言葉の難しさ。
これってどの世界でもいえることですが、
特にバレエのような動きを言葉で伝え、教えてきた芸術では大きな混乱を招きますね。
いまさら聞けない
「ひきあげってなんなのさ」
(体には200以上の骨と600個以上の筋肉があるけれど、いったい何のこと!?)
だとか、
「筋肉を固めないで使う」
(筋肉を収縮すると固まるでしょう!?)
だとか。
「脚の裏側からデベロッペ デヴァンしなさい」
(脚の裏側にある筋肉たちの主なお仕事は脚をエクステンションすること。つまり後ろに上げること・・・)
「腹筋を使って足をキープ」
(腹筋軍は股関節を超えないから、大腿骨に付着していない・・・)
なんていうのもそうです。
なまじ解剖学を知ってしまうともっと混乱することが出てきます。
これらについてはもう既に説明しました。
(引き上げについては筋肉の引き上げ、エネルギーの引き上げ、
骨の引き上げと関節の引き上げをお話しなければいけませんねー。)
今日は「関節に乗っからない。」
「骨から動く」
という骨格に関する注意を見ていこうと思います。
これらはフィーリングコレクション=feeling corrections、と言うものだと私は分類しています。
こんな言葉があるのか?というとそうではないけれど、
生徒達がいつも困惑気味に「先生の注意の意味が分からん・・・」と来たときに使っています。
feeling correctionの反対はactual correctionと言う言葉を使っています。
直訳すると正しくありません。
辞書にも載っていません。
が、ダンサーには分かり易いのでこのように説明していきましょう。
feeling correctionとは
文字通り
フィーリングで感じるための注意です。
私が一番苦手としている言葉の類です。
(私の赤色、が皆さんの赤色と一緒じゃないように、
フィーリングが100%理解できるなんてレベルの人間関係がレッスン場で作られないと思うのです。
ちなみに10年一緒にいる彼は未だに灰色のジャケットをgreen jacketとよんで私を困惑させます・・・緑じゃないだろ?)
例えば
頭に冠を乗せているように!
だとか
羽のように着地して!
だとか。
軽く着地しようが、重く着地しようが(そんなものがあるのか分かりませんが)
重力がかかる限り、重さが変わらないだろー。
ってやつです。
イメージトレーニング系統の言葉です。
これはとても役に立つ注意の方法です。
頭でイメージできたものを作り上げることは
頭で良く分からないものを作るよりもとってーも楽です。
また、フィーリングが分かれば、難しい解剖学など知らなくても動けるでしょう?
だから小さい子達にはとっても便利です。
「胸に大きなペンダントがある感じ。キラキラさせておいてねー」
と言うほうが、
「胸骨を落とさず、鎖骨をひらいておいて」
と言うよりチャイルドフレンドリーです。
ということはactual correctionというのはその反対。
実際に(actual)おきていることを注意される言葉です。
例えば。
腰椎を縮めない。
肩甲骨を下ろしておく。
股関節から大腿骨を回す。
などなど。
解剖学的に言わなくても
首を前に落とさない。
肩を丸めない
なんかもそうですね。
さて。
ここでダンサーが困ってしまうのが、actual correctionにみえるfeeling correctionです。
先ほど挙げた例で言うと
「筋肉を固めないで使う」
先生の思いは
長く伸びやかな筋肉で、緊張せずに踊る感覚!
なんだけど、
これを聞いたまじめな生徒さんは
本当に筋肉が柔らかいままで動けなければいけないっ!
(彼女からしたらactual correction)
って練習してしまいますし、
「脚の後ろ側を使ってデベロッペ!」
と聞いたまじめ生徒さんは
「大腿四頭筋しか感じない・・・私はダメダメダンサーなんだっ!」
と夕日に向かって走ってしまいます。
先生は、脚の後ろ側の感覚を忘れないでねーって言いたいのかもしれない。
でもこの注意の場合、本当に言いたい事はおしりを使ったターンアウトを忘れないって意味だったりするのですが・・・
また、教師の方々にも大きな黒い雲が・・・
「私の先生にもそうやって注意されてきたから何も疑問に思わなかった・・・でも生徒に聞かれたらわからんっ!」
とかね。
そしてこっそりとメールが来るのです。
「愛さん、脇を使って腕を使うってどういう事ですか?」
「愛さん、アキレス腱を使わないでつま先を伸ばすってどういうことですか?」
なのでこの困惑注意は
1)自分で体への理解を含め解釈をする
2)そのような注意をする場合、しっかりと意味を伝える
という教える側と、教えられる側の勉強と意思疎通が必要になってきます。
題名に挙げたように、
関節に乗っからない。
これは関節を浮かせなさい!
というわけでも、
関節を使わない!
というわけでもなくって、
関節を動かしている、そしてとめている筋肉たちをしっかり使って動きなさい。
という事。
関節とは骨と骨がぶつかるところでしたよね?
そしてそれをつなげているのが靱帯。
そんでもって、その周りに色々なものが引っ付いていますが←まったくもって解剖学用語ではない。
筋肉が骨を動かしているんでしたよね?
(もうこの部分は勉強しましたよー復習はダンス解剖学のページから)
だから、関節の周りの筋肉を使って関節を安定させ、プレッシャーを分散し、次にすばやく動ける準備をしてあげること。
ちなみにそうすることでケガのリスクも下がります。
骨から動く。
というのも、骨自体が勝手に動いちゃうんではなくって、
骨=体、腕、脚の真ん中を感じて動かす、だったり、
筋肉を考えすぎず、ピュアな動き自体を考える、
という事だったりするし、
はたまた、全ての筋肉をバランスよく使って欲しい、という言葉なのかもしれません。
(上の部分だけ力む、とか下だけで保つとかではなくって、センターを感じる=骨、という意味で)
ここらへんは、先生の意思によって変わってきてしまう。
だからこそ、さっき挙げたように教師の役目のひとつとして、
「何を伝えているのか」を明確にする必要があるのです。
生徒の皆さん。
分からなかったら先生に聞いていいんですよ。
教師の皆さん。
自分でも良く分からない注意があったら使わないほうが賢明です笑
私も昔、ピルエットの出来ない生徒をみて「引きあがっていないせいだ」と思い込んでいましたが、
引き上げが出来たらピルエットが出来るか?といったら否。
若気の至りという事にしておきます・・・
このような言葉の使い方も教師のためのバレエ解剖学講座でお話ししていきます。
参加者の方からのメッセージ
生徒達がびっくりするくらい変わりました。
本当に変わりました! 嬉しくて嬉しくてたまりません!
本当に本当にありがとうございました!
一緒に勉強していきましょう。
Happy Dancing!