リハビリとは何なのか?という言葉の意味と一緒に、
痛みをこらえて踊り続けるのではなく、最短の時間(とお金、これも大事!)でダンサーが舞台やレッスンに戻ってくるのをリハビリと言うよ、
とこの記事でお話ししましたが、根本的な「痛み」については何もお話ししていなかったよね。
この記事では「痛み」って何?という話をしていきたいと思います。
痛みは何かが変というサイン
そもそも、どうして人間(そして動物も含めて)は痛みを感じるのか?というと、サバイバルするためなんです。
「危険だ!」「逃げろ!」
骨が折れているのか、パックリ肉が割れたのか、それとも毒グモに噛まれたのか…
原因が分からなくてもヤバいぜ!ということを痛みが教えてくれるってわけ。
動かすと痛い、というのはケガした部分の組織が完全に修復されていないから、動かすなよ、と教えてくれているわけだし、
この方向に動かすと痛いよ、というのは関節が脱臼する前に知っておきたいでしょ。
だからね、痛みは悪者ではないんだよ、というのを覚えておいてください。
ただ、痛みの原因が動きに対して体が弱いことで出てきた場合、例えば、振付の難易度とあなたの筋力や体力がマッチしていない場合は、休んでいても向上しません。
体が教えてくれているのは、そのまま動くとケガするぜ!であり、そのシグナルに間違いはありません。
だから、ダンサーは体が出してくれているサインを感じ、パニックになるのでもなく、無視するのでもなく、サインを読み取って対応する必要があるってことね。
痛みがある場所=原因ではないこともある
身体的な痛みは大きく分けると
- 関節(靱帯も含む)
- 筋肉(腱、筋膜も含む)
- 神経系
からくると言われています。
捻挫みたいに、痛い場所=組織が損傷している場所のときもあるし、
痛い場所=ほかの部分に問題があるけれど、痛みが出た場所がこっちだったケース、というのもあります。
このことを医学用語では「関連痛(referred pain)」と言います。
例えば、ハムストリングスの後ろ側が痛い、硬い、という問題を見てみようか。
理由はもちろん、ハムストリングスのケガの場合もあるんだけど、腰からおしり、ハムストリングスを通っている神経である坐骨神経からくる場合もある。
- 腰椎の椎間板を潰している
- 梨状筋が硬くなり神経を圧迫している
- おしりのポッケに入れておいたお財布が神経を圧迫している(実際にあるからね笑)
などが原因だった場合、ハムストリングスを治療しても、ストレッチしても良くならないんですよ。
ダンサーの場合、緩い関節を守るために筋肉が硬くなっている場合もあります。
例えば、股関節が緩く、不安定。だから体がケガしないように股関節周りの筋肉を固めておいてくれます。
でも筋肉が膠着していると、コリみたいな痛みがあるし、思ったように動けない。
硬い感じがする。
だからマッサージしてもらう。
マッサージ後は体が軽くなった感じがしたり、股関節がフリーに動くようになったように感じるかもしれないけれど、
問題の根源である股関節の不安定さ、弱さ、緩さというのは改善していないわけだよね。
だとしたら、踊り出したらまた防御作用として固めてしまうだろうし、
もしかしたら体が怖がっていて股関節のケガに繋がる可能性も。
体が痛い!と言っているときは何かがおかしいんだと覚えておいてください。
そして原因が痛みの場所ではないこともあるかもしれない
というのを知識として覚えておけば早めにプロに診てもらうとか、ムダなケアにお金や時間を使わなくて済みます。
そのほかに、長期にわたるケガをしていると、その部分の神経が過敏になって、付近の痛みやちょっとした感覚も「昔ケガしたところがまた痛いぞ!」と脳みそにシグナルを送っちゃう、
なんてこともあります。これを医学的にはワインドアップ現象というらしいけど、そんなのダンサーは知らなくていいよね。
痛みのある部分の筋力を落とさないためにも、体力やスタミナを落とさないためにも、
そして神経回路が過剰に働かないためにも、早くケガを治す必要性が見えてきたかな?
痛みは精神的な状況にも左右される
精神的な状態によって痛みの感じ方が変わるというのも分かっています。
長期にわたるケガをしているダンサーは、踊っていても普通の生活を送っていても、
もしかしたら朝ベッドから起きたときにすら「今日は大丈夫かな…」と痛みについて不安に思ってしまいます。
そりゃそうだ。
今までずっと痛かったんだもの、今日は大丈夫かな?
今日のレッスンでこれだけ踊ったら、明日また痛くなっちゃうかな…
このような不安や、このまま踊れなくなっちゃうのかな、という恐怖。
このような感情は痛みを悪化させてしまうのね。
覚えておいてほしいことは、感情からくる痛みは嘘の痛みではないということです。
あなたが痛いフリをしているわけでもないし、痛みを派手にしているわけでもない。
強い精神があれば痛くないんだ!でもありません。
さっき、痛みがある場所=原因ではないとお話ししたでしょう?
それと同じで痛みがある場所が膝だったとしても、心や頭に原因があるかもしれないんだよ、というだけです。
だから治療法は、膝を庇うことでもなければ、滝に打たれて精神を強くすることでもなく、
どうして私は不安に思っているんだろう、何が不安なんだろう、
どうしたら不安を取り除くことができるかな?と考えることになるよね。
リハビリの一部は自信を取り戻すこと
リハビリに含まれるもの、として心理状態というのがあったけれど、どうして精神的な部分がリハビリで重要視されないといけないか?というのが痛みの性質を理解したらわかってきたよね。
- ここまでトレーニングしたから大丈夫
- 舞台復帰前にここまでのプログラムをやったから大丈夫
そして、
- このケガからも立ち直ったんだから、また痛くなっても対応方法を知っているから大丈夫
という自信を取り戻すこと。
それはダンサーのリハビリにはとても大事になってきます。
信頼できるプロたち(治療家・トレーナー・もしかしたらカウンセラーなど)と一緒にリハビリができたら、この部分もカバーしてくれているはず。
そういう人たちが周りにいない場合は、DLSの「ダンサーのリハビリebook」の内容を勉強し、
- 自分でどんなエクササイズをやったのか
- どこまでレッスンに復帰したのか
を日記のように書きながら、ここまできたんだ、という事実を頭の中だけでなく、自分の目で見えるようにしてあげてください。
痛みを無視しないこと
「捻挫癖があるんで大丈夫」
「痛めただけだから踊れます」
「ジャンプできないわけじゃないんで…」
こういう言葉はダンサーたちからよく聞きます。
でも、痛みを甘く見るなよ、ということが分かったかしら?
幼いころのストレッチの痛みに始まって、トウシューズでの痛みだったり、アラベスクでキープしているときの腰だったり。
そのような痛みを「バレエをやっているなら当たり前」だと言われてきたダンサーたちは、早いうちから痛みを無視するという技術を身につけてしまいます。
確かに、トレーニングしているときに筋肉に感じるじわじわ感や、レッスンの次の日に感じる筋肉痛などはちょっと嬉しい感じがします。
でも、よく考えてみたらそれだって体が出しているサインなんですよ。
- この筋肉を使っていますよ、という感覚
- この部分がほかの部分に比べて弱かったみたいです、という結果報告
- このポワントは足に合っていないからやめた方がいいよ
というものまで、体の出している痛みを自分の味方にすることができます。
筋肉痛が長引いたり、いつもと同じトレーニングでも早くから筋肉がギブアップしているようだったら、
お?ちょっと疲れているのかな、リカバリーが間に合っていないな。
今日は体のケアをして早めに寝てあげようなど、ケガ予防にも使えます。
長期のケガをしているときは、痛みは敵!と感じがち。
でも体が出しているサインなので聴く耳を持ってあげてください。
ネットよりも多くの有益な情報をゲットできるはずです。
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