*このブログは2014年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。
The definition of insanity is doing the same thing over and over and expecting a different result
この言葉、アインシュタインが言ったという事で有名ですが、実際は1981年の本だとか、1983年の本だとか言われています。
誰が言ったか?は別として直訳すると
「狂気」という言葉の意味は、同じ事をずっと繰り返しながら違う結果を求める事だ。
となります。
その言葉にインスピレーションを受けて、私がダンサー達、そしてバレエ教師の皆さんに伝えたいのが、「違う結果が欲しかったら、違う事を試さなきゃ」ってこと。
そりゃそーだろ、とツッコミを入れる前にスタジオ内を見回してみて。
同じことをずっと繰り返していて、結果が出ないって嘆いている人達の多いこと!
ケース1:アレグロでつま先が伸びない
お母さんに頼んで甲だしスティックを買ってもらって、毎日やっているが、ジャンプでつま先を伸ばしなさい!と言われ続けている。
- 今の結果=つま先がアレグロで伸びない
- 今やっている事=甲だしスティック
- 求めている結果=アレグロでつま先を伸ばす
私はつま先が伸びない骨格なんだーって泣かないでくださいよ。
それは「やってること」ではなく「もってるもの」なんだから、今の話には出てきません。
違う事を試す例としてこんなことが出来るよね?
- 伸ばしなさい、という言葉だけれど動きを注意されているのだから、つま先を鍛えるエクササイズをする
- 床を押し、ジャンプするときのつま先だから床を押す練習を兼ねてカフライズやふっとトラッキングの練習をする
- レッスンの後半であるアレグロでしかつま先の注意をされないので体力や集中力を強化する
- バーのタンジュからつま先を確実に伸ばしきっているかチェックする
などなど
ま、先生の方としても同じ注意「ジャンプでつま先伸ばしなさい」を言っても結果が出ないならば、
- 違う注意の仕方を考える
- クラス構成を変えてつま先の強化を増やす
- つま先の問題なのか、脚全体が素早く、シャープに伸ばされていないのかなどをしっかりと確認する
など違う方法を試すべきだけどね。
ケース2:ウォームアップをしない子たち
ウォームアップしなさいよ、と昔伝えたのに、生徒がレッスン前のウォームアップを行わなず、床でストレッチばかりしている。
- 今の結果=生徒がウォームアップを自主的に行わない
- 今やっている事=口頭で伝えた
- 求めている結果=安全のため、自分たちでウォームアップをしてほしい
この手の質問(愚痴?)はバレエの先生から良く聞くんだけど、それに対して私からも先生たちに質問があります。
- スタジオにウォームアップするスペースがある?
- 子供達や途中から入ってきた生徒たちがウォームアップって何か分かってるかな?
- 先輩や、先生自身がウォームアップしてる?
- 学校からレッスンまでギリギリな時間になっていない?
小さいころのクラスで床でのストレッチの後にレッスンをやる、というクラスを受けてきている子たちに、
「自主的にウォームアップしなさいよ」と言った場合、今まで習ってきたのはストレッチなんですよね。
だから自然にストレッチを選ぶだろうね。
憧れの先輩たちがレッスン前にやっている事を真似したいと思う子たちは多いだろうし、
途中からスタジオに入ってきた子たちは、周りと溶け込むために周りの真似をするでしょうね。
先生がレッスン前にストレッチしている姿を見たら、大人初心者はそれが普通なんだろうと思うよね。
だから、いつも同じことを続けるようになってしまう。
違う事を試すには知識がいる
同じことを繰り返してしまう理由の1つに、それ以外何をしたらいいのか分からない…という知識不足な場合があります。
例えばケース2のウォームアップ。
ストレッチじゃなくてウォームアップしなさいよ、と言われたとしても、知っているエクササイズがプランクだけだったら、20分プランクしているわけにはいかないじゃない?
30秒でも辛いんだから笑
エクササイズだけが知識ではないですよ。
バレエの注意だったら、そのステップ(パ)の正しい形が分かったり、そのステップの前段階、つまり難易度ダウンが分からないとどうしようもないよね。
脳みそは使いすぎても頭蓋骨からはみ出るほど大きくならないし、重くもならない。
知識があり過ぎてもケガしない。
だからやっぱり頭がいいダンサーは早く結果が出るんだろうね。
違う事を試すって勇気がいる
私たち人間は同じことを繰り返すのが好きなんですよね。
今まで同じ方法でやってきて、死ななかった=安全だった、ってことでしょ?
慣れている行動を繰り返すって、新しく考えたり、モーターコントロール(運動に必要な関節・筋肉・神経系の調整能力)を作りなおさなくても済むから省エネだし。
何よりも、新しい事を試すには勇気がいるよね。
「もしかしたら明日になったら結果が出るかもしれない。」
「あと1日頑張ったら、効果が見えるかもしれない」
って思うじゃない?
でもね、ケース1のつま先を例にとると、たとえアレグロのつま先に効果が出なかったとしても、
- ひざ下が強くなる
- 足首やつま先のアライメントを正しくしたままで床をプッシュする感覚が身につく
- 体力・集中力がつく
- バーレッスンの慣れている動きでも、意識を変える
っていう事が無駄になる事はないと思うんだよね。
だから、知識に裏付けされた<違う事>だったら試しても、結果が出なくても、どこかでWinがあるわけだ。
ストレッチがどーのこーの、と言うと絶対に聞かれるのが
「でも、ダンサーは柔軟性が必要ですよね」ということ。
柔軟性というのは関節の最大可動域のことだけを指すのではないですよ。
柔らかく動くコントロール力はもちろん、柔軟な思考、石頭にならず新しいアイデアを受け入れられる心も柔軟性だと思わない?
生の舞台では何が起こるか分からないんだから、臨機応変に対応できる柔軟性ってダンサーには必要でしょ?
方向転換をするのは勇気がいるけれど、1+1=2。
いくら念力を込めても、努力しても、痛みを我慢しても、1+1=5になる日は来ないんだと覚えておいてくださいませ。
何を目安に方向転換すればいい?
確かにエクササイズの効果は1日では見えません。
筋肉の強さが出来るまでに2-3週間かかるとか言われるし、新しい癖をつけるには21日だとか3か月とか言われるし。
だけど、私の中のルールとして1か月経ってもダンサー自身が何も変化を感じられなかったら、新しいことを試す時期だと思います。
先生には同じことを言われていたとしても
- レッスンの後に足裏が筋肉痛になるようになった
- アレグロが安定し、飛びやすくなった
- つま先の意識が抜けた瞬間に気づけるようになった
というのは大きな変化だけどね。
もちろん、最初は結果が出たけれど停滞している…という問題があった時も同じように考えてみて。
アレグロでつま先の注意は減ったけど、ポワントでのアレグロになるとやっぱり…
となったら、たとえ過去にうまくいったからといって、同じことを繰り返していても効果がでませんからね。
先生たちも同じ注意を1か月言い続けても、生徒が変わらないならば一度立ち止まって考えてみた方がいいと思う。
そうすれば、怒鳴らず、イライラせず、ダンサー自身も凹まずレッスンが出来ると思います。
違う結果が欲しかったら、違う事を試す。
今週のキーワードにしてもらえたら嬉しいです。
Happy Dancing!