DLSポッドキャスト epi529 ダンサーが知っておきたい2種類のモチベ

「自己中心的」と聞くと悪い印象があるかもしれませんが、自己を大切にする考え方の重要性を掘り下げました。

結果にばかりとらわれがちなバレエの世界で、プロセスや内在的な動機をどう評価するか、

そして自分自身を認めることの価値について考えました。

バレエに限らず、日常のあらゆる場面で役立つ視点を提供する一読の価値がある記事です。

Transcript

10月に入ったくせに、9月のポッドキャストの自己満足度が高い佐藤愛です。お元気ですか?

キーワードは「自己」

この考え方はダンサーだった時には出来ませんでしたし、

DLSを11年やってきても、まだまだ練習中です。

 

自己という言葉から連想されるのは

「自己中心的」という言葉なのは私だけでしょうか?

 

自分の事を褒めるとナルシストと言われ、

自分の予定を優先させると自己中だって言われる事があるかもしれない世の中で、

敢えて今日は「自分中心の考え方」について考えてみようと思います。

 

ちなみに、ナルシストとはNarcissistic personality disorder (NPD) のことで、

精神疾患の1つです。

自分が大好きな人というイメージが強いかもしれないけど、

NPDを持つ人々は自己価値観が非常に低いことも特徴です。

 

残念ながら、言葉とイメージが独り歩きしているのですが、

この精神疾患に苦しんでいる人や、家族がいることを考えると、

むやみやたらと使わない方が良いんじゃないかと私は思います。

 

コンクールで上位だったら価値のあるダンサー?

私がダンサーだったときには、常に「先生」の事を考えていました。

先生に好かれたい、というストレートな考えがあったわけではないですが、

先生に怒られないようにしたいし、先生に褒められると嬉しい。

そういう考え自体は当たり前だと思うのですが、

その中で自分が何をしたいのか?がどんどん薄れてしまった気がします。

 

特にバレエ学校では

  • 配役発表
  • 中間試験や年末試験
  • そのほかにイベントがあったら、誰が選ばれるか

などが中心になっていました。

 

これも当たり前なんだけど

その中で自分の価値が、結果と「だけ」結びついていた気がします。

また、同じように結果でクラスメイトを見ていた気もします。

 

  • OOさんは良い役をもらったから先生のお気に入り
  • XXさんはドコドコバレエ学校からオファーが来たから上手な子
  • また先生に怒られてる△△さんは、まじめに踊っていない

など。

 

結果だけで人の価値は決まらないのに、

そういった考え方があったと思う。

私だけじゃなく、皆さんもそうじゃないかしら?

 

スタジオの先輩でいつも主役の人は、上手な人で憧れの人になって

そして、その人はその環境で「偉い人」や「価値のある人」になる。

だけど、同じクラスを受けていて、コンクールに出場するわけではなく

学校とバレエの両立をしている人は

「その他大勢」の1人と考えてしまう。

 

もしかしたら、2人目の人の方が

学業とバレエの両立がしっかりと出来ていて、

タイムマネジメントも上手で、

将来バレエダンサーをサポートする治療家になりたいから

勉強とバレエの両方と真剣に向き合っているのかもしれないのに。

 

子供たちがそのように考えていなくても、

大人たちの言葉や行動にそのような様子が見えてしまいます。

 

「あなたもOO先輩みたいに頑張りなさいね」

という言葉をかけているのかもしれないし、

「あの子は頑張ってるけど、試験中は休むから本気じゃないんだわ」

なんて、レッスン数「だけ」で判断してしまうとか。

 

去年初めて行われた、アドバンスドコースでは、

1期生と2期生が混じってクラスが行われました。

2期生達にとって、1期生は憧れの先輩。

一緒に勉強出来たことは、混ざることがなかった2グループにとっては刺激になったみたいです。

 

面白いことに、2期生だけでなく、同じ1期生でも

  • フォロワーが多い人
  • 資格を持っている人

がアセスメント再提出だったり、再試験だったりするのを見て

「えーOOさんでも!?」

という声を何度か聞きました。

 

先入観というか、レッテルというか。

そういうものって、意識していないところで出てきてしまうんですよね。

 

たとえそれが、誰かを褒めるために使っていたとしても、

そのような言葉を聞いて育っていると

  • OOは良い
  • その逆のXXは悪い

という形で考えてしまうかもしれません。

 

結果を褒めちゃダメなの?

こういう話をすると、

  • じゃあ、コンクールで入賞した生徒を褒めちゃダメなの?
  • 憧れの先輩について話してはダメなの?

と思ってしまいますよね。

 

そして、そう考えた結果が

  • 絶対に、コンクールに出しません
  • 順位をつけるのは良くないと思います

という感じの指導者になってしまうこと。

 

もちろん、誰かが上手くいったら褒めたり、認めてあげることは大切です。

それが出来ないと、偏った人間になっちゃいますから。

他の人の成功を喜べない人になってしまいます。

 

特にバレエ界だったら

  • 奨学金の数は決まっています。
  • バレエ学校に入れる留学生の数には制限があります。
  • バレエ団のみんなが、プリンシパルになったら、全幕バレエは出来ません。

だから、順位をつけることが間違っている!

辞めなきゃいけない!!と言っているのではないです。

 

そうじゃなくて、

  • 褒めるときは結果ではなく、プロセスを褒める
  • 結果が出なくても、プロセスを褒める

ということが出来たら良いのではないでしょうか?

 

特に指導者は、自分が持っている力を理解する必要があると思います。

スタジオのSNSで、生徒さんのコンクール入賞や、サマースクール合格を書くんだったら、

そうではない日常で、他の子たちにもスポットライトを当ててみたらいかがでしょうか?

 

  • OOちゃんは5年皆勤賞を達成しました
  • XXちゃんは疲労骨折から完全復帰しました
  • 新中学生はトウシューズレッスンに向けてカフライズが25回出来るようになりました

など、健康管理についてや筋力がアップしたことや

 

  • 3年生の皆は、自分でお団子が出来るようになりました
  • 今年の発表会では、高校生たちは自分たちで振り付けた作品を踊ります

など、バレエで必要な力が伸びていることなども、

コンクール入賞や、サマースクールと同じくらい大切な事じゃないかしら?

 

そして同じくらい大切だったら、

同じくらいスポットライトを当ててあげる必要があるんじゃないかしら?

と私は思います。

 

順位と関係なく、あなたには価値がある

ダンサー側は、順位に関係なく、自分には価値があることを忘れないで欲しいです。

と、外から見ている大人の私が言うのは簡単なんですよね。

私だって難しいと思いますもの。

 

最初にお話した、9月のポッドキャストの話に戻りますね。

ポッドキャストの「結果」というのは例えば

  • 今月は1万エピソードがダウンロードされました
  • バレエ雑誌に取材されました

みたいな感じでしょうかね。

 

もしこういうのがあったら、私は嬉しいです。

今までひと月で1万エピソードがダウンロードされたことはないし、

10年継続してやってきたポッドキャストが、

バレエ雑誌で取り上げてもらえたらそりゃ嬉しいよ。

 

でも、これらは私が出来ることではありません

私の努力とも関係ありません

 

いっくら素晴らしいポッドキャストを、無料で提供していたとしても、

バレエ雑誌の編集部は、現地で行われている

バレエフェスティバルの特集を組む予定だって決まってたら、

取材されることはないでしょう。

 

特に、私は海外に住んでいますから。

だからこそ、自分「が」やったことに対して、

誇りに思えたり、価値があるって思えると良いんじゃないかと思うの。

「良いんじゃないか?」ではないね。

そう思うように努力すべきだと思う。

 

外在的動機と内在的動機

9月のダンサーの股関節シリーズは、私にとってチャレンジでした。

今まで解剖学ブログを読み上げたシリーズはあっても、

ポッドキャストのために書き下ろしした解剖学エピソードはなかったし、

目で見た方が分かりやすい骨や筋肉、動きの説明を

言葉、音声だけでお届けする事もチャレンジでした。

 

それだけでなく、すでに教師のためのライブラリには

「股関節インピンジメント症候群」という有料クラスがあります。

 

ライブラリは検討していたけど、ポッドキャストで十分だわ

と思われないかな?という心配だけでなく

お金払って授業を買ったのに、無料で提供してるなんて酷い

と思われないかな?という心配もありました。

 

もちろん、ライブラリの授業内容をご存じでしたら、

2時間以上に渡る授業ビデオなので、

ポッドキャストでカバーしたことは本当に基本部分だけなんだよね。

 

ライブラリ内容を知らない人にとっては予習、

知っている人にとっては、良い復習になるようにと考えて作りました。

だけど、不安な感情は残っていました。

 

でも、他人がどう受け取るか?を決める権利は私にはありません。

地方格差をなくし、勉強したい先生が、勉強したいタイミングで、

セミナーを待たずに勉強できるために作ったライブラリですが、

そうやって思ってくれる人もいるだろうし、そう感じない人もいると思う。

 

値段が高すぎると思う人もいれば

クラスが分かりづらいと感じる人もいるかもしれない。

 

私の本「バレエの立ち方出来てますか?」は私の本の中で一番アマゾンレビューが多いです。

 

そして同じ本の、同じレビュー部分に

  • 内容が難しすぎて役に立たない

という声と

  • 内容が簡単すぎて役に立たない

という声の両方があります。

 

人間が何かをするとき、モチベーション、動機がありますよね。

そして、モチベーションは2種類あるそうです。

 

  1. 外在的動機
  2. 内在的動機

外発的動機、内発的動機と言われることもあるそうですが、

英語ではexternal motivationと、internal motivationなので

解剖学用語でも使われる外在と内在を使って、今日はお話していきます。

 

ちなみに、超エリートを研究している人によると、

全ての世界でトップのトップと言われるような人達、

例えばオリンピック選手とか、カンパニーのCEOとかには4つの共通点があるそうで、

そのうちの1つは、

「トップオブザトップ」といわれる人達は全員内在的動機があるそうです。

 

この話は、また別のポッドキャストにしましょう。

 

さっき例に出した「バレエの立ち方出来てますか?」

ほぼ100%外在的動機がありました。

出版社からのオファーがあったし

アマゾンベストセラーも狙っていました。

 

理由は、そうでもしないとプロダンサーでもなく、芸能人でもない私の本を

本気で考えてくれる人はいないと思ったから。

 

そして、既に何冊も出ているダイエット本やらストレッチ本に

インパクトとしても勝つ必要があったからです。

 

嬉しいことに、今まで出してきた本はすべて

アマゾンベストセラーに選ばれています。

これは、DLSを応援してくれている皆さんが、同じ時期に本を買ってくれたから。

 

つまり、私の本の内容が素晴らしくて、

専門家が選んでくれたからアマゾンベストセラーになったのではなく、

応援してくれている皆さんが、同じ時期に買ってくれたから達成できたことなんです。

 

この例で分かるように、外在的動機は悪いものではないんだけど、

達成できるか、出来ないか?つまり結果は私が決められるものではありません

 

たしか、プリエ本は出版社がアマゾンに載せる時に、バレエではないカテゴリに入れてしまい、

しかも同じ時期にジャニーズの写真集が出たとかで、ベストセラーでいられた時間が短かったです。

 

私はプリエ本が一番好きですし、

エクササイズの内容も、プリエの解剖学的説明も、

多くのダンサーに必要な事であり、理にかなっていると思っていますが、

結果を決めたのは、出版社のミスとタイミングでした。

 

初心に戻って、私の好きなことをやる

ポッドキャストの例に戻ります。

このポッドキャストも、ダウンロード数を狙っていたら外在的動機となります。

でも、9月のシリーズは内在的動機が強かったんです。

 

ご存じのようにDLSが11周年を迎えた時に、「初心に戻る」を合言葉にしました。

だから、DLSを最初に始めた時に書いていたような、

バレエ解剖学についてをポッドキャストでお送りしたかったんです。

 

一番の理由は、私が一番好きなトピックだから。

あのシリーズの準備はとても楽しくて、

他の仕事は放っておいて、何時間もパソコンに向かって下書きをしていました。

 

コンパスを例にとって、股関節インピンジメントを説明したところなんて、

書きながらガッツポーズをしていたくらいです。

我ながら、よく思いついた!みたいな感じ。

 

私は文章を書くことが大好きです。

そして、バレエ解剖学とバレエの動きやケガなどのつながりを

私が勉強したことを皆さんに伝えるのが大好きです。

 

だから、DLSをスタートした当初、

クリニックとバレエ学校の仕事の合間や休みの日に

ブログを書き続けることが出来たんだと思います。

 

今みたいに1万人を超える人たちが

インスタでフォローしてくれているわけでもなかったし、

出版された本があったわけではなかったけど、

自分が楽しかったから、自分が勉強になったから、

書き続けることが出来たんだと思います。

これが、内在的動機

 

好きなことを追求するということは、

美しい響きがありますよね。

 

でも、職業と考えた時には

全てが内在的動機で上手くいくことはありません

 

私はジゼルというキャラクターが嫌いです。

  • そんなに簡単に恋に落ちるのか?
  • そんなに簡単に人を信じるのか?
  • 自分の人生、花占いに頼るのか?

とか、突っ込みどころがいっぱいな部分がたくさんあります。

 

もちろん、ロマンチックなものが流行っていた時代に、

男性が書いた女性像であることは100も承知ですが

この子と私、友達になれなかったと思います。

 

だからといって、

私がジゼルに抜擢されたときにに、自分が好きなキャラクターを追求したら

バレエにならないのは分かりますよね?

 

私だったら、ヒラリオンから剣を奪った後に向かう先は

きっと、アルブレヒトでしょうね。

 

ふざけるなよ、コノヤローみたいな感じなバレエでは

悲劇と階級を超えたラブストーリーは成り立ちません。

 

同じようにポッドキャストの内容も、

私が犬が好きだからって、私の犬の話ばっかりしていたら

生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンを当たり前に、

というミッションを担いでいるはずの「DLSポッドキャスト」として成り立たないし、

私が大事だと思うからって、ずーっとストレッチ反対!みたいな内容ばかり

同じ話、同じトピックだけカバーしていても飽きちゃうでしょう?

 

評価と動機の両方を考えよう

長くなってきたポッドキャストのまとめに入りましょう。

最初の方にお話したように、結果を褒めても問題ないとおもいます。

 

コンクールで上位になりたい、

オーディションに受かりたいという外在的動機があるのも大切だと思います。

目で見えるゴールは、分かりやすいですから。

 

その際、外在的動機からくる結果は、

自分ではどうしようもないから、執着しないようにすることと、

外在的結果が良くなかったとしても、

それはあなたの実力や、努力の問題ではないというように

100%割り切る必要があると思います。

 

そして、外在的動機を追い求める過程で

  1. 自分が大好きなこと
  2. どうしてそれを始めたのか

がなくならないようにしてほしい。

 

周りの大人たちは

たとえ思ったような結果が出なかったとしても、子供たちが

  • 自分が好きなことを貫く勇気があったこと
  • やると決めたことをやりきった努力
  • 1つの目標を達成したこと

というプロセスについて褒めること、認めてあげること、

スポットライトを当てることを忘れないでください

 

8月に保護者セミナーを行った際、

ライブで参加してくださった皆さんのチャットの中に

「上達している様子が見えない」というものがありました。

 

上達とは

  • ピルエット3回転ができること
  • コンクールで1位になること

ではありません。

 

プロダンサーで、練習では10回転とか出来ても

本番うまくいかないことがありますし、

同じコンクールに2年連続で出たとしても、

審査員や、周りの子たちが違うのだから結果がマッチしなくて当たり前です。

そうではなく、本当の意味で目に見える上達を探せると良いと思うのです。

 

  • 忘れ物をしなくなった
  • レッスン準備が自分で出来るようになった
  • レッスンの後に、バレエノートを書く習慣が出来た
  • ポワントシューズのひもを自分で縫えるようになった
  • 痛みについて先生に言えるようになった

などは、大きな上達です。

 

でもね、自分がそのように育ってこなかったら、

自然と「上達」や「プロセス」について褒める言葉が出てこなくて当たり前です。

出来ない、のではなく、練習不足だからね。

 

ですから、私も含めた大人たちは

内在的動機プロセスを見つめる練習

結果や肩書、見た目に流されずに、

本当に大切なことは何か?を考える練習を行いませんか?

 

ご存じのように、私はコンクールが好きではありません。

特に、子供たちが意味なくたくさんコンクールに出るのは

身体的な面だけでなく、精神的、社会的成長面でも危険だと思います。

 

ただそれは、みんな一緒、一列で順位はなし!を伝えたいのではなく、

安全と健康面からの配慮です。

 

バレエだけでなく評価、昇格は大人の世界についてきますから、

  • どのように他人からの評価と向き合うか?
  • たとえ他人が認めてくれなくても、どのように自分に自信を持ち続けるか?
  • 自分はどうして、それをしたいのか、どうしてそれが自分にとって大切なのか?

を考える力を育ててあげることが大切なんじゃないかな?と思うのです。

 

ということで、先月のポッドキャストとは打って変わって

ダンサーのメンタル面というかマインドセットについてをお話しましたが

お役に立つ情報がありましたでしょうか?

 

解剖学とマインドセット、どっちの方が好きですか?

ポッドキャストの感想はhello@dancerslifesupport.comで教えてくださいね。

インスタのDMでも大丈夫です。

フィードバックを楽しみにしております。

 

今日も最後まで聞いてくださってどうもありがとうございました。

また来週のポッドキャストでお話しましょう。

 

Happy Dancing!

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