*このブログは2013年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。
背骨のカーブをこちらの記事で勉強しましたよね。
この記事では、頸椎、胸椎、腰椎のそれぞれのカーブにある癖をお話していきます。
背骨の癖というか性格を理解することで、レッスンの注意やテクニックを考えるきっかけ、もしくは安全にエクササイズやストレッチをする知識にしてくださいね。
*骨の形や動きを模型と共に説明しているバレエ解剖学YouTubeビデオはこちら
頸椎:首の部分
頚椎(けいつい、Cervical Vertebra) は全部で7つあります(C1-C7)
この部分が脊柱の中で一番よく動く部分。
棘突起(きょくとっき、クリオネのしっぽだったね)もほかの部分に比べて小さく、内臓や肋骨の重さがかかっていないため首の筋肉が固くなっていない限り、色々な方向に首を動かすことが出来ます。
頸椎の1番と2番はほかの子と違う
7つのうち、一番上と2番目の頚椎は形や大きさが他の5つと全く違うところに注目。
第一頚椎は環椎(かんつい、atlas、C1)とよばれ、横長ドーナツ?みたいな変な形をしています。
頭蓋骨がこの上に乗っかるようになっているの。
その下にあるのが第二頚椎、軸椎(じくつい、axis、C2)と呼ばれる骨。
これもまた変な形をしていて、とんがりがついています。このとんがりの部分に第一頚椎の穴が輪投げのように合わさっているのね。
だから、第一頸椎とその上に乗っている頭蓋骨が左右にエポールマンやスポットをつける時に、胴体がねじれたり、肩の高さが変わらないで済むんだね。
頸椎の棘突起と伸展
特にC4の棘突起が短く、C5も短め。
だからこの部分が背骨の伸展をしやすいのね。
伸展しやすい=後ろに反りやすい。
なので気を付けていないとカンブレデリエールやアラベスクの時に首の後ろが縮んだり、顎が上がってしまうんです。
そういった脊柱の伸展、一般用語で言うと背骨を反らせる動きを練習する「前」に、後ろに反っても頸椎を守れるだけの首の強さが必要なんですよね。
首の強さって何?って思うだろうけど
正しい姿勢で頸椎を保つことができる強さ
ってこと。つまり、
- 正しく正面を向いて立つ
- 正しく立ったままで首を左右に動かす
- 手足が動いても、正しく正面を向いて背骨を保つことができる
- 手足が動いても、正しく首を左右に付ける事ができる(エポールマンをつけるってこと)
が出来てからではないと、カンブレデリエール(背骨全体の伸展)はもちろん、アラベスクの背骨(背骨の伸展+回旋、片足で立つバランス)は不可能だからね。
首がなんだか座っていないダンサーっていない?首だけグラグラする子。
首だって背骨だからさ、安定していない=軸がない、コアが弱い、正しく立てていないっていう証拠ですよ。
頸椎の癖:まとめ
- 一番動きやすい
- C1、2の形が違うため、スポットやエポールマンが出来る
- C4、5 の棘突起の長さのため、伸展がしやすいが注意が必要
胸椎:胸の部分
首の下にあるのは…そう胸の部分、胸椎です。
胸椎(きょうつい、Thracic Vertebra)は全部で12個、その全てに肋骨がくっついています。
でも肋骨の話を始めちゃうと、背骨の癖から話がズレてしまうので肋骨について知っておきたい事はこちらの記事を読んでね。
胸椎は動きづらい
胸椎の大きな特徴は動きづらいこと。
動きが制限されてしまう理由はこちら。
- 胸椎の椎間板はほかの場所に比べて薄い(椎体の1/6)
- 肋骨という骨がついている
- 棘突起が長く、アングルが下向き
椎間板の厚さや棘突起のアングルはダンサーが知っておいても別に意味はないんだけれど、胸椎は動きづらい、という事実は頭にしっかりと入れておいて。
動きづらい、というのは動かない、ではないですよ。
動きづらい=意識的な努力が必要ってこと。
だから、バレエレッスンを正しく順番立てて勉強していくと、
- 両手バーで正しく立つから始まり
- 頸椎の動きを練習し(顔の方向、シンプルなポーデブラと一緒に首を動かす)
- その後に胸椎の動きを練習します(上体を少し動かす、クロワゼなどの方向で少しひねる)
だって胸椎という動きづらい部分を動かしたいとしたら、首も一緒に動いちゃうじゃない?繋がってるからね。
胸椎の柔軟性はテクニックのカギ
動きづらい胸椎がスムーズに動くというのは、クラシックバレエダンサーにとって上達を早めてくれるカギになります。
胸椎の柔軟性が増すと、
- 上体をソフトに使う事ができる(頸椎+胸椎=バレエで言われる上体)
- 舞台で大きく踊る(腕、体の方向などの可動域が大きくなる)
- 大変な振付でも呼吸がしやすくなる(肋骨がついている=肺に影響)
- アラセコンドやアラベスクが上がりやすくなる(これらの姿勢では胸椎がどれだけ動くか?が脚の高さにダイレクトに影響する)
- アラベスクのラインが向上する(腰から折れちゃうようなアラベスク、嫌でしょ?)
- 腰のケガを予防できる
なんて素晴らしい!!
特に腰痛についてはこちらの研究で
- プロの92%、アマの84%に見られた
- 痛みが出やすい動きは腰椎伸展
と出ているんだから、腰椎への負担を減らすっていうのは長く踊り続けるためにかなり重要よね。
胸椎の癖:まとめ
- 胸椎は構造上、動きづらい
- バレエダンサーだったら胸椎の柔軟性にフォーカスして沢山練習すべき!
腰椎:腰の部分
腰椎(ようつい、lumbar vertebra)は5つ、数は一番少ないけれど、ひとつずつが大きい+椎間板も分厚いので、腰の大きなエリアをカバーしています。
腰椎は動きやすい
先ほど勉強した、胸椎と正反対で、この子たちは動きやすいです。
理由もさっき見た胸椎が動きづらい理由の真逆。
- 腰椎の椎間板は分厚い(椎体の⅓ )
- 周りに動きを制限する骨がなく、筋肉と内臓が前にある
- 棘突起が短く、アングルが床と水平に近い
周りに邪魔なものがなく、分厚いクッションが入っていて、ぶつかる骨のアングルがないから、放っておいても動きやすいんですよ。
だからレッスン中に
- 腰が丸まる
- ウエスト(腰椎の部分)が不安定
- コアや腹筋が弱い
なんて言われるんですね。
腰椎はケガしやすい
動きやすいし、バレエでは背中が柔らかい方が良いんでしょ、ってエビぞりやブリッジを小さいころから練習してくるでしょ。
スプリッツで後ろの脚を掴むとかね。
新体操だったら必要だろうけれど、バレエレッスンで後ろの脚と後頭部がぶつかる事はないですよ。
舞台上でお団子と脚がぶつかったら悲惨よ?(もしくはコメディ…?)
先ほど見てもらった280人以上を対象にして行われたアンケートでも腰の痛みがある人が殆どだったのを見たよね?
成長期の体で、何度も何度もエビぞりなど、大きな伸展の動きを繰り返すとその部分に疲労骨折が起きます。
一般に言われる成長痛の中に、腰の疲労骨折や脊柱分離症というのがあるのをご存じですか?
脊柱分離症が見つかったら、初期でもコルセット(ギブスの代わり)と3か月運動制限とかだよ?
一生治らないこともあるんだよ?
本当に「バレエが」上達するために必要なレッスンやストレッチをしているのか?特に教師の皆さんはしっかりと考えてくださいね。
腰椎の癖:まとめ
- 動くの大好き!
- 腰椎は安定をゴールにトレーニングやレッスンしてケガを予防しよう
まとめ:背骨の癖
- 頸椎:動きやすい
- 胸椎:動きづらい
- 腰椎:動きやすい
ダンサーの体が「恵まれている」とか、小さいころからストレッチしてたから、とかと関係なく、
骨の構造で動きやすいところと動きづらいところというのがございます。
数学が苦手だったら、テスト前にたくさん勉強するじゃない?
それと同じように、動きが「苦手」な部分にフォーカスして練習すると総合点は上がるんですよ。
足を引っ張る部分がなくなるからね。(特に体の場合はすべてがつながっているのだから、言葉通り足を引っ張るよ?)
動きやすいところは強化、動きづらいところは柔軟性にフォーカスしてレッスンに励んでくださいね。
そうすれば、ケガなく、正しく、変な癖がなく上達していきます。
Happy Dancing!