脚を高くあげたい!という悩みはどのレベルのダンサーでもあるようです。
バレエを始めたばかりのチビでも、大人から始めたトレーニーでも、10数年踊っているバレエ学校生徒でも。
1時間半のレッスンの中で、脚を高くあげる時間がどれくらいあるのか?と考えると
その前にやらないといけない事があるんじゃないか?と私は思うし、何度もブログ内で伝えてきていますが、
今日は脚をeffortless(力まず・軽く)に高く上げたい、という質問に答えていきましょう。
EffortlessはEffortfulである
ダンサーも含め表現者は表現したい事柄を明確に理解する必要があります。
ちょっと言葉遊びみたいだけど、まずはeffortlessという意味を考えてみましょう。
Effort
努力、奮闘 (英和辞典)
effortlessは、effortがless、少ないという事で
努力したように見えない、さりげない、楽なという意味になります。
- 疲れてきても簡単に脚を上げる方法は?
- 軽く脚を上げたいんです
- 肩に力が入らず、美しいラインで脚を上げるためにはどうしたらいいですか?
などの質問が全て
脚をeffortlessに高く上げるには?という文章で収まるって分かりましたか?
そして、ここで言う脚の高さは
- 骨盤をずらしてから、膝を伸ばすデベロッペ
- 高く上がっているけど、腰だけで曲がっているアラベスク
- 脚を高くあげたため、役柄や音楽に間に合っていない踊り方
ではない事もご理解ください。
楽に上げている~のに音に遅れていたら変でしょ?
でもね、舞台の上でeffortlessに「見せる」ためには日々effortful、身体的努力が必要なんです。
- 舞台で軽く見えるジャンプ
- 舞台で優雅に見える動き
- 息を飲むような演技
- どんなに早い動きでも保たれているターンアウト
これらが簡単に手に入る訳ではございません。
だからこそ、選ばれしバレエ団のダンサー達でさえ毎日バーレッスンから始めるんですから。
でも日々のレッスンでどんなことを気をつけたらいいでしょうか?
脚をeffortlessに高く上げるために その1:軸足強化
筋力をつける事はeffortlessに脚を上げるためには必要不可欠です。
ジャムの瓶を開けるときを考えてみてください。
いきなり!?というツッコミは聞きません。
力が強い人だったら、何事もなかったかのように開けてくれるよね?
でも力が弱い人だったら
- 体を丸めて
- 肘を固定して
- 首に力をいれつつ
- 呼吸も止まりながら
開けると思うの。
しかも開けた後に動きを制御出来なくてガクッとなったり、フーっと呼吸を戻したり。
つまり、目に見えて大変だった感が分かっちゃう。
これが舞台で見えたらeffortlessに踊ることは出来ません。
ただし「脚を上げる」がキーワードの場合、強さで大事なのは軸足です。
そこしか地面についていないし、そこしか貴方の体をサポートしていないから。
すごくいいお家を立てたとしても、地面が水平じゃなかったら歪んじゃうわけ。
昔からある大木でも、地震で地面が崩れたら、一緒に倒れてしまう。
いくらダンサーが体幹を鍛えても、軸足の強さが無ければ、片足で踊る事は出来ません。
DLSサポーターの皆さんだったらここら辺で気づくかしら?
「あー愛さん、また立ち方の事言ってるのね?」って。
その通り。
床に寝転んで脚を上げている振付でない限り、軸足でしっかりと立つ強さが、動脚のフリーダムを増やしてくれます。
軸足強化エクササイズは私のプリエ本にたくさん載っていますので今日は割愛します。
レッスンでは以下の事に気をつけてみましょう。
- アテールの時からしっかりと軸足に乗っているか?を確認する(バーから手を離すなど)
- 低い足の高さでバランスを取ることで、軸足の持久力を作る
- 軸足をおろそかにして脚を高く上げる間違った練習を繰り返すくらいなら、脚の高さよりも軸足をプライオリティに考えて踊る
自主練ではプリエ本P52の簡単な振付を見ながら練習してください。
お家にバーが無くても、壁があれば出来ます(=皆できます)
脚をeffortlessに高く上げるために その2:コーディネーション力
いくら筋力が強くなっても、一連の動きに滑らかさがなければeffortlessには見えません。
デベロッペ アラセコンドを例にとったら
- 脚をあげるって分かってるから、既に骨盤をずらしてルティレ
- 大腿骨を一番高い位置に持ち上げておく
- そこまで完成してから膝を伸ばす(たぶんカウントを使い切っているのでキックのように膝を伸ばすだろうと思われる)
としていたらいくら本人にとって脚が軽く感じられて、高く上げられたとしても意味がないのよ。
逆に
- クドゥピエからルティレでグラグラしない
- 脚がデベロッペ(=発展)していくにつれて目線、ポーデブラ、胸椎と頸椎の動きが生まれる
- 次の動きにスムーズに繋がる
だったら、本人は大変だろうし、脚はちょっと低いかもしれないけど観客側は安心して見られますよね?
脚の高さ「だけ」に気を取られず、体全体のコーディネーションまで練習してください。
ここでいうコーディネーション力というのは
- 上半身と下半身の繋がり
- 振付と音楽との繋がり
の両方を指します。
だってバレエは人間(上半身+下半身)が音楽に合わせて、振付を行う動きだから。
本来なら、脚を高く上げたり、振付が長く、複雑になる「前」にバレエで必要なコーディネーション力を育ててきているはずなんですが、
基礎レッスンをすっ飛ばしてきた人達は自分で足りない部分を補充しなければいけません。
その場合、レッスンを週に1度減らしてエクササイズクラスを受けるのもOK。
自分の癖を直さず、使いたい筋肉だけでレッスン量だけ増やすくらいなら、エクササイズクラスで弱い部分を強化し、癖を修正した方が上達は早まります。
脚をeffortlessに高く上げるために その3:表現力!
努力したからといってマラソン選手が疲れないわけはございません。
何度も練習したからって、ブルーバードを踊ったら息が切れなくなるわけでもございません。
最初にお話した通り、effortlessな動きのためには、effortfulな練習が必要です。
Effortlessはlazy、怠ける事、を指しているのでもありません。
もちろん、基礎体力は非常に大切ですし、それって普段のレッスンでは手に入りません。
だからランニング、スイミング、縄跳びなど、DLSでも記事にしている体力アップ方法を
- 自分のスケジュール
- 自分の体(ケガ)の状態
に合わせて選び、トレーニングに取り入れてください。
でもね、最後は表現力も必要です。
- 辛い時に辛い顔をしない
- 役作りを徹底し、素に戻る瞬間がないように練習を続ける
- 難しいステップがくる前に「くるぞ!」と構えた様子を見せない
- 失敗しても眉をしかめない、照れ笑いをしない
- 表情筋もレッスンから鍛えておく
これらだって、effortlessに脚を上げて踊るためには大切な練習だと覚えておいてください。
まとめ:effortlessに脚を上げるためには
- 軸足の強化を、脚が低い時から徹底すること
- コーディネーション力を磨くこと(+補足エクササイズクラス)
- 表現力を磨くこと(+基礎体力)
どうでしたか?
脚を上げること「だけ」を考えるとストレッチに走りたくなるのはよく分かりますが、問題を解決するヒントはあからさまなところには落ちていません。
そんなに簡単に解決したら、皆足が高く上がるようになりますって。
脚を高くあげるだけでなく、優雅に踊るヒントになったら嬉しいです。
Happy Dancing!