バレエを続けるべきか?それとも辞めて他の道を選ぶべきでしょうか?
この質問、バレエをやっている人ならば、何度も自問したことのあるものでしょうし、
バレエを教えている人ならば幾度となく聞いたことのある質問でしょう。
10年前の今日、私はメルボルンにバレエ留学に来ました。
オーストラリアの学期は、日本と少し違います。こちらの1年は1月下旬から始まり、12月に終わります。
1学期の一番最初から学校に来たかったので、高校の卒業式には出る事が出来ませんでした。
成人式はもちろん、日本の大学生活を送ったことも、社会人を経験したこともありません。
(もうちょっと詳しく私の留学経験を知りたい人はシリーズにしてあります)
留学当時は、それをバネに「ここまで頑張ってきたのだから!」と踊り続けていました。
犠牲にしたものが大きいぶん、頑張らなければいけない・・・
10年前の私と比べ海外生活は長くなったものの、肝心のダンサーという夢も叶えていないですが、私は今の仕事、生活が大好きです。
舞台では踊っていないものの、パフォーマンスを助ける仕事ですし、たくさんのダンサーのお手伝いを出来る仕事です。
そして色々な人にお会いできる仕事でもあります。
この10年間に様々な事を学びました。
バレエ留学さえすればダンサーになれるだろう、なんていう甘い考えはもうなくなりましたし、
職業としてのダンサーと、生徒が考えるダンサーとの違い、というのも分かりました。
バレエ学校で働いていると、留学生だけでなく、様々な生徒が入学、中退、そして卒業するのを見ていきます。
ダンサーとしてのキャリアを積んでいる人なんてひとつまみだ、という現実も何度も見てきました。
私たちスタッフがダンサーになれる!と思って見守ってきた生徒がいきなり踊りを辞める、という事もたくさんありますし、
ダンサーは無理ではないだろうか?と思う子がダンサーになっていくところも見ました。
10年間で何度も見てきた現実。
それは脚のラインがきれいだろうが、身長が高かろうが。
最終的に物を言うのは心の強さ、と何がやりたいのか、というゴールがはっきりしているところだった、ということです。
ダンサーとしての成功が、人生の成功だとは限りません。
カンパニーに入って踊ることだけがプロのダンサーなわけでもありません。
踊りを辞めて、教師になるのは逃げ道ではなく、全くバレエから離れても、その経験をプラスに使えている人は幸せだと思います。
それを踏まえ、最初の質問に戻ってみましょう。
バレエを続けるべきか。
それを自問する、自問しざるを得ない時というのは、絶対にあります。
例え十何年もプロとして踊っている人でも、真剣にバレエを続けようか迷っている中学生でもあるのです。
ただ、この質問を他人にしてはいけないでしょう。
人にこの選択を託せる、という時点でバレエを続けていない方がいいのではないかと私は思います。
そんなに簡単な世界ではない事は分かっているでしょう?
最終決断は自分で行うべきです。
そしてその決断に責任を持つべきです。
先生や、周りの友達にダンサーになれるよ、と言われて踊ってきた生徒は見ればすぐに分かります。
そして踊っていなければ死んでしまう!と信じている生徒も見ればすぐに分かります。
私のように「これだけ犠牲にしたのだから」と思って踊るのは本当に踊りたい人の心境でしょうか?
それとも「それが正しい」と決めつけてしまったのでしょうか?
今になってわかりますが、私は後者だったと思う。
自分の為の人生なのですから、好きな事を思う存分行えばいいし、
それがうまくいかなかったら、軌道を変える事は思ったよりも簡単です。
いくらプロになっても、時間が来れば次のキャリアに変更しなければいけないのと同じように、
ダンサーとしていくつか自分の興味のある事、次のステップを考えておくべきでしょう。
そしてそのステップ、というのは思ったよりも簡単。
バレエを20年やったから他の事が出来ない!
なんて誰も決めていません。
ただ、自分の決断に責任を持たないと、一生幸せにはなれないと思います。
自分の体に責任を持ち、お客様に最高な物を見せる。
それがダンサーの仕事であれば、
自分の夢に責任を持ち、自分の最高な人生を歩む。
というのは人間の仕事ではないでしょうか?
Happy Dancing!