前回の記事で、何層にもに分かれている腹筋問題について書きました。
どうして、みんな腹筋がどこにあるのかわかっていて、学生時代から腹筋運動のやり方を知っているし、腹筋が大事だっていう理解もあるのに、腹筋が弱いと悩むのか?
ここでは、何層にもなっている問題の一番最初、腹筋という筋肉の解剖学を見ていきましょう。
腹筋は4人グループ
みんなが気軽に「腹筋」って呼んでいる子たちは、4つの筋肉でできています。おなかの皮膚に一番近いところから
- 腹直筋
- 外腹斜筋
- 内腹斜筋
- 腹横筋
という順番で、背骨に向かっておさまっているそうです。
もちろん、毎回くしゃみをするたびに筋繊維が絡まらないように、全ての筋肉たちは筋膜っていう膜に覆われています。
腹筋が筋肉痛の時にくしゃみをするととっても痛いの!体験したことありません?
もしくはすんげー笑った時。
日常生活のふとした瞬間にも腹筋って使われているんですよね。
ダンサーはお医者さんじゃないので、筋肉がどの骨の何という出っ張りから始まって、どんな神経が通っていて・・・なんてこと知らなくって大丈夫。
どこにあるか?がだいたい分かると、どんなお仕事をしてくれる筋肉なのかが分かります。
どうしてかって?
それは筋肉には絶対にスタートの点(始点、起始点などと呼ばれる)と、
終わりの点(停止点と呼ばれる)があるからです。
筋肉を収縮させると、スタートと終わりの点が近づき、その筋肉を伸ばすと、点と点が離れていきます。
だから、どこにあるか?が分かると、ある程度その筋肉のお仕事が見えてくるのです。
それをDLSでは「点と点原理」と呼んでいます。
腹直筋
腹筋群の中で一番シンプルな形をしているのが腹直筋(ふくちょくきん)。
イラストを見ると、始まりの点は肋骨、終わりの点は骨盤の恥骨のところについていますね。
この点と点を縮めると・・・胴体、背骨が丸まります。これが腹直筋のお仕事。
- 骨盤の点が動かなかったら、肋骨が骨盤の点の方へ
- 肋骨の点が動かなかったら、骨盤がタックへ
- 両方の点が一緒に動くと、体を丸める形
になりますよね。
図:腹直筋
点:骨盤の恥骨結合付近
点:肋骨(5-7)、剣状突起主なお仕事:体を丸める
内腹斜筋と外腹斜筋
腹斜筋たちは外側と内側で繊維の方向が違うものの、肋骨から骨盤に斜めについています。
左右対称に動いてくれたら、腹直筋と同じように肋骨と骨盤の距離を縮めて背中を丸めてくれますが、片方だけ働く場合は体をねじってくれます。
外腹斜筋(がいふくしゃきん)と内腹斜筋(ないふくしゃきん)ではひねる方向が違いますが、ダンサーだったらそこまで知らなくてもOK。
腹斜筋たちは「背中を丸めるだけでなく、 体をひねる作用もある」って分かれば上出来です。
図左:外腹斜筋
点:骨盤の前の方
点:肋骨(5-12)の横の方
主なお仕事:体を丸める&体を反対方向へねじる
図右:内腹斜筋
点:骨盤の前の方
点:肋骨(10-12番)の横の方
主なお仕事:体を丸める&体を同じ方向へねじる
- サークルポーデブラをした時の動きやすさ
- センターでの4番ポジションのポーデブラでの安定性
- アラベスクのしやすさ
レッスンの動きだけでなく、日常生活でも、体の感覚や強さが左右対称の人の方が少ないんじゃないかしら?
腹筋たちはひとつの筋肉の中に右と左があります。
イラストで見てもわかるように、おなかの真ん中に線があります。
これを解剖学では白線というんですが、そこから左右が分かれています。
例えば外腹斜筋の右側と、内腹斜筋の左側が一緒に動くと、右肩を左の骨盤の方へひねる動きを作ってくれるのね。
側弯症の人や、コンクールレッスンばっかりやっているダンサーはこの筋肉をはじめ、体の様々な筋肉に左右差があります。
これを放っておくと、
- 筋肉の付き方等の見た目
- テクニックの左右差
- 怪我
にもつながってしまう…
腹横筋
腹横筋(ふくおうきん)はコアマッスルの一部でもあり、腹筋群でもある、腹筋4つの中で唯ーグループを掛け持ちしています。
肋骨の点と骨盤の点を結ぶ、という腹筋らしいスタイルはあるものの、ウエストをぐるっとまわった点と点になります。
よってお仕事も、今まで見てきた3つの腹筋たちとはちょっと違うんですね。
図:腹横筋(右側)
点:肋骨、骨盤、背中側の筋膜点:おなかの真ん中の線(白線)
主なお仕事:腹圧の維持、体幹の安定
腹横筋がコアマッスルグループに入っている、というのがヒントになったかもしれませんが、
腹横筋のお仕事は腰を安定させたり、おなかを引っ込めて腹圧のコントロールをすること。
ダンサーの怪我も多い腰椎エリアや骨盤を安定させて、ケガを予防してくれたり、踊りを安定させてくれるため、
4つの腹筋たちの中では一番大事!
と私はひいきしています。
まとめ
- 腹筋は4つある
- 全ての筋肉で繊維の方向は違うものの肋骨と骨盤をつなげている
体の中に4つある腹筋たちは、肋骨と骨盤をつなげて体幹を安定させてくれるほかにも、
柔らかなカンブレ・デヴァンのように上体を丸めたり、カンブレ・デリエールから戻ってくるときに腹筋たちが大活躍するのがわかりますね。
でも…
何か変なの気がつきました?
腹筋は脚の骨、つまり大腿骨にはつながっていないの。
なのに、バレエでは「腹筋が弱いから脚が上がらない」って言われるけれど、脚には筋肉が続いていません。
腹筋に限らず、筋肉の仕事は始まりの点と終わりの点を縮めたり、キープしたり、コントロールしながら伸ばすことで分かるよ、ってさきほどお話しましたよね?
腹筋たちが脚にはついていないってことは、点と点を縮めることは不可能じゃない?
だとしたら「腹筋を使って脚を上げる」つていうのは先生の嘘だったのかしら?
どこかで腹筋最強説にヒビが入った音がしたのは気のせいでしょうか…
この新しい発見については、次の記事で一緒に考えてみましょうね。
ダンサーの腹筋事情シリーズをまとめたeBookはDLSストアにて好評発売中。
でもこの記事の文章をみて分かるように結構難しいですよね。
文章を読むのが苦手、解剖学初心者は同じエリアをカバーしているオンライン学校をオススメします。
話し言葉だし、ビデオだし、若いダンサー達にも分かりやすくなっています。
「今すぐ購入」をクリックするとアイテムがショッピングバッグに入ります。
バッグのアイコンをクリックすると、内容の確認、調整や削除などが購入前に出来ますのでご心配なく!
DLSのダンサーサポート活動への応援、どうもありがとうございます。
Happy Dancing!