*2014年の記事を読みやすいように+新しい記事のリンクをつけて編集しました。
考えとしては2014年から全く変わっていません。
最近YouTubeでも宣伝が入るようになったポワントボール。
これに対して、そしてこれに似た質問をよくされるのでここで一気に答えてしまいます。
私、佐藤愛の個人的な考えですからね。
まずは記事を読んでみて、そして自分なりに答えを出してみてください。
まず最初に:知識があれば何でもできる
どんなエクササイズでもそうですが、しっかりやれば効果が絶大。ちゃんとやらなければただの動き。
正しい知識がある人が、正しく体を見てくれる人がいる必要があります。
自分の癖って自分では分からないから、それを指摘してくれる人がまずは必要ってことね。
- 自分で何をやっているのか?
- 何が目的なのか?
- どうしてこのエクササイズなのか?
- どうしてこれが目標達成になるのか?
という部分が分かっているダンサーであれば何でもできると思います。
逆にいうと、ストレッチもエクササイズも、上にのせた質問4つにしっかりと答えることが出来なければやらない方がいいかもしれません。
癖があるままでエクササイズをする=間違った癖をどんどん強くする
ということだというのは頭に入れておきましょう。
指先への意識を向けることにはなるかも
ポワントボールのように足先でものを掴む、という動きは足先に意識を向けることが出来ます。
- レッスンのときに他の動きを考えるのに夢中でつま先まで意識が出来ない。
という人はとても効果があるのではないでしょうか?
ですが。
レッスンのときにつま先まで意識が出来ない
=ポワントボールでエクササイズしていても、レッスンでは使えない可能性がある。
というのも事実ですし、
=ポワントボールで感覚を作り、コーディネーション力を上げることができる。
かもしれません。
- つま先を伸ばすことは出来るがジャンプ、およびポワントでは出来ない
という悩みであれば、ボールをつかんでいても意味はないと思います。
だって、ジャンプやポワントという難易度が上がった時につま先が伸びなくなってしまう=強さが足りない、という事だから
そっちのトレーニングをした方が早いだろうし、同時にポワントも安定し、ジャンプも高くなるエクササイズがあるはずです。
だから、最初に言ったように本人次第だし、何が目的なのかにもよる。
ダンスのレベルや、求めるものにもよるでしょう。
目的がなく、ただつま先を伸ばしたい!と言っているのは意味がないですよ。
ポワントボールの理由として、ボールを使って感覚を作るのがゴールだとしましょう。
そのままじゃレッスンに使えないのよ。
球状から床、という平たい面積に移ったときにも使えるか?を確認するエクササイズ、つまりブリッジエクササイズが必要になるかと思います。
じゃ、愛さんはどうですか?
ときかれたとき、2-3年前までは使います!と答えていたと思います。
ですが、今では使いません。と答えます。
どうしてか?
それは私のみるダンスのケガの場合、
- つま先が伸びなくてケガをする、と言う人はほとんどいないから
です。
それよりも、
- 足首をひねって使うため、足首付近に痛みがある。
- トウシューズに乗っかってしまう。
- ジャンプの踏み切り、着地で足の裏が使えていない。
という事は毎日見てきます。
言い方をかえると、「自分のつま先の持つ可動域を踊りで使えない」人たちのケガ。
- つま先は伸びるし、ストレッチも出来るけれど、
- プチアレグロでは完全に伸びきっていない、だとか、
- 伸びるつま先をしているのにトウシューズに乗っかってしまってテクニックの強さに欠ける。
とかから来るケガってことです。
そこから考えたとき、私が治療するダンサー達に必要なのは
1) 床を押し切る強さ
2) 床を使う強さ
3) ヒラメ筋、ヒフク筋、そして固有筋のバランスを作ること。
なのです。
よって、ものを「掴む」という意識ではなく、
つま先で床を「押す」という強さに注目し始めました。
つかむという動きは必要か?
よくよく考えると、足でものを掴む、という動きはバレエでは使われません。
床をつかめ、という表現はありますけど、私は不適切だと思っています。
つかむ=grip、は動詞ですから、
- 床と共に踊る
- 床を使って踊る
という事にはならないと思うのよ。
タンジュやポワントの中でつま先を伸ばせ、と言われるとするでしょ?
そうしたら掴むは丸める動きだから「伸ばす」ではないと思うし。
言葉遊びのように聞こえるかもしれませんけど、言葉から連想されるイメージは体の使い方に大きく影響します。
だからダンサーをサポートするエクササイズを考えるときは、レッスンで言われること、レッスンでの目的を考えて選ぶ必要があると思うのね。
そうすると…掴むじゃないんじゃい?
長い間バレエ界にいますけど、未だかつてバレエ教師やディレクター、ミストレスから
「この子はつま先の掴む力が足りないわ」っていう注意を聞いたことないもの。
バレエのケガがどこから来るか?
つま先を伸ばした時に、足首の後ろ側や横に走る痛みだったり、プリエの時に詰まる感じだったり。
これらは殆どテクニックの間違い、そして体の弱さからきています。
- 床をしっかりと使うタンジュの動き
- ジャンプで自分の体重+運動エネルギーをプッシュするつま先の「押し」の強さ
- トウシューズの中で丸まらないつま先に、トウシューズに乗っからないつま先
- 重心を正しいところにもってこれる体幹の強さ
それらが欲しい場合、私は他のエクササイズをします。
(ここから先の話の詳細は、ダンサーの足セミナーでお話していますからささっと行くよ)
これらの動きを助ける筋肉を固有筋(こゆうきん)、もしくは内在筋(ないざいきん)と呼びますが、
体にあるインソールのような役目をする筋肉たちです。
この筋肉グループはダンサーにおける下肢のケガのリハビリで一番注目されているグループ。
なので私もそれらの研究結果、リサーチに合わせてトリートメント、リハビリを変えています。
*この記事を編集している2020年では「バレエの立ち方出来てますか?」の親指プレス+カフライズ(「プリエ使えてますか?」に簡単バージョンを記載)をお勧めしています。
エクササイズのゴールはなに?
バレエのターンアウトもそうだけれど、動きにいい、とか悪い、があるのではなくって、正しく出来ているか?自分にあっているか?のほうが大切。
例えば、大人バレエトレーニーさん(大人でバレエレッスンを受けている方々をDLSではトレーニー「トレーニングする人」と呼んでいます)は、今までつま先を伸ばして使った経験がないかもしれない。
そういうときにポワントボールなどはとっても役に立つと思うのです。
小さな子供達に楽しくレッスンを教えるとき、プロップ(道具)があると楽しくエクササイズできるかも。
指を丸めるんじゃないんだよー、ボールのカーブに沿って伸ばすんだよ、という指導をするのであれば。
だけどここで注意したいのは、足の指たちを曲げる練習だけは絶対にしたくないという事。
つま先を伸ばす=つま先を「丸める」
という癖が体についてしまうととても危険なケガにつながります。
だから最初に言ったように、良いトレーナーがついていて、あなたのゴールに合わせてエクササイズプランを作ってくれているのならば問題ないんじゃないの?
ただ、見よう見まねで行ってはいけませんよーって話。
→ストレッチを見様見真似でやってケガする子が増えているニュースの記事
そして正しく出来ていても量が足りなかったら、舞台で使える強さになりませんしね。
これはどんなエクササイズでも一緒。
一度素敵なピルエットが出来たから、といって舞台で毎回回れるわけではないでしょう?
ここは本人の努力がものを言いますね。
モノは使いよう、なのです
バレエの場合、つま先を伸ばすって2種類あります。
- 立っている足、軸足のつま先の伸び
(ジャンプの踏み切り、ポワントで立っているとき、ルルベの高さ。体重が乗っかっている足)
- ジェスチャーレッグ、動かしているほうの足の伸び
(オープンチェーンで動く足のほう。体重は乗っからない)
どっちが問題なんですか?
役目が全く違うから、エクササイズプランも大きく変わってしまいます。
- 軸足のルルベを高くしたい!
と思ったとき、止まって考えてください。
バレエシューズでのルルベでは、足指たちは地面についていて、逆方向に曲がっているんだと。
そしてこれが出来ない理由は?
- 足首が弱いから?
- 骨盤のプレースメント?
- 膝関節や股関節をしっかりホールドする筋力がないから?
ものは使いよう。
そして体も使いよう。
これが2014年の佐藤愛の考えです。(んで、編集している2020年の佐藤愛も同意見です笑)
Happy Dancing!