「忙しい」ことが称賛されるバレエ界、その中には依存症の可能性があります。
「私は大丈夫」と思っていて人もこのリストを見るとドキッとすることがあると思います。
忙しい状態に依存している人は、自己管理が難しくなり、家族や生徒にも影響を与える可能性があります。
治療が必要なケースや対策についてお話したので、チェックしてくださいね。
Transcript
こんにちは、気が付けば4月最後のポッドキャストという事実にびっくりしている佐藤愛です。
ということは、来日セミナーから戻ってきて約1か月経ったということ。
セミナーでお会いした皆さん、あの時の感覚覚えていますか?
このポッドキャストもそうだと良いんだけど
エピソードを聞いた後やセミナーに参加した後は、モチベーションが上がりますよね。
- よーし勉強しよう!
- 習慣を変えよう!
- この部分を頑張ろう!
って思うじゃないですか。
でも、時間が経つにつれて、その感覚が薄れてきません?
そして自分に言う言葉
「ちゃんとできている人もいるのに、私はどうしてこんなにメンタルが弱いんだろう?」
メンタルが弱いという言葉は、今回の来日で何度も聞きました。
特に大人、というか小鬼たちから。
インストラクターコース3期生、そしてアドバンストコースの最終試験があったから
なおさらこの言葉を聞いたのかもしれないです。
ご存じのように、私は心理士でも、精神科医でもありません。
だけどメンタルが強い、弱いというカテゴリは好きじゃないし、
そうやって言ってしまうと、言い訳にもなってしまうと個人的には思う。
- 私はO脚だから
- 私はメンタルが弱いから
って自分とイコールの言葉で発してしまうと、変更は難しいでしょう。
というか変更出来ないって聞こえるよね。
私は日本人だから、A型だから、というような感じで変えられないものに聞こえてしまいます。
でも、今日のテーマはメンタルを強くするにはどうしたらいいか?ではございません。
「忙しい」は依存症になるよねって話をしたいと思います。
数年前、私自身が受けていた心理士による勉強会があったんです。
精神的な部分、メンタルな部分、心理的な部分。
一緒に聞こえるけど、全てすこーしずつ指しているものが違うんですが、
ダンサーをよりよくサポートするために、この部分を勉強し続けています。
やっぱり人間を相手に仕事をするからね。
そして、そのクラスの中で
「忙しいは唯一周りから褒められる依存症だ」
という話をしていました。
ビックリしましたよ。
依存症って重い言葉は、「忙しい」なんて日常で使われる言葉と一緒になることなんてないと思っていたから。
でも、依存症の特徴を見てみると
- やめたくてもやめられない(コントロールできない):「今日だけは止めよう」とか「これで最後にしよう」などと心に誓ったり、周囲に約束したりしても、ついやってしまう。「ほどほどにしよう」と思っても、適当なところで切り上げることができない。
- 慢性・進行性:放置すればどんどん進行し、やめることで進行は停止するが、長くやめていてもかつてのコントロールを取り戻せない。
- とらわれ・のめり込み:自分の中の大切なものの順位が変化し、家族・仕事・将来設計等、生活の全てに優先してのめり込んでしまう。
- 問題を否認する:借金・家庭内の問題などの現実を見ない、事態の過小評価、事実を認めず攻撃的になる等。
- 家族を巻き込んでしまう:家族が悩み、依存症者に注意する一方、借金の肩代わりを行う等の目の前の問題解決に奔走し、身体・心・金銭面で疲弊していく。
なんだそうです。
(出典元:https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=819yAWLAzXBx5XZ5)
- 生徒のために知識をアップデートしなければいけない
- 自分のためにも世界を広げたい
と思っていても、忙しいから後回しにしてしまう人達の中には、
忙しい状態に依存している人がいるんですね。
- こんなにスケジュールを詰め込まないようにしないと、と思っても辞められない。不安になってしまう。
- 意識的に変更しなければ、もっと頑張れる、ちょっと無理したら行ける・・・と進行してしまうし、発表会前だけ忙しい、ではなく慢性的に次から次へと忙しい生活を送ってしまう。
- 家族が大事、生徒が大切、と口では言うけれど、行動を見てみたら「忙しさ」を優先させてしまう。
- 休まなきゃだめだよ、休息もスケジュールしなきゃ、と言われても、「いや、昔はもっと出来ていた」とか「この舞台が終わったら休むよ」なんて言っていて問題を直視できないとか、逆に「あなたにバレエの先生の大変さは分からないわよ」「バレエの世界の競争は激しいんだから、これくらいやらないとダメだってわかってくれないなんて!」と逆ギレやケンカになってしまう。
- そして、家族はもちろん、生徒への影響も出てしまう。自分の勉強不足、忙しさのため、彼らにとって一番良いレッスンや環境を提供出来ないってことね。
依存症と聞いた時には、そういう人もいるんだーと思っていた人でも、
今例を挙げてみたら、ちょっとドキッとしたのではないでしょうか?
生徒のために良い舞台を作りたい!という気持ちは大事でしょう。
それがダメとは言っていないですよ。
でも舞台で忙しい後は、スタジオで試験があって、その後は、チャリティーコンサートがあって…
全ての舞台・イベントが「大切」で、「生徒のため」なんだって。
そして
「最近うちの子供との関係が上手くいっていない、反抗期かしら」
みたいな言葉を聞くと、
あーどっぷり依存症状態で、周りに苦しんでいる人達がいることに気づかないレベルまで来ちゃった…
と悲しくなります。
他の依存症や中毒の様に、このレベルまで来ると、治療が必要ですし、プロのサポートが必要です。
DLSのポッドキャストやセミナーどころの話ではありません。
長期にわたって治療やリハビリが必要で、何らかのストレスでまた元に戻ってしまうことがある状態です。
私の義理の父に当たる人は、依存症で命を落としましたから
どれだけ深刻で、家族にも大きな影響が出て、本人もこれではいけないって分かっていても、
リハビリ病院を行ったり来たりしながら、残念な結果になってしまったのを体験しています。
なんで忙しい依存症の話をしているかって?
それは、
- 特に頑張り屋さんがダンサーやバレエの先生たちになりやすい状況だから
- 特に日本が、身を削った”努力”(という名の無茶)が称賛されやすい国だから
そして
来日セミナーで実際に、その状態である人達と会話をしてきたからです。
白黒つけやすいダンサーや、バレエ業界の人達は
じゃあ、何もしないでぼーっと過ごしている方がいいの?と思うかもしれないけど
そうは言っていないよ。
充実した生活をしていても、舞台前で忙しい時期を過ごしていても
スタジオ運営をしていて、やる事がたくさんある人でも
- 「やめよう」と思ったらすぐに休みをとるなど、行動に移すことが出来たり、仕事量を減らすなどコントロールが出来るなら問題ない。
- 「その時期だけ」と期間が決まっていて、舞台が終わったらちゃんと休みをとることが出来たり、休みをとることを不安に感じないレベルを保てる
- 自分の価値観・バリュー・大切なものの順位に影響しない。影響していたら1番の項目のようにすぐに方向転換が出来る。
- 「予定を詰め込み過ぎる問題がある」と直視して、それに対し改善出来るように努力している
- 仕事は忙しいけど、家族や生徒には100%影響を出さない範囲を保てている
なら問題ないはずです。
最初の方にお話したように、他の依存症と比べて、忙しくしていても周りから心配されることはありません。
- それだけ努力できてすごいねー
- スタジオ運営しているから仕方ないよね
- フリーランスだから、お仕事がある時に頑張らないといけないもんね
って言葉で終わってしまうだろうから、私たち本人が十分気をつけなければいけないですね。
残念ながら、私はこの分野の専門家ではありません。
なので「摂食障害や問題がダンサーに起こりやすいよ」と問題を提示したり、
「こういう状態は普通じゃないよ」と情報を提供は出来るけれど、
診断したり、治療する事は出来ません。
同じく依存症に対しても、
「こういう問題があるよ」「私はこうやって勉強したよ」とお話する事は出来ても
診断したり、治療する事は出来ません。
なので、まずいなと思った方は、専門家を探してみてください。
まだ専門家に相談するレベルでなくても、知識があると意識する事が出来ますし、
普通じゃないと理解出来たら、自分の中の「当たり前」を考え直すチャンスになります。
そう、どんな問題でも「問題があるかもしれない」と分かることが、最初の一歩になるんですよね。
ご存じのように私の大きなミッションは
「生徒の安全と、将来の健康を第一に考えるレッスンを”当たり前”にすること」です。
そして、先生が変われば、スタジオが変わる。
だから、教師のためのバレエ解剖学セミナーやライブラリのような
知識のアップデートが出来る場所をたくさん準備しています。
そのうちの1つ、DLS公認スタンスインストラクターコースでは、
- 21世紀ダンサーなら絶対に必要な、バレエレッスン以外のトレーニングを取り入れるスタジオを増やす
- 痛みを無視して踊り続け、無茶した結果ケガのせいで踊れなくなるダンサーを減らすために、エクササイズの大切さを理解してもらう
- ウォームアップのように、様々なスポーツでケガ予防になると分かっている知識を、全てのバレエスタジオで取り入れてもらう
ために、インストラクターを養成しています。
- 「忙しいのが当たり前」と感じている人が多いけど、依存症になりうる可能性があるというように
- 「痛いのが当たり前」と感じているダンサーが多いけど、痛みなく踊ることが可能だと知ってもらうこと
- 「痩せるためにエクササイズ」ではなく、健康の為に、長く踊り続けるためにエクササイズをするのが当たり前と分かってもらうこと
が出来たら、より多くのダンサーの安全と将来の健康をサポート出来るのではないか?と思っています。
エクササイズを指導できるインストラクターを養成するコースですが、
最初の授業はスケジュール管理についてです。
理由は、「深夜まで勉強が努力だ」と言われて育ってきた先生たちに、効率よく勉強するとは何かを知ってもらうこと、
健康を害して勉強や練習をすることは、努力ではないということを知ってもらうため。
もちろん、コース中は忙しくなりますよ。
だっていつもの生活+勉強や練習、試験やアセスメントが入るんですから。
でも、賢く勉強することも、楽しく勉強する事も可能。
本人の知識と、マインドセットがあれば、ですけどね。
4期生申込は、5月中旬からスタートし、6月からコースがスタートする予定です。
DLS公認スタンスインストラクター4期生の募集要項やスケジュールについての詳細を知りたい方は、こちらからどうぞ。
健康とは、安全とはを第一に考え、
正しい方向に努力するとは何なのかを常に意識して勉強出来るインストラクターコースは、
- ただ忙しくしていたい人
- 資格だけが欲しい人
- 自分で考えるのが嫌いで、答えを与えてほしい人
には向きませんが、
- 今の自分(と持っている問題)と向き合い、次世代のダンサーをサポートしたい小鬼たち
とお会いできるのを楽しみにしております。
ということで、今日のポッドキャストはここまで。
また来週の金曜日にお話しましょう。
Happy Dancing!