*このブログは2014年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。
種子骨の疲労骨折があります。1昨年に左足、去年には両足の種子骨を疲労骨折してしまい、1年以上バレエを踊ることが出来ていません…
こんな悩みの声を聞いたので、今日はダンサーに見られる種子骨のケガについてお話していきます。
スタートする前に、DLSだけでなく世の中のネット情報というのは「情報」であり、あなたの体をみた「診断」ではありません。
よってこの記事も、ダンサーに自分のケガへの理解を増やしてもらったり、バレエの先生たちに予防策を考えてもらうためのものであり、診断とか医療アドバイスではございませんよ。
痛みがある場合はしっかりと診断してもらうようにしてくださいね。
種子骨って何?
種子骨(しゅしこつ・sesamoid)というのは骨の名前ではなく、骨の種類なんですよ。
なので種子骨っていくつかあります。
種子骨が特殊なのは、こいつら、腱の中に住んでいるの。
そう、腱の中!
一番有名なのは足の裏にある種子骨だと思うんだけど、膝のお皿である膝蓋骨も種子骨なんですね。
こいつはゴマサイズじゃないよね。
なんでゴマかって?
Sesame=ゴマ
sesamoid=ラテン語でゴマという意味のsesamumから来ているらしい(出典元)
私も知らなかったんだけど、この記事を書くためにリサーチしたら出てくる出てくる、ゴマ骨達!
膝蓋骨とか足だけじゃなく、手の親指中足骨にもあるらしいし、人によっては違う場所にもできるらしい(逆にない人もいるらしい)。
こちらの写真は元生徒の一人。
足の痛みでレントゲンをとって、剥離(疲労)骨折とか言われたらしいけど、種子骨だった(ので骨折ではなく痛みの原因はほかにあった)んだって。
人間の体の個人差ってやっぱりあるのよね。
足の裏にある種子骨について
でも今日スポットライトを当てたいゴマは足の裏にあるヤツ。
だいたいは2つあって、内側の子の方が大きいらしいです(Again、ない人もいるしそうじゃない人もいるし、3つある人もいるらしい)
この2つがあるおかげで、長母趾屈筋(ちょうぼしくっきん・Flexor hallucis longus)の腱を守ったり、筋肉(と腱)がスムーズに動くのをサポートしてくれます。
(長母趾屈筋とプリエ、距骨の関係は「プリエ使えてますか?」で勉強したのですでに知っている人も多いよね。)
イラストで見て分かるように、親指の下を通る腱が、歩くたび、走るたびに潰れないように守ってくれているのが種子骨。
小さいけれど、とっても大事な骨たちなんですね。
種子骨障害ってなに?
種子骨「障害」ってついた場合はなんなんでしょう?
私もこの言葉は後から学びました。
なぜかというと、英語ではsesamoiditisというのがあってその後にstress fructure of the sesamoidに発展する可能性がある、っていう風に勉強するから。
ただ、日本語の種子骨障害の方が多分正しいと思うんだよね、-itisって英語でつく場合炎症を指すんだけど、種子骨障害の中には炎症を伴なわないが痛みがある場合もあるので。
そして炎症を伴っていない場合は、抗炎症薬を使っても意味はないですよね。
ま、そこらへんは言葉遊びっぽくなってしまうので今日は割愛して、
ダンサーが知っておきたい種子骨障害というのは
- 親指の付け根(種子骨があるエリア)が踊ったり(一般人だと走ったり)、ルルベしたりすると痛い事
- 放っておくと疲労骨折になる可能性がある
という2つ。
怖がらせるつもりはないけれど、事実として、
- 種子骨が壊死することもある
- 種子骨骨折は治らない事もある
というのは知っておきましょうか。
疲労骨折についてはこちらの記事で説明しているのでそっちで勉強してください。
特に、疲れたときに起きる骨折で、今はコンクールがあるのでちょっと無理するけどその後安静にしていたら大丈夫、なんて思っている人はしっかりと勉強しなおして。
ダンサーは種子骨障害になりやすいグループに入る
種子骨障害になりやすい人達として、
- ダンサー
- 長距離ランナー
- 足のアーチが高い人やハイヒールを履く人
なんていうのがあるそうです。
ダンサーと長距離ランナーの共通点は同じ動きを固い床で繰り返すこと。
そして長距離ランナーも痩せろなんて言われてくるので生理と骨密度や骨関係のケガの率が高いのでしょう。
痩せれば早くなると思っている人(もしくは痩せれば上手になると思っている人)は7分弱のこのビデオを見てみると考え方を変えられるかも。https://www.youtube.com/watch?v=qBwtCf2X5jw
ビデオ自体はThe New York Timesのもので、記事もあるのですが、登録しないと読めないので
英語の聞き取りより、文章を読む方が分かりやすい人はこっちもどうぞ。
ダンサー以外の人はシューズを変更することが第一の治療法ですが、ダンサーだったらほぼ不可能でしょう。
特にはだしでコンテ、バレエシューズのネオクラシックだったら。
もちろん、シューズを変えたところで、クラシックバレエダンサーのように長母指屈筋が一番伸びるところ(膝を曲げたルルベなど)から一番縮むところ(フルポワントなど)を行ったり来たりする動きを考慮すると、
種子骨の痛みは「振付を少し変えて負担を減らしましょう」で対処できるどころの話ではなく、
ダンサーはレッスンすらほとんど出来ない状態になってしまうでしょうね。
ダンサーが出来る種子骨障害予防方法
ダンサーの場合、スポーツ一般をみても種子骨に負担がかかる動きと、シューズの作りになっているというのを頭に入れておいて
予防としては
- ダイエットをしない!
- 正しい立ち方を身につける
正しいターンアウトを身につける - 正しくルルベに上がる、下がるという動きを強化する
- 安全にアレグロができる体の強さ、特に下半身強化をする
の徹底が必要です。
ダイエットについては骨の健康面と、組織修復、集中力に至るまで様々な面で理解出来ると思います。
正しい立ち方は、立っている時、特に地面を踏み込む動き(MP関節が曲がり、体重や負荷がかかる)時に痛みが出るというところから理解できますよね。
それ以外の点は、ステップとしては違うように見えるけれど、親指のゴマに無駄な負担をかけないためにとっても大事なんですね。
足首だけでターンアウトしていたら、つまりロールインして立っていたら、足の裏の3点に正しく体重が乗るのではなく、親指に体重が集中してしまいます。
それで走ったり、ジャンプしたり、ルルベしてたらゴマが可哀そうだよね。
(ってことは、日常生活でペンギン歩きしてたらかなり負担がかかってるってことだからね!)
ルルベに上がるときに足首が不安定だったり、フィッシュ(逆カマ足)の方がきれいに見えるからなんて形で立っていたら、ターンアウトと同じくゴマへの負担が大きすぎます。
親指に体重を乗せてはいけない、とは言っていないよ?
「無駄な」負担を減らすこと。
これは同じ動きを繰り返すスポーツやバレエの世界ではとっても大事になります。
10負担がかかる動きで12負担をかけてるとするじゃない?
たった+2だから大きくないように感じるけれど、
レッスンの中のルルベ、ジャンプ、ポワント全ての動きで+2してたら大変なことになるって分かるよね?
疲労骨折をはじめオーバーユース症候群などもそうだけれど、長期にわたり負担がかかってケガに繋がるんだから、
- 不必要な事はやらない
- 癖になる前に徹底的に修正する
- 体がまだ出来上がっていない子供達の場合は、特に気を付ける
を徹底する必要があります。
下半身強化も同じような事だけど、ジャンプの着地の衝撃を股関節、膝関節で緩和する事が出来れば出来るほど、足にかかる負担を減らすことが出来ます。
Again、足をつかないでジャンプの着地は不可能よ?負担を減らすことはできる。
ダイエットに引き続き、ダンサーは筋トレを嫌う傾向があるので下半身強化って取り入れてくれない事が多いんだけど、
骨、関節にかかる負担を緩和するのは「柔らかい着地!」と願う事ではなくて、関節を動かしている筋肉たちが保護することです。
そのためには筋肉が強くなければいけません。
Simple truth。
種子骨障害の場合はどうやってレッスンに復帰する?
予防が知りたくてネット検索する人は残念ながら存在しないので、この記事を読んでくれている人は種子骨障害、骨折がある人だと思われます。
そういう人達はどうしたらいいのか?
まずは正しく診断されてください。
親指の付け根がルルベの時に痛くなる、というのはほかのケガの場合もあります。
正しい診断は、ケガからのリカバリーのスタート地点。
- ケガしているのがどの組織なのか
- どれくらいケガの進行があるのか
が分からなければ、リハビリプランを考えることすら出来ません。
種子骨障害で炎症がある
VS
種子骨疲労骨折
では痛い動きを休ませるという面では一緒かもしれないけれど、
- ケガの期間
- どれくらい徹底して動きを制限すべきか?
- どんなエクササイズをすべきか
が変わってきます。
同じエリアの痛みで外反母趾のようにMP関節の炎症かもしれないし、足底筋膜炎からきているばあいもあるかも。
同じ足の裏でも第二中足骨のMP関節だったら、第二中足骨の長さの問題や、横アーチ、関節包炎症なども考えられます。
指が違うけど、隣同士でルルベ、ジャンプ踏切で痛いから混乱しちゃう人も(神経も)ある。
正しく診断され、日常生活は出来るようになるくらい理学療法士さんや柔道整復師さんとリハビリをした、と仮定した場合は
- レッスン以外でクッション性のあるランニングシューズを履くことを徹底する
- レッスン内でダンススニーカーでレッスンに復帰(ただし最初はルルベ、ジャンプはなし、90度の一番ポジション、3番ポジションで、4,5番はしない)
- センターワークは移動のないタンジュ、アダージオまで、その後はエクササイズプランをこなす
というところからスタートしてレッスンに復帰します。
人によってはテーピングやパッティングをするというのも手ですが、
足に合うダンススニーカーでレッスンができるんだったら、そっちの方が早いと私は思います。
ダンススニーカーはつま先は伸ばせますが、足のアーチにかかる負担が大きくなるので、
上で書いたようにバーレッスンとセンターちょっとくらいの長さだけにしてください。
指導もしているんだよねという人は外で履くスニーカーの方がいいから、新しく室内用に買って、それを履いていてください。
つま先を伸ばすデモンストレーションはあまりできないけど、そこは口で説明するという指導者なら当たり前のテクニックをお使いくださいませ。
どんなケガでも予防が一番手っ取り早いです。
ひどくなる前に休んで、体の使い方を修正した方が短期間踊りから離れるだけだし、強くなって戻って来られます。
今けがしている人は、現在の状況をしっかりと診断してもらい、信頼できるトレーナーや個別レッスンで体の使い方を徹底的に治してください。
手遅れだよ…って思っちゃった人、今より早い時間はないのだから、後回しにしないように!
プラスαのリソース
立ち方が大事とか、ターンアウトを正しくってお話したでしょ?下半身強化も大切よって話したよね?
それらのエクササイズは
で説明しているのでそっちを参考にしてください。
エクササイズプランの立て方は「バレエノートの書き方」というオンライン授業でカバーしています。
ダンサーのリハビリ全体についての話は一冊のebookにまとめてあります。
Happy Dancing!