*このブログは2013年に書かれたものを2021年に大幅加筆修正しました。
今日はダンサーの呼吸についてお話していきましょう。
ダンサーだけでなく、人間が生きていく上でとても大事なだけど「深く吸ってー吐いてー」だけでは舞台で使えません。
深呼吸してリラックス…なんてしていたらアレグロ出来ませんしねぇ。
呼吸にはたくさんの筋肉が必要
呼吸筋(こきゅうきん)、って言葉を聞いたことがあります?
別に「呼吸筋」という名前の筋肉が存在するわけではなくて、呼吸をサポートしてくれる筋肉たちの総称です。全部知りたい人はネット検索してくださいませ。
オヤブンは皆が知ってる横隔膜(おうかくまく)。
肋骨の中にあるキノコね。
こいつはとっても大事なんですが…お話していきません。
なぜか?というとレッスン注意やダンサーからの悩み相談で
- 横隔膜が弱いからバランスとれないのよ
- このケガのリハビリには横隔膜を鍛えてくださいね
- 横隔膜のストレッチを教えてください
って聞かれないからです。
バレエダンサーの情報としては、
横隔膜っていう大事な筋肉が体にはあって、呼吸筋のオヤブンだよん
と分かっていればOK。
エクササイズを指導している人達にとっては、横隔膜をコアの一部として数える人もいます。
(=よっていろいろと注意をするが場所的にイメジェリー的な注意しか出来ないとは思う)
治療家は横隔膜リリースをします(=私もやります)
ミュージックシアターと呼ばれる世界にいる人達、日本語ではミュージカルをやる人達や発声のトレーニングが必要な人はもちろん、横隔膜について治療、トレーニング、リリースとかも考えます。
水泳選手を私は診たことがないのだけど、もしかしたらそういう人達も横隔膜系をやるのかな?(知っている人がいたら教えて)
必要そうだよね。
でも、ダンサーは横隔膜の構造やどこについているか?など知っておく必要はないと、私は思っています。
時間が余っているんだったらどうぞ。
そういうマニアックな事が好きだったらどうぞ。
止めはしないけれど、絶対知っておかないとケガするぜ?とは言いません。
じゃ、ダンサーは呼吸を知っておく必要がないの?と聞かれたら答えは「そーとは言ってない」です。
呼吸を止めない!
ダンサーとして横隔膜や呼吸筋について知っておく必要はないと思うけれど、呼吸については知っておいてほしい。
ダンサーに知っておいてほしい呼吸っていうのは胸式呼吸と腹式呼吸の違いではございません。
踊っている時に呼吸は止めるなよ、って事です。
Repeat after me! 踊ってるときに呼吸を止めるんじゃないよ。
死んじゃうからね笑
肋骨の記事でも少し書いたけれど、呼吸を吸うと肋骨の下の部分(仮肋)が開き、胸骨が斜め前に動きますよね。
それを利用して
- カンブレデリエール
- パンシェに入る前
- アロンジェ
などのステップで呼吸を吸った方がラインも美しくなり、動きもスムーズに見える、というのはあります。
(解剖学的には、胸椎の伸展が必要になるステップでってことね)
でも、
- 素早くカンブレデリエールから方向転換
- アラベスクからすぐに次のステップに動く
- アロンジェの動きだけれど、曲調(もしくは役)がシャープ
の場合は「絶対」じゃないです。
この後出てくる表現力でもそうだけど、ここらへんはダンサーの好みや振付家の意図などに左右されるので、レッスンレベルの話じゃないけどね。
エクササイズとして呼吸を使う場合
胸式・腹式呼吸が悪いとか、存在しないとか言ってませんよ。
エクササイズの一環として呼吸を使う方法は沢山あります。
- 柔軟性を高めるために副交感神経優位にして、筋緊張を下げる
- 呼吸を使い、呼吸で動く関節をモーバライゼ―ションさせる
- 呼吸を使い、呼吸筋たちのバランスを確認したり、調整
- 呼吸とエクササイズを混ぜることで難易度をアップさせたりダウンさせたりする
- 側弯症リハビリの一環として、左右のバランスを整える
- 腰痛などの慢性の痛みで体を膠着させてしまう癖をかえるため
- 性格的に力を入れすぎてしまうダンサーへのキューイング
- Etc
もちろん、ここらへんで筋膜系にフォーカスしてエクササイズさせる人は、アナトミートレイン系の考えをしているかもしれませんね。
でも、上で挙げたことを見てみると
- レッスンやリハーサル、舞台で行う事
ではなく、
- 踊る体を作るための段階
で使われる事になります。
だから最初から、ダンサーだったらそんなに知っている必要がないって書いたのね。
キーワードは「エクササイズ」だからさ。
首のラインと呼吸筋
ただし、バレエレッスン、もしくはリハーサルに関係してくるかもしれない呼吸の事で、
- アレグロなどで肩がたくさん動いてしまう
- 呼吸していると首に力が入ってしまう
などの問題はあるかもしれません。
踊っている時に呼吸が出来ない
という悩みも聞いたことがあります。集中していると忘れちゃうんだって。
呼吸筋の中には、特に息を吸う時には、首回りの筋肉が使われるのね(胸鎖乳突筋筋・斜角筋たち)。
横隔膜や肋骨の間にある筋肉(内・外肋間筋)、腹筋群が上手く使えていないと
つまり体幹の筋肉たちが使えていないと、首回りの筋肉を使いすぎてしまう事にはなります。
だからエクササイズで(レッスンの外で)修正する必要がある人もいますけど、
一番いいのは体力(心肺機能アップ)をつけることだと思います。
ダンサーが体力や持久力がありすぎてケガする事はないからね。
そして「首のリキミがとれません」という記事で書いたように、指導者のレッスンプランも大事になってきます。
呼吸を止めてバランスをとったり、引き上げたつもりになるダンサーを最初から作らない事。
そして失敗する恐怖や、先生が怖い(愛があるけど厳しい、ではなく怒鳴ったり、無理やりつま先を伸ばすとか、お団子を掴むとかしてくる人達)と、
首のリキミはとれず、緊張から呼吸も浅くなり、息を止めて踊る癖がつきます。
舞台の表現力としての呼吸
その他、ダンサーが知っておきたい呼吸、応用編として。
役作りによっては呼吸を表現力の一部として使う事があるから、覚えておいてね。
例えば
- 息をすい、一瞬止める事で、驚いた様子を観客に伝える
- 目を閉じ息を吸いながら、くるみ割り人形を抱いて愛情を表現する
- ジュリエットの自殺シーンのように痛みを表現するために息を止める
- 亡霊、空気感を出すために、苦しくても呼吸を見せない
とかさ。
オンライン学校の表現力クラスでも説明しているように、このような役作りは基礎となるテクニックや体、感情への理解が出来ていて初めて成り立つもの。
発表会やコンクールのリハーサルで初めて練習しても、嘘くそくなるだけだからお気をつけて。
何事も基礎が大事で、繰り返しも大事。
表現力も同じですからね。
まとめ:踊っている時の呼吸について考えてみよう
- 呼吸は大事だから止めない!
- 呼吸をエクササイズで使う事も出来れば、表現力として使う事もできる
- レッスン中にヘンな癖をつけないように気を付けて。
次のレッスンで練習してみてね!
Happy Dancing!