- 先生は毎晩こんなに大変な思いをして、貴方の衣装を考えているんだから!
という衣装とダンサーの比較、みたいな言葉も出てきたりします。
(同じだけの情熱で、怒鳴られているダンサーのメンタルヘルスを考えてくれ…)
毎回、衣装を着てリハーサルをやった後は、スタジオ全体を使ってシッカリと陰干しなどしてあげるけれど、
ダンサー達がクールダウンする場所は無かったり、体のケアを出来るようなスペースはない。
夜遅くまで発表会があった次の日、呼び出されて衣装の手入れ。
でも手入れが必要なのは、昨晩力を出し切ったダンサーではないの?
(+この後、普通の学校生活に戻るんだよ?)
ダンサーも大切に扱ってあげて
仕事と私、どっちが大切なの!?
というドラマチックなケンカ話ではありませんし、
日本の「全て」のスタジオが上に書いた事をしている訳ではない事はよく分かっています。
レンタル衣装の場合、レンタル期間があることも十分承知です。
だから、衣装とダンサー、どっちが大切なの!?
とバレエ関係者に啖呵を切っているわけではございません。
ただね…それだけ衣装を考慮出来たら、ダンサーも考慮してあげてほしいな、と思うわけ。
- 毎回使った後に、大掃除!ではなくても少しはケアをする
- 舞台の上で踊っているときに壊れないように、補強したり、調整してあげる
- もちろん、”お衣装”は高いけれど、人間1人の健康や人生はプライスレスだと理解する
これらは、皆が同意してくれると思うんだけど、どうかしら?
「生徒の為に」発表会を行っているならば
- イメージしていた「赤」ではない素材の衣装でも、彼らはリハーサルから本番までの舞台経験を行う事が出来る。
- 発表会費がかさむのは分かるけど、数日エクストラで衣装をレンタルして、生徒達やアシスタントの先生たちはしっかりと休ませてあげる
と考えてあげられたらいいんじゃないかな、と感じるのです。
私も(コロナ前は…溜息)、来日セミナーや、先行予約イベントなどをバレエ学校やクリニックの仕事の合間に準備してきました。
こうしたい!と思うような会場や設備は莫大なお金がかかりますよね。
参加してくれた人達は、私がどのDLSTシャツを着ていて、どんな靴を履いていたか?覚えていない事でしょう。
”舞台”には私とふみさんしか出演者がいなかったとしても。
(まー愛さんのことだから、黒だろ?と思った方、大当たりです)
だけど
- 来てくれた人達が何かを学んでくれたら
- 同じような考えを持っている人達と交流したり、一緒の時間を過ごしてくれたら
- 彼女にひっぱられて参加したパートナーが(結構いるんですよ笑)、こんな世界もあるんだなと思ってくれたら
そっちの方が、私にいいライトが当たり、ゴージャスな衣装でなくてもいいんじゃないかと思うのです。
もちろん、それは膝の出っ張ったジャージと、朝髪の毛とかしてこなかったの?という髪型で登場しろ、という事ではありません。
身だしなみはダンサーにとって非常に大切な事ですし、
衣装はストーリーを伝える重要なツールになります。
安全に踊るためには、パートナリングで指が引っかかるような作りや、踊りの妨げになるようなデザインではダメ、というのもその通り!
でも、やっぱりダンサーの健康と衣装の手入れを見た時に、
衣装さまの方が丁重に扱われています!というシチュエーションはおかしくないかな?と思ってもらえると嬉しいです。
先生方の中には、ダンサーとしてこき使われる体験しかない人もいらっしゃると思うのです。
だからDLSで勉強してくれているんだけど、
こういった、解剖学以外の部分では、長年の「当たり前」というフィルターがかかっているから
どんなことをしているか、気づけない場合があるんですよね。
だからこそ、先生方も、そしてダンサー達(&保護者の方々)
衣装の為に、自分の健康を害するような行動をする必要はないですし、
衣装の手入れよりも、自分の体の声を聞いて、体をケアする知識を身につけてあげましょう。
発表会では、同じ衣装を着る事は殆どないでしょう。
コンクールでも、同じ衣装を着て5年も踊り続けないでしょう。
でもね、あなたの体は一生付き合うパートナーです。
バレエを辞めても、一生一緒に生活する相手です。
お金、意識、時間を費やす場所や比率を、一度考えてあげてくださいね。
p.s.
体のケアより、生徒の衣装や自分の車の整備してたよ…
と気づいた方は1週間に1度、30分だけ!自分の体と向き合う時間を作ってください。
そのために、今年はボディコンエクスプレスをやっています。
自分に出来ない事は、生徒にやってあげられませんよね?
春のセミナースケジュールも発表されました!
2022年最後のセミナーシーズンとなるのでお見逃しなく…
Happy Dancing!