*このブログは2014年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。
レッスン場でよく聞かれる注意。
「肋骨を閉めて!!」
でも肋骨って開かないでしょ?
どうやって肋骨閉めるの?
肋骨、開いた覚えはないぞ?
そう思ったあなた、今日の記事はあなたへ向けて書いております!
肋骨が開くことはあるのか?
まずは肋骨のおさらいをささっと行いますが、詳しい事はこっちで書いているのでまだ読んでいない人&記憶が薄い人は戻って勉強してきてください。
(あと、肋骨を閉めれば痩せると思っている人も、そっちの記事で体の構造を理解してきてください…はぁ。)
肋骨はかごみたいな形をした骨です。
後ろ側は背骨、胸椎の部分に付着していて、前側は胸骨に付着しています。全部じゃないけどね。
胸骨と肋骨がぶつかる部分、つまり肋軟骨が脱臼しない限り、肋骨自体がガバ!と開くわけではございません。
ご安心くださいませ。
ただ肋骨の下の方(仮肋)は胸骨についていないし、呼吸ができるよう、横に開くように出来ているため、
- 肋骨の下側が前に押し出されたとき、
- 肋骨の開くように出来ている部分が前に出っ張るので
- 視覚的に肋骨が開いているように見える
…
文章で書いて伝わった?
つまり、肋骨を閉めろと注意された場合、肋骨のプレースメントが間違ってるってことなんだね。
肋骨が開いて見えてしまう原因と背骨のカーブ
背骨のカーブをお話したときに話しましたが、胸椎にもカーブがあります。
胸椎の後弯(背中の方に出っ張っている彎曲)が、肋骨の場所を作ってくれてる、という見方もできますよね。
と言うことは、肋骨を正しいプレースメントに置くためには、胸椎のカーブを正しい位置で保たなければいけません。
これが大前提。
背骨のカーブの多きさは骨格に影響されるため、もともと胸椎のカーブが少ない人っています。
でも、それが「全ての」肋骨が開いてしまう原因ではないので安心してね。
よく見られる原因として
- 重心が後ろすぎる
- 腹筋が使えていない
- 胸椎が固く、胸骨周りの筋肉が膠着している
- 引き上げる、ということが理解出来ていない
の4つを今日は見ていきましょう。
図にて確認。
調簡易版だけどイメージは伝わる…でしょ?
大丈夫、ひとつひとつを今からunpackしていきましょう。
重心が後ろすぎる
いつも最初に確認しなければいけないことですが、ちゃんと立ててますか?ってやつね。
特にターンアウトを股関節からしっかりとホールド出来ない場合、足首がロールインしちゃいますよね?
足首がロールイン→内くるぶし、つまり脛の骨が前に落ちている→脛が斜めだと真っすぐ立ってられない!
足首からのターンアウトをしているダンサーは、バランスをとるために重心を後ろ側に置く傾向があります。
その他には、骨盤のプレースメントが正しくないと、重心の位置が正しくないってことになるので、結果重心が後ろに行くケースも。
正しく立てないってことは、背骨は正しいところにないよね。
背骨が正しいところになければ、背骨の終わりである骨盤や、背骨の途中にある肋骨のプレースメントが正しくなる事は絶対にあり得ないんだよね。
腹筋が使えていない
腹筋は4つありますが、全て肋骨から始まって、骨盤についています。
なので、腹筋をしっかりと使っていると肋骨が浮いてきてしまうことって無いはず。
ここでいう「しっかりと使っている」というのは短縮性収縮ではなく、等尺性収縮の方です。
なにそれ?と思った人はこの記事で筋肉の収縮には3種類ある事を勉強してきてください。
クランチとか言われる胸を膝の方に持ってくる腹筋エクササイズをやっている人は、
おなかを使う=体を丸めるんだ、と練習してきている事がよくあります。
これが短縮性収縮だよね。
でもレッスンでは
- 胸を開いて
- 肩を前に落とさないで
- 引き上げて
なんて言われるじゃないですか。
そうしたら腹筋を縮めて使うわけにはいかないから…せっかく毎日50回やってる腹筋の効果が出ないわけ。
だから四つん這い手足上げや、プランクの方がバレエ向けなのね(=腹筋をアイソメトリックでホールドするエクササイズってことね)
くれぐれも肋骨が開いてしまう理由は腹筋が弱いから、クランチしまくります!って間違った方向に努力しないでね。
踊っている時(=立って、ターンアウトしている時)肋骨のプレースメントを正しくする、というゴールの元、エクササイズを選んでください。
ダンサーの腹筋については文章で勉強した方が頭に入る人は腹筋eBookで、話し言葉で聞いた方が頭に入る人はオンライン学校にもあります。
コアマッスルと腹筋の違いとか、ダンサーにとってとっても大事なことが説明してあるのでしっかりと勉強して戻ってきてくださいませ。
胸椎が固く、胸骨周りの筋肉が膠着している
胸椎はただでさえ動きづらいんだったよね。
- 引きあげなきゃ
- 背中を真っすぐに保たなきゃ
と生活していて、背中が固いと言われたからエビぞり頑張ります!
なんてエクササイズをやっていると、胸椎は硬いままで腰椎をがっつり曲げるという練習を繰り返していることになります。
そうそう、どんなに気を付けてもエビぞりという姿勢では肋骨が開きます。
エビぞりを「正しく」やった場合って、背骨全てをイーブンに伸展させることになるのね。
注1)殆どの場合は、一番動きやすい腰椎を伸展させて、コントロールしやすい頸椎を屈曲させてバランスをとっているので胸椎はほとんど何もされていない
注2)5番ポジションを正しいところでホールドするのではなく、頭より後ろで作る事で、上半身の筋肉を使わなくていいポジションにしている
注3)エビはそっちに曲がらない。
胸椎を伸展させる=背骨を反らせるって事だから、肋骨だって前に押される。
どこが曲がりやすいか?といったら腰椎に近い部分だから、胸椎の下の方。
胸椎の下の方って言ったら…そう、浮遊肋の部分。
話がエビにずれた。
胸椎エリアを動かさない=その周りの筋肉が使われない
ということなので、背中の筋肉、特に肩甲骨周り(だって肩甲骨は肋骨の上にのってるもんね)が膠着してしまう。
使わない筋肉は固くなるからさ(肩こりもそうだよね)。
よっていくら腹筋が体の前側で肋骨を正しい位置に収めようとしても、
背中の筋肉や胸椎自体が後ろに反らせるように、動かないように止めてしまってる。
結果として、肋骨のプレースメントが正しいところにキープ出来なくて、先生に怒られるわけ。
引き上げると言う注意が分かっていない
引き上げるっていうのは、せぼねのカーブを緩やかに上下に引き伸ばすこと、というように背骨を勉強したときにお話しましたよね。
両エンドを同じように伸ばしたら、胸椎のカーブがなくなっちゃうわけではなく文字通り「伸ばされる」ので、
肋骨にスペースが出来たように感じるかもしれないけれど、前に押し出される事はありません。
引き上げる=胸を前に押し出すとか、体を反らせて軍隊の休め、みたいな姿勢だと思っている人も 失敗します。
ここはバレエの先生の技量にもかなーり掛かってくるのだけど、
ひきあげる、というのは何を指しているのか?をバレエをやったことがない人に説明しないままで、レッスンを指導していたら生徒が勝手に解釈します。
生徒のせいではなく、指導者の力量不足です。
その場合「なんで毎回同じ注意を言っても出来ないの?やる気ないの?」と怒鳴る前に、
胸に手をおいて反省してください。
そうそう、手を胸に置くというのは、肋骨(特に胸骨の上の方)を意識するためにはとてもよろしい。
引き上げよう!としたときに、肋骨の下の方(浮遊肋のエリア・下の赤い丸)が、
胸に手を置いたところ(鎖骨のちょっと下・上の赤い丸)よりも前に出ていたら、貴方の引き上げは間違っております。
まとめ:肋骨が開くのはなぜ?
- 肋骨が開く、と言うよりは肋骨のプレースメントが間違ってしまうため、肋骨が開いて「見えます」
- 鍵は胸椎のカーブを正しく保つこと
- 体の構造を知っていると、注意を直しやすいはず
- 引き上げ(pull up)という世界共通でレッスン場で言われる注意の理解をもちましょう
今日も知識はダンサーを救うのであります。
Happy Dancing!