9月24日に私の働いているバレエ学校The Australian Conservation of Balletの留学オーディションがありました。
30名以上のダンサー達がオーディション、そしてワークショップに参加してくれました。
今日の赤裸々日記はそこで感じたことをアップしていきます。
*2021年現在、オーディションは開催しておりません
理解力と適応力
オーディションの一番最初、そして最後に校長先生から皆さんへむけて言われた言葉は
「私たちは注意を聞いて、すぐにその場で適応できるダンサーを探しています」。
つまり、ただ試験官が見ているだけのオーディションではなく、当日彼女は実際に生徒を直したり、注意を与えたりしていました。
それがどれだけ早く直るのか、どこまで覚えていられるのか?などを確認していたようです。
頭がいい、という言葉で片付けてしまうとちょっと違うけれど、どれだけ適応できるか?って事なんですよね。
ただ、注意をされたからその時だけ直す。
そういう子達がたくさんいました。その後どうするのか?が見られていたんだけどね。
自分がその注意に当てはまらない、と思っている子達もけっこういました。
例えば、センターでは「鏡をみて踊らない」「顔の方向に気をつける」などといわれていました。
なのに、自分の番になったら鏡から目を離すことが出来ない子達の多いこと!
これはオーディションだったらすごく失礼です。
なぜなら、鏡を見て自分で直すわよーって思っているんだったら先生が注意をしてくれているのを「敢えて」無視しているという事ですし、
言われたことを聞かないのはただの頑固モノです。
順番を覚えていないんだったら、オーディションにくる前にどうにかしろよ、という感じですし、
他の子が気になっちゃっているんだったら、集中力の欠如です。→目線と集中力
鏡を見て踊る、という事についてはまた今度記事にしますが、バーではいい感じ、と見られていたダンサーがセンターで鏡から目を離せず、結局落とされていました。
ポワントレッスンでの強さ
ポワントレッスンがないオーディションはほぼないでしょう!
カンパニーだったらもちろんだし、バレエ学校でもあります。
ダンサーの足セミナ―で実際にチェックしますし、赤裸々日記にも書いたけれど、バリエーションでしかトウシューズを履かない、自分でポワントで立てたらそれだけでオッケーと思っている子達は大きなガタがでます。
オーディションを考えている子達だけでなく、「バレエのレッスン」ではトウシューズを履いてバーレッスンをするべきですし、センターレッスンもするべきです。
トウシューズを履いて踊れる=6か月かけてコンクール用のバリエーションを踊れるようになる、ではないですから。
ちなみにそればっかりやっている子達は体力の面でもガタが見えます。
バリエーションって結局3分弱程度でしょ?今回のオーディションは2時間クラス、そのうち30分はポワントでしたからね。
バレエ学校ではポワントレッスンが1時間以上、その後にコーチングやらリハーサルやら午後全部ポワント、って事もよくありますからね。
当日はうちの卒業生ダンサーが2人参加していたのですが、彼女たちはポワントには強かったです。
やっぱり2年間そういうクラスを受けてくると、いやでも足が強くなるのでしょう。
だからたとえ日本で踊るとしても、海外留学しておくとバレエにどっぷりつかる生活をできるのでいいんでしょうね。
オーディションの現実
今回のオーディションは全員が全員、最後までレッスンを行うことが出来ましたし、
私が通訳でいましたし、校長が皆に注意をしつつ、普通のクラスの様に行われました。
ただ、全てのオーディションがこういう感じなわけではありません。
公開オーディションではすごい人数がきますから、バーの位置から戦いになります。
肩をポン、っと叩かれて、アンシェヌマンの途中でも落としていくオーディションもあります。
何日かに続いて行われるところもあり、返事がくるのが前日の真夜中なんてこともあります。
オーディションの後、名前を呼ばれた子達はインタビューがありました。
留学を目指している子達が集まったのに、英語ができない子達が殆どだったのには驚きです。
あのさー、なんのために海外に行くの?レッスンで注意されて、上手になるためんでしょう?だったらどうして練習して来ないのさ???
(聞けるけど、答えられない、という子だって良くないと思うけどまだマシね。)
留学生たちが失敗する理由はコミュニケーションができないからです。
だから、先生に言われたことが分からなくて、何度も怒られて精神的に辛くなっちゃったり、
ホームシックになっちゃったり。
放課後に一緒に何かできるわけがないので、時間を持て余して、食べ過ぎたり。
どこに行くとしても、留学は高いでしょう?そのお金や時間を100%使えるようにするためには言葉は最低限だと思うんだけどな。
(他に、長期踊ってもケガしない体作りとかも必要ですけどね)
その他のオーディションの現実として、選ばれなかった子はただ帰るだけだという事です。
上にも書いたけれど、レッスン中に追いだされることもあるし、返事のメールや電話が来ず、それだけって時もあります。
でもね、それでもまた次にチャレンジしないといけないんですよ。
ロイヤルバレエだろうが、ワガノワだろうが。卒業の年の子達はこれを「普通の学校の生活」+でやっています。
みんな同じなんです。
飛びぬけること
今回年齢の達していないダンサー達にはワークショップとして受講してもらう事になるけれど、
目に留まったら短期留学や他のオファーがでるかもしれません。という話をしてありました。
実際に、日本のオーディション前に行われていたシラバス試験後、フィリピンから若い女の子2人がスカラーシップとして年末公演に参加できるという話を貰っていました。
ただ、そのような特別許可をもらうならば、自分がその場の誰よりも飛びぬけていなければいけません。
どうしても目についちゃう、息を飲むようなクオリティがある。
つまり、ある意味オーディションの子達よりもワークショップで(そういうのを狙っていたら)ずば抜けないといけないって事です。
だって、学校側も特別手続きをしたりしないといけないわけですからね。
そうしてでも欲しい!と思わせるダンサーじゃないとダメだって事がよく見えました。
そして時には、会場内にいないダンサーとも比べられている可能性があるって事です。
今回のケースも、年齢が若く、だけど飛びぬけた子達が他の国にいたからオファーが出た「その後」に日本でオーディションだったわけで、その子達を超えていないといけないってことだもんね。
オーディションも練習が必要
これは日常のスタジオでは練習しずらいかもしれません。
たぶん、自分のスタジオである程度いつもいい役をやっていたり、周りの子達が受験などでバレエを辞めていく中で一人だけ残っている、というような子達がオーディションに来ると思います。
その場ですぐに注意を直すとかは自分でも練習できるとは思いますが、注意の意味が分からなければ直すこともできませんよね。
いつも先生に言われている事と違う注意を言われることもあるし、緊張すると疲れも早く感じます。
周りの子達が友達ではない、という環境だってそうですが、スタジオのサイズが変わるだけで踊る量もやはり変化します。
こういう部分は練習しておいたらいいと私は思うのです。
実際にバレエ学校の1年生たちはオーディションに参加する理由が「経験のため」という事もあります。
コンクールに出るよりも安いです(衣装代、特別レッスン代、謝礼、音楽制作費…)
1月にはDLSの冬期バレエ講習会があります。
これは5日間毎日朝から4つのクラスをこなし、最終日には発表会があるという設定です。
短期で注意を覚える、いつもと違うレッスン(ジャンル!)を練習するという他に、
体力的に5日続けられるか、初日に言われたことを最終日まで覚えていられるか?
オーディエンスが目の前にいる場所で(だってこれがオーディションだもん!)、緊張せず堂々と踊れるか?
などを練習します。
書類審査になりますから、そこからオーディションの準備もできるでしょう。
(今回、オーディションに合格した人達のほとんどがDLSの過去セミナ―受講者だったのも嬉しい事実です。校長には言っていないのですが、オーディションで見られる部分などをお話することが多いので。)
そういう場所、使ってあげて下さいよ!
Happy Dancing!