DLSポッドキャスト epi547 もしも私がバレエの先生だったら? もしもシリーズ その1

今回は、私がもしもバレエの先生だったら?がテーマです。

シラバスや解剖学を学びながらバイトで生計を立て、少しずつ指導経験を積んでいく。

現場での経験の大切さ、好きなことを仕事にする上でのプレッシャーへの向き合い方、

得意分野を見極めて成長させる過程を、実体験をもとにお話します。

バレエ指導者を目指す方必見のエピソードです!

Transcript

バレエ学校を卒業した際、治療家になるとは思っていなかったし、

本を書いたり、全国のダンサーや先生たちへのセミナーをするとは思ってもいなかった佐藤愛です。

 

確かにバレエ学校卒業前に、シラバスを勉強して、教師の資格は取っておきました。

きっと日本に帰ったらバレエの先生になるんじゃないかと思ってはいたから。

 

じゃ、なんで治療家になる学校に進んだのか?

答えは簡単で、ケガしてバレエを辞めて、のこのこ日本に帰れないと思っていたからです。

 

最低でも、自分のケガや原因を説明できるようになりたい。

そう思っていたはずが、バレエ学校専属治療家、ミュージカルの裏で働いたり、

バレエ団の研修からプリンシパルダンサーのお抱えになったり、ハリウッドスターと仕事をしたり。

 

バレエをやっていた時より、治療家になってからの方が舞台をたくさん見ました。

インターナショナルガラの裏でも働いてきたため、本当に世界各国のカンパニーダンサーのリハーサルを見てきました。

バレエ団によって、体のケアに対する考え方が大きく異なっていたり、

年代によってエクササイズに対する考え方が違う様子も観察することが出来ました。

人生分からないものですね。

 

鬼は外!と追い返されてしまう2月のポッドキャストは、

鬼の愛ではなくてwhat if、もしもシリーズとして、私がこの道を選ばなかったら、という視点でお送りしたいと思います。

シリーズ1つ目は「もしも私がバレエの先生だったら」

 

もし私がバレエの先生を目指すなら、最初にこれをやる

バレエの先生として何かを始める前に、私だったら指導の勉強をすると思います。

だから、バレエ学校でシラバスの勉強をしたので。

 

知らないことは指導できないですし、

ケガのため、正しいテクニックの大切さを痛いほど学んだので、

スタートはここだと思います。

 

ただ、シラバスとは指導法ではありません

授業計画を指します。

なので何歳だったらこれが出来る、とかこのレベルは足の高さはここまで、などを学びます。

 

でも「どうやって」指導するか?は学ばないんですね。

少しヒントはもらえるけど。

 

  • 生徒に寄り添って言葉を考えられるか?
  • どのようなスピードで、1回1回のクラスを行うか?

などは教えてもらえないはずです。

 

もちろん

  • ケガした子はこうやってカバーする
  • 途中から入ってきた子たちはこういう補習をする
  • 病気でお休み続きの場合は、ここを気を付ける

などは学びません。

 

なので、必要最低限そういう部分も学んでおきたいなと思うと思います。

今、「そういう部分」って言ったけど、これはバレエ解剖学だと私は思っています。

 

だって、まだこの段階では私何歳の子を指導するか分からないので

子供クラスを担当するなのか、大人向けの勉強が必要なのか決まっていないはずです。

 

だけど、解剖学なら、人間という大きなグループに当てはまるはずだから、

  • シラバスでバレエのことを
  • 解剖学で人間のことを

学べば、まぁスタート出来るんじゃないか?と思います。

 

バレエの先生の前にバイトする

結構勉強しなきゃいけないことがありますし、まだ指導者としてスタートもしていないため、

食べていくためにお仕事をしなければいけないと思います。

だからきっと、バレエの先生になる前にバイトしていると思います。

 

実際、私も治療家になる勉強をしつつ、バレエ学校で少しずつ治療をはじめた時は様々なバイトをしていました。

バーで働いていたこともあるし、ジャパニーズレストランでお寿司を巻いていたこともあるし、

お洋服屋さんのマネージャーをしていた時もあります。

こういうバイトをしながら、勉強と経験を積んでいました。

 

その方法が上手くいったので、もしも私がバレエの先生になるなら

同じ道をたどると思うのね。

 

これは私の経験と、様々な先生たちの話で感じることだから、データがあるわけではありませんが、

あまりにも早いうちに、自分の夢とお金を繋げてしまうと

かなりのプレッシャーだと思うんですよ。

 

好きなこと、興味のあること、自分にとって大切なことを行うのではなく、

明日の食事、今月の家賃を払うために働かなければいけなくなってしまう。

 

生活していくため、サバイバルするため、という大きな目標があると、

勉強は絶対に後回しになります。

 

現状維持にエネルギーを使うため、成長はできなくなります。

サバイバルするエネルギーが足りないとき、

ケガを修復したり、骨や筋肉を強くすることが出来ないのと似ていると思う。

だから、生活費は別で稼いで、勉強する余裕を作ると思います。

 

まずはスタジオは開かない

勉強が終わったら、もしくはある程度進んできたら、指導の場数も大切です。

勉強をはじめて1年後くらいかな?これくらいに指導を始めると思います。

 

でも、バレエの指導を始めるのであって、スタジオは開きません。

 

スタジオ経営ってそれだけで1つの仕事なんですよ。

ビジネス経営と、バレエの先生の両方を行うと、

2つのフルタイムの仕事をやっているのと同じだと思います。

 

1つずつでも大変なのに、両方一気に、しかも初心者の私がやったら絶対に失敗します。

失敗って、生徒が来ないことではないのね。

 

  • 忙しすぎて、家族との時間が作れない
  • 常にストレスを感じて生活している
  • 次から次へとやることが山盛りで、やりたいことが出来ない
  • いつもピリピリしていて、毎日が楽しくない

というのも失敗だと思うのね。

たとえ、生徒が200人いたとしても。

 

生徒が少ないスタジオの先生だったら

羨ましい悩みだって思うかもしれないけど、どちらも問題だと思うのですよ。

仕事、として見た時にね。

 

社会人を例にとってみましょうか。

営業が全然できなくて、仕事が回ってこないんだったら、もちろん問題です。

でも、毎日残業で、お昼もパソコンの前で食べていて、週末も携帯いじってて、ストレスで胃潰瘍。

運動不足だし、家族との会話も殆どないし、子供のイベントはほとんどいけない。

ってなっていたら、その人は良い人生を送っているとは思えないでしょう?

 

なので最初は、誰かのスタジオでアシスタントや代講をすると思います。

ほら、その前のステップで勉強していたじゃない?

指導者の勉強をするってことは、そこに集まる人たちはバレエの先生なわけ。

ということは、そこでコネクションを作り、発表会のお手伝いをしたりして、ネットワークを作っているはずなのね。

 

その人たちも、一緒に勉強している人に代講やアシスタントを任せたいと思うでしょう?

代講を探すって結構大変な作業だから、お互いにとってwin winになるはずなんですよ。

 

そんな感じで、たとえ安くても先輩、メンターのいる場所で経験を積み始めると思います。

治療家の勉強をしているので、生徒に低価格の治療を提供してもいいですか?とバレエ学校に聞いたから

そのあと10年以上同じ場所で治療家として仕事が出来ました。

 

生徒たちの信頼を得ることが出来たので、エクササイズクラスの希望者が増えていきました。

生徒たちに「こういうことを伝えたい」とお願いしたから

私の提案した解剖学とエクササイズのクラスを、学校の教科の一部として取り入れてもらえるようになりました。

 

この経験があったから、バレエ団に連絡したら研修OKのメールが来たし、

研修をしてきたから、プリンシパルに呼ばれて別荘に行ったり、

医学チームにサポートが必要な時に電話がもらえるようになりました。

 

そこで働いている経験と口コミがあったから

メルボルンにくるミュージカルすべてに関わっているクリニックの面談に呼ばれました。

 

ちなみに、友達で、同じバレエ学校を卒業し、私よりも高いレベルの資格を持っている子、

英語が第一カ国語の子も応募していたんだけど、彼女は面接まで行きつかなかったんです。

資格はもちろん大切だけど、場数、経験ってお金で買えない分すごく貴重だと思うんです。

 

自分の得意分野を成長させる

もしも私がバレエの先生だったら。

先生になる前に、バイトしながらシラバスでバレエのことを、解剖学で体のことを勉強します。

バイトしながらでも、信頼できて、自分の勉強にもなる場所で指導者として経験を積みます。

バレエの指導以外のバイトの数を徐々に減らしつつ、指導の数を増やしていきながら、

経験やレッスンプランなどを貯めていきます。

 

もちろん、現場に出ないと分からないこと、生徒のケガに直面すると思うので、

そういった勉強が1年に1回は出来るようスケジュールと予算を考えるでしょう。

 

もし、このエリアで自分のスタジオを開きたいと思ったら、

経営とかマーケティングの勉強も少しずつ始めるかもしれません。

このくらい、だから3-4年?で自分の得意分野を成長させるように考え始めます。

 

バレエの先生ってちょっと広いのよね。

多くの人たちがやっているでしょう?

 

この3年ほどの経験で、どのクラスが好きとか、どの振付が得意とかが分かってくるじゃないですか。

逆に、これは嫌い、このレベルは本当に疲れる、とかも分かってきます。

そういったデータから、自分の得意分野を選んで、その経験が多く選べるように意図的に選択していきます。

 

例えば、基礎の指導が得意だったら、働いているスタジオで、

基礎レッスンのプライベートレッスンを出来ないか?って聞いてみる。

夏休みに、ワークショップを出来ないかって聞いてみる。

 

ダメって言われたら別に問題ないのよ。

でも、そういうようなスタジオの先生と一緒に3年も仕事をしていないと思うのね。

 

エクササイズを指導出来る資格をとるのもいいし、

ケガについてもっと勉強して、ケガしたダンサーのプライベートコーチングをやるのもいいかも。

なんらかの形で、指導者としての自分の価値をアップさせる行動を始めると思います。

 

私の場合、治療家の時に、一般の人たちも診ていました。

ピラティスの先生とか、そのクライアント、ほかのバレエ学校の子たち、近所に住んでいる人など。

バレエダンサーと仕事をしたい、と決めていたから、

ある程度お客さんがつくようになってから、ダンサーが来られる時間は、一般の人は予約を取らないって決めました。

 

その代わり、その人たちはお昼休みとか、午前中とかに来てもらっていました。

午後4時から6時は生徒たちが来られる時間なので、ダンサーのために開けておき、

誰も来なかったら事務作業や勉強をすればいいし、ダンサーが来たら自分のやりたりエリアだから嬉しいし。

 

バレエ学校でクラス指導が週に2,3回ほど、そのまま放課後に治療。

残りの2,3日は治療、だけど徐々にダンサーだけの治療に移行。

 

最終的に、メルボルンでパフォーマーを専門に見ているクリニックに入って

ダンサーとパフォーマーだけを治療したり、ピラティスを指導する生活になりました。

 

自分を育て、勉強を継続する

ここまで来たら、ようやくバレエの先生としてバイトなしで仕事が出来るようになっていると思います。

先生になるって活動を始めて、5,6年くらいでしょうか?

 

確かに、最初からスタジオを開いて、バレエの先生をしている友達と比べたら、

生徒数で遅れてると感じることがあるかもしれませんが、

しっかりと勉強し、確実に生徒を育て、自分の専門エリアを選び、

自分の得意分野、本当にやりたいエリアで仕事が出来るようになっているはずです。

 

ここまで来たら、あとは自分の向かいたい方向に進んでいくでしょう。

 

スタジオを開いて、ほかの先生たちが働ける場所を作るかもしれないし、

得意分野を駆使して、ほかのスタジオでワークショップなどもし始めるかもしれません。

 

ここらへんで、自分の向かいたい方向が曖昧になってくる可能性もあります。

最初はがむしゃらにやるんだけど、そのうち「これでいいんだろうか?」と思う時間が来ると思うんですね。

その際は、コーチングを受けると思います。

 

バレエもそうだけど、カンパニーメンバーになったら終わり、じゃないでしょう?

  • この作品はこうやって踊るので良いんだろうか?
  • この部分を強くするにはどうしたらいいんだろうか?
  • ケガから復帰するには?

など悩みが出た時に、プロダンサーでもコーチングを頼みます。

 

カンパニーにテクニックコーチングをしてくれる人がいる場合もあれば、

外部でレッスン、コーチングを受ける人もいますよね。

進路に悩んだら、キャリアコーチや、カウンセリングを受ける人もいます。

 

バレエの先生だって、誰かに相談していいわけ。

この段階では、自分の得意分野を一緒に学んだ仲間がいるはずですし、

様々な先生から学んできたと思うので、

メンターを探したり、コーチの情報を交換する人もいるはず。

 

もちろん、5年以上同じ仕事をしていると、新鮮さに欠けることもありますから

モチベーションキープのためにも、指導者としてのスキルアップとしても勉強を続けると思います。

 

結局大人になった時に、新しい友達が欲しかったら、

勉強場所でしか出会えないんですよね。もしくは趣味。

 

でも、私の場合、趣味が勉強というか、新しい知識を学んだり、研究を知ったりすることなので、

一緒にコースを受けた人や、同じカンファレンスで出会った人との

コネクションが強くなると感じます。

 

皆さんもご存じの、ダンサーの摂食障害専門家・ふみさんも、時期は違うけど、同じコースを受けていました。

コース卒業生が入っているFBグループで、彼女が名前を見つけてコンタクトしてくれたのがスタートです。

 

もしも私がバレエの先生だったら、絶対にしないこと

もしも私がバレエの先生だったら、

こうやって進むだろうなーと想像しながらお話してみましたがいかがでしたでしょうか?

 

このポッドキャストを準備しながら

逆にもしも私がバレエの先生だったら、絶対にしないことは何だろう?と考えてもみました。

それは、自分の殻にこもること。

 

バレエ学校で10年以上仕事をしてきた中で、様々なバレエ・ダンスの先生と出会ってきました。

素晴らしい先生もいたけど、ひどい先生もいました。

 

私がバレエ学校1年目の先生は、ワガノワバレエ学校卒業の、経歴のある先生でしたが、

本人はバレエが嫌いで、これしか出来ないからバレエの指導をしているけど、

本当につまらなそうでした。

もちろん受けている方も、この先生は私に興味はないんだってすぐにわかりました。

 

逆に、毎週土曜日のクラスに来ていた先生は、

最近バレエ団を卒業したばかりの人で、まだ自分が踊りたいっていうのがよくわかりました。

なので、アンシェヌマンは自分が踊りたいものだし、

マーキングは彼女が踊る場所でした。

 

でも、素晴らしい先生とも仕事をすることが出来ました。

生徒のことを考えていて、経歴も年齢もぜーんぜん下の私にケガについて相談に来てくれた先生。

リハーサルを見学している私を、いつでも部屋に招き入れてくれて、

この子のここをこうしたら、もっと良く踊れると思う、と意見をくれた先生。

 

様々な治療家の「先生」とも仕事をしてきましたが、

この仕事しか出来ないから…っていう人と、パッションのある人は本当に違うんだよね。

私一人で治療していた時、確かに顧客はいっぱいで、3か月待ちででしたが、つまらなかったです。

 

でも、パフォーマー専門のクリニックで働いていた時には、

周りのチーム全員が自分たちの得意分野があって、新しく勉強したことをシェアしたり、

一緒にカンファレンスやワークショップに参加したりできました。

 

そういう先生たちから、私は治療家としても、指導者としても多くのことを学びました。

だからこそ、もしも私がバレエの先生だったら、

自分の殻にこもらず、周りの先生たちと協力したり、勉強しにいったりして

常に新しいことに挑戦していきたいと思います。

 

だって、クラスを受けている側は、そういった先生のパッションを感じることができるんですもの。

そして、そういう先生のクラスは頑張ろうって思うし、

卒業してもコンタクトがあるし、そういう先生になりたいな、って大人になっても思うもの。

 

 

ということで、もしも私がバレエの先生だったら?というテーマで考えてみましたが、いかがでしたでしたでしょうか?

この計算だと、スタートしてから8年~10年くらいでようやく

一人前というか独り立ちしたなーってレベルに達成できるというのも分かりました。

 

最初からこうやってマッピングしておくと、ゴールに達成できていなかったとしても焦らない気もします。

このエピソードはエビデンスベースではありませんが、

バレエの先生を目指している人、バレエの先生にお役に立っていたら嬉しいです。

 

感想はもちろん、私だったらこうするなーというアイデアがありましたら、

hello@dancerslifesupport.comにメールか、

インスタにDMして教えてくださいね。

 

来週は、もしも私がバレエ留学を考えている16歳だったら?というテーマでお送りしたいと思います。

 

生徒の安全と将来の健康を第一に考えてレッスンを指導したい先生たちが集まる

年に1度のDLS来日セミナーへのお申込みをお忘れなく!

 

Happy Dancing!

佐藤愛

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