ダンサーがケガする前に考えておきたいあれこれ

リハビリって言葉は知っていますよね。 これね、ケガをした「後」に日常生活に戻るため、もしくは舞台に復帰するための行動なんですが、 リハビリの「前」の方を今日はお話したいと思ってるの。   なぜか?という説明の代わりに、ダンサーとケガの研究データをご紹介していきましょう。   2006年にSusan Simpsonによって書かれた Dance Injury Management によると 80%のダンサーがキャリア中にケガを体験するそうです 65%のケガがオーバーユーズ、そして35%がアクシデントで起きたケガだそうです 90%のケガはダンサーが疲れているときに起こります 98%のダンサーのケガは手術なしで治療されます   もう少し新しいデータですと、2014年5月のJournal of Science and Medicine in Sportに発表されたものでは 260人のエリートバレエ生徒を一年追ったところ76%のダンサーがケガをし、そのうち72%はオーバーユーズ、残りはアクシデントだった と書いてあります。   これらのデータから学べること4つは ほとんどのダンサーがケガをする ケガの大部分はオーバーユーズ…

Continue Readingダンサーがケガする前に考えておきたいあれこれ

ダンサーのリハビリって何?

*この記事の前にリハビリの前に知っておきたい事をこっちで読んでね。   リハビリって言葉を聞いたことがないダンサーはいないと思いますが、では意味は?と聞くと、たぶんみんなちょっと困っちゃうよね。 ここでは「リハビリ」という言葉を紐解いていきましょう。   本題に入る前にマメ知識。 Rehabilitationの日本語がリハビリテーション、しかも日本人らしく?短くするとリハビリになります。 私の住んでいる国、オーストラリアも文字を短くすることで有名なのですが、英語の場合Rehabilitationを略するとRehab、となりますので、 リハビリは和製英語なんだと覚えておくと、留学先でのコミュニケーションが上手くいくと思います。 スポーツ医学でのリハビリの定義 Clinical Sports Medicineによると A dictionary definition of rehabilitation is the “restoration to a former capacity or standing, or to rank,…

Continue Readingダンサーのリハビリって何?

ダンサーのケガ お医者さんとの向き合い方

この前、バレエ学校の中間試験が終わりました。   ご存知のように、私の働いている学校は、 小さい子達は習い事のようにバレエに通い(イブニングスクール) 12歳くらいから本格的にプロを目指す子達が2グループ(ハーフディプログラム)   そして日本で考えられているバレエ留学の王道で、 毎日踊り続けるのが14,15歳以上の子達(フルタイム)   と分かれています。 今回試験があったのはハーフディプログラムから上。   今年は体作りによりいっそう力を入れているのでケガが少ない試験となりましたが、それでもあるのが病気・レッスン外の怪我。   今年の初めから 魚の目が炎症を起こし、靴も履けないくらい腫れ上がった生徒。 急性盲腸! 試験直前にマメの炎症を放っておいて、骨まで感染している疑いがあった生徒。   とまぁ、ある意味こうなっちゃったらどうしようもないケガ・病気がありました。   盲腸の生徒に予防だとか、筋トレだとか言ってもどうしようもないように、 また魚の目が腫れ上がった子にトウシューズの履き方を話しても仕方がないように。 病院にいかなければいけない、除去手術をしなければいけない場合、私達ダンサーはどうすればいいでしょうか?     上のケースで分かるように、最初に魚の目が出来た時点、マメが潰れた時点でどうにかすればいいんですが、 練習を休みたくないんだー!というダンサーだったり、 今まで普通にマメなんて治っていたから。って甘く見ていた生徒がいるわけで。  …

Continue Readingダンサーのケガ お医者さんとの向き合い方

ダンサーのケガ:足底筋膜炎

      この前筋膜について記事を書きました。 今日は筋膜の怪我で有名な「足底筋膜炎」についてお話ししようと思います。 (音声で聞きたい人は一番下へ。ポッドキャスト・YouTubeで再生できます。)   ちなみに私のコンピューターは私と同じく日本語が苦手なので あしそこきんまくえん、 とタイプしないと漢字が出てきませんが、   読み方は そくていきんまくえん だそうです。   この怪我が何なのか? という説明よりも ダンサーだったらどうしたらいいのか? 何が原因なのか? にフォーカスをおいていきます。   なぜか? それは他の怪我と同じですが、自分で勝手に診断されちゃ困るからです! インターネットですこし検索すれば、たっぷりいろいろな情報が出てくる事でしょう。   マッサージ、インソールなど、色々なアイデアがあると思います。 ですが、今年の始めにいた生徒のように、 筋膜が痛いのだとおもってマッサージしていたら、筋膜が切れちゃった! という事もありますし、(彼は8週間以上足が使えませんでした。)  …

Continue Readingダンサーのケガ:足底筋膜炎

ダンサーの捻挫 テープ?サポーター?それとも・・・

この前、サッカー選手が治療に来ました。 彼曰く。   「何度も捻挫したから靭帯がほとんど残っていないんだ」 「だからいつもテーピングしているんだ」   と誇らしげにテープ負けした酷い皮膚を見せてくれました。   自慢するところなのかっ!?   ま、コンタクトスポーツであるサッカーでは、 自分の力ではコントロールできない分野でのけがが多くあります。 タックルされたり、足をかけられたり。   そのときのダメージを良くしておくんですって。 テーピングをすると。   踊っていて起こる捻挫にも外部からの力の場合と、自分のせいで起こる捻挫があります。   が。 圧倒的に、後者、つまり「自分のせいで起こる捻挫」が多いです。   どれくらい多いか?というと 私がここ5、6年ダンサーを治療してきた上で、 リフトで失敗して酷く捻挫したケースは一度しか見ていません。   「あれ?思ったより床が近かった!」 ぐきっ!   それ以外はジャンプの着地で失敗。…

Continue Readingダンサーの捻挫 テープ?サポーター?それとも・・・

ダンサーのケガ 三角骨と足首の後ろの痛み

*このブログは2014年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。   いつもセミナーを行うときは、私も一緒に色々なことを学んでいます。 同じケガ、痛み、年齢、バレエ歴でも一人ひとりの体が違うので新しいストーリー(ケーススタディ)をたくさん聞きます。   2014年春のセミナーで学んだことのひとつは「ひよこ骨」という言葉。 聞いたことがなかったのですが、三角骨のことだそうです。 ということで、今日は一緒にひよこについて勉強していきましょう! 三角骨って何? 三角骨(さんかくこつ・Os Trigonum)というのは、距骨(きょこつ・Talus)に三角の出っ張り?余計な部分??がついている部分の事をさします。 ひよこ骨と呼ばれる理由は、このでっぱりがひよこのクチバシみたいに見えるからだそうで。   足首にこっそりとひよこを飼っている人達は結構多くて、10人に1人だそうで。 今度電車に乗った時に、一緒に車両に乗っている人達の10%がひよこの飼い主なのかぁ、と見てみてください。 世界が少し違った形に見えるかもしれません…   生まれたときからひよこと一緒、という人は少ないらしいので(そりゃそーだ、赤ちゃんの足の骨は大人と全然違うからね!)、 本人がひよこの飼い主だって自覚がない事が殆どです。   →距骨というプリエやポワントで大事な骨の説明は「プリエ使えてますか?」P40 に書いてあります。 三角骨と足首後方インピンジメント症候群 足首ひよこがいたとしても、そいつが全くもって問題にならない人達もいます。 だから三角骨=いつも痛みが出る、ではないのです。   三角骨「が原因」で痛みが出るケースを有痛性三角骨障害(ゆうつうせいさんかくこつしょうがい・symptomatic os trigonum)というそうです。  …

Continue Readingダンサーのケガ 三角骨と足首の後ろの痛み

脱ペンギン歩き! ターンアウトで歩く弊害

*このブログは2014年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。   お団子頭。 大きなバッグ。 足首からちらちら見えるピンクタイツ… そしてペンギンのようにガニ股で歩く軍団をみたらバレエダンサーの卵を発見したことになります。   同じペンギン衆を見かけると、ライバル心からかガニ股度が上がります。 バレエスタジオで先生の前を歩くときもそうなりますし、コンクールや講習会でもガニ股度MAXの子達を見かけます。 中にはレッスン中よりも足が開いちゃっている子も。   バレエダンサーとしてのプライド?自覚??を持って生活している、というのは良い事なのかもしれません。 でも、体には、特に足(Foot)には非常によろしくない。 ケガにつながる可能性、すでに存在するケガや痛みを酷くする可能性もあるし、関節に大きな負担をかける事にもなります。 すでに外反母趾気味なダンサーだったら酷くなる可能性も。   この記事ではダンサーが不必要なケガを防ぐために必要な知識をお伝えしますので、ぜひ脱ペンギンして、人間に戻ってきてくださいね。 ターンアウトして歩くVS普通に歩く ペンギン歩きの弊害をお話する前に、ターンアウトして歩くときと普通に歩く時にどんな違いがあるか?を比べてみましょうか。 足の裏の体重移動動線 ある程度真っすぐに歩いている場合、体重移動はかかとから親指の付け根(母指球)、そして親指の先に抜けていきます。 あ、そうそう、かかとのどセンターじゃないじゃん!と思った方、かかとの骨って少し外側なので骨で見るとかかとの真ん中、肉をつけた足で見ると少し外側に見えるかもしれません。   ターンアウトして歩いていると 体重移動の動線が、踵の外側から親指の付け根ー土踏まずエリアに抜けていくのね。 親指のどこらへんか、土踏まずのどこまでなのか?というのは言及できないので、広いエリアというようにイラストに示しておきますね。 この部分はどれだけターンアウトして歩いているかと、どれだけ足をクロスさせているか?によって変わってくるので。 親指の関節が曲がる方向が変わる 上の続きみたいになるけれど、ここでは親指のMP関節に注目してみましょう。 地面をけるという動きでは、親指のMP関節が(関節のデザイン通り)屈伸します。…

Continue Reading脱ペンギン歩き! ターンアウトで歩く弊害

思春期のダンサーとケガ:研究結果と私たちが学ぶべきこと。

  今日の記事は先日オーストラリアの新聞に載っていた記事を読んで考えたものです。 かなり辛口になってしまいました… まずは記事を日本語訳してみましょう。   バレエはフットボールよりもタフだ! *ここでのフットボールはオーストラリアンルールのフットボールです。 ラグビーみたいなコンタクト競技です。選手は記事の写真みたいにマッチョ、筋肉ムキムキです。 バレエは思春期の子供にとって他のマッチョなスポーツよりも危険だ。 Sports Medicine Australia(スポーツ医学研究所)の研究によると、 若いダンサーは他のスポーツ選手に比べてケガのリスクが高く、75パーセントのチャンスでケガをすると分かった。 厳しいトレーニングの量と成長期、これらが若いバレエダンサーのひどい、 時にはキャリアを辞めざる得ないケガに繋がる、とMonash大学の研究家Christina Ekegrenは話します。 「過去の研究ではダンス、特にバレエは若い子供たちにとって、身体的に過酷な運動の一つだと分かっています。殆どのダンサーは1週間に6日のレッスンを行っています。」 という記事。 ここから学べることは何か?というのをダンサー、ダンサーを持つ両親、そしてダンス教師の目線から見ていきましょう。   ダンサーが学ぶべきこと それは、バレエはただの遊びではないということ。 ごめんね、夢を壊すような事を言って。   このサイトを読んでくださっている子達は、プロを目指している、そしてある程度年齢がいっている、と思っています。 5歳が勝手にインターネットサーチをしないと思っているので。   プロのダンサーになりたい! というのは素敵な事。 そしてDLSではその為のサポートをたくさんしているつもりです。…

Continue Reading思春期のダンサーとケガ:研究結果と私たちが学ぶべきこと。