オーストラリアの一年は1月の終わり、または2月の最初に始まって12月に終わります。
そのため、今現在(12月上旬)は本当にラストスパートの時です。
最近、2人の生徒がバレエ学校をやめました。
あと少しで終わり。卒業証書がもらえたのに。
毎年たくさんの生徒がやめていきます。
「毎日踊るのは大変すぎた」
「踊るのは好きだけれど、仕事には出来ない」
「怪我が続き諦めた」
「ダンスを甘く見ていた!」
理由はたくさんありますが、
この時期に辞める生徒の場合、原因は大体メンタル面にあると思います。
燃え尽きた、とでも言いましょうか?
今まで頑張って、頑張って。
ストレッチを続け、痛みに耐え、体のケアをして、全ての注意を書き出して。
痩せなさい。足の形が悪い。腕が短い。
体の事もズバズバ言われる世界に居る故に、このような事を尊敬する先生から毎日言われるのです。
自分を限界までプッシュし続けて、昨日よりも良い物を作り続ける、というのは大人でも難しいことです。
けれど、これがアーティスト、芸術家の生活。
ある日、これが限界に達するとどうなるか?
スランプ。なげやり。モチベーションを失い、バレエなんかもういいや!となっていきます。
摂食障害や鬱、パニックアタックなど、深刻な問題に続くこともありますし、
体の痛みも精神的な物から来ることがたくさんあるのも事実。
メンタルトレーニング、精神の強さ、というのは
フィジカルトレーニング、身体の強さと強く結びついている、と私は思います。
大体の場合、頭が先にギブアップするのです。
「もうだめだ」
という声を出す前に、
- 本当に「もうだめ」なのか?
- 「もうだめ」な気がするだけなのか?
を知っておかなければいけません。
ケガの痛みと同じように、これはヤバイからジャンプは減らそうとか、これは今のうちに治療を受けておいた方がいいな、って分かるように。
気持ちが折れてもうだめだ、となる前に計算された休息をとることも体のケアの一部ですし、
これくらいの疲れはこういう事をすると楽になる、なんて自分の中で分かっているとより便利。
特にバレエを始め、全ての競技スポーツにおいて順位をつけられるのが当たり前の中で私たちは生活しています。
皆違ってみんないい。
そう思いたいけれど、私はコールドで彼女はソリスト。
オーディションで受かる子、落ちる子。
バレエ学校に入れば、才能のある子は奨学金生徒。
プロを目指すダンサーたちは幼いうちからこれらの壁と戦わなければいけません。
発表会レベルでもそうです。
彼女はいつもいい役。私はいつも端っこに立っている・・・
このような世界に居るのだから、当たり前だ!と言い切れるような、開き直りに近い強さが必要なんですよね。
舞台に立てるだけで幸せ。
キャスティングされてなくても、アンダーで一緒に練習出来るだけで嬉しい、というダンサーがいます。
そして、そういう子達は、何が何でも一番にならないと!と思っている子よりメンタルが強いと感じます。
どうして自分が踊りたかったのか?が分かっているから。
自分のベースがはっきりしているから。
早くからコンクールに出ていて、競争世界に疲れていたり、
お母さんのため、バレエの先生のプライドの為に頑張っている子は、自分の「楽しい」がなくなってしまいます。
長期続くケガやダイエットばかりしている子達も、メンタルがやられてきます。
摂食障害は食事の問題ではなく、心理的な問題だからです。
脳みそはやっかいな臓器です。
でも、うまく使えると上達が非常に早まります。
メンタルトレーニング、メンタル面のスタミナ、集中力。
このような事もボディコンディショニングの大事な一コマだと思いませんか。
私は心も筋肉のようなものだと考えます。
柔軟性があり、可動域がある。
そして鍛えれば鍛えるほど強くなります。
でも、プッシュし続けると、栄養を入れてあげないと、そしてケアしてあげないと
壊れます。
だからDancer’s Life Support.comではインスピレーションやマインドセットも時々お話ししています。
あー、今日は解剖学じゃないのかと思わずに
心の筋肉を鍛えるためなんだなぁ、と思って頂けたら嬉しいです。
ダンサーのケガをたくさん見てきくると、
体のケガの方が、心が壊れてしまうよりも数段直しやすいと分かります。
だからこそ、心という筋肉を意識的に鍛えてあげてくださいね。
心の強さが、パフォーマンスの強さ、芸術性を上げることにもつながると思いますよ。
「ダンサーが自分の力量を信じれば、観客にもその力量を信じさせることが出来る。
何故なら、自分に自信を持っているダンサーにはエネルギーがあるからだ。
多くの場合、ダンス自体はそうよくなくても演技者としての強い自信があれば、その仕事を上手くやり遂げてしまうものである。」
Humphrey D, The art of making dancers. (1951)
Happy Dancing!