この記事は、2017年に「会話力、英語、留学、ダンサー。」という題名で書いてあったのですが、内容を読み返したら
会話力や英語、というより(特に)留学を考えているダンサーのコミュニケーション力について書いてるじゃん!
とツッコミを入れまして笑
題名と内容がマッチするものにアップデートしてお送りします。
プロダンサーを目指している子達であれば、バレエ留学を考えるのは自然なことだと思います。
私もその一人でした。
そしてバレエ留学後、バレエ学校で10年以上教師として働いた経験、留学生を「受け入れる側」をやってきた経験から、
前々にも留学を考えているならば英語の勉強をしておきなさいよ、って話をしています。
どれくらいの英語力が必要ですか?という質問に答えた事もありますが、今日は、英語、日本語という分野ではなく、もっと大きな問題、コミュニケーション力(とそれを手に入れるための勉強)がについて書いていきましょう。
バレエをやるから勉強は必要ない?
バレエ学校勤務中出会った事がある生徒の中に
学校の勉強が苦手だったから、(地元のスタジオで)踊れてたバレエの道に進もうと思った
という子たちが何人かいました。
そして、バレエ学校で筆記試験があって文句を言っているのを聞いていました。
(私のクラスだった解剖学も筆記試験でしたが、バレエセオリーやエッセイ提出などもあったので…)
その子たち、残念ながらダンサーになっていないだけでなく、途中で退学している子たちが多かったです。
頭の良さはダンサーには必要です
今まで出会ってきたプロダンサーで(ジャンルを問わず!)、バカだな、こいつっていう人はいません。
方程式を知っているから偉い、とか点数がいいから頭がいい、とかそういう話ではありませんよ。
でも
- 言われたことを理解する能力
- 言われたことを覚えておく能力
はバレエ上達に絶対に必要ですよね?
- レッスン休んで、学校の勉強を頑張りなさいよ!
と言っているわけではありませんし、
- 虐められているのに、我慢して卒業しなさい
とお話しているのでもありません。
シチュエーションによっては
- 辞める事
- 方向転換をする事
の方が
- 意味なく続ける事
よりも難しく、そして大切です。
でもバレエ留学しても嫌いな科目は出てきます。
さっき例に挙げた
- 解剖学
- エクササイズクラス
- コンテンポラリー
- キャラクター(私はこのクラスが一番嫌いだった!)
- バレエセオリーや歴史など。
- 相性の合わない先生がいる(先生があなたを嫌いな場合も、あなたが先生を嫌いな場合も両方)
- クラスメイトと一緒にやらなければいけないタスク(コンテでグループ作品を作って発表するとか)
- 締め切りまでに終わらせなければいけない提出物(エッセイやアセスメントなど)
嫌いだから、避けよう!としていたら卒業出来ません。
- 嫌いな科目でも向き合う事
- 特に言語であればしっかりと身につける事(会話という面であり、テストの点数ではない)
の2つは留学を考えているなら身につけてくださいね。
バレエ学校からヨーロッパの大きなバレエ学校に留学した子は、英語はネイティブで出来る、親が中国人なのである程度そっちも分かる、
にプラスして、バレエ留学が決まった途端ドイツ語を週に一度習いに行っていました。
彼女は今、プロダンサーとしてカンパニーで活躍しています。
コミュニケーション能力で使う脳は一緒
英語だからできない、と「言語」を言い訳に使う人たちがいますが、
彼らの日本語を聞いていても語彙が少なかったり、理論的な説明が母国語である日本語でもできていないことに気づきます。
- 聞く
- 話す
- 理解する
- 書く
この部分は脳みそだけで見ると、日本語だろうが、英語だろうが、イタリア語だろうが!一緒だそうです。
話す、書くが少ないダンサーでも、これらを表現する、アウトプットすると言い換えると舞台での必要性も見えてきますよね。
舞台の話は置いておいて、脳みそだけで考えると日本語(もしくは母国語)で
- 自分の意見、考えを口にする事が出来る
- 疑問を解決するために、質問ができる
- 怪我の様子を伝える
ことができなければ、いくら英単語を知っていてもコミュニケーションが取れるようにはなりません。
このような団体生活で必要な力を
- 日本語(母国語)で
- 自分の慣れ親しんだ環境で
- 家族、友達など知っている人達の中で
- 必要であれば親や先生が助けてくれる場所で
育てる事が出来なかったら、海外で出来るわけないじゃないですか。
留学を考えているお子さんがいるご両親や、留学生を育てたいと思っているバレエの先生は十分気をつけてくださいね。
バレエレッスン、特に日本のスタジオでは生徒は喋りません。
自分の意見を言ったり、生徒同士で話し合ったりすることはありません。
なので、この部分「だけ」で見ると、他の団体スポーツを放課後にやっている子達よりもダンサー達は練習不足だと分かります。
コンクールばっかりやっている子達は忘れてるかもしれないけれど、
- バレエ学校は団体生活
- バレエ団は「団」である
- 舞台制作は共同作業
という環境であることをお忘れなく。
面接はオーディションの最後の砦
バレエ学校のオーディションの最後には、インタビュー(面接)が付いてきます。
バレエ学校に入っても、学期末インタビューや先生とのディスカッションというものがあります。
カンパニーに入ったら、振付家と話し合ったり役を作り上げていかなければいけません。
ディレクターとしっかりと会話、意見する事が出来ないと、次のシーズンでどんな役をやりたいのか、いつ休みが欲しいのかなどニゴシエーションする事が出来ません。
ローザンヌ国際バレエコンクールでも、ディスカッションやインタビューの時間が設けてあるのが資料を見て分かるはずですし、
ローザンヌのyoutubeを見てわかるように振付家と一緒に仕事する様子も見られています。
ただ、
- ターンアウトができる
- 足が上がる
- 回転が出来る
- ジャンプ力がある
だけでは足りない世界なのです。
正確に分析すると、テクニックが「当たり前」に出来る子たちが最終ステージまで残り、(もしくはカンパニーに入り)
最後のふるいが会話力なのかもしれません。
面接やインタビューは最終段階で出てくるので。
バレエ学校のコンテンポラリー試験でインプロバイゼーション(即興)の項目がありました。
試験管に試験中、いきなりテーマを言われます。
日本人生徒達のために私が通訳で入ったので、試験のテーマへの理解差が出たわけではありませんが、全てのバレエ学校で常に通訳は入らないでしょう。
そしてお題が理解出来たとしても、それをコンテンポラリーの試験中に体現できたか?は別問題です。
過去の表現力セミナーの時にも参加者にお話しましたが、インプロはオーディションに出てくることの多くなったテクニックの一つです。
コンテンポラリーをやらないバレエ団がないのを考え、近年の振り付けの方向性を考えたら、これからどんどん増えていくのではないかと考えられますよね。
インプロとコミュニケーション力の繋がりが分からないって?
言われたことに対し、動きで返事をするという能力、もしくはお題に対し深く話し合いながら進めていく作業だから、ダンサーのコミュニケーション力という事で一緒にしています。
日本人だからコミュニケーションが苦手?
このようなコミュニケーション力の話をすると、決まって(そして大人から)
「日本にはそういう習慣がないから」
「日本人はコミュニケーションが低いから」
と言われます。
私が海外で働いているから、「愛さんはそういうけれど、日本はそうじゃないんですよ」と言いたいのでしょう。
でもね、こちらの生徒でもシャイな子はいますし、日本人でもしっかりと自分の意見を言える人もいます。
確かにコミュニケーションは「力」なので練習をすればするほど、上達もするでしょう。
その練習のチャンスが日本の学校生活では少ないという事なのかもしれません。
でもコミュニケーションをしないで生活する事は不可能です。
- 友達と会話する
- 先生に来週コンクールがあるのでお休みします、と伝える
- スタジオで挨拶する
これらはしますよね?
3人以上集まって、黙っている友達グループいる?
静かにしなさい!って怒られるでしょ?
バレエレッスンは日本の学校で習いません。
宮廷での身のこなしみたいなものは、お家で練習しません。
だけどバレエに必要だからレッスンやリハで勉強しますね?
だったら、バレエに必要であるコミュニケーション力も同じように
- 留学準備の一部
- 海外生活の準備
として行うべきではないでしょうか?
海外に行かなくても、プロにならなくても、
バレエの先生になりたいと思っていたら、指導内容は口頭です。
よってコミュニケーション力「だけ」に頼る職業になります。
- どうやったら相手に通じるだろう?
- 何を相手が言いたかったんだろう?
たとえバレエの道には進まなかったとしても、このように考える能力が無駄になることはありません。
就職活動も、部活も、バイトでも「こいつ、話しても通じないなー」とか「何言っているのか分かんないよ」という人は役に立ちませんよね?
ここは非言語的コミュニケーションではありますが”コミュニケーション”であることには変わりないので考えてみよう。
ストーリーを伝えるバレエで
- ストーリーを理解出来ない
- ストーリーを観客に伝えられない
となったらそれって表現者として問題じゃない?
表現力も
- 自分が伝えたいこと
を
- 自分以外の人に伝える事
なんだから、やはり日常生活で練習していきたい部分だよねと思うのです。
舞台に立った時だけ貼り付け笑顔とか、なんだかよく分からない、ほっぺを膨らませて「怒った顔」を作るとか(誰もそんな風に怒らないでしょ…)
→舞台で使える表現力を身につける方法を学ぶオンラインクラスはこちらから
まとめ:ダンサーとコミュニケーション力
言語コミュニケーション(先生⇔生徒、ダンサー⇔振付家)でも、非言語的コミュニケーション(ダンサー⇔観客)でも、ダンサーにとってコミュニケーション力は非常に大切です。
そしてコミュニケーション力は日本語でも練習出来ます。
苦手だと分かっているなら&練習不足だなと知っているなら
今から練習してくださいね。
Happy dancing!